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2020/03/02

「裁判官」の市民感覚

月刊誌「図書」3月号に、元裁判官で弁護士の原田國男著「物書き出世せず」という記事が掲載されている。これは司法の世界では若い裁判官が法律雑誌に論文などを発表すると出世できないと戒めたものらしい。そんな暇があるなら判決書の作成に専念せよという意味のようだ。しかし最近はそうした風潮も変わってきて、若い判事補が立派な学術論文を書いているとのこと。
論文だけでなく、SNSの時代にあって裁判官も一市民として発信することが許されるかという問題も生じてくる。

その点に関して記事では「岡田基一事件」を採り上げている。
事案は次のようなものだ。
ゴールデンレトリバーの飼い主が、雨のなか犬を公園に一晩中つなぎぱなしにしていた。翌日、雨で泥まみれになった犬を発見した人が、連絡先を書いた紙を残し自宅に連れ帰り、3か月近く飼育していた。
処が、犬の所在を知りながら3か月近く放置していた飼い主がから、犬の返還要求を受けたというものだ。
裁判所はこの請求を認めた。
これに対して関口高裁判事が、ツイートでこの飼い主に対して「あなた?この犬を捨てたんでしょ?3か月も放置しておきながら・・・」t書いたことが、飼い主の感情を傷つけ、裁判官の「品位を辱める行状」にあたるというもの。
最高裁は「戒告」の懲戒処分を決定した。

この件について著者は、岡田裁判官が以前にも、別件の女子高生殺人事件について遺族の気持ちを逆なでするようなツイートをしたことがあり、とても同情する気になれないとしている。
法曹界でもこの結論に対しては意見が分かれているようだ。
ただ言えることは、本件によって裁判官の社会への発言が完全に封じられることになったと著者は言う。
この最高裁の決定に異議を唱えたり是非を論じる裁判官は皆無であり、元々そのような自由はないのだと。

著者は、最高裁がこうした結論を出すのは十分に予測できていたが、興味は全員一致ではなく反対意見が出るかどうかだった。しかし反対意見は無く、3名の裁判官から補足意見があった。
それは、前記の遺族の気持ちを逆なでするようなツイートの方がより悪質で、それ自体が懲戒に値するとしたうえで、犬の件はいわば「last straw」として懲戒処分とするというもの。
註)「last straw」とは、ラクダが限界一杯に荷を背負っている時に、麦わら1本を加えただけで背骨が折れてしまうこと。限界を超えさせるものの例え。
この補足意見は、反対意見にもう一歩だったと著者は言う。

この最高裁の決定について賛成する側の意見として、木谷明元元裁判官の意見が引用されている。
「裁判官は午後5時過ぎても裁判官であって、普通の市民と全く同じ私人ということはできないと思います」
しかし、と著者は言う。
寅さんの映画で、司法試験受験の苦学生の口を通して、山田監督はこう言わせている。
「いやしくも、人の生命と自由と財産を守るべき裁判官と弁護士は、豊かな教養とのびやかな精神の持ち主でなければならない」
「豊かな教養とのびやかな精神」は裁判官にとって不可欠だ。なぜなら裁判は人を裁くからだ。いくら法律論に長けていても、これが無ければ良い裁判ができないと著者は締めくくっている。

ところで、先の犬の裁判の件ですが、愛犬家の方はどう思われますか?

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コメント

このゴールデンの飼い主さんは犬を飼うべき人ではないと確信するラブラドール2頭のボスです。犬と暮らすには彼らが命終わるまで平安に生活を保つ責任があります、そこを自覚できない人は犬と暮らすべきではない。そんな酷い飼い主でさえも彼らは群れのボスとして認め一緒にいることを願う、純真な犬たちが哀れでなりません。
最高裁を仰ぎみるヒラメ裁判官のイメージがあります。裁判官・検察官たちが市井の飲み屋に出てくるとは寡聞にして聞いたことがありません。話題の裁判官は下町の銭湯に通いジムで汗をかく人で、もし辞めたら演歌の流れる飲み屋のオヤジをやりたいとおっしゃっていたと憶えています。

Yackleさん
この犬の飼い主が所有権を放棄したわけではないので、元の持ち主に返還すべきという法律論は分かりますが、何かしっくりこない判決です。大岡越前守ならどういう裁定を下したでしょうか。

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