住まい・インテリア

2016/09/09

「耐震化」と地域コミュニティ

いま国交省が音頭をとって建物の耐震化を進めている。特に幹線道路や避難場所の近くにある建物や、不特定多数の人が利用する建物については早急な対策が要請されていて、地方自治体も改修や建て替えに一部補助金を出すなどして後押しをしている。
私が住んでいる地域でも建て替えが進んでいる。
先月には地銀の支店と小規模のスーパーの取り壊し工事が始まった。ともに駅から1分と好立地で、自宅に帰る途中にあったので頻繁に利用していた。双方ともマンションになるという計画だ。
銀行の方は前に少しスペースがあり、毎年のお祭りではこの場所にテントを張り準備会場として使っていた。来年からはどうするんだろうと、些か心配になる。
スーパーも障碍者が車いすで買い物がしやすいように(近くに障碍者のための作業所やアパートがある)通路の幅が広くとってあり、商品棚も高さを抑えていて、買いやすいい工夫をしていた。レジ係りの人も昔から変わらず、そのせいか小売店みたいな感覚でお年寄り(私もだが)の利用者も多かった。そうした人たちにとって、このスーパーの閉店は痛い。

それでも建て替えの資金がある所はまだいい。あるいは、公共の建物の場合は国や地方自治体の予算で建て替えができる。
問題は私有の住宅、特に権利者が複数にまたがる集合住宅の場合だ。
私が住んでいる集合住宅は耐震基準が作られる以前に建ったもので、今年行った耐震診断でも不合格という結果が出た。
かと言って、建て替えなど問題外だ。
そこで耐震化工事をすることによって、耐震基準をクリアしようという事になった。
ところが、これも莫大な費用がかかるのだ。自治体から補助金も出るが、それでは到底間に合わない。
住民が高齢化し年金生活者が多い現状から、多額な費用負担は無理だという声が出ている。
一方では、不安だから早く工事をして欲しいという声もある。
管理組合で何度か話し合いをしてきたが賛否が真っ二つに分かれ、議論の過程で住民同士に感情的なシコリが残ってしまった。
管理規約では住民の4分の3以上の同意が必要だが、現状では不可能に近い。かといって、このまま放置するわけにもいかず、完全に暗礁に乗り上げている。
自治体の担当者にきいた所では、どこの古い集合住宅でも同様の事態がおきているそうだ。
災害時に大事なのは地域コミュニティだと言われている。耐震化でコミュニティを壊したのでは何もならない。

災害に強い街づくりという総論は結構だが、その中で起きていることをどうやって解決するのか、国や自治体はどのように考えているのだろうか。

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2015/10/21

建築不正は何故なくならないか

横浜市内の大型マンションが傾いた問題で、建設時の杭打ち工事で、建物の基礎となっている複数の杭が強固な地盤に届いておらず、杭打ちのデータに別の工事のデータが転用されていたことに加え、セメント注入量まで偽装されていたことが明らかになった。
デベロッパーは三井不動産レジデンシャル、元請け施工が三井住友建設、下請けが日立ハイテクノロジーズ、杭打ち工事を行った孫請けが旭化成建材と、いずれも日本を代表する企業ないし子会社であり、日本の企業のコンプライアンスが問われる事態に発展している。
昨日、旭化成建材の親会社である旭化成の社長が謝罪の記者会見を開いたが、今後の調査により今回のような不正がどこまで拡がっていくのか、又問題マンションの建替えなど課題は山積みだ。

現在は旭化成一人が悪者になっている様だが(もちろん旭化成建材の不正は許されないが)、本来は元請である三井住友建設が責任を負わねばならない筈だ。なぜなら建築は設計、施工、監理からなるが、その全ての責任は元請が負わねばならないからだ。
孫請けの不正を見抜けなかったとしたら、それは元請の怠慢だ。黙認あるは気が付かないふりをしていたなら、完全に元請の責任となる。
ここで工事の「監理」というのは一般に馴染みがないかと思われるが、以下のようにとても大事な仕事だ。
・設計図通りの施工が進んでいるかチェック
・図面だけでは伝わらない内容の伝達
・建築主の代理となって、工事現場との打合せや指示
・建築主への報告
メーカーでいえば品質管理部門に相当し、工事では建築主の代理人の立場だ。
今回の件も、元請が規定の「監理」を真面目に行っていれば防げた筈なのだ。処が、まるで元請が他人事のようにしている印象があり、違和感を覚える。

