木村花さんを死に追いやったのは誰?
フジテレビの番組「テラスハウス」に出演していたプロレスラー木村花さんが命を絶った問題で、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会は3月30日に都内で会見し、審理結果としての見解を公表した。花さんの精神的な健康状態に対する配慮が欠けていたとして「放送倫理上の問題があった」と認定した。一方で、「フジテレビ側が放送前に一定の慎重さをもって判断がなされたため、漫然と本件放送を決定したものとはいえない」などとして、人権侵害があったとまでは断定できないと結論づけた。
テラスハウスは、シェアハウスで生活する男女6人の恋愛模様を見てスタジオの芸能人がコメントする形式のリアリティー番組。毎回の冒頭には「台本は用意していません」とテロップが表示された。
2020年3月31日、花さんのプロレスの衣装を共用の洗濯機にかけ破損した共演者の男性に対し、花さんが男性のかぶっていた帽子を脱がせて投げるなど怒りを表すエピソードが配信されると、花さんのツイッターやインスタグラムのアカウントに匿名の中傷コメントが集まり、花さんは自宅で左腕に自傷行為を行った。2020年5月23日未明、連絡が取れないことを不審に思った母の響子さんが自宅を訪ねたところ、ベッドに心肺停止の状態で倒れているのを発見。病院へ救急搬送されたが、死亡が確認された。22歳没。自宅リビングに手書きの遺書と見られるものが見つかったことや硫化水素を発生させたとみられる薬剤の容器が見つかったことから自殺を図ったと見られている。
この問題で、東京区検は3月30日、ツイッターに誹謗中傷する内容の投稿をしたとして、侮辱罪で大阪府の20代男性を略式起訴。東京簡裁は科料9千円の略式命令を出した。
起訴状によると、男性は木村さんのツイッターに「性格悪いし、生きてる価値あるのかね」「いつ死ぬの?」などと匿名で8回書き込み、木村さんを侮辱したとしている。
男性は、番組の中の木村さんの態度が許せなかったと話していると言う。
テラスハウスは台本が無いリアリティー番組ということになっていたが、実際には「やらせ」が行われていた。
木村さんが母や友人に語っていた「やらせ」は、「テラハに出た当初からプロレスラーらしく振舞えって。1のことを100にして盛り上げて欲しいって言われた。」
なお、フジの制作側がスケジュールや演出を含む撮影方針に従わせる誓約書を出演者側と交わしていて、誓約内容に違反して制作に影響が出た場合、出演者側が1話分の制作費を最低額とする損害賠償を負う内容も盛り込まれていた。
どうしてこの様な悲劇が起きてしまったのか。
乱暴な言い方になるが、次の言葉を思いだして欲しい。
①TVは電気紙芝居
②ネットはバカの落書き
TVの生命は映像、つまりどう「絵」を作るかだ。テラスハウスはリアリティー番組(実際にはショー)と称しているが、演出(=やらせ)は当然ある。考えれば分かることだが、一般人を集めて日常を追いかけても面白い絵にはならない。演出のないTV番組など存在しない。それはニュースや報道番組も例外ではないし、ドキュメンタリー番組も同様だ。とりわけ民放は、番組の視聴率が局の収入と直結するので、面白い絵作りに懸命になる。
番組にプロレスラーの木村花さんを起用した時点で、TV局のスタッフとしては彼女の特性を活かすことを考えたろう。その一つが暴力的な出来事を起こすという演出になった。
視聴者もその辺りを理解して、番組を楽しんでいれば何も問題はなかった。
処が、ここに「ネットはバカの落書き」が出てくる。
番組での花さんの演技を本気で信じて、歪んだ正義感から怒りを燃やし、彼女を罵倒する書き込みをしたのだ。こんな連中、相手にしなきゃ良かったんだろうが、ネットという公開の場で執拗に攻撃を受ければ本人は傷つく。こうなると連中は余計に調子に乗ってくるから、始末に悪い。
これが花さんの自死という最悪な結果を招いてしまった。
誹謗中傷を繰り返した男に過料が課せられ、それとは別に民事での損害賠償裁判でも木村さん側が勝訴する模様なのは、せめてもの救いだ。
しかし、こうした誹謗中傷をネットから根絶するのは極めて難しい。
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