学問・資格

2014/10/20

ノーベル賞・中村修二氏「研究費の半分は軍から」

高校3年3学期の化学の最後の授業で、学科主任の教師は私たち生徒にこう訴えた。「戦争中は多くの化学者が戦争に協力した。君たちがもし化学の道に進むならそういう化学者には絶対になるな」と。それまでは保守的な教師という印象だったのでこの言葉に驚き、今でも強く記憶に残っている。

さて、今年のノーベル物理学賞受賞者の中村修二米カルフォルニア大学教授のインタビューが、10月18日付朝日新聞に掲載されている。
中村氏の主な主張は以下の通りだ。
①特許の権利を会社のものにするという政府の方針については猛反対だ。自分の裁判を通じて企業の研究者や技術者の待遇がよくなってきたのに、それをまた大企業のいう事をきいて会社に帰属させるのはとんでもない。
②米国ではベンチャー企業の起業が盛んで、科学者もみなベンチャー起業でお金を稼いでいる。ベンチャーの報酬の支払いは株なので、上場すれば何十億、何百億円という金になる。だから優秀な人はベンチャーに移り、出来の悪いのが大企業に残る。日本にはそうしたシステムがないから大企業からベンチャーにこない。
③米国の工学部の教授だったら皆コンサルティングやベンチャーをやっている。日本は規制が多くそれができない。
④日本はグローバリゼーションに失敗している。
⑤日本の教育制度について、小さい時からどんなものが好きかを見て個性を伸ばす教育をした方が良い。第一言語を英語、第二言語を日本語にするくらいの大改革をやらないといけない。
⑥米国の大学教授の仕事はお金を集めること。自分のところでは年間1億円くらいかかる。半分は軍からくる。軍の研究費は機密だから米国人でないと貰えない。米国で教授をして生きるなら米国籍を取得せねばならない。

要約すれば、”中村修二氏のように優秀な研究者は、日本では自由な研究ができず、実績に見合った報酬も受け取れない。それに対してアメリカでは科学者も自由にベンチャー企業を起業化でき、莫大な収入が得られる。日本もノーベル賞級の研究を行うとするなら、米国のような環境に整備すべきだ。そのためには教育を含めいっそうグローバリゼーションを推進せなばならない。”という事。

成功者は強い、何を言っても許される。
アメリカン・ドリーム。
しかしアメリカの研究者誰もが中村氏のいうように自由な研究ができ莫大な収入を得ているかというと、そうでもないようだ。むしろ少数であり、大半の研究者(中村氏の言う「出来の悪い」研究者たち)はそうした境遇とは無縁のようである。
中村氏の主張するグローバリゼーション=アメリカ化には賛成しかねる。
それより気になったのは、中村氏の研究費が年間1億円くらいで、その半分は軍から支給されていると述べている点だ。研究内容なむろん軍事利用であり、だからこそ守秘義務があるので米国籍が必要なのだ。
軍から毎年5千万円くらいの補助を貰わないと教授として生きられないという実態について、さらにはそのために研究成果が軍事利用される恐れについては、中村氏はどのように考えているのだろうか。
ノーベル賞創設の経緯からみて、いかがなものか。

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2014/05/08

【臭い物にフタ】STAP論文不正を理研調査委「再調査せず」

理研は「臭い物にはフタをする」に成功したようだ。過去形だから「フタをした」かな。
STAP細胞論文の研究不正を調べていた理化学研究所の調査委員会(渡部惇委員長)は5月7日、著者の小保方晴子ユニットリーダーからの不服申し立てを退け、再調査しない方針をまとめ理事会に報告した。
調査委は4月1日、STAP論文について、小保方氏による画像の捏造などがあったとする最終報告書を公表した。笹井芳樹氏ら論文の共著者は、責任重大だが研究不正はないとした。
それに対し小保方氏側は「調査が不十分」「真正な画像データは存在する」と主張し、新たな調査メンバーによる再調査を求め、不服申し立ての内容を補充する資料を提出していた。
理研の調査委員会は、小保方氏側から、再調査をしなくてはならないような新たな資料の提出がなかったと判断した。
報告が理研の理事会で承認され、小保方氏が不正をしたという理研の見解が確定すると、今後は小保方氏の処分が検討される。

