国立名人会(2019/11/14)
第435回「国立名人会」
日時:2019年11月14日(木) 19時
会場:国立演芸場
< 番組 >
前座・柳家小はだ『道灌』
柳家三之助『金明竹』
入船亭扇治『きゃいのう』
古今亭志ん橋『井戸の茶碗』
―仲入り―
柳家福治『お見立て』
柳家小菊『粋曲』
柳家小三治『粗忽長屋』
11月の国立名人会は小三治のトリで、 出演者は志ん橋以外は柳家一門が顔を揃える。
三之助『金明竹』
緩やかなセリフ回しと「道具七品」の早口の言い立ての対比が効果的。このクラスの人が演じると断然面白くなる。
扇治『きゃいのう』
初代柳家三語楼の作とされ、弟子の柳家金語楼が時折り高座に掛けていた。地位の低い歌舞伎俳優の哀感を描写した噺。
座頭に腰元役を貰った大部屋の役者が床山に行くと鬘がないという。初日に休んだため用意がされていなかった。泣き出す役者に訳を訊くと、役者になりたくて両親の反対を押し切り故郷を飛びだしたが、ようやく役が付いたので両親を招待したが、猪や馬の役でがっかりさせてしまった。今度はセリフのある役で、両親が楽しみにして見にきていると。同情した床山は余っていた力士の鬘に新聞紙の詰め物を詰め込んで何とか収めて舞台に送りだす。処が、床山が誤って煙草を叩いた火を新聞紙に落としてしまったことに気付いた。しかし時時遅く、役者が舞台に出ていた。幕が開くと腰元が三人掃除をしていて、そこに乞食がやって来てる。それを見つけた腰元の一人目が『むさくるしいわい』、二人目が『とっとと外へ行(ゆ)』、そして最後の役者が『きゃいのう』」という渡りセリフ。だが最後の役者が舞台で上がってしまい、セリフが出てこない。そのうち鬘の上から煙が立ち上ってきた。役者が慌てて「ウーン……熱いのう」でサゲ。
実力者揃いの入船亭一門の中では地味な存在の扇治だが、芸は確かだ。例えば煙草をのむ時の煙管の持ち方が良い。舞台の腰元も渡りセリフもちゃんと女形の口跡になっている。丁寧な高座で好演。
志ん橋『井戸の茶碗』
結論から言うと、とても良い出来だった。
この噺、登場人物がみな正直で良い人ばかりという事から、落語らしい面白みに欠ける憾みがある。志ん橋の高座ではその正直に滑稽味が加わり、かつ浪人の威厳を失わぬ姿や、一途な武士の姿、好人物の屑屋の姿が明確に描かれていた。
筋の運びも間然とした所がなく、結構でした。
福治『お見立て』
初見。極め付けの志ん朝の高座に比べると薄味だが、テンポの良い運びはこのネタの面白さを引きだしていた。
定席に顔づけされる機会が少ない様だが、味のある高座だった。
小菊『粋曲』
トリの小三治が盛んにほめていたが(腰が据わった、開き直った芸とか)、この人の音曲にはいつも感心する。私の拙い経験から言わせて貰えば、歴代の音曲師の中で最高の力量だと思う。
小三治『粗忽長屋』
マクラの部分から師匠の先代小さんの高座を踏襲したものだった。お手の物とは言いながら、見事な高座。特に熊が自分の遺体と対面する場面は抱腹絶倒。
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切符を取り損ねました。
小三治が元気でいてよかったです。
投稿: 佐平次 | 2019/11/16 11:02
佐平次さん
小三治、以前より元気に見えました。首の動きも一時より良くなった様に思います。自分も早く小菊の境地になりたいと言ってました。
投稿: home-9 | 2019/11/16 11:20