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2021/01/30

自国の負の歴史と向きあう映画(4)『国際市場で逢いましょう』

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『国際市場で逢いましょう』2014年制作、韓国映画
監督:ユン・ジェギュン
脚本:ユン・ジェギュン
<主なキャスト>
ユン・ドクス:ファン・ジョンミン
オ・ヨンジャ:キム・ユンジン
チョン・ダルグ:オ・ダルス
朝鮮戦争中の1950年、興南(現在の北朝鮮・咸鏡南道咸興市)から脱出しようとしていたドクスとその一家は、戦乱の最中で父と末の妹と離れ離れになるが、長男であるドクスは父から「お前が家長になるんだ。家長はどんな時でも家族が優先だ」と家族を任される。この時ドクスは父と「国際市場で逢う」ことを約束する。釜山へと渡ったドクスら一家は、国際市場にある叔母の店(コップンの店)で働くようになる。
やがて青年になり家計を支えるようになったドクスだったが、弟の大学進学資金を稼ぐために旧友のダルグと共に炭鉱作業員として西ドイツに出稼ぎに出る。想像を絶する辛い作業の中、ガス爆発事故のために坑内に閉じ込められたドクスとダルグだったが、ドイツ人の監督の制止を振り切って仲間が助け出す。病院で治療を受けたドクスは、ここで韓国から看護師として出稼ぎにきていたヨンジャと知り合い、愛しあうようになる。
1966年、ドクスは帰国をはたし,遅れて帰国したヨンジャと再開し二人は結婚する。
頼っていた叔母が亡くなり店を手放す状況になった伊勢を、ドクスが店を買い取ることにしてその費用捻出のため、1974年ベトナム戦争の技術兵としてベトナムに渡る。テロや戦闘に巻き込まれるても無事に脱出するが、川に落ちた現地の少女を助けたドクスは銃弾で足を負傷する。
1975年ベトナム戦争終結、ドクスは帰国し家族との暮らしが始まる。
1983年テレビ局主催の朝鮮戦争で離れ離れになった家族を捜索するテレビにドクスは出演し、父と妹を探す。その中でアメリカ人の里子として引き取られていた妹が見つかり涙の再開を果たすが、ついに父親の消息は不明。
父と国際市場で再開することが叶わなかったドクスは、「コップンの店」を売る覚悟を決めヨンジャに告げる。

本作品の特長は、ドクスの成長過程がそのまま韓国の現代史と重なっていることだ。だから「自国の負の歴史と向きあう」という趣旨とは少し異なる内容と言える。
1945年日本の敗戦と共に解放された朝鮮だが、1950年に始まった朝鮮戦争で民族が分断され、国家も北と南に分かれる。その過程でドクスの一族の様に家族同士、親類同士が分かれ分かれになって消息すら不明の悲劇が続く。今も南北統一の悲願はここに生まれる。
かつて韓国へ観光に行った時、現地ガイドが統一を切々と訴えていたのを思い出す。
戦争で国土が荒廃した韓国は、軍事独裁政権の下で人々は苦しい生活を送る。ドクスの様に家族を養うために海外に出稼ぎに行かざるを得ない人たちもいた。
私が初めてエジプトに行った時1970年代、当時は途中でトランジットがあった。バンコク、デリー各空港で機内の清掃をする人がいずれも韓国の人だった。エジプトの着いてからカイロに一軒しかないというカラオケ店に行ったら韓国人のグループがいて、「釜山港に帰れ」という曲を韓国語で繰り返し合唱していた。当時のカラオケには日本語の歌詞しかなく、歌えるのはこの曲しか無かったのだ。訊いてみると、カイロの建設現場に出稼ぎに来ているという。先の機内清掃といい、韓国の人々のエネルギッシュさに感心したが、それは国内での貧困の裏返しでもあったのだろう。
ドクスたちのドイツでの炭鉱労働は過酷なもので、監督のドイツ人の冷たさとあいまって当時の西ドイツがこうした低賃金労働者を使って経済発展していたことが伺われる。
ドクスたちはベトナム戦争でも生命の危険にさらされ、ドクスは足を負傷してしまう。ベトコンに追われて川に落ちた少女を救う場面は、朝鮮戦争の際の自分たちの姿を思い起こすのだ。
やがて経済発展した韓国では、ドクスの「コップンの店」の様な小規模の商店は再開発の波に吞まれて消えてゆくことになる。
本作品で印象に残るのは韓国の人たちの家族愛だ。やはり儒教の影響だろうか、家族のためには身を犠牲にすることに躊躇しない。これは別の映画で見たのだが、両親を失った兄妹が曽祖父の兄弟の家に世話になる場面があったが、日本では考えられないことだ。ただ家族や一族の絆が強すぎることは、階層社会を生み出したり、コネ社会に陥ることがある。
作品に対する不満といえば、視点が現状肯定であることだ。例えば、ベトナム戦争の場面ではベトコンが悪者風に描かれている。確かに韓国軍に対しては敵ではあるが、元々韓国がなぜベトナム戦争に参戦せねばならなかったのかという問題が無視されている。ドクスたちがこれに何も疑問を感じないのはむしろ不自然に思えるのだ。
そうした欠点を持ちながらも、韓国人の苦難の歴史を端的に描いているのが本作品の優れた所だろう。