STAP細胞に関する研究について、その成果を特許出願し、論文を発表させ、記者会見を開いて技術をPRしたのは全て理研の命令によるものだ。小保方氏はその指示に従っただけだ。
その後論文の一部に不正が見つかり外部から指摘を受けると、掌(てのひら)を返したように担当者に全ての罪を被せて自分たちの責任は頬かっぶり。
小保方晴子リーダーの上司にあたり、STAP論文の共著者でもある笹井芳樹発生・再生科学総合研究センター副センター長が行った4月16日の記者会見では、自分のSTAP論文への関わりは最後の仕上げ部分のみであったと述べている。
しかし問題の英ネイチャー(Nature)誌の論文では、笹井氏が論文作成、実験、研究デザインと全般に関わっていたことが記されている。
もはや笹井氏は逃げの一手なのだ。調査委員会の見解もこれに追随したものになっている。

・実験データの中で論文の結論に都合の良いデータだけを取り出し、他のデータは切り捨てる。
・実験で得られた画像が不鮮明であれば、切り貼りや別の画像に差し替えを行う。
この2点が不正だ捏造だということになれば、過去の多くの論文が引っ掛かることになるだろう。
他の研究論文にボロが出る前に、早く幕引きを図ったというわけだ。
小保方という尻尾を切り、理研も上司も生き残る。
悲しいけど、これが現実。

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2014/04/25

なぜ研究者は「画像切り貼り」するのか

新たな万能細胞「STAP細胞」の論文に不正があったとされる問題で、理化学研究所の調査委員長を務めた石井俊輔・理研上席研究員が4月25日、自身の論文に不正の疑義が出たことを理由に委員長を辞任した。調査委は、現在STAP細胞論文の不正問題で著者の小保方晴子・理研研究ユニットリーダーから出された不服申し立てについて審査中であり、再調査の判断にも影響が出そうだ。なお後任の委員長は、調査委員の一人の渡部惇弁護士と決った。
辞任の原因となったのは、石井氏が2004年と2008年に責任著者として発表したがんに関する論文について、画像の切り張りや使い回しが指摘されたものだ。石井氏は、いずれも実験データがそろっていることから「不正はない」としている。
理研は石井氏の論文不正疑惑の指摘について予備調査を始めた。不正の疑いがあると判断すれば、STAP細胞論文と同様に調査委を発足させるようだ。

負の連鎖、どこまで続く泥濘(ぬかるみ)ぞ。

科学技術論文で画像の切り貼りというのはかなり広範囲に行われていると考えた方が良い。これが全て「不正」だとするなら、不正論文の数は際限なく拡がるだろう。
なぜ論文の「画像切り貼り」が行われるのだろうか。
科学論文というのは何かを証明するわけだが、典型的な例としてAとBの二つの結果の違いを証明するとしよう。Aは従来の試験結果、Bは新たな試験結果だ。
この違いがデータやグラフだけで証明できれば良いのだが、研究内容によっては画像や映像でしか証明できないものもある。
研究者自身は実際の測定装置で違いが明確に分かるのだが、これを写真に撮影し一定のサイズの画像として論文に添付する時、読む方からするとその違いが分かり難いということが、ママある。そうなると証明の訴求力が薄れてしまうわけだ。
そこで違いが明確に分かるような画像の切り貼りや、別の実験から得た画像に差し替えて、論文に貼りつけるという様な操作が行われる事がある。これによって研究者が実験室で確認したような違いを、論文上で再現させることになる。
心当たりのある研究者も少なくないだろう。
厳密にいえば不正だ捏造だということになるのだが、研究者側から言わせれば不正ではないということになる。
無いものを有ると言ったり白を黒といえば明らかなウソだし捏造だと言い切れるのだが、この辺りはいわばグレーゾーンで悩ましい所だ。

