「市馬落語集~お盆特別公演~」(2021/8/15)
「市馬落語集~お盆特別公演~」
日時:2021年8月15日(日)17:30
会場:国立大劇場
< 番組 >
●第一部:令和噺競(れいわはなしくらべ)~九代目春風亭柳枝襲名祝~
柳亭市童『黄金の大黒(序)』
桃月庵白酒『代書屋』
柳亭市馬『締め込み』
~仲入り~
春風亭一之輔『普段の袴』
春風亭柳枝『船徳』
●第二部:長講二人會
柳家三三『素人鰻』
太田その・柳沢りょう『上げ潮』
柳亭市馬『七段目』
市馬落語集の拡大版という趣向で、九代目春風亭柳枝襲名祝を兼ねる。落語協会としては待望の大名跡の復活だったろう。会場も奮発して国立大劇場、満員とはいかなったがこの時節にしては良い入りだった。ただ箱が大きすぎて、落語には不向きだったようだ。
市童『黄金の大黒(序)』
前座の頃から注目していたが、着実に成長している。個々の人物像も良く描いて見せた。
白酒『代書屋』
面白かったが、う~~んだ。このネタ、どこか昭和初期の匂いがいるのと、代書屋の主人と客との位置関係の表現がポイントだと思う。そこが白酒の高座には見て取れなかった。好みでいえば、三代目桂春団治がベスト。墨の擦り方、筆の持ち方、主人と客の表情変化、全ていう事なし。
市馬『締め込み』
市馬らしい良く纏まった高座だったが、女房のお福にもっと色気と可愛さが欲しい。何しろ、風呂敷包みを見ただけで、亭主の八五郎が女房の浮気を疑うほどだから、お福は余程の男好みだったんだろう。
一之輔『普段の袴』
十八番には違いないが、『又かの袴』かよと、ちょっとガッカリ。
柳枝『船徳』
前半が今一つ締まらなかったのは、二人の客の姿にあまり暑さを感じなかったせいか。後半の徳が船を漕ぎ出す辺りからようやくエンジンがかかってきた。全体的にはマアマアの出来か。
三三『素人鰻』
振り返ればご無沙汰だった気がするが、上手くなったなぁと思った。神田川の金と、侍から鰻屋の主となった男の人物像が巧みに描かれていた。欲を言えば、金が主の前で見せる酒癖の悪さと、翌日の借りてきた猫の様に大人しくシュンとした姿の対比を、もっと強く出してほしかった。
太田その・柳沢りょう『上げ潮』
小唄の題名には自信がないので、間違っていたら御免なさい。簾内だったのが残念だが、下座が高座に上がるべきでないという理屈もその通り。
市馬『七段目』
時間の関係からか、少し短縮した内容だったが、肝心な所での歌舞伎のセリフや所作は本格的。大劇場に相応しい高座で最後を締めた。
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コメント
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三三『素人鰻』
黒門町の十八番であったこの噺は、背景に明治史があるとうかがいます。
また、このサゲは柳枝の演じた『船徳』にも通じるプロ意識の欠落の可笑しみなんでしょうね。
上野、神田に出た時には必ず『神田川』の前を通り、古色蒼然とした佇まいに目を楽しませることにしております。
投稿: 福 | 2021/08/17 06:33
福さん
『素人鰻』は「武士の商法」を落語にしたものです。『神田川』は明治3年創業ですから、噺の時期は明治の初め頃でしょうか。
投稿: home-9 | 2021/08/17 08:23