2021/01/27

自国の負の歴史と向きあう映画(3)『軍中楽園』

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『軍中楽園』2014年製作 台湾映画
監督・脚本:ニウ・チェンザー
主演:イーサン・ルアン、レジーナ・ワン
1969年、中国と台湾の中間に位置する金門島。両国間が緊迫した状況の中、その島は攻防の最前線として砲撃が降り注いでいた。その島のエリート部隊に配属された台湾青年兵ルオ・バオタイは、カナヅチで泳げないことが判明し、831部隊と呼ばれる小部隊に転属となる。そこはさまざまな事情を抱えた女性たちが働く「軍中楽園」と呼ばれる娼館を管理する部隊だった。
どこか影のある女、ニーニーと出会い、奇妙な友情を育むバオタイ。男たちに愛を囁く小悪魔アジャオとの未来を夢見る一途な大陸出身の老兵ラオジャン。過酷な現実に打ちのめされた若き兵士ホワシンは空虚な愛に逃避する。ある日、バオタイのもとに純潔を誓った婚約者から別れの手紙が届く。その悲しみを受け止めてくれたニーニーにやがて惹かれていくバオタイだったが、彼女が許されぬ「罪」を背負っていると知るが…。

中国の内戦に敗れた蒋介石、国民党は台湾に逃亡し、再び中国への上陸を目指し大陸反抗作戦を展開する。その最前線が金門島で、台湾に徴兵制をしいて若者たちを送り込む。しかし圧倒的な兵力の差がありその企ては失敗する。映画でも戦闘シーンがあるが、いかにもノンビリとしてもので、あまり戦意を感じない。
この作品の特長は戦争映画でありながら、軍の娼館(慰安所)を中心に描いたものだ。軍隊に娼館を設けることは第一次世界大戦以来、各国で行われてきた。しかし公にしたくない事情から、表沙汰にはしてこなかった。
それを敢えて物語の中心に持ってきたことにこの映画の意義がある。徴兵されながら娼館の世話係に配置された兵士の屈折した思いや、自らが犯した罪を軽くして貰うために娼婦になった女性や、この場から何とか逃れたいともがく女性の姿が描かれている。
彼女たちの愛唱歌がモンローの『帰らざる河』だったり、前線の慰問に歌手のテレサ・テンが来たりと、映画の背景が遠い昔の話ではないことが分かる。
エンディングで、台湾軍の娼館が廃止されたのは1990年だと知らされる。つい最近の出来事だったのだ。

