経済・政治・国際

2017/01/29

トランプに期待する?

1月24日付朝日新聞に、永年にわたり政権批判を続けてきた映画監督オリバー・ストーンがインタビューで「トランプ大統領もあながち悪くない」と意外な評価をしていた。
その趣旨は次のとおり。
・米国が「米国による新世界秩序を欲し、そのためには他国の体制を変える」という政策から脱し、「米軍を撤退させて介入主義が弱まり、自国経済を機能させてインフラを改善させる」政策への転換が出来るなら素晴らしいこと。
・これまで米国は自国経済に対処せず、貧困層を増やし、自国経済を機能させてこなかった。トランプがかつてないほどの雇用を増やすというのは誇張かも知れないが、そこから良い部分を見つけねばならない。
・トランプはイラク戦争は膨大な資産の無駄だったと明快に断言している。こうしたプラスの変化は応援したい。
・ロシアがトランプを応援するためにサイバー攻撃をかけていたというCIAの見解については懐疑的だ。CIAはベトナム戦争やイラク戦争などで間違った情報を流し、他国の主権を認めたがらず、多くの国家を転覆させてきた。そんな情報機関をけなしているトランプに賛成する。
・ハリウッドのリベラルな人たちがトランプを批判している点について、彼らは真のリベラルではない。米国がテロとの戦いを宣告した2001年以降、米国に批判的な映画をつくるのが難しくなり、そうした映画がどんどん減っている。米軍が過剰に支持・称賛されたり、CIAがヒーローに仕立てられたりする映画やテレビシリーズが目立ち、非常に腹立たしい。

ただこのインタビューでは、自国第一主義を各国が掲げることにより、経済衝突の激化による軍事的緊張関係が増大する可能性については言及されていない。
さらに、トランプ流が世界に蔓延した場合に起きる人権無視、人種差別、排外主義の横行の危険性にも触れていない。
こうした点にオリバーストーンがどう答えるのかは不明だ。

もう一つ、このインタビューで注目すべき発言がある。それは日本にかかわることだ。
オリバーストーン監督は、米政府による個人情報の大量監視を暴露したCIA元職員エドワード・スノーデン氏を描いた新作映画「スノーデン」を撮るにあたり、彼とは9回会って話を聞いている。その中で日本に関して次の様に述べていた。
・スノーデンが2009年に横田基地内で勤務していた頃、日本国民を監視したがった米国が、日本側に協力を断られたものの監視を実行した。
・スノーデンは又、日本が米国の利益に背いて同盟国でなくなった場合に備えて、日本のインフラに悪意のあるソフトウェアを仕込んだ。

ここからは私の見解になるが、現在の日米関係を考えるうえで、在日米軍が今なお日本を監視し、悪意のあるソフトをインフラに仕込むことまでやっているというスノーデンの証言は非常に重要だ。
米軍は日本に多くの基地を置き、それは日本を守るためと思われているが、決してそれだけではない。
太平洋戦争で日本は米国に一方的に敗れたというのが定説になっている様だが、実際には米国も大きな打撃を受けていた。
大戦中に米軍で司令官が戦死したのも、最高位(中将)の軍人が戦死したのも、沖縄戦だけだ。沖縄戦では兵士の3分の1が精神に異常をきたし本国へ送還されたとある。終戦前の武器も装備もない沖縄戦でも米軍はこれだけの犠牲を出していた。
もちろん、沖縄県民の被害は想像を絶するものだったことは言うまでもない。
今でも米国はアジア最強の国は日本だと見ている。だから日本を敵に回すような事は絶対に避けたいのだ。
米軍の日本駐留の目的は、こう考えるべきだろう。
1.日本が二度と米国に敵対することがないよう監視する。
2.中国を封じ込め、東アジア及び東南アジアの共産化を防ぐための橋頭堡にする。
3.太平洋の制海権の確保。
4.安保条約に基づく日本の防衛。
もし、トランプが以上の諸点に興味を失い、日本を単なるビジネスパートナーとするなら、米軍の日本駐留は意味がなくなる。
日本の防衛は日本自身でとか、守って貰いたかったら費用は全額負担せよというトランプの主張は、決して的外れとは言えまい。
戦後70年、日本はいま大きな岐路に立たされている。

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2017/01/07

そんなに「トランプ」が怖いのか

トランプ米国次期大統領の暴言がとまらない。妄言と言った方が正確かな。
一昨日にはツイッターで、トヨタがメキシコに工場を建設する計画している問題に関して、「米国に建てるか、国境で高い税金を払へ」と脅した。
米国の大統領になる人物が日本の一企業の工場建設にまで口を出すとは、なんと「ケツの穴の小さなヤツ」だろうか。
そう嘲笑し返すしかない。
トヨタは今のところ計画を変更する気はないようだが、他社の中にはメキシコへの進出を見直す動きが出ているとのこと。
チキンな経営者もいるもんだね。

オスプレイの事故原因が未だ解明されない中で、日本政府が早々にオスプレイの飛行と給油訓練を認めたのも、トランプの顔色を窺っているためと報じられている。
何をそんなにトランプを怖れているのだろう。
普段は偉そうなことを言ってるが、安倍も稲田もしょせんはアメリカのポチだね。

