五輪の後に来る「変異株見本市」
いま行わている東京五輪では、入国したワクチン接種済みの選手や大会関係者の感染発覚が相次いでいる。こうした感染者から持ち込まれたものは、ワクチンによる免疫を回避したウイルスということになる。こうした「ワクチン抵抗株」の流入は、とりわけワクチン接種の遅れている日本にとって脅威となりうる。
7月前半の調査結果によれば、日本の新型コロナウイルスは、アルファ株(英国型)29%で、デルタ株(インド型)64%となっている。WHOが「懸念される変異株(VOC)」として4種類をあげているが、ベータ株(南ア株)とガンマ株(ブラジル株)の二つは日本では流行していない。これは南米やアフリカとの人的交流が少ないことが幸いしたが、五輪ではこれらの地域からも選手が来ている。
二つの株が警戒されるのは、ベータ株の場合は「免疫回避変異」によりワクチンの効果が減衰してしまう。ガンマ株の場合は、変異によって感染力が約5割増強されるという。
この他、いまペルーで流行しているラムダ株がある。5月後半にはペルーの新規感染の97%がラムダ株だった。チリやアルゼンチンといった周辺国にも感染が拡がりつつある。ラムダ株の遺伝子配列が公開されて、10ヶ所以上の変異が確認されている。基礎的検討によれば、この変異によってワクチンの効果は5分の1程度まで低下することが分かった。チリではコロナ感染による死者数が人口100万人あたり5921人で、世界最高だ。
他にもアメリカのニューヨーク株が確認されており、中国の武漢の研究チームも新たな変異株を報告している。
感染拡大で一定の確率で変異は起こり、環境に適した変異が生じると、その変異株は急速に拡大する。
新型コロナウイルスに対する治療薬として「抗体カクテル療法」が注目されていて、厚労省が特例承認した。海外での臨床試験では、入院や死亡のリスクが7割減らしているという。処が、オランダとデンマークでミンクからヒトに感染した変異株は、この治療薬に高度の耐性を示していて、治療薬の効果を無力化しかねない。
東京五輪の危険性は、世界の変異株を一堂に合わせてさらに増強させかねないことだ。
異なるウイルスが混ざり合って、新たな「日本型変異」が起きてもおかしくない。
私たちは、五輪の後は「変異株の見本市」というリスクを覚悟せばななるまい。
(月刊誌「選択」8月号の記事を参考にした)
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