韓国のいわゆる従軍慰安婦問題をきっかけに、それぞれの国での調査が行われるようになり、資料や論文が発表されつつある。
例えば、従軍慰安婦問題にかかわったドイツの研究者であるレギーナ・ミュールホイザーは故国ドイツでの資料を調査し『戦場の性』(姫岡とし子監訳、2015年初版、岩波書店)という本を上梓している。この本では戦時の兵士と女性との係りを
①性暴力
②取引としての性
③合意の上での関係
に分類している。ただこの分類は厳密なものではなく、境界線が不明確なケースも多いという。
本書で特筆すべきは、性暴力が従来はナチスの仕業とされてきたが、実際には一般のドイツ兵士によっても起これていて、その損害賠償にドイツ政府は積極的ではないと指摘していることだ。連合軍もまた占領地各地で性暴力を引き起こしていることも記されている。
今後、こうした研究が各国で進むことを期待したい。

2021/01/25

自国の負の歴史と向きあう映画(2)『誰でもない女』

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『誰でもない女』2012年制作 ドイツ映画
監督・脚本:ゲオルク・マース
主演:ユリアーネ・ケーラー
ドイツ占領下のノルウェーでドイツ兵とノルウェー人女性の間に生まれたカトリーネは、出生後に母親から引き離されて旧東ドイツの施設で育つ。成人後に命がけで亡命し、母親との再会を果たした彼女は、現在はノルウェーで母親と夫、娘や孫に囲まれて平穏な日々を送っていた。
ベルリンの壁が崩壊した1990年、カトリーネと母親の元に弁護士が訪ねてくる。かつてドイツ兵の子を産んだ女性を強制収容所送りにしたノルウェー政府と、産まれた子供を母親から引き離してドイツに送り施設に収容したドイツ政府に対して訴訟を起こすため、カトリーヌと母親2人の証言が欲しいという。しかしカトリーネは証言を拒否してドイツへと旅立ち、自分の過去の足跡を消すような不審な行動に出る。弁護士がさらに調査を進めると、本物のカトリーヌは死亡していて、生き残った少女がカトリーヌに成りすましてノルウェーの家族として暮らしていたことが分かる。彼女は生き残ることと引き換えに東独のスパイにさせられノルウェーの情報を東独に送る任務についていたのだ。苦しみの末、彼女は全ての事実を証言する決意を固めるが・・・。

第2次世界大戦時のナチスドイツは欧州各国を侵略するが、占領下でドイツ兵と現地女性の間に産まれた子どものうち、金髪碧眼の子どもだけドイツに送ったドイツ民族の人口増加計画「レーベンスボルン(生命の泉)」が、この映画の背景だ。しかし送られた子どもの多くは死亡してしまい、生き残った子どももスパイなどに仕立てられていた。
これだけでも非人道的なことだが、加えてノルウェー政府はそうした母親たちを2年間強制収容所に送っていたのだ。恐らくはドイツ人の子どもを産んだ事への懲罰だったのだろう。
戦争というのは侵略したドイツのみならず、侵略されたノルウェーまでも狂気に追いやっていたことになる。
映画ではドイツ・ノルウェー両政府に対する訴訟は不備に終わることを示唆しているが、戦争の傷跡は現在も癒えていないことをこの作品は示している。

2021/01/23

Discomfort with media coverage of the new U.S. Biden administration

Biden, a Democrat, has been inaugurated as the new president of the United States, and the headlines in Japanese newspapers are full of articles welcoming him, such as "From America First to International Cooperation. It may be a congratulatory article, but it is a strange expression considering the fact that the U.S. has always been "America First" in the postwar era.
If a government was inconvenient to the U.S., whether it was in South America, the Middle East, or Asia, the U.S. would sometimes go to war and sometimes overthrow the government through intrigue. This was allowed to happen because the U.S. was recognized as an exceptional and special country in the world. The U.S. had an overwhelming advantage in all aspects, including economics, politics, and military affairs, and there was no country that could stand in its way. America's "international cooperation" was based on the premise that it was led by the United States.
However, with the rise of China and other factors, the relative position of the U.S. has declined and it is no longer in a position of overwhelming superiority.
The Trump administration has honestly acknowledged this fact and has struggled to keep its head above water. The fact that he has called for "America First" is the flip side of the coin.
Trump's only achievement is to show the world that the US has become a normal country just like any other.
While we were still in the midst of the presidential election, a Middle Eastern journalist told me in an interview that the U.S. policy in the Middle East would not change no matter who was in charge.
The same is true for Japan, whose policy toward Japan of using Japan as a base to contain China will remain unchanged even if the administration is replaced.
We should know that once the honeymoon is over, a harsh reality awaits us.