さて、そのトランプだが、次期大統領としては不安がいっぱいだ。
大統領選挙の当日に、当選者の不支持率が60%だったというのは異例らしい。
それでも大統領に就任したら、米国の指導者として言動を改めるのではという期待もあったが、その気配はない。
果して4年間の任期を全うできるのかという疑問の声も出ている。
一つは、ここの所、米国の情報機関が相次いで発表している、ロシア・プーチンによる選挙干渉の事実だ。
もちろん、この情報によって選挙結果がひっくり返ることはないが、多くの米国民から大統領としての正統性に疑問が持たれるだろう。これは連邦議会での政権運営に影を落とす可能性がある。
二つ目は、トランプは共和党の大統領でありながら、従来の共和党の政策とあまりにかけ離れているという点だ。
・親ロシア→共和党は伝統的に反ロシア色が強い
・保護主義→共和党は自由貿易志向
・大きな政府→共和党は小さな政府が目標
連邦議会では共和党が多数を占めているとはいえ、基本政策があまりにかけ離れていると協力が得られなく可能性がある。
三つめは、トランプが就任後も今のような暴言、妄言を繰り返していると、米国自身の信用力を落とし、やがて国家間の軋轢を生むことになろう。

大事なのは、トランプに怖れることなく、就任後の政策や発言を注視することだ。
(敬称略)

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2017/01/05

「子どもの貧困問題」の解決こそ喫緊の課題だ

年賀状に近況が書かれていると読むのが楽しくなる。今年頂いた年賀状では、かつての会社の上司が「子どもの貧困問題」に取り組んでいるとのこと。私より5歳年上なのにと、わが身を振り返り恥ずかしくなった。
いま取り組まねばならない課題が多々あるが、なかでも「子どもの貧困問題」の解決は最優先課題といって良い。

この件に関して駒崎弘樹氏(認定NPOフローレンス代表理事/全国小規模保育協議会理事長 )が「2017年にはぶっ壊したい、こどもの貧困を生みだす日本の5つの仕組みとは」という記事で書いている。
極めて実践的な内容と思われるので、内容の一部を紹介したい。
1、生活保護家庭の子どもは大学に行っちゃダメ
「生活保護家庭の子どもたちは、大学進学できない」というのだ。
これは大学進学が贅沢という考えからだそうだ。
しかし、駒崎氏が指摘しいるように「安定した仕事につき、貧困の連鎖から抜け出すためには、大学進学という道は非常に有効です」。
但し、抜け道があって「生活保護を受けていても、”世帯分離”と言って、進学する子どもだけ世帯から外してしまうことで、その子は大学に進学することはできます」。しかし「世帯分離した分だけ、生活保護費は数万円減ります」ということになるのだ。
今の時代、大学に進学することは贅沢でもなんでもないのであって、貧困の再生産とう負のサイクルを止めるためにも、直ちに見直しが必要だ。
2、妊娠したら高校退学させられる
「全国の高校では、妊娠した場合、退学させるというルールになっている」というのだ。例えば「岩手県教育委員会の制定する『岩手県立高等学校の管理運営に関する規則』の中には懲戒規定があり、性的暴行(レイプ)と並んで妊娠を退学処分としている」という
レイプと妊娠を同列におくというのもムチャな話だが、妊娠を「させた方」には何もお咎めがなく、「させられた方」だけが処分の対象になっている。
駒崎氏はこう続けている。
「ほぼ99%、妊娠させた方の男はバックれます。女の子はシングルマザーとして、働きながら子どもを育てていきますが、高校中退で安定した仕事につける確率は相当低くなります。 当然貧困化するリスクが上がり、子どもに教育投資できず、子どももまた貧困化していく可能性が高まります。
学校が貧困を生み出しているじゃないか!」
3、低所得のひとり親に出される給付金支給が4ヶ月に1回
「低所得のひとり親には、児童扶養手当という給付金が支給されます。 月最大で4万2000円、子ども2人目は1万円というわずかなものですが、これがひとり親家庭のライフラインになっています。
さて、この児童扶養手当、役所から振り込まれるのが、4ヶ月に1回なんです」。
役所は4ヶ月計画的に使えば良いと言うが、カツカツの生活をしていると3ヶ月の終わり頃にはお金がなくなり、消費者金融や闇金から借金し、最後は生活が破綻するケースが出てくる。
「そうやってにっちもさっちも行かずに、県営団地を立ち退きさせられるその日に、中1の娘を運動会のハチマキで母親が首を絞めて殺した事件が銚子市でありました」。
駒崎氏はこう呼びかける。「厚労省さん、年金が2ヶ月に1回、生活保護は毎月支給なんだから、児童扶養手当も毎月支給にしてください」。
4、義務教育でも金がかかりすぎ
私事であるが、孫娘が昨年中学に進学した。公立中学だが、制服代だけでセットで数万円、他にも諸々の教材費がかかる。部活でバスケット部に入ったが、このユニフォームやらシューズやらひと揃えで10万円近くかかったそうだ。娘は「これだけの費用、他のご家庭ではどうしてるのかしら?」と言っていた。
義務教育は無償の筈だが、実際にはかなりの金がかかる。
金額は一定なので、当然、貧困家庭への負担は大きい。
駒崎氏は言う。
「何ですか、この”学校指定”って。何で学校指定の文房具屋で買わないとダメなんですか?これって、地元の文房具屋への、制服だったら洋品店への公共事業ですよね?その公共事業を、なんで子育て世帯の財布から出さないといけないんですかね?」
制服代だって高すぎだ。イギリスでは500円程度の学校もあるそうで、官民あげて義務教育にかかる費用を抑える工夫が必要だ。
5、医療的ケア児は普通に学校に行けない
この件では駒崎氏は次のように記している。
「鼻からチューブを入れたり、気管切開をしている『医療的ケア児』。こうした障害のある子達が特別支援学校に行こうとすると、『親が同伴で付いてきてくれたら、通学できますよ』と言われます。
親は学校で教育を受けさせたいと思うので、仕方なく一緒に通学します。そして教室の端っこで、6時間座って待っています。待機児童ならぬ待機親です。
当然仕事は辞めざるを得ません。だいたいの場合、母親が辞めます。共働き家庭は、片働きになり、収入は激減します。医療的ケア児家庭は、公共交通機関での移動がしづらいため、車を持たなくてはなりません。そうした費用も家計を圧迫します。
ひとり親だったら、生活保護しか道はありません。医療的ケア児の介護に心身ともに負担がかかるのに、我々の社会は更に経済的にも追い打ちをかけているのです」。
駒崎氏によればこの問題は、学校に訪問看護師が行けるようにして、親の代わりに医療的ケアをしてあげればある程度解決する、と言うのだ。
だが、訪問看護は健康保険法で「居宅(家)だけ」に限られている。それなら法律を変えれば良いわけだ。