実はこの説明を我が家で女房と娘にしたら、それはインチキでしょうと総スカンを食らってしまった。反論の余地なし。
世の中に正義感ほど強いものはない。

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2014/04/13

「STAP細胞」の特許について理研側の説明を求める

昨日の記事に書いたように、「STAP細胞」の特許出願は理化学研究所(理研)と東京女子医科大、米国ブリガム・アンド・ウィメンズ病院の3法人による共同出願となっており、既に公開されている。
特許権を得た場合は出願人だけが、あるいは出願人が許諾した者だけがこの発明を実施できるという排他的な権利だ。
そこで、
1,「STAP細胞」の特許出願にいたった経緯
2,なぜ理研の単独出願にしなかったのか
3,特許出願の共同者をなぜ東京女子医科大と米国ブリガム・アンド・ウィメンズ病院にしたか
4,発明者(研究開発者)から出願人への権利の継承はどのように行われたか
5,特許権を得た場合の出願人相互の権利関係はどのようになっているのか
について、理研側は明確に説明する必要がある。
理研の予算の大半は国から、つまり私たちの税金から支出されている。従って、国民に対する説明義務があると考える。

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2014/04/12

STOP!「STAP」騒動

私には世間がなぜこんなに「STAP細胞」問題で大騒ぎしているのか、その理由が分からない。4月9日、STAP細胞論文に「不正があった」という理化学研究所の判断を受け、研究ユニットリーダーの小保方晴子氏が反論のための記者会見を開いたが一向に沈静化する気配がない。ネットニュースのランキングでも常にこの問題が上位を占めているし、先日の会見ではTV中継まであったそうだ。
日本人全体が科学技術の進歩に著しく関心を持ったとあらば、それは大いに結構なことだが、報道やネットの記事を見る限りではどうもそうは見えない。専ら小保方氏への言論による集団リンチともいうべき個人攻撃やスキャンダルに関心が集まっているかのようだ。

バイオには門外漢なので的が外れているかも知れないが、今の段階で言えることは、まだ「STAP細胞」は技術的に未完成であり、発表された論文に不備があったということだけではなかろうか。それ以外になにかあるのだろうか。
この件について先ず考えねばならないのは、既に理研と東京女子医科大、米ハーバード大の関連病院であるブリガム・アンド・ウィメンズ病院の3施設が合同で、2013年4月24日に国際特許を米当局に出願していることだ。
出願日
24.04.2013
出願人
THE BRIGHAM AND WOMEN'S HOSPITAL, INC. [US/US]
RIKEN [JP/JP]
TOKYO WOMEN'S MEDICAL UNIVERSITY [JP/JP]
発明者
VACANTI, Charles A.; (US).
VACANTI, Martin P.; (US).
KOJIMA, Koji; (US).
OBOKATA, Haruko; (JP).
WAKAYAMA, Teruhiko; (JP).
SASAI, Yoshiki; (JP).
YAMATO, Masayuki; (JP)
特許請求範囲(クレーム)は全部で74項に及ぶが、第1項(メインクレーム)は「ストレスを与えることで、多能性細胞を作製する方法」とされていて、いわゆる方法(製法)特許と思われる。
特許は、有用な発明をなした発明者またはその承継人に対し、その発明の公開の代償として、一定期間、その発明を独占的に使用しうる権利(特許権)を国が付与するものだ。
この特許の場合は、発明者と出願人が異なるところから、出願人が発明者から特許を受ける権利を継承したものと考えられる。
大事なことは、特許出願が後に特許権となった場合、特許発明を独占的に実施する権利は出願人に所在し発明者にはないという点だ。対外的には単に特許の発明者として名前が残るだけだ。
ただし発明者から出願者が特許権を継承するにあたり契約が結ばれているだろうから、発明者としてはこの特許が権利化することには最大限の協力をするものと推測される。

次に、特許を出願してから特許権を得るまでにどのような過程を通るかだが、日本の場合、以下の通りとなる。
特許出願-方式審査-審査請求-実体審査-特許査定-特許登録
ただこの流れは極めて順調にいった場合であって、大半の出願特許は先ず拒絶理由通知書が来て、そこから意見書又は補正書を提出しながら審査官との間で何度もヤリトリし、結果として査定されるか拒絶される。
従って特許権を得るにはかなりの年月がかかるのが一般的だ。

