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2024/09/14

書けない

突然言葉が書けなくなる、障害です。

2024/09/08

「大東亜戦争」を主導した武藤章

川田稔『武藤章 昭和陸軍最後の戦略家』 (文春文庫)

昭和10年代から20年にかけて日本が行った戦争は、正式には「アジア・大平洋戦争」と呼ばれる。
本稿ではこの戦争の鍵を握る、いうなれば戦争を主導したと言ってもいい「武藤章」について書くので、その当時の作戦や戦争の推移を含めて、敢えて大東亜戦争という名称を使うことにする。
武藤章はA級戦犯として東京裁判で死刑判決を受け処刑されている。
私もそうだが名前にあまりお馴染みがなく、どんな人物だったか知らなかった。
川田稔の著作を読むと、武藤章は大戦を通して陸軍軍務局長という要職にあり、陸軍きっての戦略家として戦争の企画に係わり主導してきたとと思われる。
武藤が描いた戦略とその結果の概略を記す。
日本は中国に侵出して満州という傀儡国家を作った。
しかし資源が少ない日本は、その資源を求めて北支に侵出する。
そこから中国との全面戦争になるが。中国軍の抵抗が予想以上に強く、重慶に拠点を置く蒋介石政府との戦闘は一進一退で膠着状態に陥る。
そうこうしているうちに戦争の近代化に伴い、戦争は国家をあげての総力戦となり、日本も国民あげての総動員体制が築かれる。
戦争の形態も航空機や船舶の比重が増え、それに伴い石油、アルミ(ボーキサイト)、ゴムの需要が高まるが、中国にはこうした資源がなく、南方に侵出することになる。
そうした国の多くはイギリスやオランダ、フランスの植民地であり、外交交渉が進展しなければ武力侵攻となる。
日本軍は先ずインドシナへ侵出し、そこからシンガポールを占領、他の東南アジア諸国への足場にして他国を占領下において行く。
かくして日本は主導する大東亜共栄圏構想が出来上がる。
一方、日独伊三国同盟を結んでおり、そのドイツが周辺国を破り占領を進めていた。
さらにイギリスを攻撃して、上陸寸前まで行く。
これに危機感を持ったのはアメリカで、もしイギリスがドイツに占領されるような事態になれば、アメリカ本土が危険になる。
そこで同盟国の日本に対しても厳しい対応を取ることになり、日本の南方侵出、即ち大東亜共栄圏と正面からぶつかることになる。
ここに至って、日本として対米戦争に進むかどうか問われることになる。
ここまで戦争を主導してきた武藤章だが、日米の経済力の差があまりに大きく(約10倍の開き)日本の敗北は避けられず、何とか対米戦争を回避しようとする。
最初は三国同盟にソ連を加えて日独伊ソの四国同盟を結成し、アメリカを抑える構想を持っていたが、ドイツの対ソ連の戦闘で実現不可能となった。
しかし大本営や海軍は開戦やむ無しの方針を変えず、御前会議において開戦が決まる。
世上、日米開戦には陸軍が主張し、海軍は批判的だったという風に言われていたが、事実はそうではなかった。
日米戦争は海軍が主体となるので、当然海軍の意志が尊重されていた。

本書を読んで感じたのは、確かに武藤章は対米開戦を回避すべく動いたが、それまで彼が推進してきた中国への侵出や大東亜共栄圏は、最終的には日米戦争に突入せざるを得なかったのではなかろうか。
果実だけ取ってリスクを回避するなんて上手い話はないし、戦略家としては見通しが甘かったように思う。
ただ東京裁判で武藤が死刑になる一方、大本営にいて日米開戦を主導した人物たちが罪に問われなかったという事実には首を傾げる。

2024/09/06

「和製〇〇」と呼ばれる歌謡曲の名曲

レコード店などへ行ってジャンル別に分けられた棚に「演歌」という項目で歌謡曲が区分けされているのが腹に立つ。
演歌はあくまで歌謡曲の一分野であり、日本の歌謡曲は様々リズムやメロディはを採り入れながら豊かな世界を形成してきた。
今回は「和製〇〇」と呼ばれる歌謡曲の名曲をいくつか選んでみた。
曲が古いのは選んだ人間が旧いせいだ。

