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2020/04/20

警察官の偽証は罪に問われない!【書評】「裁判の非情と人情」

原田國男「裁判の非情と人情」 (岩波新書2017/2/22初版)
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著者の原田國男は40年間司法の仕事にかかわり、その多くは刑事事件の裁判官を勤めた経歴を持つ。
本書は裁判所や裁判官の日常を、時にユーモラスに時に鋭く描かれ、私たちが日常知り得ない姿が紹介されていて興味深く読んだ。
元は月刊誌「世界」に連載されたもので、エッセー風の読みやすい文章になっている。
読後感が良いのは著者の人柄もあるだろうが、何より著者が裁判官という仕事に誇りと愛情を持っているからだ。
司法の現状を衝くときも大きく拳を振り上げることなく静かに語っている。
中身についていくつか印象に残っている問題を以下に紹介する。

著者が韓国に視察に行ったとき、韓国で2007年に偽証罪で有罪になった人数は1544人で、この事を大変恥じていた。同じ年の日本では4人だった。これだけ見ると日本国民は清廉潔白で偽証などしないと見られるが、果たしてそうだろうか。
日本の検察はよっぽど明らかにない限り、偽証の起訴は控えているようだ。著者が高裁の裁判官として、偽証で起訴されたのは3件4名だが、これさえ異常な数字だそうだ。
特に警察官の偽証は起訴しない。それなら裁判官が告発すればいいのだが、それもしない。かくして警察官の偽証は闇から闇へ葬られるのだ。
私見だが、こうした検察の体質がいま問題となっている森友学園の文書改ざんに対する不起訴にもつながっていると思う。つまり日本の検察は体制側の不法行為は罪に問わないのだ。

著者は高裁裁判官時代に、逆転無罪判決を20件以上出しているが、これはかなり特異なケースという。
無罪判判決を出すと世論から叩かれることもある。
無罪判決を続出させると出世に響く、これも残念ながら事実だと著者は書いている。
だからといって、無罪の人を有罪にする裁判官はいないと著者は断じている(そう信じたい)。

袴田事件、氷見事件、足利事件、東電OL殺害事件と冤罪事件が続いた。なかには別の真犯人が見つかった事件もあり、こうした事を繰り返させない様な努力が裁判所にも求められる筈だ。処が、そうした動きが全く無いそうだ。
どうやら司法権の独立というのを勘違いして解釈しているとしか思えない。
これまで、このような検討は「全国裁判官懇話会」を中心に行われ、自由で活発な議論が進められてきた。処が、最高裁がこの懇話会を敵視し排除した。  
例えば、有罪を多く出す裁判官が優秀だと評価されたり、無罪を出す裁判官はおかしな裁判官だと当局も、さらには国民も考えてきたのではないか。
こういう問題だけでも十分に議論すべきだろうと著者は主張している。

裁判はシロかクロかをはっきりさせる所ではなく、クロかそうでないかを明らかにする所だ。
裁判官は判決を言い渡す時に、被告の更生を常に頭に置いている。
少年犯罪で厳罰を求める世論があるが、裁判官は非行少年が立ち直ったケースも沢山見ているので、その視点が違う。
などなど、まだまだ本書には重要な問題が数多くとりあげらているので、興味のある方は是非お手に取ってご覧ください。

 

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コメント

読んでみましょう。
警察官の偽証はありえない、容疑者にとっては大変なハンデイですね。

佐平次さん
警察官の偽証は黙認され、裁判官が無罪判決を出すと出世に響く、こういうことが冤罪を産む下地になっているんです。

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