第24回「COREDO落語会」
日時:2020年12月13日(日)13時30分
会場:日本橋三井ホール
< 番組 >
『挨拶』山本益博
前座・春風亭与いち『道具屋』
春風亭一之輔『雛鍔』
桃月庵白酒『寝床』
~仲入り~
柳家さん喬『棒鱈』
柳家権太楼『鼠穴』
会場の日本橋三井ホールは初だったが、1-14列目まではフラットのフロアーに椅子を並べた座席になっているので演者が見えにくいし、座り心地も良くない。15列目以後は傾斜のある座席になっている。舞台には緞帳も引幕もない。ホールとしては立派かも知れないが落語の会場としては適しているとは言えない。
与いち『道具屋』
ちょっと荷が重たかったか。
一之輔『雛鍔』
最近このネタをかける事が多いようだ。一之輔は小生意気な子どもを演じるのが得意なのでニンなんだろう。お店の旦那と植木職人との対話もそれぞれの性格が出ていて好演。
本人によるとあまり悩んだり落ち込んだりしない性分とのことだが、それも才能があればこそだ。
白酒『寝床』
このネタの演じ方には、先代文楽に代表されるような義太夫好きな家主の人物像や心の動きを中心とする演り方と、志ん生や枝雀に代表されるような長屋の住人や奉公人の反応を中心とする演り方がある。白酒は後者の演じ方だ。この人らしい笑いの多い高座だったが、噺全体の流れにもう少しメリハリが欲しい。
さん喬『棒鱈』
山本益博の解説によれば、人情噺の多いさん喬が好きな滑稽噺がこのネタだとか。好みもあるだろうが、私はさん喬の演じる滑稽噺の方が好きだ。
権太楼『鼠穴』
権太楼が昨年ネタ下ろししたものだそうで、70を過ぎてなおこうした大ネタに挑戦する姿勢は大したものだ。
オリジナルに大幅に手を加えていた。
①田舎から江戸に出てきた竹次郎が、金を貯めて手放した田地田畑を取り戻したいと兄に言う。これは終盤でも繰り返される。
②兄から3文貰って途方に暮れていた竹次郎に親切な人が大家を紹介してくれる。この大家が竹次郎に物置を無料で貸してくれたので、銭を通す緡(さし)や草鞋、鍋敷きを作り少しずつ金が貯まってゆく。
③竹次郎の製品を売りたいという世話人が現れ、販路が一気に拡がる。
④世話人の紹介で跡取りがいなかった質屋を竹次郎が引き継ぐことになり、10年後には大店の主人になる。
以上の様に、オリジナルでは竹次郎の努力で成り上がってゆくと描かれているが、権太楼の演出は周囲の人たちの善意によって支えられながら成功してゆく。オリジナルでは省いていた所に手を加え、リアリティを付加した意図が感じられる。
この演じ方が親切と思う人と、諄いと思う人もあるだろうが、そこは好みの問題。
気が進まぬ竹次郎がお礼を兼ねて兄に再訪するのも、番頭のたっての勧めという風にしていた。
思案にくれた竹次郎が娘と一緒に心中しようとした所を助けられるという具合に変えていたので、オリジナルの娘が吉原に売られる場面は無い。
全体として、『鼠穴権太楼バージョン』になっていた。
通常より更に20分ほど長く演じながら観客を引っ張っていった権太楼の力量には感心したが、ちょいと長すぎた感もあるかな。
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