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2021/02/28

「無理心中」の用語を使うな

メディアで「無理心中」という用語を見るたびに腹が立つ。
例えば次の様なニュースだ。

「鹿児島市ホテルで幼児2人の遺体 無理心中図ったか」
鹿児島市のホテルで26日夜、幼児2人の遺体が見つかり、父親とみられる男が4階から飛び降りてけがをしました。ホテルの部屋で見つかった遺書には、3人での自殺をほのめかす内容が書かれていて、警察は男が無理心中を図ろうとしていたとみて捜査しています。
現場のホテルには27日、午後から捜査員が入り、およそ4時間かけて現場検証が行われました。警察によりますと、26日午後7時すぎ、鹿児島市のホテルの一室で、幼い子ども2人が死んでいるのを捜査員が見つけました。この時、父親とみられる男が4階のベランダから飛び降りて重傷となっていて、病院で治療を受けています。
この前日、福岡県飯塚市の団地の一室で9歳の男の子が遺体で見つかり、警察は41歳の父親と、2歳の娘、3歳の息子の行方を捜していました。その後、警察は3人が鹿児島市内のホテルに滞在しているのを特定しましたが、部屋で見つかった幼児2人の遺体に傷があったことから、警察は殺人容疑事件として捜査しています。
3人は、福岡から宮崎を経由して鹿児島に来たとみられ、捜査関係者によりますと、宮崎県の串間市で乗り捨てられたレンタカーからは未使用の練炭が見つかったということです。
ホテルの室内では3人一緒での自殺をほのめかす走り書きの遺書も見つかっていて、警察は、男が無理心中を図ろうとしていたとみて、けがの回復を待って詳しいいきさつなどを聴く方針です。また、遺体で見つかった子ども2人の身元や死因についても調べを進めています。
(MBC南日本放送)

未だ身元確認が済んでいないので確定的なことは言えないが、前後の状況からして、この父親が福岡の自宅で長男を、鹿児島のホテルで2歳の娘と3歳の息子を殺害し、自身は自殺を図ったものと思われる。又この父親は長男に対して身体的虐待を繰り返していたようだ(東京新聞)。
こういう事件を「無理心中」と称するメディアの感覚が分からぬ。一方的に殺しておいて何が無理心中か。
心中の本来の意味は「まごころをつくすこと。相愛の男女が、合意のうえで一緒に死ぬこと。」であり、これに「無理」を付けるのは元々無理があるのだ。
メディアで「無理心中」という用語が使われのは、親子では親が子を殺す場合が全てであり、男女では男が女を殺す場合が大半だ。
つまり、子は親の、女は男の所有物として扱うから、相手の人格や意思を無視して「心中」という言葉を平気で使っている。
こんな前時代的な感覚を未だに持ち続けているメディア、森喜朗を笑えない。

2021/02/27

落語議連が政府に支援を要請

超党派の「落語を楽しみ、学ぶ国会議員の会(落語議連)」が2月24日、加藤官房長官と萩生田文科相に、コロナウイルス禍で寄席の中止や減収が続く落語界の存続に向けて、給付制度拡充などの支援策を要望した。
新型コロナ感染拡大で寄席の昨年の売り上げは前年の4分の1に落ち込んでいて、都内でも鈴本演芸場が3月まで休業に追い込まれている。
議連の申し入れ書では、寄席文化の存続が困難な状況になっているとして、「我が国特有の文化芸術である『落語』『寄席』の灯が消えてしまうことのないよう」具体的な支援策を要請した。
同行した落語家の三笑亭夢太朗師は「寄席がなくなると文化の発信基地がなくなります」と窮状を訴え、議連のメンバーの共産党の小池晃議員は「『寄席』は日本の宝であり、コロナ禍でこそ『笑い』が必要です」と支援を求めた。
加藤官房長官らは、落語議連の要請を受け止め、支援対象要件の拡大などを表明した。
早急に支援が実行されることを切望する。

2021/02/26

【書評】山本おさむ『赤狩り①-⑧』

Red

山本おさむ『赤狩り①-⑧』(小学館 ①2018/5/2初版~)

コミック本を購入したのは初体験だったが、これが面白い。傑作!力作!
本作品は雑誌「ビッグコミック」に2017年~2020年にかけて連載されたものを単行本にしたもので、最終の⑨巻は未発売だ。こんな題材のコミックを雑誌に連載した編集者の眼力に驚かされる。本作は「事実にもとずいたフィクション」とされているが、②巻以後の巻末にどれが真実でどれがフィクションかが解説されている。過去の著作や研究書の成果が織り込まれており、フィクションも全体に無理なく構成されている。
「赤狩り」については当ブログの”自国の負の歴史と向きあう映画(7)『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』”で概要を記しているが、従来は主に被害を受けた側の立場から書かれたものが多い。
それに対して本書は赤狩りを「歴史の流れ」の中で捉えているのが特長だ。即ち、赤狩りをハリウッドの問題に限定せず、アメリカ社会全体を包み込む大きな流れとして描いている。本書が「ハリウッド・テン」から始まり、ケネディ暗殺まで書かれているのはそのためだ。
著者は「赤狩り」の時代背景をアメリカの原爆開発と、その資料を盗み出してソ連が原爆を開発し、米ソの冷戦が引き金になったとしている。次いで起きた朝鮮戦争はアメリカとソ連の代理戦争の様相を呈し、アメリカ国内での反共意識が高まった。更にキューバの社会主義化がこれに輪をかけた。
この機に乗じて米国のFBI、CIA、警察は一体となって、民主主義や権利、平等を主張する者たちを「赤」として弾圧を行った。この流れは現在も続いており、最近での「トランプ現象」もその一つとすれば理解しやすい。