以上の諸課題は、いずれも僅かな制度改正で実現できることであり、子どもの貧困と貧困の再生産の克服に効果を発揮するものと思われる。
「子どもの貧困問題」の解決には他にも重要な課題があると思うが、とにかく早急に対策を講じることが大切だ。

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2016/12/28

少し早めですが・・・、皆さま、良いお年を!

今年も残りわずかとなりました。少々早めですが、当ブログはこの日で一年の納めにいたします。

さて来年ですが、縁起でもないとお叱りを受けそうですけど、心配なことばかりです。
先ずはアメリカ大統領のこと。
史上最低といわれた大統領選挙によって、史上最悪のトランプ大統領が誕生します。ロシアの手を借りて当選というのも、史上初でしょう。
トランプについては楽観論もあるようですが、政権移行チームに自分の家族を押し込むなど、ハナっから常識はずれもいいとこです。
側近によればトランプは新聞や本は読まず、情報はもっぱらTV番組からという人物だそうですから、物事を深く考える事は期待できません。
当選後に発信しているSNSでの発言も、思い付きと相変わらずの暴言の連発です。
なにしろ米国は我が国の最大の同盟国(御上)なので、影響を受けないわけにはいきません。

選挙中からトランプが主張していた通りであれば、先ずは在日米軍へのいっそうの費用負担を日本に求めてくるでしょう。それが嫌なら米軍を縮小するという脅しです。
お好きにどうぞと言いたいところですが、そうなると今の政権では独自の国防に力を入れろという動きが強まるでしょう。攻撃用の武器を増やすとか、稲田防衛相らが主張する核武装論が力を増す可能性もあります。
その結果、東アジアを中心に軍拡競争が起こり、一触即発の緊急事態が増す危険性が高くなります。
そう考えると、安倍政権の下では、米軍縮小を手放しでは喜べないという実に困った状況です。
アメリカン・ファーストをかかげるトランプ政権では、対日貿易交渉でもかなり厳しい要求が出されるでしょう。
TPPがとん挫したと思ったら、一難去ってまた一難です。

もう一つの大きな危惧は、ヨーロッパを中心としたナショナリズムの台頭です。
難民問題を契機として、愛国心を煽るような極右政党が躍進する動きが欧州各国で強まり、このままではEUが危機的状況に置かれかねません。
欧州に行かれた方は実感されているでしょうが、EU内部では国境が事実上なくなっています。そのために欧州各国の軍事費は大幅に低減され、その分は生活を豊かにする方へ回されてきました。
それが今は逆回転に向かうかも知れないのです。
米国のトランプ大統領の出現が、こうした傾向をいっそう後押しするでしょう。
もちろん、何も欧州に限ったことでなく、我が国を含む東アジア諸国でも十分に警戒すべき潮流です。

激しい内戦が続くシリア北部の都市アレッポ東部に住む7歳の少女バナ・アラベドさんのツイートが大きな話題をよんでいました。
「私たちは今家を失いました。軽いけがをしました。昨日から寝ていません。お腹がすきました。生きたい、死にたくない ――バナ」
シリアのアレッポでは政府軍とロシア軍との共同作戦によって、多くの市民が犠牲になっています。
バナさんのツイートでも家族の友人たちや級友たちの死が伝えられています。
中東ではいまこうした悲劇が日常的に起きていて、その結果が多数の難民を生んでいるのです。
でも、元を正せばアメリカによるアフガニスタンとイラクへの侵攻が引き金となりました。
トランプは選挙選でも難民を追い出せと叫んでいましたが、原因となった自国の責任はほお被りです。

加えて、ロシアのプーチンがまるで火事場泥棒のように中東への介入を強めています。
プーチンの戦略はかつてのソ連の版図を回復することにあるでしょう。金と力で東欧諸国への関与を強め、一部の国では既に親ロシア政権が誕生しています。
西欧各国がプーチンを警戒する中で、安倍首相が経済協力を約束するなど接近を図っていますが、どう見てもプーチンが領土を返還するとは思えません。

日本の国会では、従来の自公に加えて日本維新がすっかり与党の仲間入りで、議会は機能マヒ状態、政権の思うまま。日本維新は最近では自民党の別働隊どころか鉄砲玉の役割に徹しているようです。
来年は総選挙が予想されていますが、こうした状況を何とかせねばなりません。

本年も当ブログにお付き合いいただき、有難うございます。
来年は1月7日頃から再開する予定ですので、また宜しかったらお立ち寄りください。
それでは皆様、良いお年を!

