人道と極右
アフリカや中東から、戦乱や貧困から逃れるために多くの人々がヨーロッパ各国を目指した。移民や難民と言われる人々だ。各国は人道の立場から、そうした人々を受け入れ援助してきた。
人々は生きるために職を求めて行動し、多数の人たちは低賃金労働者となってゆく。その結果、職を失ったり賃金がさらに下げられたりする状況が生まれ、国民の間に不満が溜まってゆく。
一部はドロップアウトしてギャングなど暴力集団を結成し、治安の悪化を招く。
そうした国民の不満を吸収し、自国民以外の人たちを排除する排外主義が強まり、その結果、ヨーロッパ諸国で極右政党が台頭してきた。
例えば、かつては高福祉高負担の福祉国家モデルとして称賛されたスウェーデンでは、銃の乱射事件が多発するなど治安が悪化してしまった。「非北欧系」が多数を占めるゲットーが増えているとして「非北欧系」の人口を最大50%に抑える案まで浮上している。
欧州連合(EU)加盟国の議会でも強硬右派や極右のポピュリスト政党が議席を伸ばすのは珍しくなくなっている。独統計会社statistaのまとめなどによると、各国議会における議席占有率は次の通りだ。
ハンガリー「フィデス・ハンガリー市民連盟」59%
ポーランド「法と正義」51%
イタリア「同盟」21%
フィンランド「真のフィンランド人」20%
オーストリア「オーストリア自由党」17%
フランス「国民連合」15%
スペイン「Vox」 15%
ベルギー「フラームス・ベランフ」12%
オランダ「自由党」11%
ドイツ「ドイツのための選択肢」11%
デンマーク「デンマーク国民党」9%
ポルトガル「Chega」 5%
ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢」は完全に市民権を獲得し、今年4月のフランス大統領選では「国民連合」のマリーヌ・ルペンがエマニュエル・マクロン仏大統領に詰め寄った。
9月のイタリア総選挙でトップを走ったのは、新興の極右ポピュリスト政党「イタリアの同胞」だ。ジョルジャ・メローニ党首が同国初の女性首相になる可能性が強い。「イタリアの同胞」はネオ・ファシスト政党の政治的後継者だ。
アメリカのトランプへの根強い支持も、同様の傾向と見ていいだろう。
極右やポピュリスト政党をいくら批判してみたところで、問題は何一つ解決しない。
エネルギー高騰やインフレで市民の生活が困窮する中で、残念ながら人道主義は益々影が薄くなってゆくようだ。
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