本書のもう一つの特長は、赤狩りのターゲットとなった側の弱点をついていることだ。1940年代にアメリカでは共産主義への憧れからアメリカ共産党に入党する者が増え、一時は党員が10万人に達していた。処が、アメリカ共産党はソ連(=スターリン)の影響力が強く、文化を政治の下に置くような教条主義的な指導が行われていた。加えてソ連国内での文化人への弾圧が断片的に(全面的にオープンになるのはフルシチョフによるスターリン批判以後になる)伝わると急速に共産主義に対する反発が拡がり、党員も数千人にまで落ち込む。ハリウッドで赤狩りされた人も既に離党していた人が多かった。またソ連は多数のスパイを米国内に送り込んでいたが、アメリカ共産党にはそうした情報を一切伝えていなかった事も、党員の不信感につながった。
そのようにターゲットとされた側の弱点も、赤狩りを阻止できなかった要因としている。但し、作者はだからと言って赤狩りを正当化することは許されないという立場だ。
トランボたちの不屈の精神やそれを支えた家族と、そういう中でも手を差し伸べてきた映画人たちの姿が描かれ、やがて名誉回復するまでの闘いは感動的だ。笑い、時に涙しながら読了した。

 

2021/02/23

愛知県知事リコール不正の闇

愛知県知事リコール不正について、東海テレビ(2012/2/22)が続報を伝えている。
それによると、高須院長が主導し、河村名古屋市長が支援した大村知事のリコール運動では県選管に提出された署名の8割以上が無効とされ、アルバイトが署名を大量に偽造した疑惑が浮上した。
署名簿に愛知県民の名前や住所を書き写すアルバイトをしたという福岡県久留米市の男性は、番組中で次のように証言している。
去年10月下旬、人材紹介会社を通じて佐賀市内の貸会議室に集められ、多くのアルバイトが用意された名簿の名前などをリコール用の署名簿に書き写す作業をしたという。
「大ホールみたいなのがあって、折り畳みの机がダーッと並んでいて、名簿の束がドサドサッと置いてあって、転記する用の名簿があって、そこに名簿を見ながら書き写すようにと指示がありました」
「若い方も男性も女性もいましたし、女子大生くらいの方も。上は50代60代のおじいちゃんおばあちゃんもいました。ぎゅうぎゅう詰めで100人近く。人材派遣会社から募集がきて、それに応募するような形で参加しました」
関係者によると去年10月、リコール運動を支援していた名古屋の広告関連会社の下請け会社から、さらに人材紹介会社を通じて「署名偽造」のアルバイトが募集されたという。その際、団体の事務局から広告関連会社に「人を集めてほしい」と依頼があり、現金数百万円が支払われたとみられている。
発注書の日付は10月中旬。署名集めの期限は、大部分の市町村で去年10月25日まで。最終盤を迎えても署名が必要な数に達しないとわかり、偽造に動いた可能性がある。
また関係者によると、発注書には事務局幹部のものとみられる署名と捺印があり、地方自治法違反の疑いで捜査を進めている愛知県警は、すでにこの発注書について任意で提出を受けたとみられている。

整理すれば流れは次のようになる。
「リコールの会」事務局広告関連会社(下請け企業)人材派遣会社
ここでは次の点に注目すべきだ。
①数百万円といわれる金の流れ 資金源と支出を誰が決済していたか?
②不正に使われた名簿を、どこからどの様に入手したのか?
①の金の流れは、事務局からの発注書を調べれば分かってくる。誰が決済したかは事務局長かそれ以上の立場の人間ということになろう。
②の名簿だが、最も可能性が高いのは首長や議員の後援会名簿が横流しされたのではなかろうか。例えば、名古屋市内であれば市長や市議の後援会名簿が利用されたとか。この場合、名簿の使用を誰が許可したかが問題となる。
但し、以上の件は佐賀県での不正のケースであり、他を含めた全体の構図は今後の捜査に委ねられている。

「リコールの会」の責任者らの言い分は次の通り。
高須院長
「絶対にこんなケチくさいことを、僕がやるわけがないです。すごく細かい話ですから、嫌になるくらいケチくさい話で、こんな貧乏ったらしいことをするわけがないです。もしやるんだったら、もっと堂々と大掛かりにやります。みんながあっと驚くような。ほんっとうに貧乏くさい!自分では一生懸命働いて、今社会還元やってる最中だから、現金は持ってますよ。でもそんなことにお金使うために社会還元やっているわけじゃないのに、僕の言葉を聞いていない庶民は、絶対にコイツだって思いますよ。初めからストーリーができていて、そこにはめこまれていることにすごく怒りを覚えます」
河村名古屋市長
「名簿の偽造なんていうのはね、想像のはるかかなたというか、全くありえないことなんですよ」
田中事務局長
「佐賀の、下請け会社うんぬんと言われてるところについて面識は全くありません」
いずれも直接的な関与は否定している。高須の相変わらずの被害者ズラは気になるが。
一方、事務局側からアルバイトの発注を受けたとされる広告関連会社の社長は、東海テレビの取材に対し「捜査に支障があり詳しく答えられない」とした上で、
「これは闇は深いと思いますよ…」
と答えている。
いずれにせよ、高須、河村、田中の3名の責任は免れまい。