米国バイデン新政権への報道に違和感

米国の新大統領に民主党のバイデンが就任したが、新聞の見出しは「米国第一主義から国際協調へ」とあり、歓迎する記事で溢れている。御祝儀記事といってしまえばそれまでだが、戦後アメリカは常に「米国第一主義」であった事実を考えればおかしな表現だ。
米国にとって不都合な政府であれば、南米だろうと中東だろうとアジアであろうと、時には戦争をしかけ、時には謀略で政権を転覆させてきたのがかの国の歴史だ。それが許されたのはアメリカが世界で例外の国、特別の国という認識があったからだ。経済、政治、軍事など全ての面で圧倒的な優位に立っていたから、それを阻む国はなかった。アメリカの「国際協調」とは、米国主導であることが前提だ。
しかし、中国の台頭などでアメリカの相対的地位は下がって、今や圧倒的優位な立場とは言えなくなっている。
トランプ政権はその事実を素直に認め、なりふり構わずあがいて見せた。「アメリカ第一主義」を連呼したのは、その裏返しだ。
トランプの唯一の功績と言えるのは、アメリカも普通の国になってしまったのを世界に示した事だろう。
まだ大統領選挙の最中にある中東の記者がインタビューに「米国の中東政策は誰がなっても変わらない」と答えていた。
これは日本についても同じで、政権が代わっても日本を中国封じ込めの拠点とするという対日政策は今後も変わらない。
蜜月が終われば、厳しい現実が待っていることを我々は知るべきだ。

2021/01/21

マスク嫌い

今日の新聞によれば、マスクは不織布のものに限り、「布やウレタンのマスクの場合はお断り」という所があるという。何だかやかましい事になってきたね。
先日は大学入学共通テストで、監督者の注意に従わずに鼻を出したままマスクを着け続けた受験生1人の成績を無効にしたとの報道があった。ルールだから仕方ないだろうが、鼻を出してマスクしている人はみかける。某政党の幹事長の会見では、いつも鼻を出しているが誰も注意しないようだ。
マスクを拒否したら飛行機から降ろされ逮捕された人もいた。

私はマスクが嫌いだ。だから過去にマスクをしたことがない。
①マスクを装着しているだけで不快になる
②眼鏡が曇って危険
③のぼせて頭がボーっとしてくる
マスクに限らず、帽子もマフラーも不快になるので着けたことがない。このご時世だから我慢してマスクはしているが、本当は嫌で嫌でしょうがない。
私の様な体質の者がマスクを着けて受験するなら、きっと試験に集中できなくなるだろう。
コロナの感染対策はこれから長期戦になるだろうから、もう少し寛容になっても良いのではなかろうか。

