戦時歌謡と伊藤久男
軍歌と混同されることが多いが、軍歌は軍が依頼して作らせたもので、レコード会社など民間で作ったものは戦時歌謡という。
戦時歌謡といえば、落語ファンなら川柳川柳を頭に浮かべるだろう。十八番の『ガーコン』では歌いまくっていたっけ。私も戦時歌謡が好きで、川柳が披露した曲の8割はソラで歌えた。
戦時歌謡を代表する歌手のひとりに伊藤久男がいる。
思いつくだけでも、『露営の歌』『白蘭の歌』『父よあなたは強かった』『暁に祈る』などのヒット曲がある。作曲家の古関裕而と組んだ歌が多い。力強いバリトンが勇ましい曲にピッタリだった。
かなり以前のことになるが、あるTV番組で戦時歌謡の特集があり、数名の歌手と一緒に伊藤も出演していた。
それぞれが戦争中の苦しい思い出を語った後で、司会者が纏めようとした時に、突然、伊藤久男が立ち上がり「あの当時は良かったよ」と語りだし、「今は金だけでしょ」と続けた。当時は使命感を持って歌っていたと言いたかったのだろう。
司会者も他の出演者も一瞬にして凍りつき、司会者の困惑した表情が印象的だった。まさに空気を読まない、事前の打ち合わせとは異なる発言だったに違いない。
伊藤の胸の内は想像するしかないが、戦時中に活躍した作詞作曲家や歌手の多くが、あの当時は軍部の圧力でやむを得ず協力させられたと言い訳する姿に、伊藤は我慢がならなかったかなと思える。
伊藤は、終戦直後は、戦時歌謡を多く歌った責任感から疎開先に引きこもり酒に溺れて再起不能とも言われたが、その後再起して詩情豊かな抒情歌で数々のヒットを飛ばした。
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