2021/02/21

「阪神タイガース」優勝は藤浪がカギを握る

阪神タイガース、今季は久々に優勝の可能性がでてきた。菅野の残留で巨人が有利という声も強いが、抑えのスアレスが残留した阪神の陣容は決して引け劣らない。
投手陣は元々リーグトップであり、先発、中継ぎ、抑えともにスタッフが揃っている。先発要員の一人である高橋の故障離脱は痛いが、それでも矢野監督は他の投手にとってはいいチャンスだと余裕の姿勢だ。ロッテから加入したチェンや新加入のアルカンタラ(コロナの影響で未入国)が想定通り活躍してくれば十分に穴は埋まる。
捕手は梅野を軸に坂本、バッティングのいい原口、新人の栄枝がどこまで食い込めるか。
野手では今のところレギュラーが約束されているのは大山ぐらいで、他は激戦だ。木浪、糸原の二遊間も安心していられない。巨人から加入した山本、植田、新人の中野、売り出し中の小幡、巻き返しを狙う北条らが、虎視眈々とレギュラーを狙っている。
新人の佐藤輝が旋風を巻き起こしているが、本職のサードは大山がいるので座を奪うのは難しい。打力を活かして外野手にコンバートという手もあるが、後述するように外野のポジション争いも熾烈だ。佐藤輝の起用法は今後のポイントの一つとなるだろう。
外野手で固定できるのはセンターの近本ぐらいで、他は横一線。昨季は5番を打っていたサンズ、新加入のロハス(コロナの影響で未入国)が有力と見られるが、ベテランの糸井、巻き返しを狙う高山、陽川に加え、売り出し中の井上らが加わる。場合によっては佐藤輝の参戦もありうる。
しかし優勝のカギを握るのは今季も藤浪だ。昨季は中継ぎで復活したが、本来の先発でどれだけの実績があげられるかが課題だ。先発ローテを1年間守り10勝以上の成績をおさめれば阪神の優勝はグッと近づいてくる。
藤浪のような球団を代表するスター選手の活躍は、チーム全体を鼓舞する。今季の阪神の優勝は、やはり藤浪の活躍次第と言ってよいだろう。

2021/02/19

京都芸大「セクハラ裁判」のトンデモ判決

いささか旧聞に属するが、前から気になっていた判決だったので、学問の自由の観点からとり上げてみたい。
概要は以下のとおりだ。

京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)の公開講座で、講師からわいせつな作品を見せられ精神的苦痛を受けたとして、受講した女性が大学側に約330万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が4日、東京地裁(伊藤繁裁判長)であった。判決は、わいせつな作品を受講生に見せたことを「セクハラにあたる」と認定。大学側に対し、講義内容を事前に告知するなどの義務を怠ったとして、約35万円の賠償を命じた。
判決によると、大学側は2018年、ヌードをテーマに講師を招いて全5回の講座を都内で開催。その中で、美術家の会田誠氏は四肢を切断された全裸の少女の絵などを、写真家の鷹野隆大氏は全裸の男性の写真などを1~2時間にわたりスクリーンに映した。
判決は、2人の作品が「露骨な表現で、正常な性的羞恥(しゅうち)心を害するわいせつ性がある」と指摘。受講生が成績評価を受けるには出席が欠かせないことをふまえ、「作品を見るよう強要されたセクハラだ」と判断した。その上で、作品を講義前に確認した大学側はセクハラを予見できたとして、「退室可能なことを事前に告知するべきだった」と認定した。講座を受けたことと、女性が患った急性ストレス障害の因果関係も認めた。
(asahi.com 2020/12/4付より引用)

これがなんでトンデモ判決かというと、理由は以下のとおり。
①もしこの講義内容が例えば高校の美術の授業で行われたとしたら問題だが、この場合は大学の公開講座であり、受講するのは自由であること。
②講座のテーマは「人はなぜヌードを書くのか」で、問題となった第3回のテーマは「ヌードあれこれ話」で、内容説明では「芸術と対立概念になりそうなポルノの話、第二次性徴期の話、フェミニズムの話などは避けて通れない」とあったとのこと。受講者はこれを承知で受講した筈だ。
③原告の女性は京都芸大の卒業生であり、自身も美術モデルであることから、この会の講義のテーマや講師(会田誠、鷹野隆大)から予め内容は予測できただろう。
④大学が受講者に講義内容の告知義務を怠ったという判決理由だが、もし講師の講義内容を事前にチェックし受講者に告知する義務を負わせるなら、大学が講義内容を事前にコントロールすることとなり、学問の自由への明らかな侵害である。