2021/01/20

自国の負の歴史と向きあう映画(1)『ブラックブック』

巣ごもり状態なので、しばらく遠ざかっていた映画(ビデオ)をせっせと観ている。昨年の12月から100本ほど観ただろうか。戦前の名画から最近になって公開されたものまで、それぞれ面白かった(駄作もあったが)。知らなかった事も多く、例えば日本の植民地下にあった台湾で反日同盟という組織があったことや、平穏な暮らしをしていたアフリカの国でダイヤが産出したことが知れた途端に内戦が起きるといった過程がよく分かった。
その中で、自国の負の歴史と向きあうような映画作品が何本かあり印象に残ったので紹介する。
Black
『ブラックブック』2006年制作
ポール・バーホーベン監督が母国オランダに戻って製作した作品で、出演はカリス・ファン・ハウテンとセバスチャン・コッホなど。
1944年、ナチス・ドイツ占領下のオランダ。ユダヤ人の女性歌手ラヘルは、オランダ南部への逃亡中に、何者かの裏切りによって家族をドイツ兵に殺されてしまう。復讐を胸に誓った彼女は、名前をエリスと変えてレジスタンスに身を投じる。彼女はスパイとしてドイツ将校ムンツェに近づき、彼の愛人になりナチスの動きやスパイが誰かといった情報を仲間に伝える。ムンツェとレジスタンスの間でお互い殺し合いをやめようと合意しかけるが、別の将校の思惑でとん挫しエリスも捕らえられてしまう。連合国軍がオランダに入りナチスが敗退するが、エリスはナチスの協力者としてオランダ市民から糾弾されるが、やがて誤解も解けてイスラエルに渡り余生をすごす。

欧州各国を占領したナチスドイツは、現地でのユダヤ人狩りとレジスタンスの動きを封じ込めるためにスパイを作る。この作品ではナチスとレジスタンスと、その間の協力者、スパイの物語だ。スパイはユダヤ人やレジスタンスの同志とみせかけて潜入しているので、なかなか見抜けない。
一方、ナチスの側も支配地の犠牲者をできるだけ抑えようとする幹部もいれば、私腹を肥やすために金持ちのユダヤ人を狙って金品を強奪する者もいる。
この作品では、ナチス=悪、オランダ人=善、という構図にしていない。
オランダ人に寛容だったナチスの将校も最後は殺されてしまい、単純な勧善懲悪のストーリーにしていない。
ナチスの協力者でも連合国軍が入ってきた途端に転身してしまう者もいれば、エリスの様に市民から糾弾される者もいる。
この映画で描かれている光景は、恐らく欧州各国でも展開されていただろう。
米軍占領下の日本でも事情は同じで、米軍の協力者となって活動した日本人も少なからずいた。その中から総理大臣まで昇りつめた者も(ついでに孫も総理)出たのはご存知の通りだ。残念ながら日本の映画界では、この問題をテーマにした作品は皆無だろう。

2021/01/18

「風化」は人間の知恵

「風化」とは「記憶や印象が月日とともに薄れていくこと」だが、一般に否定的な意味で使われることが多い。「戦争、災害、事故、事件などの記憶が風化されてゆく」と言った文脈で、風化は防がねばならないという主張がなされる。
本当に「風化」はいけない事だろうか。
人間誰しも一生のうちで何度も、死ぬほど辛いこと悲しいことに出会う。その記憶をそのまま何時までも引きずっていたら、精神が壊れてしまうだろう。私たちはそうした記憶を少しずつ風化させることにより、精神のバランスを保っているではなかろうか。
大事なことは風化ではなく、起きてしまったことから導かれる教訓を残し広めることだ。

2021/01/15

「トランプのSNS停止」に異議あり

米国史上最悪の大統領トランプが退任する日が近づいた。在任中はデマをまき散らし、選挙の負けを認めず、支持者を扇動して議会へ乱入させるという暴挙まで仕出かした。本人は愛国者気取りだろうが、実際には米国の権威を貶めている。史上初の2度目の弾劾訴追も当然だ。
ツイッターは事件を受け、暴力を扇動するリスクがあるとしてトランプ大統領のアカウントを永久停止。フェイスブックも、少なくとも政権移行が終了するまでアカウントを凍結する方針とし、アップルやアマゾン・ドット・コムは、右派が集まる交流サイト「パーラー」をアプリストアやウェブサービスから削除した。
こうした措置に賛成する人も多いようだが、世界的ソーシャルメディア企業が特定の言論を締め出すことには異議がある。
どういう基準で排除するかが明らかでなければ、こうした措置が恣意的に行われる危険性があるからだ。それがどれだけ有害であるかは、中国やロシアのソーシャルメディアへの干渉が明白に示している。
今回の米国のソーシャルメディアの対応の背景には、政権が民主党に移行するという事があるとされている。もし共和党が勝利していたら、果たして同じ措置を取っただろうか。
言論の自由は命の次に大切なことだ。その制限にはよほど慎重であらねばならない。