今回の不正が旭化成一社だけと思ったら大間違いで、むしろ氷山の一角と見るべきだ。大小含めた不正は恐らく工事現場では日常的に起きているものと思われる。
では何故、建築工事で不正が行われるのだろう。マンション建設を例にいくつか原因を考えてみたい。
1.建築物の不正を居住者が見抜くのは難しい。
これが家庭電器や家具、乗用車などの耐久消費財であれば欠陥は見つけやすい。処が建築物の欠陥というのは簡単には見つからない。不具合を感じてもその原因が建築工事の不正であることを見抜くのは困難な事が多い。集合住宅の場合、不具合が一様に現れることが少ないし、不具合の全く無い住戸もあるからだ。長い期間を経てから不具合が生じてくるというのも建築物の特徴といえる。
2.建築工事は工期とコストが最優先される。
工期を守るのは至上命令であり、赤字は許されない。しかし実際の工事では予期せぬことがしばしば起きる。地盤が脆弱だったり、今回のように地表から岩盤までの距離が予想を遥かに超えていたとう様なケースもある。しかし元請としては工期は絶対に守らねばならないし、予算の超過は許されない。そこで下請けや孫請けに対して「何とかしろ」という指示になる。命じられた側は仕方なく「何とかする」ことになるが、これが不正の元になる。
3.工事では「監理」がおろそかにされる。
これは某設計事務所のサイトからの引用。
【昨今では設計施工の工務店やハウスメーカーによる現場では、監理者は名ばかりで機能しない状態の現場もあります。
なぜなら監理者は品質管理の為に、管理者の意に添わない指示を行う必要があるからです。
しかし設計施工一貫の会社では、会社の利益に反するケースが多く、監理者の立場に矛盾が生じてしまいます。】
つまり品質管理が不十分な製品を消費者が買わされていることになる。
日本の場合、とりわけゼネコンや大手ハウスメーカーの力が異常に強いので、この傾向が顕著だ。
4.居住者側に立たない管理会社が多い。
マンションの売り出し広告を見ると、全て予め管理会社が決められている。又、管理会社のランキングを見ると、殆んどの会社がデベロッパーやゼネコンの子会社だ。だから居住者が苦情を申し出ても、管理会社が建築の欠陥や不正を認めず、むしろ居住者を説得する側に回る事が多いので要注意だ。

いま直ちに建築の不正を根絶するのは難しいだろうが、当面は次のような対応が考えれよう。
それぞれの居住者が自分の住む集合住宅の住み具合に関心を持ち、問題が生じたら管理組合にどんどん声を上げて行く。
必要な場合は第三者の専門家による診断を依頼する。
居住者の立場に立って動いてくれるようなヒモの付かない管理会社に変える。
不正が明らかになり、相手の態度が不誠実であれば、社会的に広くアッピールしてゆく。

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2010/10/28

住生活G某社のちょっとコワイ話

横浜ベイスターズへの買収交渉が破談になった住生活グループ、その某社は私の現役時代の大切な取引先企業だった。
ある時、先方の品質管理部門の課長を接待したのだが、ちょうど私が所属していた会社が企業合併に伴うリストラの真っ最中だった。
話題がそのことに及び、社内はいま大変な状況でというと、先方の課長は「希望退職でしょ。退職金に上積みがあるんでしょ。ウチの会社からみれば羨ましい、幸せですよ。」とのこと。
「ウチはね、辞めさせたい社員が自分から辞めるように仕向ける仕掛けがあるので、希望退職なんて必要ないんですよ。」というのだ。