本判決に対して表現の自由や学問の自由を主張する側から、あまり批判の声が上がっていないのは不思議だ。

2021/02/17

自国の負の歴史と向きあう映画(7)『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』

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『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』2015年 アメリカ映画
監督:ジェイ・ローチ
脚本:ジョン・マクナマラ
主演:ブライアン・クランストン、ダイアン・レイン
本作品のテーマは『真実の瞬間(とき)』と同様ハリウッドの赤狩りだが、登場人物が全て本名であり、ドキュメンタリー色の濃いものとなっている。
1930年代には共産主義はアメリカの理想主義の若者の間で人気のある思想であった。第二次世界大戦中は米国はソ連とともにドイツ、日本と戦ったが、戦後ソ連が東欧諸国に対する弾圧を行ったため多くのアメリカ人が共産主義を敵とみなすようになる。背景には米ソの覇権争いもあった。
1947年、共産主義者との疑いをかけられたか、自分自身がアメリカ共産党員であったことを認めた人々は破壊分子と見なされ、映画産業界で働く人物に対しては非米活動委員会によって呼び出され尋問を受けた。
この中には、アメリカ合衆国憲法修正第1条で保障された基本的人権を根拠に、証言したり召喚されたりするのを拒んだ者がいた。「ハリウッド・テン」と呼ばれるこれら10人は1948年に議会侮辱罪で有罪判決を受け、1950年に半年ないし1年の実刑を受けた。この映画の主人公のダルトン・トランボもその一人だ。
「ハリウッド・テン」のメンバーは馘首もしくは停職処分となり、彼らが無罪と見なされるか嫌疑が晴らされ、又は彼らが共産主義者ではないと自身で誓わない限り再雇用されることはないという措置が取られた。その結果、かなりの長期間アメリカの映画・テレビ業界で働くことができなくなり、名前をスクリーンから削除された。
他に「ハリウッド・ブラックリスト」が存在し、膨大な数の人物がリストアップされていたようで、例えば下記のように名前があげられていた。
オーソン・ウェルズ (映画監督・俳優)
ピート・シーガー (フォークソング歌手)
ポール・ロブスン (黒人霊歌歌手)
エドワード・G・ロビンソン (俳優)
アーサー・ミラー (劇作家)
ハリー・ベラフォンテ (歌手)
赤狩りを主導したのは共和党右派のジョセフ・マッカーシー上院議員(マッカーシズムとも呼ばれている)で、当初はマッカーシーの強硬な姿勢が国民から大きな支持を受けたものの、マスコミをはじめ政府、軍部内にマッカーシーに対する批判が広がる。
1954年の12月、上院はマッカーシーに対して「上院に不名誉と不評判をもたらすよう行動した」として事実上の不信任を突きつけ、ここに「マッカーシズム=アメリカにおける赤狩り」は終焉を迎えた。しかし疑いをかけられた人々の名誉回復は1970年になってからだ。
マッカーシズムが吹き荒れた中で、自らが標的となることに対する恐怖によって、アメリカ国内におけるマスコミの報道や表現の自由に自主規制がかかったり、告発や密告が相次いだことなどから、多くの人々がダメージを受けた。またアメリカが掲げた「自由主義で民主主義の国」という言葉に対し、国内外から多くの疑問が呈された。
余談だが、トランプ旋風やその支持者たちの行動を見ていると、源流がマッカーシズムにあるような気がする。

前書きが長くなったので作品解説は簡単に。
第二次世界大戦後、共産主義排斥“赤狩り”の嵐が吹き荒れるアメリカ。理不尽な弾圧はハリウッドにも飛び火し、脚本家ダルトン・トランボは議会での証言拒否を理由に投獄されてしまう。出所後、最愛の家族の元に戻ったものの、キャリアを絶たれたトランボには仕事がない。そんな中、イアン・マクレラン・ハンターから名前を借りて偽名で執筆した『ローマの休日』の脚本がアカデミー賞を獲得し、彼は再起への道を歩み始める。やがて俳優のカーク・ダグラスから『スパルタカス』の監督の依頼が舞い込み、同時期にプロデューサーのオットー・プレミンジャーから映画『栄光への脱出』の監督の依頼がある。両作品で再びトランボの名が公にクレジットされ、興行的にも大成功する。
①トランボのいかなる弾圧にも負けぬ不屈の精神
②それを支えた家族愛。授賞式でトランボが家族に感謝する場面は感動的。
③実名なので例えばジョン・ウエインが映画では戦争で活躍するが実際には戦地に行っていないとか、『スパルタカス』の試写をみながらカーク・ダグラスがスパルタカスは自分自身だと呟く(トランボ自身でもある)などのエピソードが散りばめられている。
といった見所が随所に描かれている。
作品としても良く出来ていて、未見の方は実際に鑑賞することをお薦めする。

2021/02/15

「コスモポリタン」としての山口淑子(李香蘭)