2021/01/12

国家に翻弄された女優「原節子」

Hara

月刊誌「選択」1月号に「婚姻の自由なき国家的女優」として原節子が紹介されている。原については当ブログでも以前に記事にしたことがあるが、95歳で世を去ってもなお注目され続けている。
原節子の特長は上の写真にあるように日本人離れした容貌に気品が備わっていることだ。この特徴が彼女の女優としての運命を決定づけた。
当初はその高貴な美貌が大衆受けせず、人気が上がらなかった。その彼女に対する世間の評価が一変したのは、戦前に日独合作映画の主演に抜擢されたからだ。
当時、両国は「日独防共協定」の締結を目指し水面下で交渉中だった。その障害になる要素の一つに、日本と組むことに対するドイツ国民感情があった。日本の知名度が低く、もともと黄色人種への蔑視が根強かったのだ。
そうしたイメージを変えさせるために、ゲッペレス宣伝相が映画を利用しようとした。最も重視したのは、日本のイメージを好転させるような女優選びだった。ドイツから派遣されたアーノルド・ファンク監督が見い出したのが原節子で、無名の新人女優だった原の抜擢に反対する映画関係者に対してファンク監督は「彼女しか美しく見えない」と言って押し切った。
かくして「日独防共協定」の補完の役割を負った映画『新しき土』が製作され、原は知性と気品に溢れる娘で結婚して満州に渡り開墾に励むヒロインを演じた。
映画は日独両国で大ヒットし、原はドイツ各地で大歓迎を受けた。このニュースが伝わると日本国民も歓喜した。
この映画での原のヒロイン像は、その後の役を決定づけた。戦時中は戦意高揚映画で軍人の娘や銃後をを守る夫人を演じた。
そして敗戦。
戦後は一転して映画界はGHQの管理下に置かれ、民主主義を啓蒙する映画を作る。日本の封建的な家制度を解体し、恋愛結婚を賛美するような作品が奨励される。
その線に沿って、原節子も新時代に相応しいヒロインを演じ続けた。いつの時代にあっても原節子は日本の正しさを示す役割を負い、「清く正しく美しい」ヒロインを演じた。
原自身はこうした作品にしか出して貰えなかったことと、自分が演じたい作品とのギャップに悩み不満を持っていた。
ある時期、無名の助監督との恋におち女優をやめて結婚しようかと思ったが、映画会社がその助監督を追放してしまい、原は自分には恋をする自由がないのだ悟って、生涯を独身で通した。
実際の原節子はスモーカーでビール好き、得たギャラで不動産投資に励み、それで引退後も不自由なく暮らしていけた。
下世話な余談だが、戦後に原がマッカーサーのお相手をさせられたという噂が流れた。根も葉もないフェイクだが、ここでも原が日本という国を象徴する存在だったことが窺われる。

 

2021/01/10

憂鬱な年明け

予想通りと言おうか、予想を超えてと言おうか、コロナの感染が激増した年明けとなってしまった。
原因は菅政権の失政だ。大方の批判を無視して”GO TO”を強行し、12月に感染が拡がっても止めず、今日の事態を招いた。会見では目が泳ぎ官僚の書いたペーパーを読むだけで質疑応答もまともに出来ない人間がトップにいるわけで、この非常時に実に心許ない。我々は言ってみれば、免許を持たない船長の乗客のようなものだ。
東京に関していえば、菅首相と小池都知事が責任のなすり合いを続けているうちに事態が深刻化してしまった。
そんな連中からやれ行動規制だの自粛だのと言われたくないが、事ここに至っては自分たちの身は自分たちで守るしかなかろう。
7日に国立演芸場の正月興行に行く予定だったが、家族の厳しい視線を浴びて断念した。大相撲初場所のチケットも取ってあるが、これも行けそうにない。
やれやれ、今年も暫くは巣ごもりかと、憂鬱な気分になる。

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