台湾というリスク
今でこそ中国による台湾侵攻が日本の安全保障上の重大問題としてクローズアップされているが、私の若い頃は逆に台湾が中国本土への侵攻を図り攻撃を行っていた。
当時の日本では左翼政党を除き、与党の大勢は台湾の行動を支持していた。
中国では、第二次世界大戦を挟んで国民党と共産党との長い戦いを経て、1949年に共産党が勝利し、国民党は台湾に逃れる。
しかし、共産党政権が中国全土の支持を受けていたわけではなかった。
むしろ国民党内部の腐敗がひどく国民から見放された結果、共産党が政権を握ったのであって、いわば国民党の勝手なオウンゴールによるものだった。
台湾の国民党は中国本土の政権の脆弱性と、革命後の混乱に乗じて本土を攻撃し、政権の奪還を図った。
これが1962年から始まった通称「台湾による中国本土反攻作戦」と言われる「国光計画」だ。
当時の中国は台湾が代表していた。国連でのChina(中国)は台湾であり、今の中国はRed China(中共)と呼ばれていた。国際的には台湾に正当性があったわけだ.
台湾は陸海空軍を総動員して中国本土への上陸作戦を敢行する。
台湾はアメリカとの間で「米華相互防衛条約」を結んでおり、当然台湾はアメリカが支援するものと期待していた。
ところがアメリカ政府は台湾の行動を「中国の国内問題」として、中立の立場を表明してしまった。結果として、この時のアメリカ政府の判断は正しかった。
アメリカからの支持を失った台湾はそれでも軍事行動を強行したが、手痛い敗北を喫し大陸反攻を断念する。
1970年代に入ってからは、国連での中国代表権は台湾から今の中国に移ってしまい、日本政府もこれに追随する。
こうして見ていくと、中国が「台湾は中国の国内問題」という主張もあながち的外れとは言い切れない様に思える。
この様に安全保障の環境というのは時代とともに変化していくので、注意が必要だ。
現在の日本は台湾と友好関係にあり中国を仮想敵に見なしているが、もしこれから台湾が親中の国民党政権に移った場合、日本の安全保障も練り直しが求められるだろう。
その時は却って台湾支持がリスクになることもあり得るわけで、中国との関係も注意して舵取りをせねばなるまい。
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