もう一つ重要なことは、出願した特許は原則として一定期間経てば(日本だと1年6か月)全て公開されてしまうということだ。もし審査で拒絶査定が確定し特許権を得られなければ、公開された技術は誰でもが自由に使用できてしまう。
だから特許を出す場合、そうしたリスクを常に頭に置かねばならない。もちろん、特許権を得る前に書く論文にしても同じだ。
では、どうするかだが、早くいえば「穴を空けておく」。
つまり特許や論文の通りに実施しても、書かれた通りの結果にはならないよう細心の注意を払うことになる。通常は「ノウハウ」と呼ぶ技術を秘匿しておく。
そうすれば万一特許が拒絶されても、他者が容易に真似ができなくなる。
第三者が追試しても予想した結果が得られないのは当然だといえる。

発明は早い者勝ちだから、技術が未完成の段階でも特許出願することはごく当たり前のことだ。
先日の会見で記者から発明者に「STAP細胞」の作り方の詳細を問い質していたが、既に発明者から出願人へ特許権が継承されている以上、小保方氏が答られる筈がない。
もしかすると「STAP細胞」の作り方の詳細そのものが、まだ確立されていないのかも知れないが。
論文についても同様で、出願人の意向に反するような内容は書けない。
もし「STAP細胞」の技術について特許権を得ることなど抜きにして、全て内容をオープンにするとしていたら、今とは全く違う展開になっていたに違いない。
だからもう小保方氏に対する個人攻撃はいい加減にやめにしようよ。

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2014/03/12

学術論文のアイマイさ

新たな万能細胞「STAP細胞(刺激惹起性多能性獲得細胞)」の論文問題がゆれている。
過去の画像の使い回しや、出典を明示せずに他者の論文の一部を引用しているなどが指摘されているようだ。
実験を主導した小保方晴子・研究ユニットリーダーが所属する理化学研究所は文部科学省で初めて記者会見し、加賀屋悟広報室長が「世間をお騒がせして誠に申し訳ない」と陳謝した。外部の専門家も交えた調査委員会が3月14日に記者会見し、調査の進展状況を説明するという。
加賀屋室長は「信頼性、研究倫理の観点から、論文の取り下げを視野に入れて検討している」と述べ、調査結果次第では論文の撤回を求める意向を示した。
仮に論文を撤回することになれば研究成果も白紙になるおそれがある。但し、撤回には原則として共著者全員の同意が必要となるので、理研だけの判断ではできない。

この問題で考えなくてはいけないのは、研究成果それ自体が誤りだったのか、あるいは発表論文が不適切だったのかという点だ。
もし実験データが捏造あるいは修正されていたならば成果そのものが否定される。もう一つ大切なことは実験の再現性だ。全く同一の条件で実験を行った場合、同じ結果が得られなくてはならない。偶然やタマタマではサイエンスにならない。STAP細胞の場合、おそらくこの点に疑念が出されているのだろう。

もう一つの学術論文として適性であったかどうかという点だが、これは掲載した学術誌の方針にもよる。一口に学術誌といっても様々な分野に分かれており、ランクも異なる。Aという誌には不掲載になるがBなら掲載できるという事もあるわけだ。
学術誌ごとに審査委員がいて掲載するか否かを決めるのだが、甘い辛いがある。研究者もタテ社会だから例えばその学会の権威者が係わった論文であると、審査は落としにくい。
企業の研究発表の際には、そうした点を利用して権威者を共同研究に引き入れ、企業側に有利な条件で論文を掲載できるよう手配することになる。
では大学の論文なら信頼できるかというと、これも実際には企業が資金を出しているひも付き研究のケースもあり必ずしも公正とは言えない。
だから学術論文だからといって一概に信用するのは危険だ。

