原発は廃止できるか
川口マーン恵美「ドイツの脱原発がよくわかる本」(草思社2015/4/11初版)
本書は現在の脱原発を批判しており、当面は原発稼働に頼ざるをえないと結論づけている。
類書と異なるのは、
①著者はドイツと日本の発電所や電力会社の現場を見てまわっていること。そのため主張が観念的ではなく実証的。
②著者は究極的には原発は廃止すべきだという立場だが、いま性急に進めるのはリスクが多すぎると主張。
本書が発売された当時、ドイツは脱原発に大きく舵を切っていた。同時に再生可能エネルギーの増設を進めていた。
著者は、こうしたドイツのエネルギー政策はいずれ破綻するだろうと予測していたが、不幸にもその予測が的中してしまった。
ロシアからのLNG供給がストップしてしまうと、一気に電力不足になった。原発を再稼働し、石炭火力発電を増設して急場を凌いでいる。
電力化会社の使命は「必要な時に必要な電力を供給すること」にある。
不足すれば停電になり、過剰に流せば設備のトラブルを引き起こす。
再生エネルギーの泣き所は、自然の気象条件任せで供給が安定しないことだ。必要な電力は時々刻々と変化するので、電力会社はそれに対応すべく神経を尖らせている。
電力というと発電にばかり目がいくが、送電線の能力も大きな問題だ。
供給が不安定な再生エネルギーには、バックアップの電源が不可欠だ。
日本の場合、バックアップには揚水発電が行われている。簡単にいえば、水力発電に使った水を下部ダムにためておいて、その水をポンプで上部のダムに汲みあげて発電させるという方法。この方法の弱点は、揚水のポンプを動かすのも電力を消費することで、実際には赤字とある。
再生エネルギーの実用化には、大規模で経済的な蓄電設備の開発を待たねばならない。
さらにドイツと比べて日本のエネルギー問題の深刻さがある。
①自国にエネルギー資源が皆無である。ドイツは石炭が豊富だ。
②電力を譲りあえる近隣の国がない。ドイツはフランスとの間で頻繁に電力を交換している。
当面、日本は原発を稼働せざるを得ないというのが著者の見解だ。
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