紙コップは「紙」ではない
最近、プラスチックを減らす取り組みの中で、紙に置き換えたという表現に出会うことがある。本当かな?と思ってしまう。紙に置き換えるくらいなら最初から紙を使ってるんじゃないの。
紙(パルプ)は水を通しやすいのと、水に濡れると極端に強度が落ちてしまうという弱点がある。だから紙で紙コップはできないのだ。紙が包装紙として使えないのはそのためだ。
その欠点を補うためには、紙と薄いプラスチック(より一般的には有機ポリマー)フィルムを貼り合わせたり(ラミネート)、塗布したり、含侵させたりして複合体をつくる。だから見た目は紙だが、紙ではない。
プラスチックを紙との複合体に置き換えた場合、プラスチックの量は減らすことが出来るが、リサイクルが難しくなるという問題が発生する。
いま、海洋汚染として問題になっているのは狭い意味のプラスチック(熱可塑性樹脂)だけでなく、合成繊維や合成ゴム、塗料など幅広いポリマー製品が含まれる。例えば、自動車のボディは鉄製品なので表面を保護するために塗装しているが、これもポリマーの塗料だ。内装はほとんどポリマーで、軽くて強い特性が活かされている。ブレーキなどの部品もポリマーが使われていて、タイヤは合成ゴムから出来ている。電車の車両や航空機も同様だ。
建築材料にもポリマーは沢山使われていて、ガス管や水道管、接着剤、塗料、断熱材、壁紙など、みなポリマーだ。
電気を通しにくいという性質から、電器製品も多くのポリマーが使われている。
入院して感じたのは、病院で使う医療器具はそのほとんどがポリマー製品だ。ポリマーを無くしたら、医療は成り立たない。
プラスチックを減らすというと、すぐにレジ袋がやり玉にあがるが、全体からみれば微々たる量だ。替りに買い物袋(トートバッグ)が使われているが、見るとほとんどがポリマー製品だ。あれじゃ、何もならない。
海洋汚染=プラスチックの様に見られているが、それはプラスチックが水に溶けず、軽い(水の比重より小さい)から目立つにすぎない。海洋には膨大な量の物質が投棄されていて、気体や液体は海水に混ざってしまい、水溶性のものは海水に溶けてしまい、重い固体は海底に沈んでしまうので目立たないだけだ。それらの有害性については、あまり議論されていない気がする。
海洋汚染について、より科学的な分析が必要だろう。
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