その仕掛けというのは、某社には誰がどう頑張っても絶対に売れない商品というのがあるのだそうだ。
会社は辞めさせたい社員がいると、その商品の営業部門に異動させる。
それで毎日ノルマを与えて売り歩かせ、成績があがらないと毎日ケツをひっぱたく。
元々が絶対に売れない商品だから、成果が上がる筈はない。
どんな意志の強い社員でも、1ヶ月はもたず、自ら辞めていく。
こうして希望退職も上積み金もなしに、日々人員整理を行っているというのだ。
合法的ではあるのだろうが、なんだか強制収容所送りを連想させるような手口だ。
コワイ話だ。

この某社といえば、企業買収(M&A)を繰り返しながら急成長をとげた会社で、その裏ではそんなエゲツナイことをしていたというわけだ。
住生活Gとの買収交渉が白紙に戻された横浜ベイ、果たしてこの破談が吉と出るか凶と出るか。

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2008/01/07

「プール天井材落下」は設計ミス

Tenjo1月6日愛知県豊田市、豊田スタジアムスポーツプラザ内にあるプールの天井の石こうボードが落下した。
落下したのはアーチ状に取り付けられていた天井の石こうボードで、長さ20メートル、幅4メートルにわたって、約8・2メートル下の子ども用流水プールなどに落ちた。重さは1・5-2トンほどになるという。
たまたま営業開始前だったのが幸いしたが、利用者がいたら大惨事になるところだった。

今回の事故は、はっきり言えば設計ミスだろう。温水プールの天井材に石膏ボードを使うのは、常識外れだ。
石膏ボードの特長は、火に強く、施工が楽で、価格が安いことだ。
一方欠点は何かといえば、一番は水にとても弱いことだ。湿気を吸いやすく、水分が多くなると極端に強度が落ちる。また石膏ボードは表面に紙がついているが、水分が多くなると紙と石膏が剥がれてくる。
住宅や店舗、オフィスの壁や天井に幅広く使われているが、風呂場の壁や天井には絶対に使用しないのはそのためだ。
プールに石膏ボードを使うのは、元々が間違っている。
担当者によると、温水プールで生じる水蒸気は、普段はエアコンで除湿しているが、年末年始は休業のためエアコンはかけていなかったそうだ。
除湿に頼っているとそういうことになる。

豊田スタジアムは、故黒川紀章氏の設計だが、建築の大家がなぜこんな初歩的なミスをしたのだろう。
やはり、「麒麟老いれば駄馬のごとし」だろうか。

もう一つ指摘しておきたいのは、施主や管理者がこの天井の材料や施工方法にどれだけの関心があったかということだ。
今回事故のあった天井はいわゆる「吊り天井」方式だったが、2005年の宮城沖地震の際に仙台市内の室内プールの天井ボードが落下して、35人が重軽傷を負う事故があり、国は天井が500平方メートル以上の建物のつり天井の耐震強度などを点検するよう指示をしていた。
処が、豊田スタジアム側は「吊り天井」だという認識がなかったため、点検をしていなかった。
建物や設備を管理する側が、使われている材料や施工方法に関心がないと、これからもこうした事故は避けられない。

天井材落下は、設計と管理のミスが原因であり、人身事故にならなかったのは不幸中の幸いだった。

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2006/02/22

東京都庁舎は「欠陥ビル」ですか

tocho
以前このブログで記事にしたテーマで、昨日改めて話題になった問題がありましたので、取り上げてみました。
一つは東京都庁舎です。2005年5月25日付の記事「丹下氏、そして都庁舎のこと」で、故丹下健三氏設計のこの建物が、デザインに品が無いだけでなく、「バブルの塔と呼ばれている建築費用の無駄使い(不透明な金の話も一部ありました)、毎年かかる膨大な維持費、都民の一人である私にとって、ウラミの対象でしかありません」と書きました。

そこで今この庁舎がどうなっているかといえば、築15年にして雨漏りがしていて、天井裏はポリバケツとビニールシートで応急措置がされているそうです。
年間で修繕費に18億円、光熱費を含めた管理経費に34億円掛けてなおこの有り様です。都の担当者は「都がランニングコストを考えずに、デザイン優先で決めた結果だ」と語っていますが、こんなことは当初から指摘されていて、分りきったことでした。
そのデザインにしても、私は公共施設、特に首都の庁舎として品格に欠けると思っていますし、これも当時から多くの建築家が指摘していました。
加えて不透明な金の流れがあり、総工費1570億円の一部は、建設費以外に使われた可能性が高い。

