人はなぜ「陰謀論」に騙されるのか
いま「Qアノン」と呼ばれる集団が米国を中心に全世界にひろがっている。この世界が少数のエリート層によって構成された“ディープステート(闇の政府)”に支配されており、ドナルド・トランプ氏は彼らの悪行に終止符を打つべく現れた救世主だと主張している。このディープステートでは悪魔崇拝や小児性愛、人肉食などが行われており、民主党の政治家やハリウッドセレブなどがメンバーに名を連ねているという。それらの“真実”と称するものが、政府の内通者を自称する「Q」という人物によって2017年頃からネットの掲示板に投稿され、拡散していった。
「地球は丸い」という考え自体が我々に押し付けられた陰謀論である、というのもQアノンの主張だ。
「新型コロナウイルス」はディープステートによる嘘で、「トランプはその嘘に立ち向かっている」という考えが作り出され、最終的に「マスクは呼吸に有害」「マスクをすると小児性愛者だと思われる」「マスクの着用は奴隷の証」と、飛躍する。そして、これはアメリカだけでなく、欧州にも広がっていき、マスク着用や外出規制など、政府の感染防止対策やワクチン接種に反対するデモが発生している。
これらは海外だけに起きている問題ではない。
Qアノンの触発された様に、国内でも「Jアノン」と呼ばれる集団が形成された。
米国でのトランプ支持派による国会議事堂占拠に対して、「トランプ大統領が戒厳令を発令」「オバマ前大統領を含む民主党の大物議員らが大量に逮捕される」「戒厳令は“緊急放送システム”を用いて世界中に伝えられる」といったような風説が流された。それらの情報を拡散していたのは、いわゆるネトウヨネと目される人々である。どうやらネトウヨからすれば、自分たちが信奉する安倍晋三と親交の深いトランプ氏を攻撃することは、自分たちを攻撃するように感じられ、アイデンティティを傷つけられたように感じたのだろう。
こんな荒唐無稽な説が信じられるのは、どんな理由によるのだろうか。一歩引いて見れば、あり得ないことばかりだと分かるのに。
コロナのパンデミックという異常事態の中で、人々が不安な状態に陥っているからという人もいるが、それだけではあるまい。
ある人々にとっては、自分たちが信ずるものだけを信じるという習性があるのではなかろうか。そうなると周囲が全く見えなくなる。
神社の鳥居をくぐるとバチが当たるとか、守護霊が下りてきてメッセージを下す「霊言」がナンチャラといった宗教を信じる人がいるという現実は、「陰謀論」に魅かれる人とさして変わらぬ。
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