気候変動は私たちの運命をも左右する
大気海洋の循環を考慮した気候変動のモデルを開発した等の功績でノーベル賞を受賞した米プリンストン大の真鍋淑郎・上席研究員(90=愛媛県出身、米国籍)が話題となっており、これを機に地球温暖化への取り組みが一層進むことを期待したい。
日本政府は、昨年末に「パリ協定」に積極的に参加し、「地球温暖化を産業革命以前と比べて2℃以下に抑える努力をする」こととなった。しかし、「可能なら1.5℃に抑えたい」という議論が世界中で真剣に行われているという。この「0.5℃」の差が、どれだけ大きいのか。
例えば、洪水の影響を受ける世界の人口は、1.5℃だと現在の2倍で済むが、2℃だと3倍になってしまう。小麦の収穫量減少はは1.5℃だと9%だが、2%だと16%に激増する。サンゴ礁の消失は1.5℃だと80%だが、2℃だと99%とほぼ完全に地球から消失してしまう。
これらは将来予測だが、1991年に実際に起きた事例で見ると、ピナツボ火山の大噴火で地球の平均温度が0.5℃下がった。この影響とエルニーニョとの複合作用で、日本の東北地方は冷夏となり、水稲の収穫量が40%も減少し、コメ不足で「平成の米騒動」になった事は記憶に新しい。この様に、たった0.5℃の差が人々の生活に大きな影響を及ぼすのだ。
過去の地球の気温を推定するのは難しいことだったが、最近になって正確な海水温を推定するのに大きな進展があった。それは、海の表層に生息するプランクトンが夏季に作る、アルケノンという特別な有機物が、合成時の水温を正確に反映することが分かってきた。これを海水の温度推定に利用できる。海水温と気温とは密接な関係があるため、堆積物の中のアルケノンを測定することにより、過去の気温も正確に推定できる。誤差は0.3℃と高精度だ。
この技術を使って、過去2万2千年の日本の水温、気温を推定したところ、大寒冷期が、社会の大枠を転換する節目になっていることが見出された。
①土器の発明
②縄文遺跡である三内丸山の崩壊
③大陸からの弥生人の渡来
④宮廷政治の衰退と武士の台頭
この様に気候変動は社会に大きな変化をもたらし、私たちの運命も左右される。
平均気温の2℃上昇は、「この世の終わりの様な非常事態」が危惧されると推定されている。
地球温暖化の阻止は、人類共通の課題として真剣に取り組まねばならない。
(以上は、月刊誌「図書」10月号の川幡穂高氏の記事を参考にした。)
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