日本は「同調圧力社会」
作家・吉村昭の『東京の戦争』で、「戦時中は軍と警察が恐ろしかったといわれいるが、私の実感としては隣り近所の人の目の方が恐ろしかった」と書いている。そう感じた人は多かったのではなかろうか。
隣組の防空訓練に病弱のため参加しなかった主婦を、組長がその家に行って非国民だとののしった。50代のその男の顔には、独裁者のような傲慢の表情が浮かんでいた。
灯火管制が敷かれると、隣組の幹部が家々を巡回し、電光が漏れている家があると怒声をあげて注意する。
日本は「ムラ社会」の特徴である「同調圧力社会」でもある。
政治の世界では、1940年に多くの既成政党が解散し、大政翼賛会を結成する。ナチスと同様の一党支配になるのだが、政党の解散は法律によるものでもなく政府の命令でもない、「自主的」に解散したものだ。
1940年には第二次世界大戦の端緒となるドイツの進撃が始まると、それがメディアを通じて日々報道され、国民の多くは喝采をもってこのニュースを迎えた。いずれイギリスが降伏するのは時間の問題だし、ソ連も敗北するという見方が拡がっていた。現地の外交官からは、こうした安易な判断に警告する声があったが、メディアや国民の熱狂にかき消されてしまった。
「バスに乗り遅れるな」がスローガンになり、日本も従来の英米偏重から、これからは欧州を制覇するドイツというバスに乗っかるべきというわけだ。
こうした背景があって、メディアと国民は「日独伊三国同盟」を熱狂的に支持し、対米戦争に突入していく。
私たちは、当時の政府や軍がメディアや国民の声を統制し、無謀な戦争に突入していったと教えられてきたが、実際は政府や軍がメディアや国民の声に押されて、戦争を拡大していったという面が強い。
戦時中の言論統制にしても、もちろん政府の意向があったにせよ、メディアの側が積極的に加担していた。言論統制の責任者が、当時の新聞社の幹部で占めれていたのがその証拠だ。
「同調圧力社会」では、組織内は「同質性」が求められる。企業にせよ学校にせよ、異論は排除される。
かつて同僚だった社員が役員に意見を具申したところ、「君は共産党か」と言われたと憤慨していた。
それは今の日本でも続いている。
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