「彼らもまた、わが息子」(2020/2/13)
「彼らもまた、わが息子」(原題:All My Sons)
日時:2020年2月13日(木)18時30分
上演時間: 約2時間40分(休憩15分を含む)
会場:俳優座劇場
脚本:アーサー・ミラー
翻訳:水谷八也
演出:桐山知也
< キャスト >
吉見一豊:ジョー・ケラー(夫)
山本郁子:ケイト・ケラー(妻)
竪山隼太:クリス・ケラー(長男)
佐藤玲:アン・ディーヴァー(妹)
逢笠恵祐:ジョージ・ディーヴァー(兄)
斉藤淳:ジム・ベイリス(医師、夫)
上原奈美:スー・ベイリス(妻)
森永友基:フランク・リュベイ(夫)
多賀麻美:リディア・リュベイ(妻)
原作者アーサー・ミラーといえば『セールスマンの死』『るつぼ』で知られているが、こんな傑作があったとは。
1947年に初演され、第1回トニー賞を受賞したミラーが注目された最初の戯曲で、日本でも『みんな我が子』として上演されてきたようだ。今回は新訳脚本での上演となる。
【あらすじ】
ジョー・ケラーとケイト夫婦には二人の息子がいた。空軍パイロットだった次男ラリーは終戦後も行方が分からないまま3年がたつ。長男クリスは戦争で負傷するが復員してジョーの工場で働き、いずれは後を継ぐ予定でいる。
ラリーの恋人だったアンとの結婚を決めるが、ラリーの死を受け入れられない母ケイトは素直に祝福することができない。
一方、アンの父親は戦時中に空軍に戦闘機の部品を納入していたジョーの工場で働いていたが、不良品を出荷して21機の戦闘機が墜落する事故を引き起こした罪に問われる。裁判でジョーは無罪になるが、アンの父親は実刑判決を受け服役中である。
当初は周囲とギクシャクしていたジョーだったが、今では彼の家の庭に近所の人たちが集まりカードゲームに興ずるようになった。
ケラー一家とアンが団欒を迎えようとしていた時、初めて刑務所で父親と面会したアンの兄で弁護士のジョージが、突然ケラー家を訪れると連絡が入り、のどかな空気は一変する。父親の説明によれば、部品の欠陥をジョーに連絡したにもかかわらず出荷してしまい、その罪をなすりつけられたのだと言う。それを聞いたクリスはジョーを激しく詰問し、ジョーは全て生活のためお前の将来のためにしたことだと説得するが、やがて激しい言い争いになり・・・。
本作品は、大戦期を生き抜いた家族の物語だ。
ジョーは自分は無罪になったものの、部下だったアンの父親に全て罪をなすりつけていたことをずっと苦にしていた。
妻のケイトは、次男が戦争で死んだことをうすうす感じていながら、それを受け容れようとせず、、恋人だったアンが長男のクリスと結婚するのを許せない。
クリスは戦争で部下を全員死なせてしまったことに罪悪感を感じ続けている。
ジョージとアンの兄妹は、父親の罪を許せず今まで一度も父に面会したことも手紙を出すこともしてこなかった。
またアンは、長男の死の事実を知っていながらケラー家の人々に内緒にしてきた。
父親のジョーが何かというと息子のためだったと言うのに対し、クリスが「戦争で死んでいった若者たちもみな息子なんだよ」と諭す言葉が胸に刺さる。
今の時代だからこそ多くの方に観て欲しい舞台だ。
公演は15日まで。
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