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ある年齢層の方には記憶が残っていると思う。山口淑子(李香蘭)は、女優、歌手、タレント、ジャーナリスト、政治家と幅広く活躍をしてきた。
1920年、山口は満州に生まれ、両親とも日本人だったが父親から北京語を叩きこまれ、北京の女学校に通い、満州に亡命してきたイタリア人オペラ歌手から声楽を習った。完璧な中国語、日本人離れした美貌、美声を備えた彼女を、日本軍部と満州国が日満友好のシンボルとして利用する。
1938年、日本人ながら中国人の女優“李香蘭”としてデビュー。映画『白蘭の歌』、『支那の夜』などに出演し、日本でも爆発的なヒットとなった。また、歌手としても『夜来香』、『何日君再来』などをヒットさせた。
同じ1920年生まれの原節子がドイツを親日にするために利用されたと同じように、山口は中国や満州を親日にするために利用されたのだ。
終戦を上海で迎えた山口は、日本に協力した中国人=漢奸として死刑になるところだったが、日本人である事が証明されて追放刑となり、難を逃れた。
清朝の王族ながら軍服姿で日本の諜報活動に身を投じ、「男装の麗人」と呼ばれた川島芳子が中国籍だったため漢奸として銃殺されたのと、対照的な運命をたどる。
1946年に帰国し、名を本名の山口淑子と改めて『わが生涯の輝ける日』『暁の脱走』などの映画に主演。一方、シャーリー・ヤマグチの芸名でハリウッド映画に出演し、チャプリンやジェームス・ディーンとも親交があった。
1958年に外務官僚の大鷹弘と再婚し、テレビの司会者をするかたわら、ジャーナリストとしてパレスチナや北朝鮮を取材した。
1974年には自民党の参議院議員に当選、3期18年務めた。主に中国、中東、北朝鮮外交に尽力した。
山口は総理大臣の靖国参拝には反対し続け、1995年から「アジア女性基金」副理事長として、元慰安婦に補償金を手渡す作業にも関わった。それは山口自身が戦時中に満州や中国で見聞きした体験に基づくものだ。
残念ながら今の自民党には山口の様な人物は皆無である。
2014年9月7日に死去、94歳だった。

2021/02/13

自国の負の歴史と向きあう映画(6)『真実の瞬間』

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『真実の瞬間(とき)』1991年 アメリカ映画
監督、脚本:アーウィン・ウィンクラー
主演:ロバート・デ・ニーロ
映画のタイトルとしては原題の『Guilty by Suspicion』(疑わしきは有罪)の方が内容にピッタリだ。
1950年代、マッカーシズムに揺れるハリウッドで共産主義者の疑いをかけられた映画監督を主人公にしたもの。
1951年、フランスから帰国した新進気鋭の映画監督デヴィッド・メリルは20世紀フォックスの社長から呼び出され、連邦議会下院の下院非米活動委員会が彼を召喚しようとしていると告げられる。メリルは疑いを晴らすために誰かを売るように弁護士から助言されたが断った。するとメリル自身が疑いの標的にされ、撮影中の監督を降ろされ、ハリウッドから事実上追放されてしまう。メリルは家族とも離れて一人各地を転々とするが、どこにいてもFBIの尾行がついてきて、メリルの就職まで妨害する。無職となったメリルはロスアンゼルスに戻り、妻は教師に復職し家計を支える。
メリルは弁護士を伴って公開聴聞会に出席するが、議長や下院議員から激しい追及にあい、仲間の名前を言うように強制されるが、彼は最後まで口を割らなかった。聴聞は終わり、メリルは共産党員と見なされる。
かくして多くの映画人が赤狩りでハリウッドを追われ、彼らが名誉を回復するのは1970年になってからとなる。

1940年代後半から1950年代中期ごろ、マッカーシズムによる赤狩り旋風が吹き荒れる中、その中心的機関であった下院非米活動委員会 (HUAC) が取り調べを行なうため、ハリウッドを中心とする娯楽産業で活躍していた映画監督、脚本家や映画俳優などの芸能人の中で人生のある時期に共産党と関連があったと見做した人物を召喚し証言を求めた。仲間の名前を言うよう強制され、拒否した者は議会侮辱罪で有罪判決を受けた。チャップリンの様に国外追放になったケースもある。
主人公デヴィッド・メリルは、実在の映画監督ジョン・ベリーがモデルになっている。ベリーは非米活動委員会での証言を拒否しハリウッドから追放された映画関係者を取り上げたドキュメンタリーを制作し、そのことで彼自身もまた赤狩りの対象になり、妻子を残しフランスへの亡命を余儀なくされた。
映画関係者の中でグレゴリー・ペックやヘンリー・フォンダ、バート・ランカスターらはこうした弾圧に反対したが、ロナルド・レーガン、ウォルト・ディズニー、ゲイリー・クーパー、ロバート・テイラー、エリア・カザンらは赤狩りに協力した。
赤狩りの中心となったのは共和党上院議員のマッカーシーで、赤狩りをマッカーシズムとも呼ばれている。民主党の中にも赤狩りを支持した者もいて、ジョン・ケネディはその代表格と言ってよい。

赤狩り(レッドパージ)は連合国軍占領下の日本において、1950年にGHQ総司令官ダグラス・マッカーサーの指令により、日本共産党員とシンパ(同調者)が公職追放された。公務員や民間企業において「日本共産党員とその支持者」とした人々を解雇され、1万を超える人々が失職した。指令が解除された後もそうした人々は再就職が困難だった。
アメリカの黒歴史であるハリウッドの赤狩りを真正面から描いたことに本作品の価値があり、今後への警鐘となっている。

