竹田恒泰の全面敗訴
東京新聞5月8日付けのコラムに内田樹(神戸女学院大学名誉教授)が、作家の竹田恒泰と戦史研究家の山崎雅弘との間で争われた民事訴訟の裁判結果について書いている。
問題になったのは、山崎が竹田に対して差別主義という論評を行ったことで、竹田が論評によって受けた被害について数百万円の賠償を求めた裁判だ。
結果としては、地裁、高裁、最高裁ともに、山崎の論評は名誉棄損に当たらないとの判断で、竹田の全面敗訴となった。
判決理由として、裁判所は次のように述べている。
「原告の思想を『自国優越思想』と表現することは、論評の域を逸脱するものとは言えない」
「原告の思想を『差別主義的』とする被告の論評は相応の根拠を有する」
「原告が元従軍慰安婦につき攻撃的・侮辱的な発言を繰り返し、在日韓国人・朝鮮人につき、犯罪との関連を示唆し、その排除を繰り返していることに照らせば、これらの発言を人権侵害の観点から捉えることについても相応の根拠を有するものである」
内田はこれらを当然のこととしながら、言論人である竹田は裁判に訴えずに、言論をもって反論すれば済むことだったと指摘している。
竹田のように、著作物を公刊していて、様々なメディアに登場して発言をし、一定の影響力を持つ人間なら、言論の場で自らの主張をすべきだったのではなかろうか。
一度被告になれば、弁護士を雇い、書面を準備し、長い時間を裁判のために費やすことになる。
勝訴した山崎の場合では、2年3ヶ月と数百万円の費用を要したそうだが、勝訴してもこれらは返ってこない。山崎の場合は、1400人の支援者からの募金があったので裁判費用に充てることができたが、資力のない市井の人間には耐えがたい負担だ。
どこやらの政党関係者は、何かというと裁判に訴える傾向がみられるが、権力や財力、人脈をバックに相手を委縮させる手段として、訴訟を乱用しているとしか見えない。
(敬称略)
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