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2022/06/05

「風俗」が最後のセーフティーネットという現実

「デリヘル」(デリバリーヘルスの略、性風俗特殊営業の一つで、無店舗型で出張ヘルスともよばれる)の店数が、セブンイレブン店舗数を上回るときいて驚いた。働く女性の数は数十万人と見られている。
この分野は当方は素人で知らないことが多い。1998年の風営法改正によりデリヘルは合法化され、その一方で従来の店舗型風俗店に対する取り締りが厳しくなったので、届け出だけで営業できるデリヘルが急増した。
考えてみれば可笑しな話しで、接客する女性にとっても男性客にとっても、店舗型の方が管理がしっかり出来るし、より安全な気がするのだが。
新聞に、風俗は女性に対する「性的搾取」と書かれているのを見て、それはあまりに一面的だと思った。
坂爪真吾『性風俗のいびつな現場』 (ちくま新書) – 2016/1/7初版)を読んで、その感をますます深くした。タイトルとは異なり、著者がデリヘルの現場を歩き、店の経営者や従業員の声を通して実態に迫り、社会福祉との接点を見出そうとする内容になっている。
店の種類も様々で、60分1万数千円の高い店もあれば、3900円という激安店もある。派遣先の多くはホテルになるので、ホテル代は別だからそれなりの出費になる。
店は無店舗だが、女性を待機させる部屋(時には保育施設も有り)が必要で、女性を送り迎えするための車両と運転手が要るため、経営は容易ではない。
高い店はそれなりの容姿が求められるので、面接に行って採用されるのは1から2割程度。激安店になると希望者は全員採用されるが、稼ぎは本人の腕次第ということになる。
男性利用客の年齢は40台が中心で、経済的にゆとりのある人が多い。女性の年齢は18歳から70歳までと幅広い。男性の好みが幅広いからだ。
本書では特に底辺の店を中心に取材しているが、そこで働く女性の中には、精神疾患者、知的障碍者、持病を持つ人、アルコールや薬物依存症、肥満、中高年者、DV被害者といった人が殆んどで、社会福祉の対象にならないか、或いは現状の福祉制度ではカバー出来ない人が多い。
離婚その他の理由でシングルマザーになった人も多く、子どもの教育費を稼ぐためという人もいる。別に仕事をしながらという兼業の人が多数を占める。
デリヘルの存在が、彼女たちやその家族の暮しを支えているのだ。
一度この業界に入ると、なかなか抜け出せないのはそうした事情があるからだ。
この本に出てくる経営者は例外なのかも知れないが、女性たちの自立を後押しする試みにもチャレンジしている。著者と共同で、弁護士やソーシャルワーカーの協力を得て無料の相談会を開き、福祉との連携を図る試みを行っている。
著者は最後に、風俗を絶対悪として叩くのではなく、ソーシャルワークと連携して、風俗を社会問題として貧困と闘う最前線基地として位置づけることを提案している。
未知の世界だったので、とても参考になった。

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