2021/02/11

「政党交付金」を使って買収

2月9日に行われた河井元法相の買収事件の公判で、検察が元会計責任者の証言として、買収資金の原資が自民党本部から入金された1億5千万円だったことを明らかにした。うち1億2千万円が、政党交付金であったとされる。
(2/10付「東京新聞」)
私たちの税金で集めた金を選挙の買収に使ったというのだから呆れるしかない。
それ以前の問題として当ブログでも度々指摘してきたが、元々「政党交付金(政党助成金)」制度そのものが間違っている。
「政党」の定義は辞書によれば「共通の政治的主義・主張をもつ者によって組織され、一定の政治的利益や政策の実現のために活動し、政権獲得をめざす集団。」とある。
ある特定の主義主張を持つ集団の活動費を、国民の税金で賄うということ自体が民主主義の理念に反する。
しかも、政党交付金の支給対象が「国会議員を5名以上所属するか、直近の国政選挙で全国で2%以上の得票(選挙区か比例代表かいずれか)を得たもの」とされており、これに該当しない政党は対象にならない。例えば地方議会にいくら議席を持っていても、地域政党は対象外なのだ。
配分は議員数割と得票数割として、交付金の総額を2分の1ずつに分けて算定される仕組みで、自民党など大政党が圧倒的に有利だ。国会議員には歳費などが支給されているので、いわば歳費の二重払いだ。
使途に制限がないから、今回の様に買収資金に使われる。
助成金の総額は、国民1人あたり年間250円と決められている。自分が指示しない政党になんか1円でも払いたくない。個人の思想信条の自由をおかす明らかな憲法違反だ。裁判所は合憲判決を出したが、根拠が分からない。
百歩譲って、政党が交付金がなければ活動が不可能だというならやむを得ぬかも知れないが、この法律ができる1994年以前には各政党は交付金なしで運営していた。また日本共産党の様に、交付金を拒否しても政治活動を続けている例もある。
百害あって一利ない政党交付金制度は廃止するしかない。

2021/02/10

このままで大丈夫?「ワクチン接種」

新型コロナ感染防止の切る札として期待されているワクチン接種だが、このままの状態で果たして大丈夫だろうかという声が高まっている。
2月9日、厚労省はワクチン一瓶あたりの接種回数が当初は6回の筈だったが実は5回であることが判明したと発表した。理由は現在使われている注射器では注射器の中に薬剤が残ってしまうため、1回分が無駄になる。薬剤が残らないようにするには特殊な注射器が必要だが、その供給が間に合わないのだ。これによって、政府の契約量7千二百万人分相当から6千万人分相当と大幅に減る可能性が出てきた。(2/9付東京新聞)
こんな初歩的なことが今なぜ明るみに出たのか、お粗末としか言いようがない。
集団免疫を獲得するためには、人口の7割が接種を受ける必要があるが、NHKの調査によれば接種を希望する人は約5割にとどまっている。先ずは必要性を国民に納得して貰うことが大事だ。
また、国民がワクチンを接種しやすい環境を整えることが重要だが、日本では市町村が設置する会場か医療機関でなければ接種ができない。そのための医師の確保も不安が持たれている。
例えば、人口10万人の市町村で半年で接種を終わらせようとするなら、1日当たり1千百人、1時間当たり140人のペースで接種せねばならない。一人の医師が1時間に20人接種するとして、医師が7人必要となる。地方都市にとっては容易なことではない。
大都市ではどうか、人口153万人の川崎市を例にとれば、1日当たり平均で2万人の市民を集め、そのため100人以上の医師を確保せねばならない。(以上、「選択」2月号の記事)
先進7か国の中でワクチン接種が始まっていないのは日本だけだが、政府が目指す半年以内の接種を実現するには、あまりに計画が杜撰だ。
厚労省は従来のワクチン接種の延長線上で考えているようだが、より綿密な計画と、実状に応じた体制作りが急がれる。
どうの河野と言ってる場合じゃない。

2021/02/07

中国政府不应该使用 "社会主义 "或 "共产党 "的名称

中国政府鼓吹 "社会主义",但其实际政策却恰恰相反。 相反,它是在执行资本主义最坏的部分。
"共产党 "也是如此,与它的名字相反,它实际上是一个 "专制的独裁政权"。
中国政府的这些政策对那些认真搞 "社会主义 "的人来说,只是一种困扰,反而拖了他们的后腿。
中国政府应该立即改掉 "社会主义 "和 "共产党 "的名称,改成符合实际的名称。

自国の負の歴史と向きあう映画(5)『検事フリッツ・バウアー ナチスを追い詰めた男』

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『検事フリッツ・バウアー ナチスを追い詰めた男』2016年製作 ドイツ映画
監督:ステファン・ワグナー
脚本:アレックス・ブレシュ
主演:ウルリッヒ・ノエテン
ナチス残党を追い詰めた検事フリッツ・バウアーの実話をもとに映画化した作品。1959年の西ドイツ、ナチスによる戦争犯罪の時効まであと7年に迫る中、検事のフリッツ・バウアーが中心となり、ナチ犯罪追及センターが設立される。しかし過去の罪を消したい政府や組織内のスパイに妨害されてしまう。自身にも監視が付くようになり自由に動けなくなったバウアーは、若き検事ヨアヒムを助手に任命。バウアーとヨアヒムの決死の捜査で真実が次々と明らかになる中、彼のもとにナチスの親衛隊にいたアドルフ・アイヒマンが南米のアルゼンチンに身を隠しているとの情報が入る。政府に起訴と身柄送検を要請するが、元ナチス幹部らの妨害や圧力があり、思うように進まない。アイヒマンを国内に移送したり裁判にかけることを断念したバウアーは、イスラエルのモサドと接触し、彼らにアイヒマンの拘束と裁判を依頼する。1960年5月11日、モサドの工作員らはアイヒマンを拘束し、身柄をイスラエルに移して裁判にかける。