東京都庁舎ははっきりいえば「欠陥ビル」と言って過言ではないし、当時の設計者である丹下氏と、都知事であった鈴木俊一氏の責任は免れないものと思います。しかし15年経ってますから、今更責任追及は出来ないですね。
都は、今後計画的な本格修繕を検討しているそうですが、現時点の試算結果によれば1000億円に達するそうです。
この建物はバブル最盛期に計画され建てられたもので、今なら相当安く出来るでしょう。談合抜き、裏金抜きにすれば更にコストは下がりますので、仮に新規に建て直しても、修繕費と同程度の金額に抑えられると想定されます。
ここは耐用年数ギリギリまで辛抱して使って貰い、新しく建て替える道を選んで貰いましょう。

もう一つは、2005年4月8日付の記事「子供を宗教活動にまきこむな」でとり上げた、聖神中央教会という宗教法人で、代表者の金保が多数の信者の少女を強姦したとして逮捕された事件です。
21日京都地裁で判決が出され、「被害者が神に近い存在として見ていた地位を乱用し、常習的に犯行を繰り返していたものであり、性犯罪の中でも類を見ないほど悪質」として、懲役20年を言い渡しました。

被害者の少女の多くが後遺症に苦しむ一方、合計22件の暴行を繰り返していた被告は、拘置所から被害者宅に手紙を出し、「今回の件は、偽りに満ちている、信じてください。」「悪魔との闘いに勝利してください。愛しています。」「最後まで付いてきなさい。」といった文面を送りつけ、一層被害者の怒りをかっていたそうですから、当然の量刑といえるでしょう。

私はその時の記事に、「今回の事件は、信者である彼らが宗教施設に子供を連れて行き、宿泊までさせていたことにも原因があったのではないか。子供さんたちは確かに被害者で、本当にお気の毒と思いますが、親である信者は、見方によっては加害者ではないだろうか。厳しいかも知れませんが、親としての保護責任が問われると、私は思います。」と書きましたが、この事件の後も、宗教団体内部での性的被害が跡を絶ちません。
当時の指摘は正鵠を得ているものと考えます。

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2005/12/09

「耐震偽装」の最大の巨悪は「国交省」

kitagawa
「耐震偽装」の悪役は、当初の姉歯設計士から木村建設、そしてヒューザー、最近ではヤッパリ総合経営研究所(総研)と移り変わっています。今回の一連の不正は、売主、設計事務所、工事会社、検査機関がグルになって行ったものであり、全体のプロデユーサーが経営コンサルタントであったという全容が、ようやく見えてきました。

私は以前から建築の不正が構造的な問題に起因するし、それを承知しながら放置してきた国土交通省(旧建設省)に最大の責任があると書いてきましたが、この主張は今も変っていません。
恐らくは、別のグループでもこうした組織的不正は行われている筈ですし、慌てて対応策を講じている企業も多いと思います。
国交省は、個々の事例について具体的な把握はしていないでしょうが、業界全体で日常的、組織的に不正が行われている実態は掌握しています。
建築基準法の改正などで、国交省に担当官が業界に対する説明会を開くことがありますが、彼らは業界で起きている状況を正確に掴んでいます。

最近「役人」という言葉が否定的に使われることが多いようですが、私は日本の役人、官僚制度というのは非常に優秀だと思っています。本省の課長代理クラスの人と会いますと、その頭の回転の早さ、理解力に驚かされます。民間企業ではメッタにお眼にかかれない人材です。官僚から国会議員になる人が多いのも肯けます。
ただ頭の使う方向が違うのです。建築行政でいえば、消費者の立場に立たず、ゼネコンとハウスメーカーのご都合だけを優先させています。

