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2023/03/05

「極め付き」の落語と演者

「極め付き」とは、一般にすぐれたものとして定評のあること、折り紙つきを指す。「極め付きの芸」という言い方がある。
ここでは現在のところ最高であり、これからもこれを超えるものは出現しないだろうと思われる4席を紹介する。

三代目春風亭柳好「野晒し」
実際の高座をみて強烈な印象を受けた。
新宿末広亭の高座に柳好が上がってくると、会場全体がパっと明るくなった。客席からはいっせいに「野晒し」の掛け声があがる。顔をあげた柳好が軽く頷きネタに入る。
唄い調子にのってテンポよく運ぶ噺に会場は爆笑の連続。
柳好のこのネタの肝は釣り人が唄う「さいさい節」で、これを超える演者に出会った事がない。

三代目桂三木助「芝浜」
登場人物は二人だけで、15ー20分ほどで演じる小品といって良い。芝の浜に買い出しに行き財布を拾う。家に帰ってお祝いだといって仲間と宴会を開く。ひと眠りして起きたら、女房が全ては夢だっと言い張り、亭主は納得してしまう。
そんな分けは無いだろう。これはメルヘンなのだ。
メルヘンをメルヘンとして演じた三木助の高座が全てだ。
これを近ごろでは噺をこねくり回して妙にリアリティを持たせたり、尾ひれを一杯つけて長く引き伸ばし大ネタとして演じる傾向があるが、方向性が間違っている。

八代目三笑亭可楽「らくだ」
以前の記事でこの噺については詳細に書いているので、興味のある方はそちらを参照願う。
古典落語の登場人物はほとんどが町民階級だ。これは当時の寄席が町民によって支えられていたからだろう。
このネタはその下の最下層に属する人たちを描いたもので、彼らの倫理観やネットワークが表現されている。
注目すべきは、屑屋のらくだに対する強い恨みで、それでいてらくだの葬礼を引き受ける優しさが同居している。
この部分の描き方が可楽が優れており、東京上方を含め可楽の「らくだ」を超えるものに出会ったことがない。

桂米朝「百年目」
このネタの肝は、部下の失敗に上司はどう対処すべきかという普遍的な意味を含んでいることだ。
特に大旦那が番頭を説諭する場面で、厳しさと同時に相手を励ましてみせる度量の深さが感じられる。
この大旦那の風格が米朝の真骨頂だ。
今後も米朝を超える演者は出てこないだろう。

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コメント

亡父は黒門町と柳好が贔屓でした。
「柳好ってのは面白かった」とニコニコして語っていました。
客席から声がかかる、なんていうのは落語家冥利に尽きるでしょうね。
小さんには「大工調べ」とかかったと聞いたことがあります。

福さん
入院で返信が遅くなって申し訳ありません。あれほど客席から一斉に声がかかるというのは、柳好だけでしょう。

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