世間にはドイツ神話みたいなものがあると前から気になっていた。戦後ドイツは戦前のナチスの犯罪を認め、被害者に謝罪し罪を償ってきたというものだ。言葉は悪いが、どうもこの神話にイカガワシサを感じてきた。ナチス政権は民主的な手続きで誕生したものであり、戦前は大半のドイツ人はヒットラーを支持していた。それが戦後には一転して、揃って前非を悔い反省していたというのは本当だろうかと。
本作品では、決してそう単純ではなかったことが示されている。かつてナチスの高官で今も思想はあまり変わっていない人物が、政府の要職に就いていたこと。警察や検察、裁判官などには依然としてナチス思想が残存していて、ナチスによる戦争犯罪を追及することに反対する勢力が根強くあった。バウアーの元には連日のように脅迫状が届き、彼の住居の壁には「ユダヤ人」という落書きがある。バウアーが「お前なんか又アウシュビッツに送ってやる」と面罵されるシーンもあった。
加えて当時の世界情勢、例えばナチス追及に及び腰だった西ドイツの首相を米国が強く後押ししていたとか、ナチス追及が東ドイツを喜ばせその背後にいるソ連の利益になるという心配とか、ドイツとイスラエルとの微妙な関係とか、様々な背景が描かれている。今では評価の高いアイヒマン裁判も、当時のドイツでは決して手放しで支持されていたわけではない。
むしろ、そうした複雑な経緯をたどって今日のドイツの姿に至ったのだ。ここでは神話ではないリアルなドイツの戦後史が刻まれている。
この点に本作品の価値がある。

アイヒマンが取り調べ中に語った以下の言葉は、現代人の胸にも刺さる。
「戦争中には、たった1つしか責任は問われません。命令に従う責任ということです。もし命令に背けば軍法会議にかけられます。そういう中で命令に従う以外には何もできなかったし、自らの誓いによっても縛られていたのです。」
「私の罪は従順だったことだ。」
私たちは果たしてアイヒマンを克服しているだろうか?

 

2021/02/05

「落語」は不要不急か

2021/2/5付東京新聞に笑福亭たまが「不要不急の線引き」というタイトルのコラムを書いている。「不要不急の外出は控えるように」というお達しがもう1年近く続いているが、落語はそれに該当するだろうかという問題提起だ。多数決をとれば恐らく不要不急に区分されてしまうだろう。落語に限らず全てのエンタメはある人にとっては必要だが、他の人にとっては不要なものだ。落語ファンにとっては寄席や落語会に行くことは決して不要不急ではない。
かくいう当方も、「いま落語に行くことはないでしょう」という家族の声(多数意見)に押されて二の足を踏んでいるのだが。
たまによれば、当初は落語会を中止や延期するケースが多かったが、今では感染防止対策をとりながら開催することが増えてきたとある。噺家は始めの頃は「俺たちは不要不急だから」と自虐的だったが、今は「俺たちは必要なんだ!」と叫んでいる気がするとも。
噺家にコロナの感染者が出たことで、都内の定席が一時休席になったり、鈴本演芸場は3月20日まで休席という事態になっている。
心配なのはこのまま廃業する寄席が出はしないかという点だ。1950年~1970年にかけて多くの寄席が姿を消し、今は都内の定席は4軒だけになってしまった。落語界にとってそれだけは避けたいしファンとて同じ思いだ。
一部に落語をオンライン配信する試みがあるようだが、どれほどの意味があるだろうか。全ての公演は舞台と客との共同作業と言えるが、落語はとりわけその色が濃い。客が不在ではまともな芸が披露できるとは思えない。たまが「百回の稽古より1回の本番」と言ってるのも、そういう意味だろう。
自粛も我慢の限界にきているので、3月に入ったら落語を聴きに行こうと思っている。

2021/02/03

愛知県知事リコール署名の組織的不正が明らかに

下の写真、毎度皆さんお馴染みの顔ぶれでなんという事ない記念写真に見えますが、これが「お辞め下さい大村秀章愛知県知事 愛知100万人リコールの会」の設立記者会見での写真となると、穏やかではない。
Member
(左から中部大学総合工学研究所の特任教授武田邦彦、評論家の竹田恒泰、高須克弥代表、作家の百田尚樹、ジャーナリストの有本香の各センセイ方)

そして会のクラウドファンディングが終了した昨年12月には高須代表が次の様なお礼文を出しています。
感謝とお礼
署名して下さった愛知県の皆さん
署名受任者の皆さん
一緒に戦って下さったボランティアの戦友諸君
世界中から寄付とクラウドファンディングで戦費を調達して下さった同志の皆さん、僕を支えてくれた事務局の皆さんと河村市長
心より感謝の念を捧げます。僕の志を受け継いで勝利してください。
令和2年11月8日 高須克弥

処が、結果はこうなりました。
美容外科「高須クリニック」の高須克弥院長らによる愛知県の大村秀章知事のリコール(解職請求)運動で、県選管は一日、提出された約四十三万五千人分の署名の83・2%となる約三十六万二千人分が無効との調査結果を発表した。無効のうち、約90%が複数の同一人物によって書かれた可能性がある。県選管は組織的な不正があった疑いもあるとみて、地方自治法違反容疑での刑事告発を検討している。国に現行制度の改正を提言することも協議する。
県選管によると、同一筆跡は署名簿を保管している各市区町村の職員二人以上で確認した。ほかに、選挙人名簿に登録されていない人の署名が約48%、選挙人名簿に登録されていない受任者が収集した署名も約24%あった。既に転居した人や、死亡した人の署名も複数が確認された。
署名が提出された六十四市区町村選管のうち、無効がなかったのは豊根村だけだった。
(中日新聞)