道路行政は、道路の利用者本位では無く、道路公団中心でした。
財務省は、金融機関の不良債権処理を優先させ、いつまでも預金者にはゼロ金利を押し付けています。金利は自由化されているのに、銀行間の利率の差は殆ど無い。財務省が銀行の「談合」を許しているせいですね。
厚生労働省の医療行政は、製薬会社と医師会の顔色だけを見ています。
官僚の優秀なアタマは、国民向けではなく、業界の利益優先に使われている、これが最大の問題です。

今回の「耐震偽装」の被害について、当初国交省は民間同士の問題なので行政は介入しないと言明していましたが、その後緊急の公的支援策を発表しました。
さすがに後ろめたい気持ちがあったのでしょう。

根本的には、国交省の役人の優秀な頭脳を、消費者本位に切り替えさせるころが大事でしょうが、先ずは建築基準法を厳守させることが前提になります。
建築基準法はその第1条に「建物の最低の基準を定める法律である」とあるように、最低基準しか定めていません。処が現実には、その最低基準さえ守られていないのが現状なのです。
①今回の件に関して、民間検査機関が通常の検査では不正は発見できなかったと証言しています。検査機能を官から民へ移す段階で、どのような検査マニュアルを指示したのでしょうか。今回の不正を教訓にして、検査の内容、手順を厳しく見直す必要があります。
②法律では施工にあたり、工事監理者を選定し届け出る必要がありますが、これが現在有名無実となっています。工事監理をゼネコンやハウスメーカーが指定できる現在の制度を改め、公正な工事監理を行えるようにすべきです。
③「工事完了届け」を行政に提出し、行政は「完了届け」を受理した後に完了検査を行い、合格した建物に「検査済証」を発行しています。この「検査済証」が無い建物は使用できないことになっているのですが、最近の調査で30%程度の建物が違反しているとのことです。これは法を遵守させるべきです。

国交省がその気になりさえすれば、建築業界の不正は大幅に減少すると思います。

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2005/12/01

「耐震偽装」を生み出す底流

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姉歯建築士の不正に始まった「耐震偽装」は、調査が進むと共に次々と被害の実態が明らかとなっています。今後は、他の業者の物件でも同様の不正が発覚し、大きな問題となる可能性が十分あります。
以前の記事で、今回の不正は建設業界の体質そのものが生み出したこと、その背景に「政・官・財」(正確には更に「学」が加わる)の癒着構造があることを記しました。
今回は建設業界から政界への資金の流れについて述べてみたいと思います。

自民党(支部や議員、後援会を含む)への政治献金で、建設業界は最大の資金源と言えるでしょう。それも正式に届けられるオモテの政治献金といわゆるウラ献金と両方ですから、正確に実態が掴めないくらい多額なものです。
先ず政治家が公共事業を取ってきます。次に官から民へ、本体秘密にすべき工事予算が伝えられます。ゼネコンは、仕切り役を中心に「談合」して、受注業者を決めます。この結果民間工事に比べて、はるかに高い利益を確保することが出来ます。
この見返りとしては、一つには建設業者から政治家への政治献金であり、もう一つは官の退職者の民間業者への天下りです。
これが、典型的な資金の流れであり、「政・官・財」癒着の構造です。だからいくら「談合」を摘発しても、絶対に無くならない。
「談合」こそが、金を生む「打ちでの小槌」ですから。

しかし、政治家というものは因果な職業で、こうしたオモテの金だけでは足りず、どうしてもウラの金が必要になるようです。裏金の作り方は私の専門ではないので、業界関係者から実際聞いた一例をご紹介します。
建設工事には、沢山の業者が関わりますが、それらの下請け孫受けから集金し、ゼネコンの幹部社員の個人口座に入金させます。ここで裏金が出来ます。これを財源にして、収支報告書に記載しない、領収書がいらない政治家へのウラ献金を捻出するそうです。

ここで思い出して頂きたいのは、今回の「耐震偽装」で木村建設の篠塚明東京支店長の個人口座に、姉歯からのリベートを振り込ませていました。この事実は木村社長も認めています。
処が、先日行われた衆院の参考人質疑で、木村社長と共に堂々と篠塚支店長が出席し、悪びれた様子も無く質問に答えていましたね。使い道を尋ねられると、「自分の営業経費」と答えていましたが、つまり社長公認の裏金であったと想定されます。
ヒューザーも木村建設も政治献金はむろん行っていますが、恐らくこうした手口でウラ献金もしていたのでしょう。

