「ロシアのウクライナ侵略」怒りと、冷静さと
今回のロシアのウクライナ侵略についての日本国内の反応は、過去に無いものだった。戦後の海外での戦争-朝鮮戦争、ベトナム戦争、アフガン戦争、イラク戦争など-については、政党の立場で評価が異なっていたし、国論が分かれていた。今回は自民党から共産党まで同一歩調をとり、国民の大半もロシアを批判し、ウクライナに同情している。それだけプーチンのやり方があまりに無謀であり、世界各国の反対運動がロシアを包囲しつつあるのは当然だ。
ただここで考えておかねばならないのは、この戦争を最終的に解決するのはウクライナ国民とロシア国民であることだ。日本を含め外国のできることは、ウクライナへの支援と、ロシアへの制裁しかない。
ロシアとウクライナへの軍事力との差が大きいので、ウクライナの敗北に終わるのではと悲観的な見方が多い。
しかし、そうとばかりは言えない。
今回に似たケースに、第二次世界大戦の直後にソ連がフィンランドに攻め込んだ「ソフィン戦争」がある。フィンランドは1918年までロシア帝国に組み込まれていて、ソ連がドイツとの戦争に備えてフィンランドを併合しようとしたものだ。ソ連とフィンランドとの軍事力の差は歴然としており、兵力で5倍、大砲や戦車など火力で30倍とロシアが上回っていた。当時のロシアの司令官は、この戦争は4日で片づけると豪語していた。ところが、ロシアは緒戦で手痛い敗北をきっし、以後は一進一退の膠着状態が続き、大戦終了時にフィンランドは独立を保つことができた。
だから、早計な予想は避けた方がいい。
今回の戦争に、アメリカやNATOが軍事介入をしていないことに批判する者もいる。しかし同盟国でもないアメリカが直接軍事介入する大義名分がない。ベトナム戦争からイラク戦争を経て、アメリカには外国の戦争に対する厭戦気分も広まっているだろう。NATOに未加盟のウクライナに対して、NATO諸国が軍隊を派遣するのは難しい。こうした無責任な発言は意味がない。
今回の「ロシアのウクライナ侵略」に乗じて(尻馬に乗って)、日本の軍拡を主張する声が出ている。ウクライナの次は日本だと、不安を煽っている。しかし日本とウクライナとでは置かれている状況が大きく異なる。
なかには安倍や維新のように、核兵器の日本への配備を議論すべきと言い出すのもいる。「議論する」というと体裁がいいが、政治の世界では「推し進める」を意味している。彼らの主張通り、日本が核武装し、先制攻撃を合法化すれば、先のアジア太平洋戦争の記憶をよびさまして、アジア諸国がいっせいに核武装に走るかも知れない。「貧者の武器」である核兵器は、どの国でもその気になれば容易に作れる。
こういう時こそ、冷静さが求められる。
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