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2016/11/26

「押し付け憲法論」の不都合な真実(2)憲法改正草案の審議から公布までの過程

1946年(昭和21年)
4月17日 政府は正式に条文化した「憲法改正草案」を公表し、枢密院に諮詢。
4月22日 枢密院で憲法改正草案第1回審査委員会が開催(5月15日まで8回開催)。
4月22日 幣原内閣が総辞職。
5月22日 第1次吉田内閣が発足。
5月27日 若干の修正のうえ枢密院に再諮詢。
5月29日 枢密院は草案審査委員会を再開(6月3日まで3回開催)。
6月8日  枢密院の本会議は天皇臨席の下憲法改正案の採決に入り、美濃部達吉・顧問官を除く起立者多数で可決。
6月20日 政府は大日本帝国憲法73条の憲法改正手続に従い、憲法改正案を衆議院に提出。
6月25日 衆議院が憲法改正案の審議を開始。
8月24日 衆議院は若干の修正を加えて多数可決(投票総数429票、賛成421票、反対8票)。
8月26日 貴族院が審議を開始。
10月6日 若干の修正を加えて貴族院で可決。
10月7日 衆議院は貴族院回付案を可決。帝国議会における憲法改正手続は全て終了。

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<1946年(昭和21年)10月7日衆議院本会議、吉田茂内閣総理大臣による政府所信>
只今貴族院の修正に對し本院の可決を得、帝國憲法改正案はここに確定を見るに至りました。此の機會に政府を代表致しまして、一言御挨拶を申したいと思ひます。
本案は三箇月有餘に亙り、衆議院及び貴族院の熱心愼重なる審議を經まして、適切なる修正をも加へられ、ここに新日本建設の礎たるべき憲法改正案の確定を見るに至りましたことは、國民諸君と共に洵に欣びに堪へない所であります。
惟ふに新日本建設の大目的を達成し、此の憲法の理想とする所を實現致しますることは、今後國民を擧げての絕大なる努力に俟たなければならないのであります、
政府は眞に國諸君と一體となり、此の大目的の達成に邁進致す覺悟でございます。
ここに諸君の多日に亙る御心勞に對し感謝の意を表明致しますると共に、所懷を述べて御挨拶と致します。

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10月12日 政府は「修正帝国憲法改正案」を枢密院に諮詢(19日と21日に審査委員会)。
10月29日 枢密院の本会議は天皇臨席の下で「修正帝国憲法改正案」を全会一致で可決(美濃部顧問官など2名は欠席)。
10月29日 天皇は憲法改正を裁可。
11月3日  日本国憲法が公布。

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<上諭>
朕は、日本国民の総意に基いて、新日本建設の礎が、定まるに至つたことを、深くよろこび、枢密顧問の諮詢及び帝国憲法第七十三条による帝国議会の議決を経た帝国憲法の改正を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十一年十一月三日
内閣総理大臣兼
外務大臣 吉田茂
国務大臣 男爵 幣原喜重郎
司法大臣 木村篤太郎
内務大臣 大村清一
文部大臣 田中耕太郎
農林大臣 和田博雄
国務大臣 斎藤隆夫
逓信大臣 一松定吉
商工大臣 星島二郎
厚生大臣 河合良成
国務大臣 植原悦二郎
運輸大臣 平塚常次郎
大蔵大臣 石橋湛山
国務大臣 金森徳次郎
国務大臣 膳桂之助
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<昭和天皇による日本国憲法公布の勅語(1946年(昭和21年)11月3日)>
本日、日本国憲法を公布せしめた。 
この憲法は、帝国憲法を全面的に改正したものであつて、国家再建の基礎を人類普遍の原理に求め、自由に表明された国民の総意によつて確定されたものである。即ち、日本国民は、みづから進んで戦争放棄し、全世界に、正義と秩序とを基調とする永遠の平和が実現することを念願し、常に基本的人権を尊重し、民主主義に基いて国政を運営することを、ここに、明らかに定めたものである。
朕は、国民と共に、全力をあげ、相携へて、この憲法を正しく運用し、節度と責任を重んじ、自由と平和とを愛する文化国家を建設するやうに努めたいと思ふ。
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【審議により「草案」に修正・追加された項目】
・国会の構成を「一院制」から「二院制」に。
・第1条の「天皇」の条文に「この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」との「国民主権」原則を入れる
・第15条の「普通選挙権」を規定。
・第66条2項に「文民規定」を追加。
・第9条2項の「戦力不保持」の冒頭に「前項の目的を達するため」を追加

以上のように「憲法改正草案」は枢密院、貴族院、衆議院において約6ヶ月の審議を経て、最終的には圧倒的多数で可決、成立している。
審議の過程でいくつかの修正も行われ、採決では反対者もいた。
もし現憲法が占領軍から一方的に押し付けられたものだとしたら、賛成した議員は全員が押し付けに唯々諾々と従った腰抜けだし、天皇の上諭や勅語も全ては茶番だということになる。
「押し付け憲法論者」は、そこまで言い切るのだろうか。