11月26日自民党の武部勤幹事長が講演で、耐震強度偽造問題に関して「悪者探しに終始すると、マンション業界つぶれますよ、ばたばたと。不動産業界も参ってきますよ。景気がこれでおかしくなるほどの大きな問題です。」と述べました。
この発言は大切なスポンサーである建設・不動産業界へのリップサービスであり、政府・与党の本音を代弁したものです。

建設業界が、政治家への資金を生み出す温床と」なっている間は、業界の健全化は実現しません。
「談合」や「裏金」や「天下り」、不正行為には厳しい処罰を与え、関与した業者は公共工事から締め出すなどの制度を作っていかないと、建築の不正はこれからも決して無くなりません。

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2005/11/30

「耐震データ偽造」の背景を考える

taishin
「耐震データ偽造」問題で29日行われた衆院国土交通委員会の参考人質疑は、予想通り相互の責任のなすりあいに終始し、実りある議論になりませんでした。しかし映像は正直で、多くの視聴者の方は、この不正の主役は誰か、誰が一番の悪者かを推察できたと思います。
そういう意味では、やることに意義はあったのでしょう。

私はサラリーマン時代、永年商品開発関係の仕事をしていたので、お陰で色々な業界の方と接することができました。その中で、建築業界とのお付き合いが最も深く、今回の不正についても色々考えさせられることが多いわけです。
私が仕事で関わった業界で、最も職業倫理観の薄いと感じたのは、建築と食品業界です。
ご存知の通り、その後食品業界は大きな不祥事が相次ぎ、やはりという思いで見ておりました。
どの業界でもオモテウラがあり、キレイ事でない部分がありますが、この2つの業界は特に顕著だと、そう感じました。

建築業界の場合、建設現場事務所に商品の売り込みに行きますと、公然とワイロを要求される場合があります。相手が業界トップクラスのスーパーゼネコンでもそうです。
これが例えばトヨタや松下を訪問して、相手先からワイロを要求されるなどということは、到底有り得ないでしょう。
ヒューザーの小嶋社長のような人物が、この業界では大手を振って通用している、ここにこの業界の病巣があります。

建築業界関係者の中に、どうせ他でも不正をしているんだからという意識がどこかにあります。
検査書類をごまかしたり、工事では特に見えない部分での手抜きを行う、その程度の事どこの現場でもやっている、こういう意識が強いのです。
今回の不正もかなり早い時期から関係者が把握していましたが、売主も設計者も工事業者も検査機関も、そして国交省の担当者でさえ問題の重要性に誰も気が付かなかった。
これは、こうした不正・手抜きが日常化していた何よりの証拠です。

もう一つには、不正がバレル事は先ずないし、バレても責任を負わされたり、刑事罰の対象になることは無い、そう信じている点にあります。
例えば、過去阪神大震災など大地震で沢山の建物が倒壊しましたが、あの中には今回のような不正で耐震基準に達していない建物も、相当存在した筈です。
でもそれは一切分らないし、責任を追及された例も無い。
市街地では建築基準法による防火規制により、法定の耐火・防火材料の使用が義務付けられています。しかしこの規則を守らず、規格外の製品を使うケースがあります。
では実際に火事になって、そうした不正が暴かれた例があったか、多分過去に1件も無い筈です。

無論そうした不正に一切手を染めず、真剣に取り組んでいる建築業界関係者も沢山居られます。
しかし今回の「耐震偽造」の件では、関係者は“俺たちは余程運が悪かったんだな。”と思っているでしょう。
そして、売主によってはサッサと会社を潰して責任を逃れ、ホトボリが冷めた頃に別の不動産販売会社を設立し、平気な顔で又商売を再開することでしょう。
残念ながら、建築業界ではこんな実例、ゴロゴロ転がっています。

