「巧言令色」のオンパレード
「巧言(こうげん)令色(れいしょく)鮮(すく)なし仁(じん)」は「論語」に出てくる有名な言葉だ。意味は「口先だけうまく、顔つきだけよくする者には、真の仁者はいない」。
いささか旧聞に属するが、昨年行われた自民党総裁選、TV中継で各候補者の討論を聞いたが、「巧言令色」のオンパレードだった。
いわく「温もりのある国」「美しい国」「国民に寄り添う」「全世代の安心感」、抽象的で歯の浮くような言葉が並んだ。
選ばれた総裁は首相になるのが決まりなので、公約したことは実現することが可能なのだ。
勝った岸田は「聞く力」をキャッチフレーズにして、「車座」のパフォーマンスを披露したが、実際は「聞き捨てる力」だった。
「令和の所得倍増」の公約は、首相就任後はあっさりと「所得を引き上げる」に変更してしまった。
「新しい資本主義」にしても、来年度の予算案や政策に具体化しているとは思えない。
首相の言葉がこんなに軽くていいもんだろうか。実行する気がないなら最初から言わなきゃいいのに。方針を変更するなら、その理由を説明すべきだ。
「拉致問題の解決」というフレーズも、先の総裁選でも全員が訴えていた。胸には揃いのブルーリボンを付けていたし、新しい首相が誕生するたびに家族会の人たちと一緒に決意を語る姿は恒例になっている。しかし、この十数年間は1㎜も動いていないのが実情だ。実際に何もしてないのか、それとも具体的な努力をしているが(北朝鮮との窓口とは交渉しているらしいのだが)障害があって進んでいなのかの説明すらない。何に行き詰っているのか、それをどう打開しようとしているのかも不明である。家族会の方々が落胆し、不満を述べるのはもっともだ。
やる気がない、又は無理だと最初から分かっているなら、口先だけの決意表明などしなければいいのだ。
やはり「巧言令色鮮なし仁」である。
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