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2016/11/24

「押し付け憲法論」の不都合な真実(1)憲法研究会の「憲法草案要綱」

太平洋戦争の終結直後から日本政府は憲法の改正草案作りを進めていたが、民間の有識者の間でも様々な改正案が作成されていた。
この中で1945年(昭和20年)12月26日に発表され憲法研究会の「憲法草案要綱」がとりわけ注目された。

研究会のメンバーと主な役職は次の通り。
高野岩三郎(元東京大学教授・後に初代NHK会長)
馬場恒吾(読売新聞社長)
杉森孝次郎(元早稲田大学教授)
森戸辰男(元東京大学助教授・後に文部大臣)
岩淵達雄(評論家・元読売新聞政治記者)
室伏高信(評論家・元朝日新聞記者)
鈴木安蔵(憲法学者・後に静岡大学教授)

「憲法草案要綱」は下記に示す通り。
なお原文はカタカナで書かれており、読みやすい様にひらがな表記にしたテキスト(「たむたむホームページ」)に従った。

「要綱」では、現憲法に明記されている諸原則、即ち
・国民主権
・基本的人権
が明示されている。
他にも、
・男女平等
・生存権
・天皇の地位
・三権分立
など、現憲法を先取りする原則が提起されている。
この内容にはGHQも深い関心を示し、彼らの起草した草案にも多大な影響を与えた。

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=憲法研究会「憲法草案要綱」=

【根本原則(統治権)】
 日本国の統治権は、日本国民より発する。
 天皇は、国政を親らせず、国政の一切の最高責任者は、内閣とする。
 天皇は、国民の委任より専ら国家的儀礼を司る。
 天皇の即位は、議会の承認を経るものとする。
 摂政を置くことは、議会の議決による。

【国民の権利・義務】
 国民は、法律の前に平等であり、出生又は身分に基づく一切の差別は、これを廃止する。
 爵位・勲章その他の栄典は、総て廃止する。
 国民の言論・学術・芸術・宗教の自由を妨げる如何なる法令をも発布することはできない。
 国民は、拷問を加えられない。
 国民は、国民請願・国民発案及び国民表決の権利を有する。
 国民は、労働の義務を有する。
 国民は、労働に従事し、その労働に対して報酬を受ける権利を有する。
 国民は、健康にして文化的水準の生活を営む権利を有する。
 国民は、休息の権利を有する。国家は、最高8時間労働の実施、勤労者に対する有給休暇制療養所・社交教養機関の完備を行わなければならない。
 国民は、老年・疾病その他の事情により労働不能に陥った場合、生活を保証される権利を有する。
 男女は、公的並びに私的に完全に平等の権利を享有する。
 民族人種による差別を禁じる。
 国民は、民主主義並びに平和思想に基づく人格完成、社会道徳確立、諸民族との協同に努める義務を有する。

【議会】
 議会は、立法権を掌握し、法律を議決し、歳入及び歳出予算を承認し、行政に関する準則を定め、及びその執行を監督する。条約にして立法事項に関するものは、その承認を得ることを要する。
 議会は、二院より成る。
 第一院は、全国一区の大選挙区制により満20歳以上の男女平等直接秘密選挙(比例代表の主義)によって、満20歳以上の者より公選された議員を以て組織され、その権限は、第二院に優先する。
 第二院は、各種職業並びにその中の階層より公選された満20歳以上の議員を以て組織される。
 第一院において2度可決された一切の法律案は、第二院において否決することができない。
 議会は、無休とする。その休会する場合は、常任委員会がその職責を代行する。
 議会の会議は、公開し、秘密会を廃する。
 議会は、議長並びに書記官長を選出する。
 議会は、憲法違反その他重大な過失の廉により大臣並びに官吏に対する公訴を提起することができ、この審理のために国事裁判所を設ける。
 国民投票により議会の決議を無効にするときは、有権者の過半数が投票に参加する場合であることを要する。

【内閣】
 総理大臣は、両院議長の推薦によって決する。各省大臣・国務大臣は、総理大臣が任命する。
 内閣は、外に対して国を代表する。
 内閣は、議会に対し連帯責任を負う。その職にあるには、議会の信任があることを要する。
 国民投票によって不信任を決議されたときは、内閣は、その職を去らなければならない。
 内閣は、官吏を任免する。
 内閣は、国民の名において恩赦権を行う。
 内閣は、法律を執行するために命令を発する。
 
【司法】
 司法権は、国民の名により裁判所構成法及び陪審法の定める所により、裁判所がこれを行う。
 裁判官は、独立にして、唯法律にのみ服する。
 大審院は、最高の司法機関であり、一切の下級司法機関を監督する。大審院長は、公選とし、国事裁判所長を兼ねる。大審院判事は、第二院議長の推薦により第二院の承認を経て就任する。
 行政裁判所長・検事総長は、公選とする。
 検察官は、行政機関より独立する。
 無罪の判決を受けた者に対する国家補償は、遺憾なきを期さなければならない。

【会計及び財政】
 国の歳出歳入は、各会計年度毎に詳細明確に予算に規定し、会計年度の開始前に法律を以てこれを定める。
 事業会計に就いては、毎年事業計画書を提出し、議会の承認を経なければならない。特別会計は、唯事業会計に就いてのみこれを設けるとができる。
 租税を課し、税率を変更することは、1年毎に法律を以てこれを定めなければならない。
 国債その他予算に定めたものを除く外、国庫の負担となるべき契約は、1年毎に議会の承認を得なければならない。
 皇室費は、1年毎に議会の承認を得なければならない。
 予算は、先ず第一院に提出しなければならない。その承認を経た項目及び金額については、第二院がこれを否決することができない。
 租税の賦課は、公正でなければならない。苟も消費税を偏重して、国民に過重の負担を負わせることを禁じる。
 歳入歳出の決算は、速やかに会計検査院に提出し、その検査を経た後、これを次の会計年度に議会に提出し、政府の責任解除を求めなければならない。会計検査院の組織及び権限は、法律を以てこれを定める。会計検査院院長は、公選とする。

