「陽春四景」(2021/4/7)
陽春四景(上)
日時:2021年4月7日(水)18時45分
会場:国立小劇場
< 番組 >
三遊亭萬橘『新聞記事』
柳家権太楼『幾代餅』
~仲入り~
三遊亭兼好『粗忽の使者』
柳家さん喬『百年目』
客席はソーシャル・ディスタンスをとっているので、ゆったりした気分になれる。兼好、萬橘ともに二ツ目時代から注目していたので、人気者になった姿は喜ばしい。
萬橘『新聞記事』
存在そのものが可笑しい「フラ」がこの人の特長だし優位な点でもある。押したり引いたりする間合いの取り方が巧みだ。
お馴染みのネタだが、「天ぷら屋の竹さん」の他に「下手な噺家」のギャグを入れてサゲた。
権太楼『幾代餅』
前方の萬橘を、この会場に相応しくない芸風とイジリながら、協会の若手にない明るさがあると褒めていた。
このネタは古今亭のお家芸のイメージが強かったが、昨今は流派に関係なく演じられ、権太楼も得意としている。
清蔵と店の主人夫婦とのヤリトリの可笑しさに権太楼らしさが出ていたが、他はオーソドックスな演じ方。ただ、幾代が清蔵との結婚を約束する際に支度金として50両渡し、清蔵に二度と吉原に足を踏み入れてはいけないと諭す場面がカットされていたが、何か意図があったのだろうか? 幾代が覚悟を示す重要なシーンだと思うのだが。
兼好『粗忽の使者』
いつもの辛口のマクラや、前方の権太楼が「萬橘ともう一人は・・・」と兼好の名前が出なかったのをイジッテ本題へ。大工の留っこの描写にこの人らしさが出ていた。
さん喬『百年目』
さん喬といえば人情噺と相場が決まっているが、私はむしろ寄席で短い時間に演じる軽い滑稽噺にこの人の真骨頂があると思っている。反対に長講には首をひねる事が多いのだ。
このネタで言えば、店の主が番頭と面談する山場の前に、主が「番頭さんのお加減は・・・」と大声で言いながら、煙管を強くはたく場面。小僧の定吉の口の利き方に主が「バカ野郎」と怒鳴る場面。これでは肝心のこの主の風格が台無しになってしまう。番頭との面談の中で、主が前夜に帳簿を調べたが、全く穴が空いてなかったので嬉し泣きしたと告げるも疑問だ。番頭に来年には店を持たせると約束するのも、ここは従来の余韻を残す演じ方の方が正解だと思われる。
色々疑問を持ちながら聴いていたので、山場で感情移入が出来なかった。
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『新聞記事』
こういう小品こそ落語家の個性が出ようというもの。
ほぼ同じころ、寄席で正蔵と甚語楼で聴いておなじ噺とは思えないほど趣が異なることにビックリ(優劣ではない、念のため)。
ゴシップを語るとぼけた軽妙な味わいがこの演目の本領かと考えております。
投稿: 福 | 2021/04/09 06:35
福さん
元は上方の『阿弥陀が池』で、上方では大御所から若手まで幅広く演じていますが、個性の出るネタですね。
投稿: home-9 | 2021/04/09 08:01