あの歌は「ロシア民謡」ではなく「ソ連歌謡」だった
若かりし頃はせっせと歌声喫茶に通ったが、購入した小さな歌詞カードには沢山の「ロシア民謡」が並んでいた。人気コーラスグループ「ダークダックス」の持ち歌にも「ロシア民謡」が多かった。
しかし、その後に調べてみると、実は「ソ連歌謡」、しかも「戦時歌謡」ともいうべき曲が多かったことが分かった。
「カチューシャ」
りんごの花ほころび 川面に霞たち
君なき里にも 春はしのびよりぬ
君なき里にも 春はしのびよりぬ
日本語の訳詞で日本では最も人口に膾炙していて、ロシアの代表的な曲だ。
YOUTUBEでロシアでのライブを見ると、例外なく男性も女性も子どもも軍服を着て歌い、会場ではロシア国旗が振られている。
イサクフスキー作詞・ブランデル作曲の戦時歌謡で、この黄金コンビはこの他にもヒット曲が多い。日本でいえば、西城八十・古関裕而コンビニあたるかな。
余談になるが、スナックにロシア人ホステスを見かけたので、ロシア語(正確にはカタカナ語)で歌ったら、とても喜んでくれた。お試しあれ。
原曲は、国境警備についている青年と故郷の娘という設定になっている。
従って原詩は、
彼は愛すべき祖国の地を守り抜き
カチューシャは愛を強く守り抜く
といった歌詞になっているようだ。訳詞は随分とマイルドに変えている。
「ともしび」
夜霧のかなたへ 別れを告げ
雄々(おお)しき ますらお
出(いで)て行く
窓辺にまたたく ともしびに
つきせぬ乙女の 愛のかげ
抒情的な訳詞と曲想が日本人にあっていたのか、広く歌われていた。
この曲も、イサクフスキー作詞・ブランデル作曲の戦時歌謡だが、なぜかオリジナルの曲は流行らず、作曲家不詳の現在のメロディがロシアでも日本でも歌われている。
戦地に向かう兵士と、それを見送る娘の姿を描いたもので、原詩では
祖国ソヴィエトのために
懐かしきともしびのために
といった歌詞が付けられているが、「楽団カチューシャ」のマイルドな訳詞が当たったようだ。
「泉のほとり」
泉に水くみに来て 娘らが話していた
若者がここへ来たら 冷たい水あげましょう
緑の牧場にひげづらの 兵士がやって来て
冷たい水がのみたいと 娘たちにたのんだ
美しい娘さん ひげづらを見るな
兵士にゃひげも 悪いものじゃない
私は陽気な若者
ダークダックスの日本語の訳詞が有名で、ロシアの歌では珍しい牧歌的な曲だ。
アナトリィ・ノヴィコフ作曲の戦時歌謡で、独ソ戦が終了してから作られた、戦場での兵士の若い女性たちとの束の間の出会いを描いた歌だ。
原詩では、
僕らは 2カ月続けざまにドイツ人をやっつけた
娘たちよ、僕らの服装を許しておくれ
となっており、マイルドな訳詞が成功したのだろう。
ロシアによるウクライナ侵攻を眼の前にして、これらの戦時歌謡を見ると、複雑な気持ちになる。
これも余談だが、 深尾須磨子作詞・ 橋本國彦作曲の「いずみのほとり」という別の曲がある。小学校の学芸会で憧れの女子生徒が舞台で踊った時に、チラリと下着が見えた時は心臓が止まるかと思った。
あの頃は純情でしたね。
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