【経済】
 経済生活は、国民各自をして人間に値すべき健全な生活を行わせることを目的とし、正義・進歩・平等の原則に適合することを要する。
 各人の私有並びに経済上の自由は、この限界内において保障される。
 所有権は、同時に公共の福利に役立つべき義務を有する。
 土地の分配及び利用は、総ての国民に健康な生活保障できるようにしなければならない。寄生的土地所有並びに封建的小作料は、禁止する。
 精神的労作者・著者・発明家・芸術家の権利は、保障されなければならない。
 労働者その他一切の勤労者の労働条件改善のための結社並びに運動の自由は、保障されなければならない。これを制限又は妨害する法令・契約及び処置は総て禁止する。

【補則】
 憲法は、立法により改正する。但し、議員の3分の2以上の出席及び出席の半数以上の同意があることを要する。国民請願に基づき、国民投票を以て憲法の改正を決する場合においては、有権者の過半数の同意があることを要する。
 この憲法の規定並びに精神に反する一切の法令及び制度は、直ちに廃止する。
 皇室典範は、議会の議を経て定めることを要する。
 この憲法公布後、遅くとも10年以内に国民投票による新憲法の制定を行わなければならない。

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なお「要綱」では明確に触れられていない「平和主義」については、当時の幣原喜重郎首相が1946年1月にマッカーサーに直接進言して第9条に取り入れられた。
この点は1951年5月の米上院軍事外交合同委員会の公聴会で、マッカーサー自身が証言している。
マッカーサーは又、岸内閣の憲法調査会に対しても「戦争を禁止する条項を憲法に入れるようにという提案は、幣原総理が行ったのです」と書簡で回答していた。
この事は、マッカーサー回顧録にも次の様に記されている。
<幣原首相はそこで、新憲法を書上げる際にいわゆる「戦争放棄」条項を含め、その条項では同時に日本は軍事機構は一切もたないことをきめたい、と提案した。そうすれば、旧軍部がいつの日かふたたび権力をにぎるような手段を未然に打消すことになり、また日本にはふたたび戦争を起す意思は絶対にないことを世界に納得させるという、二重の目的が達せられる、というのが幣原氏の説明だった。>

以上の様に、現憲法の基本的諸原則はいずれも日本側からの提案によるものだった。

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2016/11/05

「押し付け憲法論」の御都合主義

【押し付ける】
① 力を入れて押し,他の物に付ける。
② 相手の意思を無視して,無理に承知させたり,引き受けさせたりする。
(「大辞林」より)

日本国憲法(以下「憲法」)の改正を主張する勢力の最大ともいうべき論拠は、憲法はアメリカから押し付けられたものだから、日本人の手で自主的に新しい憲法に変えなばならないという点にある。
他には戦後70年を過ぎて時代に合わなくなったから変えるべきという主張もあるが、大日本帝国憲法(以下「明治憲法」)は明治、大正、そして昭和22年の憲法施行の時まで、それこそ時代が大きく変わっても一度も改正することなく続いたいたのだから、論拠はうすい。

「押し付け憲法論」では、
アメリカによる押し付け=悪
という構図になる。

憲法がアメリカから押し付けられたものであるか否かは別の場で検討する予定だが、仮に憲法が押し付けられたものとするなら、米国の占領下で行われたものは全て「押し付け」だったことになる。
ここでは敗戦直後から憲法が公布された昭和22年5月3日までの間に発せられた主な命令や法令を下記に列挙する。憲法が押し付けられたものだとしたら、これらも全てアメリカの押し付けである。
・特高の廃止
・政治犯の釈放
・治安維持法の廃止
・女性参政権の付与
・労働組合法公布
・農地改革
・教育基本法、学校教育法、男女共学の公布
・第1回知事・市区町村選挙(統一地方選)実施
・労働基準法公布

これだけではない。さらに重要な押し付けがある。
・自衛隊(前身の警察予備隊)の創設
・サンフランシスコ講和条約の締結
・同日の日米安保条約の締結
そのいずれもが米国からの押し付けだ。
なかでもサンフランシスコ体制(講和条約+安保条約+日米地位協定、以下「サ体制」)は憲法をも超越しており、日本の戦後レジームを決定づけるものだ。
「サ体制」こそが戦後の日本の国の形を創った。
しかし、不思議なことに「押し付け憲法」論者から、上記の条約や命令、法令に対する批判を聞いたことがない。
「押し付け」=悪なら、これら全てが否定せねば理屈に合わない。
櫻井よしこが女性参政権の廃止を訴えたことがないし、稲田朋美が安保条約の破棄を主張したこともない。
なぜか。
それは自分たちにとって都合の良いことは、たとえアメリカの押し付けだと分かっていても容認しているからだ。
こうしたご都合主義こそが「押し付け憲法論」の最大の弱点といえる。