【和製タンゴ】
タンゴのリズムを採り入れた歌謡曲は数多く、名曲を選ぶのに苦労するほどだ。
霧島昇『夢去りぬ』
服部良一が外国人の名前で作った曲で、歌詞も曲も素晴らしい。霧島昇も独特の低音の美しさを響かせて歌い上げている。
松島詩子『マロニエの木陰』
戦雲せまる時代によくこいう歌が出来、そして流行ったものだと感心する。日本の歌謡曲の中の不朽の名作と呼んでもいい。
【和製ハワイアン】
こちらも数が多く、好みで選んでみた。
岸恵子『ハワイの夜』
同名の映画の主題歌で、あまり知られたいないがメロディがとても美しい。若い頃この曲を聴いてはハワイに憧れたもんだ。
大橋節夫『南国の夜』
メロディが美しく大橋節夫の甘い歌声が効いている。
【和製シャンソン】
二葉あき子『巴里の夜』
セーヌ河の畔に越かけながらパリの夜空を見上げている、そんな情景が目に浮かんでくる。
岸洋子『夜明けのうた』
岸洋子の朗々たる歌声は感動的だ。
【和製ブルース】
エト邦枝『カスバの女』
退廃ムード一杯の曲をエト邦枝が退廃ムード一杯に歌っている。
ディック・ミネ 『上海ブルース』
異国情緒一杯の曲をディック・ミネが低音を効かせて歌唱。

ここからはちょっと変わった曲。
【和製マンボ】
トニー谷『さいざんすマンボ』
コミックソングの傑作。
【和製ボサノバ】
敏いとうとハッピー&ブルー『星降る街角』
やたら調子の良い歌。

2024/09/04

名も無き兵士たちの戦史『松本連隊の最後』

山本茂実『松本連隊の最後』 (角川新書–2022/5/9初版)
本書は先のアジア太平洋戦争に長野県出身の兵士たちから編成された松本連隊の戦史である。
戦史と名がつくものは夥しい数にのぼるが、その多くは部隊や指揮官などを中心としたものが殆どだが、本書の特徴は通常の戦史には登場しないような兵士たちを中心に描いたものだ。
著者の山本茂実は膨大な資料を読みこむと共に、帰還して故郷に戻っていた元兵士を一人一人訪ね歩き、1年半かけて貴重な証言を集めた。
本の中で書かれている亡くなった兵士、無事生き残った兵士の階級や氏名、出身地が記録されている。
松本連隊は主に山岳戦の技量を買われ、古くはシベリア出兵から、昭和10年代には中国に派遣され各地で転戦、いったんは任務を終えて解散するが、1944(昭和19)年2月に太平洋における日本海軍の最大の根拠地トラック島防衛のため派遣されることになる。
南太平洋の各所で米軍の攻勢に押され、防衛線をトラックに移し要塞化して米軍を迎え打つという役割を負っていた。
しかし、既に制空権や制海権を米軍に握られ、頼みの連合艦隊は攻撃を避けるため横須賀に帰還、最初から厳しい状況に置かれる。
連隊を乗せた輸送船が、がトラック島に向かう米軍の潜水艦を受けて沈没するなど、島に到着するまでに犠牲を出した。
残りの兵士はトラック島に上陸するが、米軍はこの島をターゲットにして猛烈な空爆を敢行する。
島に駐留していた航空機は全て爆撃で破壊され、周辺に係留されていた船も沈没させられる。
しかも全体の戦況は更に悪化し、本土からの補給も途絶えてしまう。
食糧も弾薬も尽きていた兵士たしは、米軍の攻撃に晒されながら陣地を築く一方、飢えとも戦うことになる。
本書の後半は、兵士たちが飢餓と戦い、あるいは生き抜き、あるいは亡くなってゆく状況が詳述されている。
トラック島には最早武器がなく、丸太砲(高射砲に偽装した丸太)が押し立てられていた。
作戦で近くの島に移送する命令がくだっても船がない。止むをえず椰子の木で筏を組み、漁船に引かせるという作戦を考案したが、これだと20日間かかってしまうので人間は生きられないと断念する。
こんな笑い話のようなエピソードが真剣に考えられていたのだ。
松本連隊の終戦までの死者はおよそ1000名と言われ、多くは餓死者であった。
本書は、愚かな戦争によって多数の犠牲者を出した先の戦争の実態を描いた力作である。

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