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2019/11/17

ザ・きょんスズ30(2019/11/16)

「ザ・きょんスズ30」
日時:2019年11月16日(土)19時
会場:ザ・スズナリ
<  番組  >
柳家やなぎ『金明竹』
柳家喬太郎『綿医者』
三遊亭兼好『氷上滑走娘』
~仲入り~
柳家喬太郎『本当は怖い松竹梅』

柳家喬太郎落語家生活30周年記念落語会「ザ・きょんスズ30」は、11月1日より30日まで30公演が開催されている。その折り返しの16日夜の部へ。本人によれば30周年記念というより31年目に踏み出すための落語会とのこと。
ネタ出しされているラインナップを見ると、古典から新作にいたる喬太郎の代表的な演目が並んでいるので、今の時点での集大成ということになろう。
柳家喬太郎という噺家は極めて特異な落語家だ。古典と新作の両方を演じる人は多いが、喬太郎はその双方ともに高いレベルにある。
古典でいえば、軽い滑稽噺から圓朝作の人情噺まで幅が広く、また演じ手が絶えていたような古典の掘り起こしも行っている。
新作では、従来の新作落語ではあまり扱ってこなかった様な男女の切ないラブストーリーといったテーマのものから、SFやミステリーっぽいものまで実に多彩だ。
こんな噺家は恐らく過去にいなかったろうし、今後も出てこないかも知れない。
だから喬太郎と同時代を生きているというのは幸せなことなのだ。

やなぎ『金明竹』
古典に手を入れてという気持ちだろうが、方向性が間違っている。客が来たらお茶請けを食べさせるとか、店番の与太郎が呼び込みをしたり「ご指名は?」と訊いたりと、訳が分からない。そのくせ肝心の上方弁の言い立ては滑舌が悪い。妙に捻ろうとするより、まずは古典を真っ直ぐ磨くことだ。

喬太郎『綿医者』
二ツ目になって2,3年の頃に髄膜炎という大病を患い入院した時の思い出をマクラに。入院した時に同じ思いをしたと、ニヤッと笑ってしまう様なエピソードもあった。とかく男と言うものは、である。
このマクラが全体の3分の2位を占めて、ネタは短い。元は上方落語のネタだったが、近年の演じ手がなく絶えていたのを喬太郎が復活させたもの。内臓がいかれた患者の手術で、取り出した内臓の代わりに綿を詰めた。身体が治ったので強い酒を呑んで、煙管の煙草の火を思いきり吸い込んだもんだから内臓の綿に火が付いた。慌てて水を飲み消した所で「胸が焼けた」サゲ。医者が内臓を取り出す場面をユーモラスに描いてみせるブラックな演出。

兼好『氷上滑走娘』
マクラで喬太郎への思いをたっぷり語ってネタへ。
兼好の新作のようで、足の悪いおばあちゃんが医者に運動を勧められフィギュアスケートを始めるという他愛ないストーリーだが、座布団の上で3回転の真似をする動作が秀逸。高座で滑って客が喜ぶのは兼好だけか。

喬太郎『本当は怖い松竹梅』
古典の改作というよりは新作。
マクラの披露宴での余興の話から『松竹梅』の終わりまでは古典の本編通りの演じ方。式をあげたばかりの新郎が刺されて命に別状は無かったが刺した相手については口をつぐむ。一方、梅さんが式の後で行方不明になる。この謎を隠居が金田一ばりに推理し、遂に真相を突き止めるというミステリー仕立て。
カギは本編での梅さんのセリフで、隠居が教えた渡りセリフの「なったなった蛇になった当家の婿殿蛇になった。なに蛇になあられた。長者になあられた」という謡の文句を、
①梅さんが、謡(うたい)と屋台と間違え、横丁の屋台のおでん屋を引き合いに出したこと。
②式の最後の3人のセリフの最後で梅さんが「亡者になあられた」と間違えてしまったこと。
所から隠居の推理が始まり真相が明らかになって、事件は意外な結末を迎えるというもの。
この滑稽噺を推理劇に仕立てたという創作力は大したものではあるが、結末が陰気な印象で落語として暗さが気になった。

喬太郎の2席はいずれも喬太郎ならではの高座。
31年目からどのように変貌してゆくのか、大いに楽しみだ。

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コメント

『綿医者』荒唐無稽な一席ですが、古典の雰囲気はあります。え?古典なんですか?
ご説の通り、内臓を取り出しながら差し入れる寸言が可笑しい。観た時は「そんなわけないけどな」「ムチャだな、どう考えても」なんてやっていました。

福さん
『綿医者』は上方の古典落語です。喬太郎も言ってましたが、先代の小文治が演じていたそうです。もっとも演じ方はだいぶ違う様ですが。

せんじつスズナリの脇を歩いてこの会のことを想いました。
とうてい切符が手に入らないと諦めています。

佐平次さん
下北沢駅がガラリと変わっていてちょっと迷ってしまいました。でも東側は全く以前のままでした。

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