憲法が単純にアメリカから押し付けられたかものかどうかは、後日書きたいと思っている。

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2016/10/28

明治時代からあった「生前退位」論

天皇陛下の退位をめぐり、政府が設置した「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」は10月27日の会合で、ヒアリングを行う皇室問題や憲法などの専門家16人を決定した。
顔ぶれを見ると産経でお馴染みの「日本会議」系の「識者」がズラリと顔をそろえ、それに対して別の意見を持っている人を散りばめるという、いつもの手法だ。
だいたい政府の設置する審議会というのは、初めに結論ありきだ。今回の「生前退位」に関連した有識者会議にしても同様で、結論を出すためのお飾りみたいなもんだろう。

月刊誌「選択」10月号で、天皇の生前退位についての記事が掲載されている。
見出しは「朕は辞職するに能わず」という明治天皇の言葉だ。
いきさつは、第四次伊藤博文内閣が軍事支出の問題で閣内が対立し、明治35年に総理の座を投げ出した。この伊藤に対して明治天皇が「卿等は辞表を出せば済むも、朕は辞表を出されず」と答え、伊藤はいたく恐懼(きょうく)したというのだ。
これには、もう一つ深い事情があった。それは、明治に策定された皇室典範に、終身在位を強引に決めたのは伊藤博文だったのだ。
皇室典範は明治20年に、井上毅と柳原前光の二人が原案を策定し、天皇の「譲位」を認めるという内容だった。
原案を伊藤博文に示したところ、伊藤はこの部分に反対した。天皇の終身大位は当然のことだと言うのだ。井上らが「天皇といえども人間ではないか」と反論すると、伊藤は「本条不用につき削除すべし」と一喝したという。
してみると、4度も政権を投げ出した伊藤に対する「朕は辞職するに能わず」という言葉は、明治天皇の精一杯の皮肉にも聞こえる。

時代は下って、昭和の戦後に天皇退位論が活発になる。それも昭和天皇の周辺からだ。
近衛文麿と高松宮が、天皇の皇太子(現天皇)への譲位と、高松宮の摂政就任を密議していた。
終戦直後の新聞紙上で、皇太子の様子が写真とともにしばしば記事に登場していたのは、こうした動きの反映かも知れないと思った。
芦田均首相も退位を検討したことがある。
元内大臣の木戸幸一は、日本が講和し独立を果たした時点での退位を勧めた。
興味深いのは、この時期には皇室典範など眼中になかったことだ。
ただ、昭和天皇はマッカーサーとの約束をタテに在位し続けた。

帝国憲法(明治憲法)の起草者である井上毅らが作成した皇室典範の原案が、「至尊(天子)と雖も人類」という思想で作られていたことに驚かされる。
それに対して、今の政権側の人間や、それに連なる識者と称する人々のなんと古めかしい主張であることか。
それと「お言葉」には、民主主義国家の日本における象徴天皇のあるべき姿について問題提起が行なわれているが、その点は政府はスルーしているようだ。
どうやら、日ごろは皇室崇拝を口にしながら、天皇の言動には面白く思っていない政権の様子が垣間見える。

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2016/10/07

病院を撃つな!

現在、国境なき医師団(MSF)では「病院を撃つな!」のキャンペーンを行っている。
きっかけは2015年10月3日、国境なき医師団(MSF)がアフガニスタンで運営する病院が米軍による空爆を受け、患者・スタッフ42人が命を落とすという悲惨な出来事が起きたことが発端だ。
この事件では、米軍が空爆を開始する以前にあるいは開始後も、何度も位置情報を米軍に連絡していた。もちろん、施設の屋根には大きく医療機関としての表示を行っていたのだ。
にもかかわらず、米軍はこの病院にくりかえし爆弾を投下し、多くの犠牲者を出してしまった。
それでなくとも今は詳細な航空写真があり、そのためピンポイント攻撃も可能になったのだ。だから「誤爆」などありえず、明らかに病院と知っていて爆撃したものとしか思えない。
米国は米軍による攻撃を認めたが、調査内容は非公開であり、第3者調査も受け入れていない。

病院への攻撃はアフガニスタンの例にとどまらず、医療施設への攻撃はその後も世界各地で繰り返されている。
攻撃する側は米軍やロシア軍であったり、あるいは政府軍やISなどの反政府軍によって行われている。
それも市街地を攻撃し、沢山の負傷者が病院に搬送され治療を受けている時を狙うという卑劣な手口が目だつ。これだと一度に沢山の人々を殺すことができるので、彼らからすれば効率的なんだろう。
しかし紛争地域の場合、病院はこの1軒しかないケースも多い。それが破壊されてしまうと、病人や怪我人を手当する手段が失われてしまうのだ。

被害にあったMSFのスタッフの一人はこう書いている。
「戦争にもルールがあります。妊婦や具合の悪いお年寄り、栄養失調や怪我をして病院に来た子ども達が狙われることがあってはなりません 。時には負傷兵もいるかもしれませんが、1人の人間として治療中です。MSFは、誰に対しても公平に医療を提供するという憲章のもと活動しています。私は戦闘や戦争自体あってはならないと思いますが、そんな中でもせめて、病院は撃つな! 子どもや無抵抗な人たちがいる、施設も攻撃するな! と言いたいです。こうした事実を知り、国際社会が声をあげ、さらなる被害が出ないことを祈っています。」

ようやく今年の5月に国連安全保障理事会で、紛争下での病院、医療・人道援助活動従事者、傷病者への攻撃を強く非難し、そうした事態に対しては迅速で公正な調査を求める決議が全会一致で採択された。この決議作成には、日本も提案5ヵ国のひとつとして加わっている。
この国連安保理決議が机上の空論に終わらず、医療施設への攻撃が完全にやむことを強く願うものである。

病院を撃つな!
そして
誰も撃つな!

