ミャンマー軍による市民虐殺と日本の責任
ミャンマー軍による市民虐殺のニュースに心を痛めている方が多いだろう。虐殺の映像を見るたびに心臓が苦しくなってくる。軍隊が自国の市民に発砲するという事件は過去にも起きているが、この度のミャンマーの事態はそれを大きく上回るものだ。武器はロケット砲や機関銃も使われていて、デモ隊の周囲を取り囲み一斉射撃するなどの虐殺行為により、既に数百人の死亡と多くの行方不明者を出している。
欧米諸国は軍の関係者に対する制裁を行い、国連の安保理での決議を目指しているが、中国やロシアの反対にあって実現に至っていない。
では、日本政府はどうだろうか。
今のところ、非難声明は出しているが、制裁に踏み切るまでには至っておらず、これでは静観ととらえられても仕方ない。
その原因は、日本政府によるODA経済援助と、それを通じてのミャンマーの政府と軍との深い関わり合いがあるからだ。
例えば、「ニューズウイーク日本版」で、クーデターから2ヶ月ちかく経つ3月25日付ロイター通信の、「日本の官民連合、ミャンマーで不動産開発」と題する記事を紹介している。
ミャンマーで総額300億円以上の不動産開発事業を進める日本の官民連合が、ホテルやオフィスなど複合施設を建設する用地の賃料を支払い、それが最終的にミャンマー国防省に渡っていたことが分かった。ロイターが取材した複数の日本企業、政府関係者が認めた。
「ヤンゴン市内都市開発(Yコンプレックス)」と呼ばれるこの事業が、ミャンマー国防省の利益につながっていたことを日本側が認めたのは初めて。日本側は賃料の支払い先が国防省であり、ミャンマー政府だと認識していたが、国防省は2008年に制定された憲法上、国軍の支配下にある。
同事業には日本から大手ゼネコンのフジタコーポレーション、大手不動産の東京建物のほか、日本政府が95%を出資する海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)が参画。政府系金融機関の国際協力銀行(JBIC)も融資をしている。
賃料を支払うのは違法ではないものの、事業が始まった2017年は、ミャンマー国軍によるイスラム教徒の少数民族ロヒンギャへの人権侵害が問題となっていた。国際司法裁判所は虐殺について調査を進めている。国軍は今年2月には軍事クーデターで政権を奪い、これまでに、抗議活動に参加した市民260人以上を殺害している。
ミャンマー国防省、国軍のコメントは得られていない。
JBICが2018年に発表したニュースリリースによると、融資は三井住友銀行、みずほ銀行との協調で実施。両行ともロイターの問い合わせにコメントを控えた。
戦後、日本はODA(政府開発援助)を通じて東南アジア諸国に経済援助を行ってきた。それにより各国が経済発展してきたが、同時にODAの多くはヒモ付きで、日本企業の東南アジア進出と、それに伴う各国政府との結び付きも強めた。また対象国の多くは軍の力が大きく、軍に対する経済援助という結果を招いた。
毎日新聞の永井浩記者によれば、民主化運動指導者のアウンサンスーチー氏が6年間におよぶ自宅軟禁から解放された1995年11月から、毎日新聞に週1回の手紙を寄せ、それをスーチー氏の連載エッセイ『ビルマからの手紙』として掲載した。
驚くべきことに外務省は「日本・ミャンマー関係がこじれる。ひいては日中関係にも悪影響を及ぼす」と、再三にわたって毎日新聞に連載の中止を要請してきた。木戸湊編集局長は「『毎日』は民主主義を大切にする新聞である」と言って、彼らの要求を突っぱねた。
これでは日本政府が共犯者と言われても仕方ない。
私たちはミャンマー軍の蛮行を止めるのは難しいは、日本政府の姿勢を変えさせることは出来る。
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