以上はあくまで一般論であって、STAP細胞問題に適用できるかどうかは分からないが、ご参考までに。

昨今、作曲家の佐村河内守氏のいわゆるゴーストラーター問題が世間を賑わしたが、学術論文の世界でゴーストライターの存在はその比ではない。
以前に”「ゴーストライター」は日本文化”(2011/05/22付)の記事に書いたものを以下に再録する。
【ゴーストライターが最も日常化しているのは、科学技術の世界だろう。
仮にAという大学教授と、その弟子のBが共同執筆して書籍を出したとしよう。
もしAがその一部を書き、残りの大部分をBが書いた場合は、その書籍の執筆者はA単独となる。
全てをBが書いた場合は、執筆者はAとBの共著になる。
これは「お約束」であり、少なくとも私が現役時代の数年前まではそうであったし、今でも続いていると思う。
科学誌に掲載された論文でも同様で、ある高名な大学教授が書かれた論文について教えを乞うべく訪問したら、自分では分からないからと、執筆した弟子をその場によんで説明させていた。
大先生は、論文自体をあまり読んでいない様子だった。
そげなモンです。
以前に「ポスドク」について書いたように、特に企業においては博士論文の替え玉はそう珍しくなかろう。
上司の命令とあっては部下は逆らえないし、考課に響くとなれば部下はせっせとゴーストライターを務めるしかない。】

決して肯定しているわけではないが、そういう実態もあるということ。

【3/13追記】
Wikipediaの解説によると、本論文の掲載誌「Nature」は、
「同時代の科学誌群とは比べ物にならないほどpolemic ポレミックな目的の (つまり、討論を挑んだり、議論を引き起こすことが目的の)雑誌として生まれ、育てあげられた。」
とある。
そういう意味では掲載論文は趣旨に沿うのかも知れない。

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2013/09/08

「原子力ムラ」の復活

月刊誌「選択」2013年8月号が、経産省傘下の資源エネルギー庁(エネ庁)で、密かに「原子力ムラ」が復活したと報じている。
エネ庁はこの7月、「原子力自主的安全性向上に関するワーキンググループ」という委員会を設置したが、その委員に「原子力ムラ」の主要メンバーが目立つというのだ。
先ず関村直人東大大学院教授だが、2011年の福島原発事故の際にはNHK番組の常連となり、「炉心溶融(メルトダウン)はあり得ない」とか「冷却水が漏れている可能性は低い」など、ことごとく事実と異なる情報を連発していた人物だ。
それもその筈、日本原子力開発機構から「受託研究費」として5760万円を受け取っていたのだ。
本来なら世間さまに顔向けができない立場だと思うのだが、まさに「どのツラ下げて」だ。
もう一人の委員、山口彰阪大大学院教授もやはり原発の業界団体から1300万円を受け取っている。
このワーキンググループは組織上、エネ庁「原子力小委員会」に所属しているが、同委員会の田中知東大教授もムラの有力者だ。
その東大自体が東京電力から過去に5億円もの金を受け取っていたのだから、ムラの「牙城」にもなるわけだ。
こういう学者が集まって「原子力の安全性」を向上させようと言うんだから、結論は見えている。
もちろん、安倍政権の原発再稼働政策に向けての経産省の意向であることはいうまでもない。

東大といえば、医学部の腐敗もすさまじい。
分子細胞生物学研究所(分生研)の加藤茂明元教授らの発表した論文165本中、53本の問題があり、うち43本に捏造や改竄が行われていたことが調査で明らかになったばかりだ。
どうやら当時の研究を指導していた助手ら研究スタッフが深く関与してというから根が深い。
分生研には独法科学技術振興機構から研究費20億円が支払われていて、その返却が求められている。
気の毒なのは当時の大学院生たちで、今回の件で学位が剥奪されるようになれば、現在の職も失うことになるという。
それなのに、データを改竄していた研究スタッフの中心人物が、他の国立大学教授に就任しているというのだから、あいた口が塞がらない。

「東京大学憲章」の前文(抜粋)にはこう書かれている。
【人類普遍の真理と真実を追究し、世界の平和と人類の福祉、人類と自然の共存、安全な環境の創造、諸地域の均衡のとれた持続的な発展、科学・技術の進歩、および文化の批判的継承と創造に、その教育・研究を通じて貢献することを、あらためて決意する。】
なんという現実とのギャップ!