さらに具体的手口も明らかにされつつあります。
愛知県の大村秀章知事のリコール(解職請求)運動を巡り、同県の弥富市議5人が3日、署名に自分の名前を無断で使用されたとして、地方自治法違反と有印私文書偽造・同行使の疑いで、容疑者不詳の告訴状を名古屋地検に郵送した。市議らが記者会見で明らかにした。
代理人弁護士によると、自民党系会派の市議8人が1月、不正署名の情報を受け、市選挙管理委員会にそれぞれ自己情報開示請求をしたところ、署名していない5人の名前があった。印鑑や指印も押されていたという。
また、5人のうち1人は、署名集めを担う「受任者」としても名前が記載され、複数人の署名を集めたことになっていた。
(共同)

不正は誰か個人が思い付きでしたことではなく、指示に基づき組織的に行われたことは明らかです。
リコール署名は氏名・住所・生年月日を記した上で押印(拇印)をしなければならず、これらの個人情報を不正に取得して署名に利用し、かつ押印(拇印)を偽装したのであれば、署名自体が無効というだけでなく、個人情報の不正取得や不正利用をはじめ、複数の犯罪行為に該当する可能性が高くなります。
(yahoo)

この件について高須代表は、
「私が不正するわけがない、陰謀だと感じる」と述べているそうです。
誰も信じないけどね。

2021/02/01

【書評】波田野節子『李光洙-韓国近代文学の祖と「親日」の烙印』

波田野節子『李光洙(イ・グァンス)-韓国近代文学の祖と「親日」の烙印』(2015/6/25初版 中公新書)
不勉強で、たまたま他の雑誌で李光洙の名に触れていたので本書を購読。李光洙は韓国の近代文学の祖とされ、知らぬ者はいないそうだ。日本でいえば夏目漱石に相当するのだろう。
本書では李光洙のヒストリーが詳しく紹介されていて、1892年、李は貧しい家庭に生まれながら韓国併合前後に日本に留学し明治学院で学び、文筆活動を始める。帰国してから住民への啓蒙活動を行い教師にもなるが、1915年に再び来日し早大に編入。
1919年、日本政府を糾弾し朝鮮の独立をうたった「2・8独立宣言」を起草し上海に亡命、「3・1独立運動」と臨時政府に参加する。このころ許英粛(韓国で初の産院を作った人)と結婚。
「3・1独立運動」が挫折すると李は、「東亜日報」に入社し編集局長などを務め、多くの小説を著した。長年の無理がたたったのか結核を患い、以後病苦と闘うことになる。
1937年日中戦争が勃発するが、その直前に李ら182名が治安維持法で逮捕される。これは完全なでっち上げ事件だったが、うち2名が死亡1名が廃人になるという過酷な取り調べを受けた。李は病気が悪化したため釈放されるが裁判にかけられる。
1938年、同事件で起訴された李を始め全員が転向を表明する。朝鮮人も帝国の臣民として生きるという内容だった。日本の統治から免れぬ以上は、朝鮮人も日本人と同様に権利を主張し差別を無くすような「内鮮一体化」を目指すことになる。
対日協力の第一歩として李が音頭をとって朝鮮の文学者を皇軍慰問団として戦地に赴くことにした。
第二歩は、李が「日本文学報国会」に真似た「朝鮮文人協会」を結成し会長におさまったことだ。
その後は田舎に引っ込んでしまう。
1940年には創氏改名により「香山光郎」の日本人名をなのる。この頃から日本語の論文を盛んに書くようになるが、当時の朝鮮では日本語を読める人はごく少数であったことを考えれば、対象はむしろ内地の日本人向けだったと思われる。
1941年に大東亜戦争(太平洋戦争)が始まると李は西洋への反発からアジア解放を賛美し、1943年には日本の学徒動員に呼応して朝鮮人学生の学徒兵志願を勧誘する。これに対応しなかった学生は全員が大学から除籍されてしまう。
1948年に大韓民国が成立、李は「私は独立国の自由の民だ」という長詩を書き支持を表明する。その翌月に「反民族処罰法」が制定され、李は対日協力した罪で検挙されるが不起訴となる。しかし李の「親日」の烙印はその後も消えることがなかった。
1950年に朝鮮戦争が勃発すると、北朝鮮に連行され消息を断った。息子の李栄根(米国に渡り大学教授になっていた)が1991年に北朝鮮を訪問し、父親の消息を調べたが1950年に死亡したようだというが明確なことは分からなかった。なお平壌近郊には李光洙の墓がある。
李光洙の歴史は日本と切っても切れない関係にある。彼の背後にあるものは日本の日清日露戦争から中国への侵出、アジア太平洋線戦争に至る軍国主義の歩みと、過酷な弾圧だ。
後年、李は「民族のために親日しました」と語っているが、あながち自己弁明だけとは言えず、本人の真意かも知れない。いくつもの挫折を乗り越えた末の次善の策と思っていたのかも知れない。
李は韓国では未だに「親日」のイメージが強いそうだが、再評価の動きも一部にあるという。

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