「西のかい枝・東の兼好」(2020/2/15)
第31回にぎわい倶楽部「西のかい枝・東の兼好」
日時:2020年2月15日(土)14時
会場:横浜にぎわい座 芸能ホール
< 番組 >
前座・立川かしめ『子ほめ』
三遊亭兼好『手紙無筆』
桂かい枝『星野屋』
~仲入り~
桂かい枝『屁臭最中(へくさのさいちゅう)』
三遊亭兼好『佐々木政談』
前に新型コロナウイルスの感染防止のためにダイアモンド・プリンセス号が隔離されたことについて、まるで映画の『カサンドル・クロス』の様だと書いたが、結果はそれに近かった。感染が外部に拡がらぬように隔離したということは、内部の人同士の感染は避けられない。
客船が接岸している埠頭からさほど離れていないここ桜木町のにぎわい座だが、この日も2階席まで客が入っていた。
兼好『手紙無筆』
後席で50歳になって物覚えが悪くなったり間違えたりすることが多くなったと言っていたが、この高座では気付いただけでも3か所ほどミスがあった。兼好ファンが多かった客席はよく受けていたが、粗さが目立ちあまり良い出来とは思えなかった。
かい枝『星野屋』
妾が出てくる落語は多いが、この噺の妾は一風変わっている。通常は旦那と女が深い仲になり妾として囲うのだが、ここに出てくるお花は藤助という男の世話で妾になっている。想像するにプロの妾で、どうやら同居している母親もかつては同じ生業だったようだから母娘二代にわたる妾ということになる。
妻に先立たれた星野屋の主人がお花を後釜に据えようとしたとき、不安に思ったのはそのためで、そこで藤助が一計を案じ一芝居を打ったわけだ。
だから心中の約束を破ったことを主人に責められても、平気で騙して切り抜けるしぶとさがこの母娘にはあるのだ。
かい枝の高座は、お花の可愛さや軽薄さ、母親の海千山千の遣りてぶりが巧みに表現されていて良い出来だった。
このネタは東京でもしばしば演じられているが、やはりオリジナルの上方を舞台にした方が相応しい。
かい枝『屁臭最中』
今は廃れてしまった古典を掘り起こして黄泉返させる作業を落語作家の小佐田定雄らと共同で進めているそうで、この噺も明治27年の演目帳に残る作品を復活させたもの。
船場のいとはんが恋煩い、心配した女中がお守りをいとはんに渡すと誤って火鉢の中に落とし、中から神様が現れる。いとはんが出入りの小間物屋の男に思いを打ち明けたいというと、その男の前で放屁をしてその匂いがしているうちに告白すれば願いが叶うという。いとはんがニンニクを食べて空気をお腹の中に吸い込んでいると、小間物屋の男がやってきた。一発放し匂いが立ち込める中で打ち明けると、小間物屋の男の方もいとはんに惚れていたと言い、二人は手に手を取って・・・。そこの女中が顔を出して、「前からお二人はくさいと思ってました」に、「未だ臭いが残ってたん」でサゲ。
あまり品が良いとは言えないが、そこそこ面白かった。神様が南河内弁でしゃべるなどの工夫がされていた。
兼好『佐々木政談』
このネタは昔からある一休さんや各地の頓智話をまとめて1席の落語にしたもので、3代目松鶴の作と言われる。頓智の中身は子どもの昔話や童話などにも出てくるものが多く、そう目新しいものではない。
それを町奉行の謎かけを桶屋の倅が言い負かすという設定で聴かせる所がミソ。兼好の高座では、もうちょっと奉行の貫禄が欲しかったかな。
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