世論は気まぐれだ
世論調査では、防衛費の増加に賛成する人が6割を超えている。岸田首相としては、これで国民の支持を得たと思ったのだろう。防衛費を増やした分は、いずれ国民が負担せねばならぬのは分かり切ったこと、と岸田は考えたのだろう。国民は既にそれ相当の覚悟ができた筈だと。
処がそうではなかった。
増税に話が及ぶと、途端に反対の声が大きくなった。防衛費増と増税は別ものだったのだ。
時事通信の最近の調査では、防衛費増への賛成と反対がほぼ30%台と拮抗してしまった。
世論とはかくも気まぐれなものなのだ。
国債で賄えという意見もあるようだが、今現金が無いからローンにしてくれというのと同じであり、返済が元利合計となるのでより負担はより重くなるだけだ。
初めに金額ありきがけしからんという批判があるが、今回の防衛費増は元々安倍元首相が防衛費をGDPの2%にすると言い出したのが始まりで、岸田はその主張をを継承しているだけだ。
その安倍の主張も米国の要請に応えたものであり、確たる根拠があったわけではない。
いま政府が国民に問わねばならぬのは、防衛費UPのためには23年度からの5年間だけで43兆円の財源を確保せねばならぬこと。
そのためには増税が不可欠で、所得税、法人税、消費税などあらゆる選択肢を俎上に乗せて検討してゆくと正直に(岸田の常套句なら”丁寧に”)説明することだ。
さらに防衛費については金額だけの問題にとどまらず中身のこともある。
政府が閣議決定しようとしている安全保障関連3文書では、今回初めて反撃能力(敵基地攻撃能力)が明記されている。これは日本の安全保障政策の大転換であり、憲法に抵触する可能性がある。
日本が反撃能力を持てば、他国は恐れをなして攻撃をしなくなると言うのは希望的観測に過ぎない。逆に警戒感をより強めて一層の軍拡に走ったり、より精巧な兵器を備えたりすることだってある。
軍拡競争で大事なことは、相手側の意図を正確に予測することにある。アジア太平洋戦争では、それで失敗したではないか。
防衛費増額については日本の大きな転換点になるので、政府はここで国民に信を問うべきだ。
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