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2013/04/07

福島原発周辺で「動植物異常」

反響の大きかった記事だったので読まれた方が多いと思われるが、未だ読まれてない方のために紹介したいのは「東洋経済オンライン」の
『福島原発周辺で「動植物異常」相次ぐ』
という記事だ。
この内容は、3月30日に東京大学内で開催された「原発災害と生物・人・地域社会」(主催:飯舘村放射能エコロジー研究会)で、東大や琉球大学などの研究者が、ほ乳類や鳥類、昆虫、植物から見つかった異常について報告したものの要旨となっている。
原発事故による生物への影響についての研究報告は国内でもきわめて少ない。
今回の発表では、福島第一原原子力発電所からの放射性物質で汚染された地域で、動物や植物に異常が多く見られることが研究者による調査で明らかにされている。

1.稲の遺伝子への影響
つくば市内の研究所で育てた稲の苗を、福島第一原発から約40キロメートルに位置する飯舘村内の試験農場に持ち込んだうえで、放射線の外部被曝にさらされる屋外に置いた。
その結果、飯舘村の試験農場に到着してから初期(6時間後)に採取したサンプルではDNA損傷修復関連の遺伝子に、後期(72時間後)ではストレス・防護反応関連の遺伝子に変化が認められたことが報告された。
この研究を行った筑波大大学院生命環境科学研究科のランディープ・ラクワール教授は「稲に対する低線量被曝の影響調査は世界でも例がない。今後、種子の段階から影響を見ていくとともに、人間にも共通するメカニズムがあるかどうかを見極めていきたい」と語っている。

2.蝶への影響
チョウについて研究内容を発表したのが、琉球大学理学部の大瀧丈二准教授。
大瀧准教授らの調査は、日本国内にごく普通に見られる小型のチョウであるヤマトシジミを福島第一原発の周辺地域を含む東日本各地および放射能の影響がほとんどない沖縄県で採集し、外部被曝や内部被曝の実験を通じて生存率や形態異常の有無を調べたものだ。
ほかの地域と比べて福島県内のヤマトシジミでは、羽のサイズが小さい個体が明らかに多いことがわかったのだ。
また、地面の放射線量と羽のサイズを比較したところ逆相関が見られ、線量が上がっていくにつれて羽のサイズが小さくなる傾向が認められている。
捕獲した個体の子どもについて、福島第一原発に近い地域ほど羽化までの日数が長くなる傾向が見られ、成長遅延が起きていること。
さらに、「親に異常があった場合、子どもでも異常率が高くなる結果も出た」と大瀧准教授は語っている。
写真は、福島市内で採取したエサを食べたチョウで、羽が伸びきっていない羽化不全個体。
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沖縄のエサを食べた個体と比べ、福島県内の個体は死に方でも明らかな異常が多く見られたという。
また、さなぎの殻から抜けきれずに死んだり、成虫になっても羽が伸びきれない事例などショッキングな写真が紹介された。
下の写真は、飯舘村内で採取したエサを食べた個体で、さなぎの殻から完全には抜け出すことができず死んだもの。
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3.野鳥への影響
東京大学大学院農学生命科学研究科の石田健准教授によれば、浪江町赤宇木地区(福島第一原発から約25キロメートル)野生のウグイス4羽を捕獲したところ、うち1羽から今までに私自身、ウグイスでは見たこともないおできが見つかったという。
また、捕獲したウグイスの羽毛を持ち帰って放射線量を測定したところ、セシウム134と137を合わせて最高で約53万ベクレル/kgもの汚染が判明した。

