第489回「花形演芸会」
日時:2020年2月22日(土)13時
会場:国立演芸場
< 番組 >
前座・林家彦星『やかん(序)』
三遊亭美るく『半分垢』
入船亭小辰『いかけや』
まんじゅう大帝国『漫才』
鈴々舎馬るこ『八幡様とシロ』
―仲入り―
柳亭左龍『名刀捨丸』
坂本頼光『活動写真弁士』
桂雀太『八五郎坊主』
いよいよ上方落語協会が東京で定期的な落語会を開くが、近ごろ上方の若手の充実ぶりは目を瞠るものがある。パッと思いつくだけでも、たま、吉坊、佐ん吉、鉄瓶、福丸、そしてこの日のトリ雀太と、他にも知らない人が大勢いるかも。まさに綺羅星のごとくだ。
それぞれ噺が上手いが、加えて芸人として魅力がある。そこが大事なのだ。
美るく『半分垢』
初見。喋りのリズムがいい。
小辰『いかけや』
この人、いい感じで突き抜けてきた。いずれ師匠を超えるだろう。
まんじゅう大帝国『漫才』
初見。出だしは固さが見られてが、途中からエンジンが掛かってきた。落語家出身らしく落語ネタを採り入れてのトーク、「また夢になるといけない」のサゲも気が利いている。
馬るこ『八幡様とシロ』
タイトルの通り『元犬』の改作。神様が出てきて白犬を人間にしてやるが、元が犬だと知れたら取り消すという条件を付けられるというストーリー。力技で受けていた。
左龍『名刀捨丸』
木曽の山奥、美濃村の百姓の倅で治太郎、治三郎という兄弟がいる。兄の治太郎は子供の頃から手癖が悪く勘当になって村を出ていく。一方、弟の治三郎は親孝行で、江戸・日本橋の佐野屋という店に奉公に出る。懸命に働き20両という金が出来、治三郎は親を喜ばそうと美濃村に帰るが、途中で道に迷い盗賊に身ぐるみ剥がれてしまう。せめて獣除けにと錆だらけの刀を受け取り、再び江戸の佐野屋に戻る。佐野屋の主人がこの錆びた刀を見て名刀と気付き研ぎに出して整えると、武士が50両で買い上げてくれた。治三郎はその金を持ってまた盗賊の家を訪ねると病に伏せって女房の看病を受けていた。盗賊に半分の25両を渡し真人間になるよう説諭するうちに、正体が分かれた兄の治太郎だと分かる。一緒に美濃村に帰ろうと説得するが、治太郎は今までの罪を恥じ自害してしまう。治三郎は治太郎の女房と共に故郷の美濃村に帰り親に孝行を尽くした。女房は夫と彼の手にかかった人々の菩提を弔ったという。
講談の演目を落語に仕立てたと思われるが、治三郎を滑稽化することにより落語の世界に移し換えた。
進境著しい左龍の実力を示した一席。
頼光『活動写真弁士』
映画の影響で活弁が世間から認知されるようになったとか。
『豪勇ロイド』(1922年制作)の活弁で、バスター・キートンと並ぶ喜劇王ハロルド・ロイドを初めて観ることができた。
雀太『八五郎坊主』
桂雀太、2002年5月に桂雀三郎に入門。
主な受賞歴
2016年、NHK新人落語大賞
2019年、上方落語若手噺家グランプリ優勝
2019年、文化庁芸術祭賞新人賞
坊主になった八五郎、「法春(ほうしゅん)」という名前を貰う。「麻疹(はしか)も軽けりゃ、疱瘡(ほうそう)も軽い」という言葉に掛けて「はしかも軽けりゃ、ほうしゅんも軽い」と洒落をいってご満悦だが、すぐに名前を忘れるので紙に書いてもらう。
坊主になった姿を仲間に見せに行くといい、衣姿に着替え、言葉使いに気をつけるようにいわれ寺を出る。
友達に会って名前を訊かれるが思い出せないので、名前を書いてもらった紙を見せると、友達は「ほうばる」、春は春日神社の「かす」だから「ほかす」、法は御法(みのり)で「のり」とも読むから「のりかす」かと友達、皆違ってる。
やっと「ほうしゅん」かと友達が言うと、八五郎 「ほうしゅん、ほうしゅん、はしかも軽けりゃ、ほうしゅんも軽い」
友達「分かったか」
八五郎「わしの名前は、はしかだ」でサゲ。
上方のネタの中でも最も分けの分からぬネタと言える。
そこを雀太は全体のリズム感と、間に挟むクスグリで面白く聴かせていた。
この日の客、前座からとりまで全て「待ってました!」と掛け声を掛けるのがいたが、無粋だね。
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