「青鞜」を描いた『私たちは何も知らない』(2019/12/10)
二兎社公演43『私たちは何も知らない』
日時:2019年12月10日(火)13時30分
上演時間:2時間40分(休憩含む)
会場:東京芸術劇場 シアターウエスト
脚本:永井愛
演出:永井愛
< キャストと人物紹介 >
朝倉あき:平塚らいてう(本名は明)/「青鞜」編集と執筆の中心人物。女性を抑圧する家制度に反対し、夫婦別姓、シングルマザーを貫いた。後に、婦人参政権運動を展開。
藤野涼子:伊藤野枝/親の決めた結婚相手に拒み「青鞜」に参加。平塚から「青鞜」を譲り受けるが後に廃刊。高女時代の恩師・辻潤と結婚し二人の子をもうけるが、大杉栄の元へ奔る。関東大震災の際に大杉らと共に憲兵にに斬殺される。
大西礼芳:岩野清/妻子ある男に失恋し投身自殺を図るも漁師に救われ、「青鞜」に参加。作家の岩野泡鳴と結婚し出産するが、夫の不倫で別居。日本初の離婚訴訟で勝訴するも、養育費は得られず困窮する。
夏子:尾竹紅吉/日本画を修行していて、平塚に惹かれ「青鞜」に参加。平塚との間に恋愛感情を持つが、その奔放な言動が世間のスキャンダルとなり「青鞜」を退社。陶芸家の宮本憲吉と結婚し、その後は子育てをしながら婦人運動に加わり反戦を貫く。
富山えり子:保持研(やすもちよし)/平塚と共に「青鞜」を創刊、編集など実務で支える。丸善社員の小野東と結婚し「青鞜」を退社。小野と愛人との間に生まれた子を養育した。
枝元萌:山田わか/単身アメリカに出稼ぎに行くが、騙されて娼婦になる。サンフランシスコで語学塾を開いていた山田嘉喜と知り合い結婚、夫の元で語学や哲学を学ぶ。帰国後、嘉喜の弟子だった大杉栄の紹介で「青鞜」に参加、翻訳や評論を手掛ける。「母性保護法」の成立に取り組んだ。
須藤蓮:奥村博/画家。平塚とは当時として珍しい事実婚の夫婦となる。
平塚らいてうを中心とする「新しい女たち」の手で編集・執筆され、女性の覚醒を目指した『青鞜』は世間から大きな反響をよぶ。支持する意見がある一方、当時は親の許しがなければ結婚できない時代で、「姦通罪」や「堕胎罪」など制度的にも女性が一方的に不利な時代だった。彼女たちが家父長制的な家制度に反抗し、男性と対等の権利を主張するようになると、逆風やバッシングが激しくなり、やがて編集部内部でも様々な軋轢が起こる。
本作品は、「青鞜」に集まった女性たちの像を、平塚らいてうを中心に描いたものだ。
伊藤野枝「処女ってそんなに貴いのだろうか。男子の不貞はとがめられないのに女子だけ責めるのは女の人格を無視している」
平塚らいてう「貧困や親になる資格がないということだけが避妊や堕胎の理由だろうか。勉強したり考えたり、自分の内面を高めるゆえの避妊や堕胎が罪になるとは思えない」
山川菊栄「私娼は自己責任ではなく、原因は社会にある。売笑婦を処罰するなら、共犯者である男子も同等に処すべき。」
これらの意見は今の時代では極めて妥当に見えるが、それでも女性がこうした発言を行うとネットの世界では叩かれる。当時は実名で批判していたが、今は匿名でバッシングするのだから余計に始末が悪い。
「青鞜」や平塚らいてうの戦いは今も続いている。
公演は12月22日まで。
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