【追悼】三遊亭圓丈、川柳川柳
昨年末、当ブログが休止中に二人のベテランの噺家の訃報に接した。
新作落語の雄、三遊亭圓丈が11月30日に心不全のため、亡くなった。76歳だった。圓丈の最大の功績は、従来の新作落語には無かった斬新な作品-例えば「肥辰一代記」「グリコ少年」「ぺたりこん」などなどーを作り、新しい道を切り拓いたことだ。
羽織にワッペンをつけたり、ちゃんちゃんこを着ていた姿を思い出す。
川柳川柳は、11月17日に死去した。90歳だった。
川柳の高座は数々観てきたが、戦中の軍歌と戦後のジャズをつないて演じる「ガーコン」1本だった。これほど一つのネタに拘った噺家は他にいない、歳を感じさせない若々しい声は晩年まで衰えなかった。
川柳が「ガーコン」に拘ったのは、多感な少年期を戦争中に過ごしたことと無縁ではあるまい。
これは、詩人・茨木のり子「わたしが一番きれいだったとき」の世界と重なる。
わたしが一番きれいだったとき
あたしの国は戦争に負けた
そんな馬鹿なことってあるもんか
ブラウスの腕をまくり卑屈な町をのし歩いた
わたしが一番きれいだったとき
ラジオからジャズが溢れた
禁煙を破ったときのようにくらくらしながら
わたしは異国の甘い音楽をむさぼった
川柳は今頃は、きっとあの世でもラッパを吹いていることだろう。
合掌
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あけましておめでとうございます。
といってよいものか、ご体調を心配しておりました。
お話の二人はあの圓生の弟子。
古典を継承しなかった不肖(?)の弟子たちが語る圓生の回想は
甘くて切ないものがあります。
投稿: 福 | 2022/01/05 06:43
福さん
有難うございます。まだ体調は万全でなく、ボチボチと書いて行こうと思います。
計らずも圓生の異色の弟子の死が相次いでしまいました。特に円丈は未だ未だ若いのに残念です。
投稿: home-9 | 2022/01/06 09:28