「羽衣」をテーマとした能と組踊(2019/11/28)
組踊『銘苅子(めかるしー)』
天女:宮城能鳳
銘苅子:嘉手刈林一
おめなり:末吉元気
おめけり:當間剛琉
能・観世流『羽衣(はごろも)和合之舞(わごうのまい)』
シテ/天人:坂井音重
ワキ/漁師白龍:森常好
11月の国立能楽堂の企画公演は、「羽衣伝説」をテーマにした「能」と沖縄の「組踊」で、特に「組踊」は初見だったので興味を持った。
組踊『銘苅子』
【あらすじ】
農夫・銘苅子に羽衣を隠された天女は銘苅子の妻となり二人の子どもをもうける。やがて羽衣を見つけた天女は子ども達を寝かしつけて天界へと帰っていく。残された子どもたちは来る日も来る日も母を捜し悲しみにくれる。伝え聞いた国王が姉を首里城中で養育、幼い弟は成人後に廷臣に取り立て、銘苅子には位階を与える。
【感想】
「組踊」という名称からいわゆる舞踏を想像していたが、能に似て動作は静かだ。囃子が三線、笙、笛、胡弓、太鼓という構成。
ストーリーは羽衣伝説というよりは、かつての国王(15-16世紀にかけて在位した尚真王)の善政を賛美する内容になっているようだ。
見所は、天女の佇まいや髪を洗う時の動きの美しさ、二人の子どもと別れる場面の静けさといった所。
ただ、詞章が沖縄の言葉なので全く分からない。訳も出ているが、それを追っていたら舞台が見えない。「組踊」の上演の難しさを感じた。
能『羽衣』
【あらすじ】
漁師・白龍が三保の松原で見つけた羽衣は天女のもの。舞を見せれば羽衣を返すと言う白龍の言葉に、天女は月への祈りを捧げつつ舞い、昇天する。
【見所】
天女から羽衣を返してくれれば舞を舞うと言われた白龍が、羽衣を返してしまうとそのまま天に帰ってしまうのではと怪しむと、天女は「いや疑いは人間にあり、天に偽りなきものを」と言って、純粋無垢な天人の魂を示す。終始変わらぬ気高さを示すシテの姿が見所。
それと囃子方の音が素晴らしかった。
解説によればこの物語は、天女が礼拝する月天子はインドの月神チャンドラーが仏法守護の十二天の一つに変じたもので、その本地が勢至菩薩。月世界に宮殿があるというのは道教の発想であり、この『羽衣』は神道、仏教、道教が融合した世界観に基づいているとのこと。またワキの白龍は中国式の名乗りにもなっているそう。ウーン、グローバルで、深いね。
久々の能、結構でした。今回は寝落ちしなかったぜ。
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コメント
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羽衣はいいなあ。
組踊もまた懐かしいです。
投稿: 佐平次 | 2019/11/30 10:27
佐平次さん
羽衣のシテの凛とした優美さは素晴らしいと思いました。組踊は天女が昇天してから後が長く感じて少々ダレました。
投稿: home-9 | 2019/11/30 15:52