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2019/12/29

「My演芸大賞2019」の発表

「My演芸大賞2019」
【大賞】
入船亭扇遊『鼠穴』1/19「朝日名人会」
【優秀賞】
林家種平『居残り佐平次』1/26「国立名人会」
露の新治『大丸屋騒動』5/10「露の新治落語会」
むかし家今松『水屋の富』6/7「国立演芸場」
桂吉坊『胴乱の幸助』10/5「三田落語会」
五街道雲助『二番煎じ』12/15「らくご古金亭ふたたび」
【特別賞】
江戸家小猫『ものまね』
柳家小菊『粋曲』

<講評>
「My演芸大賞」は、1年間で強く印象に残った高座を対象にしている。良かった面白かったという以外に、ガツンというインパクトを受けたものというのが大事な要素だ。聴いた時は感心したが後から振り返ると印象に残っていないものや、振り返ってしみじみ良さが伝わってくるものがあるが、受賞作は後者が中心である。

大賞の入船亭扇遊、いま最も脂の乗った噺家だ。どの高座も水準が高く選考に迷ったが、中でも『鼠穴』が傑出していた。
このネタは陰惨な感じであまり好きな噺でなかったが、扇遊の高座は最後に本当に良かったねと安堵できる。これは演者の人柄の反映という面が強かったと思う。

優秀賞は5名。
林家種平『居残り佐平次』だが、『居残り』といえば現役では権太楼が定番といえるが、種平の高座は肩の力を抜いた演じ方で、主人公の佐平次がまるで風に舞うように描かれていた。こういう演り方もあるんだなと再認識させられた。
露の新治『大丸屋騒動』、数年前にも受賞者として採り上げたが、お囃子との息がよりピタリとあった今回の方がより充実したものになった。この噺は前半の世話物風から後半は一気に芝居がかりの様式美へと移る難しい作品だ。今回も新治の迫力に呑み込まれた。
むかし家今松『水屋の富』、普段の寄席ではあまりかかることが少ないネタ。マクラで江戸の下町の水道事情と、水屋という商売の大変さの説明があり、この噺の奥行きが一段と深まった。富が当たったばかりに心身ともに疲労困憊してゆく水屋の姿が描かれていた。
桂吉坊『胴乱の幸助』、唯一の若手からの選出。上方ではお馴染みのネタで多くの人が演じているが、吉坊の高座では後半の稽古屋の師匠が弟子に「お半長」の一節を語る場面が優れている。ここの出来で高座が締まるのだ。登場人物の演じ分けも申し分ない。
五街道雲助『二番煎じ』、通常は2班に分ける火の回りを分けないという珍しい型で演じたが、この方が自然に見えた。冬の厳しい寒さの描写から番小屋での密かな宴会。身体も心も暖まり呑むにつけ酔うにつけ出てくる色事のノロケで、江戸時代の庶民の姿が活写されていた。他のネタでもそうだが、あれだけのベテランになっても未だ古典に手を入れて演じる雲助の姿勢には感心させられる。

今回「特別賞」として2名。
江戸家小猫『ものまね』、江戸家は3代の高座を観てきたが、この人の技術が断然優れている。研究熱心だし間に挟むトークとの繋ぎも巧みだ。国立ではトリを取っていたが、全く違和感がなかった。
柳家小菊『粋曲』、古くは柳家三亀松、春風亭枝雀、都家かつ江、人形・お鯉、柳家紫朝など音曲を主とした芸人を観てきたが、小菊の抽斗の多さには感心させられる。間に挟む素っ気ない喋りが何とも言えない色気を感じる。小三治が「居直った芸」と評していたが、その通りかも知れない。


さて、本年も相変わらず役に立たぬ事を書いてきましたが、本稿をもって年の納めとします。
新年は1月10日頃から再開の予定です。
では皆さま、良いお年を!

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コメント

種平、いいですね。三平門下は小噺と元気の良さだけかと思いきや、古典の上手もいます。
最近、興味をそそられ興奮するものが少なくなってしまいましたが、落語だけは例外です。
さて、今年も色々とご教示くださいましてありがとうございます。よいお年をお迎えください。

投稿: 福 | 2019/12/30 07:04

福さん
世の中人手不足なのに落語入門者は増え続けているので、今や成長産業になったということかも知れません。有望な新人も次々と現れていますから、未だ楽しみが続きそうです。

投稿: home-9 | 2019/12/30 08:53

なるほど、と唸る選択ですね。
扇遊とは今年縁がなく、来年こそと思っています。
本年も、いろいろと勉強させていただきました。
来年もよろしくお願いします。

投稿: 小言幸兵衛 | 2019/12/30 10:37

いつもいい高座を見ておられますね。
きのうはさん喬権太楼、二人のリレーの文七元結が素晴らしかったです。

投稿: 佐平次 | 2019/12/30 11:09

小言幸兵衛さん
今年は良い高座に恵まれました。来年もこうありたいと願っています。
こちらこそ宜しくお願いいたします。

投稿: home-9 | 2019/12/30 11:16

佐平次さん
志ん朝亡き後の落語界をけん引してきたのは、さん喬と権太楼の二人ですから、功績は大です。リレー落語とは豪華ですね。

投稿: home-9 | 2019/12/30 16:53

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