4.ニホンザルへの影響
日本獣医生命科学大学・羽山伸一教授は、ニホンザルが北海道と沖縄県を除く全国に生息している点に着目し、世界で初めて原発の被害を受けた野生の霊長類として、ニホンザルは被曝による健康影響の研究対象とした。
福島市内で捕獲された396頭のサルと、青森県で12年に捕獲された29頭を比較したところ、土壌汚染レベルが高いところほど、体内のセシウム蓄積レベルも高い傾向があることがわかった。
また、木の皮や芽を食べることが多く、土壌の舞い上がりが多い冬期に、体内の濃度が上昇していることも判明したという。なお、青森県のサルからはセシウムは検出されなかった。
注目すべきデータとして紹介されたのは、避難指示区域にならなかった福島市内のサルについて、ニホンザルの正常範囲より白血球数、赤血球数とも減少しており、白血球は大幅に減少していたこと。
羽山教授は、2011年3月の原発事故以降に生まれた子どものサル(0~1歳)で、汚染レベルと相関するように白血球の数が減っていることを指摘した。造血機能への影響が出ているのではないかと。

これら動植物への研究がそのまま人間への影響に結びつくかどうかは不明だが、こうした地道な研究が行われていることに敬意を表したい。
今回の研究報告について、フランスの大手新聞「ル・モンド」などはかなり大きく扱ったそうだが、肝心の日本のマスメディアではどうだったのだろう。
「アベノミクス」で浮かれていて、それどこじゃないんだろうか。

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2012/02/06

教授への寄付金は「買収費用」

医師、弁護士、教師を俗に「さんし」と呼び、世間から尊敬される職業とされている。この中で教師は格下に見られがちだが、大学教授ともなれば未だに権威が認められている。
企業側からみればそうした権威は十分に利用価値があり、
・教授を企業の顧問や嘱託に迎える
・教授へ寄付金や委託研究費として寄金する
などの方法でコンタクトを持ち、企業やその製品の対し好意的な立場を取ってもらうことになる。
時には商品の欠陥によるクレームが起きたときの「防波堤」にもなってくれるので、とても有り難い存在なのだ。

顧問や嘱託の場合、知る限りでは月額で10-20万円程度の報酬が支払われる。これは1社当りであり、複数の企業にまたがると相当な金額となる。
私の知っている教授で、10数社の顧問をしていた猛者もいた。こういう人物が叙勲受章者になっているんだから、世の中いい加減なもんだ。
国立など公立大学の教授は企業の顧問にはなれないが、そこは「蛇の道は蛇」で「ウラ顧問」という裏技がある。
教授に対する寄付は「奨学寄付」と呼ばれるもので、公立私立関係なくできる。
教授側は使途が自由のため、便利なようだ。
委託研究費は特定のテーマで研究を委託し、その研究費を企業が支払うものだ。こちらは使途が限定されるのと報告義務があるので、金の使い道に制約がある。と言ってもあくまで名目上のことで、体裁さえ整っていれば企業側はあまりウルサイ事は言わない。要は寄付をしているという事実が大切なのであって、研究成果は期待していないからだ。

東京電力福島第一原発事故後の原子力政策の基本方針(原子力政策大綱)を決めるため内閣府原子力委員会に設けられている会議の専門委員23人のうちに、原子力が専門の大学教授が3人含まれている。いずれも専門分野での知識を買われた人たちだが、この3人全員が2010年度までの5年間に原発関連の企業・団体から計1839万円の寄付を受けていた。
3人は東京大の田中知(さとる=日本原子力学会長)、大阪大の山口彰、京都大の山名元(はじむ)の各教授で、3人は寄付を認めたうえで、「会議での発言は寄付に左右されない」などと話しているという。

これとは別に、内閣府原子力安全委員会の安全委員と非常勤の審査委員だった89人のうち、班目(まだらめ)春樹委員長を含む24人が2010年度までの5年間に、原子力関連の企業・業界団体から計約8500万円の寄付を受けていたことが分かっている。
うち11人は原発メーカーや、審査対象となる電力会社・核燃料製造会社からも受け取っていた。
こちらも委員らは影響を否定している。

要するに政府の原子力行政に直接影響を与えるような学識経験者の多くは、原子力関連企業のひも付きであって、パトロン企業の代弁者だということだ。
寄付を受けた教授らは影響ないと強弁しているようだが、そんな事は有り得ない。
顧問にしろ寄付にしろ、これだけの金額を支出するとなると社内稟議(付議)と通さねばならない。その場合、これこれの支出に対して会社としてどれだけのメリットがあるのかを明確にしなければ稟議は通らない。それを「企業からの影響はない」なんて言われた日にゃ、金を返せと言いたくなる。
現に原子力委員会の新大綱策定会議で前記3人は、「福島の事故を受けて安全対策は随分と取られている」とか「高速炉は魅力で開発は続けるべき」などと発言しているそうだから、パトロン企業としては安心なわけだ。

