文藝春秋『日本左翼100年の総括』
月刊誌「文藝春秋」8月号は『日本左翼100年の総括』を特集している。100年としているのは、今年で日本共産党が創立100周年を迎えるのに合わせたものだろう。中身も左翼全般を扱っているが、やはり共産党への批判が中心だ。
目玉は「池上彰X佐藤優」という二人の知性の対談だ。記事にして25ページを割いているが、内容としては特に目新しいものはなく、新たな視点も見当たらないので、ちょっとガッカリ。
当方の見解を補足すると、もし宮本顕治がいなければ、とっくの昔に共産党は消滅していた。ミヤケンの最大の功績は、それまで党の財政は海外の社会主義国からの援助に頼っていたが、それをやめさせ、党の財政基盤を確立したことだ。その結果、1960年代の中ソ論争(ソ連と中国の共産党同士が主導権をめぐって争った)では、その双方を批判し自主独立を貫くことができた。他の外国の党の多くが、そのどちかについて、やがて崩壊していったのと対照的だ。
対談のなかで佐藤が、「連合」の芳野会長が共産党を排除する主張を繰り返していることに、戦後の2・1ゼネストや1964年の4・17ストを持ち出しているが、時代錯誤だ。「連合」は、もともと総評を潰すために財界主導で作られたもので、骨の髄から反共なのだ。
対談の終わりに、池上が「共産党のような存在が全くいない社会は、ちょっと怖いなと私は思う」、対して佐藤は「ただ、それが多数派になってしまったら困りますけど」と受けているが、妥当なところだろう。もっとも多数派になることは今後もあり得ないが。
筆坂秀世が、「宮本顕治と不破哲三」と題する記事を書いている。
筆坂は、セクハラで最高幹部から一気に平党員に降格され、今では内部情報を切り売りして糊口を凌いでいる。情ない話しだ。
田原牧の「重信房子」ついての記事では、周囲の人間が彼女を伝説化していった経緯がよく分かった。世間で言われる程の人ではなかったようだ。
樋田毅が、1970年前後の学生運動、特にセクト同士の暴力の応酬について書いている。私は運動の外側にいたので知らなったことが多く、興味深く読んだ。いわゆる「内ケバ」は凄惨を極め、およそ100人もの学生が命を落としたとある。犠牲になった方には申し訳ないが、なんていう無意味な事をしたんだろう。
暴力からは何も生まれなかった。
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