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2016/09/26

官邸独裁国家への道

9月26日付朝日新聞の報道によれば、いま行われている新潟県知事選で現職の泉田裕彦知事が立候補を取りやめにした経緯が書かれている。以下はその概要だ。
背景には泉田知事が原発の再稼働に反対していたため、安倍政権から知事への厳しい対応があった。
例えば新潟県下の市町村から政府への陳情が行われると、麻生財務相から「先ずは知事を変えてからだろう」と言われた。原発1基が稼働すれば、東電は最大月に100億円の利益が上がるのだ。麻生と電力会社との関係は深い。
これが県下の市町村長の姿勢に影響し、今年5月の首長らによる「泉田県政3期12年間に生じた問題」という検証報告書が提出された。この中では国との調整について「良好な関係にきしみが生じた」との指摘がなされた。
国とのパイプが細ることを懸念したのだ。
自民党県連からも水面下で原発再稼働に対する議論を進めるよう働きかけがあったが、泉田知事の姿勢は変わらなかった。
7月に入ると反泉田の県議らと首長の後押しで、長岡市長の森民夫が出馬を表明する。これで自民党内部からは「再稼働への環境が整った」という声が上がった。その後、自民・公明両党が森への推薦を決定した。
民進党の支援団体である連合新潟も森支持を決めた。
かくして泉田知事は四面楚歌の状態に追い込まれ、「心が折れた」という言葉と共に立候補を取り下げたのである。
なお県知事選は無風選挙になると思われていたが、市民団体や共産、社民、生活の支援で、医師で弁護士の米山隆一が出馬を表明し、原発再稼働を争点とする県知事選になるようだ。

沖縄県の基地問題に関して、いったいどこの国の政府かと疑いたくなるような対応を政権は行っている。辺野古しかり、高江しかり、である。
沖縄・辺野古の米軍新基地建設をめぐって、安倍政権が沖縄県の翁長雄志知事を訴えていた訴訟で、9月16日福岡高裁那覇支部(多見谷寿郎裁判長)は国側の主張を全面的に認め、翁長知事が辺野古埋め立ての承認取り消しの撤回に応じないのは違法だという判決を言い渡した。
しかも「海兵隊の航空基地を沖縄本島から移設すれば機動力、即応力が失われる」「県外に移転できないという国に判断は現在の世界、地域情勢から合理性があり、尊重すべきだ」などと新基地建設の妥当性にまで判決は踏み込んでいる。
これでは裁判所が政権側の言い分を丸飲みしていると思われるのは当り前だ。
実は、この判決を既に昨年12月に予測していた記事がある。
筆者は作家の黒木亮、2015.12.25付「ダイヤモンドオンライン」に掲載された『辺野古代執行訴訟「国が勝つことは決まっている」』というタイトルの記事だ。
少々長くなるが、当該部分を下記に引用する。

【しかし、この裁判は最初から国が勝つと決まっていると言っていい。もともと米軍基地や原発などの国策訴訟は、国側が勝つ場合がほとんどだからだ。しかも今回は、裁判を担当する福岡高裁那覇支部の裁判長(那覇支部長)に行政寄りの裁判官が任命されている。
裁判長を務める多見谷寿郎氏(57歳、司法修習36期)は、代執行訴訟が提起されるわずか18日前に、東京地裁立川支部の部総括判事(裁判長)から慌ただしく福岡高裁那覇支部長に異動している。
この転勤が普通と違うのは、多見谷氏の立川支部の部総括判事の在任期間が1年2カ月と妙に短いことだ。裁判官の異動は通常3年ごとである。高裁の陪席判事と違って、現場の指揮官である地裁の裁判長を急に動かすと現場が混乱する。多見谷氏は、立川支部の前は東京高裁の陪席判事(約4カ月)だったため、本来なら立川支部を経ずに那覇に持ってくるのが自然だ。また、前任の須田啓之氏(修習34期)もわずか1年で那覇支部長を終えて宮崎地家裁の所長に転じており、これも妙に短い。
(中略)
多見谷氏は、平成22年4月から同26年3月まで千葉地裁の裁判長を務め、行政(およびそれに準ずる組織)が当事者となった裁判を数多く手がけているが、新聞で報じられた判決を見る限り、9割がた行政を勝たせている。その中には、国営の成田国際空港会社が反対派農民の土地明け渡しを求めた国策色の強い裁判もある。】

裁判の結果は、まさに黒木亮の予測通りとなったわけだ。
ところで裁判官の任命はどの様に行われているのか。
「最高裁判所長官の任命は天皇の国事行為と定められているが,その指名を行うのは内閣である。また,長官以外の裁判官についても内閣に任命権があり,高等裁判所など下級の裁判所の裁判官は,最高裁判所が提出する指名名簿に基づいて内閣が任命する。」
法律上は裁判官は内閣が任命することになっている。
こうして見ると司法権は行政権(政府)に握られているのであった、三権分立は砂上の楼閣といえる。
近ごろでは政府のみならず、地方自治体や政府系団体の人事にまで官邸が介入している姿が目につく。
国会は与党が圧倒的多数を背景にやりたい放題。
今年行われた東京都知事選の結果に見られる通り、いまや政権党の自民党でさえ官邸の意のままだ。
我が国は「官邸独裁国家」に向かいつつあるようだ。

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