もちろん専門分野で大きな業績を残し、人格においても高潔な大学教授も多い。
ただ、そういう学者たちには政府から声が掛からないのだ。
金まみれの学者だけが重用される、それが今の原子力行政だ。

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2011/04/03

「原発事故」もう一つの戦犯

福島第一原発の重大事故について、東電に対する批判が集中しているが、事故の背景には長年にわたる原子力行政が横たわっている。
この政策を長期にわたり推し進めてきたのは自民党政権であるが、今は下野しているのを幸いに一切口をつぐんでいるせいか、あまり表に出てきていない。
原発を推進するという政策のもとに、原子力安全委員会ならぬ「原子力不安全委員会」や、原子力保安院ならぬ「原子力不安院」などが活動をしてきたわけだ。

その学問的裏付けを提供してきたのは、いわゆる原子力「御用学者」たちだ。
大阪芸術大学芸術学部の純丘曜彰教授が、ビジネスコミュニティ「INSIGT NOW!」に、「東電のカネに汚染した東大に騙されるな!」との記事を掲載している。
同記事で純丘教授は、「なんと5億円! 寄付講座だけでも、これほどの大金が、東京電力から東京大学大学院の工学研究科にジャブジャブと流し込まれている。」「東工大や慶応義塾大学など、全国のあちこちの大学の大学院に、東京電力は現ナマをばらまいている」と指摘している。
電力会社や原子力プラントメーカーなどの「原子力ビジネスマネー」が、大学の原子力研究者たちを「御用化」しているのだ。
だから彼らのTV解説には、あまり公正・中立を期待しない方が良い。

今回の原発事故に関して、世間の矢面に立たされていないが、実はもう一つ戦犯がある。
それは地震予知の関係する団体とその研究者たちだ。
私など、あれだけ観測網が敷かれている天気予報でさえ当たらないのに、地震が予知できる筈がないと思っている。
これがどうも常識らしいのだ。
一時期は予知に対する幻想が広まっていたようだが、阪神淡路大震災で決定的に破たんし、今では地震予知ができるなどと本気で信じている学者は皆無だそうだ。
「地震予知連絡会」という組織があるのはご存知だろうが、そのHPを見ても今回の大震災についてなんのメッセージも出していない。
良心の呵責など存在しないのだろうか。
それどころか大震災後の5月20日に予定されている「190回地震予知連絡会」議題としてあげられているのは、
「1..地殻活動モニタリングに関する検討
◦地殻活動の概況
◦プレート境界の固着状態とその変化
◦その他の地殻活動等
2.重点検討課題の検討
◦プレート境界の固着と滑り -わかっていること、まだわからないこと-
3.次回の重点検討課題に関する趣旨説明
地殻変動モニタリング(仮題)
4.その他」
となっている。
この時期に、何だそりゃという内容でビックリしてしまう。
予知連として、今回の事態を予測できなかった不明を恥じるという姿勢がまったく見られない。

地震調査研究には、毎年100億円近くの予算がつぎ込まれている。
もちろん、我々の税金からだ。
予知ができないことを知りながら、できるフリをして予算を取っているとしたら、それは詐欺に等しい。
彼らの罪はそれだけではない。
原発を建設する際のプラントの構造計算には、震度(と津波)の想定が欠かせない。
現に東電のHPでは、原発の安全性についてこう書いている。
「地震学的に想定される最大級の津波を数値シミュレーションにより評価し、重要施設の安全性を確認している。」
その安全性へのお墨付きを与えていたのは、他ならぬ地震予知「御用学者」たちなのだ。
むろん、彼らにも原子力マネーが流れているであろうことは容易に想像がつく。
もしかしたら、彼らこそ本当のA級戦犯なのかも知れない。

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