不正を働いた者は厳しく処罰され、正直に法を遵守した者が報われる、そうしたシステムを作り上げる、これは正に政治の責任です。

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2005/11/20

国交省の責任が問われる『耐震強度偽装』

aneha
以前このブログで、「天井落下事故は人災」「手抜き工事は続くよ、どこまでも」の2本の記事で、現在の建設業界が前近代的な産業形態にあり、今後も建築を巡る不正事件は後を絶たないだろうと書きましたが、今回又しても建築に関する不正が発覚しました。

「姉歯建築設計事務所」が、2003年2月~05年10月の間、ビルやマンションなど21棟の柱や梁(はり)の構造計算をする際、建物にかかる外力の数値を実際の約半分にして入力していたというものです。
建物によっては震度5程度の地震で倒壊する可能性もあり、既に入居している住民を中心に、不安が高まっているとの報道です。
現在都会に住む多くの人は集合住宅で暮らしており、私自身を含めて他人事ではありません。今回のような不正は、いつでもどこでも起こりうる問題なのです。

建築には施主(今回の場合は、デベロッパーと呼ばれる業者)、設計、施工、工事監理と多くの組織が係り、更に「建築確認」や「工事完了届け」を地方自治体に提出することが義務付けられています。
つまり本来は、これだけ相互のチェック体制が出来ているわけです。

今回の明るみに出た不正を見ると、「姉歯建築設計事務所」は個人事務所であり、仕事の多くは、元請である大きな設計事務所の下請けであったと見られます。不正に作成された構造計算書には、認定番号の印字も認定書も添付されていなかったということですから、先ず元請の設計事務所が気付かなくてはいけない。
更に、国交賞指定の検査機関により―今回不正のあった物件の大半は「イーホームズ」社が検査していますが―審査と建築確認を受けるのですが、中身はともかく、認定番号と認定書が揃っていないというのは、形式上の不備ですから、これも当然気が付くべきです。

私が最もいぶかるのは、施工会社=ゼネコンです。
建物の強度を半分に減らす為には、鉄筋の数を減らしたり、柱を細くしたり、壁を薄くしたりしたのでしょうから、ゼネコンは気が付くべきです。ゼネコン社内には、沢山の構造計算の専門家がいますし、それでなくとも従来の経験から、オヤッと思うが普通でしょう。
設計事務所が作成した設計書が、施工の実情と合わず、ゼネコンからの指摘で修正されることは、そう珍しくない筈です。
ゼネコンは気が付いてはいたが、見て見ぬ振りをしていた、私にはそうとしか見えません。

施工監理は、設計通りに施工されているかを監理する機能があります。
本来この段階でもチェックが働くべきなのですが、以前の記事でも指摘したとおり、殆どの工事でゼネコンが施工監理会社を指定するため、ここが正しく機能しない。

そして施主のデベロッパーですが、ここも素人が持ち家を建てるわけではなく、プロ集団ですから、明らかな設計ミスには、気が付いてもおかしくない。
処が、デベロッパー自身が「姉歯建築設計事務所」を指定していたとの報道からすれば、不正に係っていたか黙認していたか、疑義が持たれます。

結論から言えば、今回の件は、全ての関係者が寄って集って不正を働く、あるいは意識的に見逃してきた結果と想定されます。
その背景に、建設業界の体質があります。
公共工事では談合し、民間工事ではコストを抑えるために手抜きや不正を行う、この体質を改めない限り、これからもこうした欠陥ビル、欠陥マンション、欠陥住宅は、絶対に無くなりません。
このことは、国土交通省が、一番分っている筈です。でも彼らは、決して改めようとはしない。
それは根底に「政・官・財・学」の相互癒着があるからです。

小泉首相が唱える「構造改革」は、こうした課題こそ真っ先に取り組むべきだと、私は思います。

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2005/03/25

丹下氏、そして都庁舎のこと

tocho以前読んだもので、有名人の追悼文を集めたものですが、印象に残っている本があります。追悼文というのは、著名な方が亡くなったときに新聞や雑誌に、故人の業績や故人の思い出を綴ったものですね。これが、明治とか大正時代の追悼文には、結構本人を批判したものが掲載されていたのです。
作品はともかく性格や生活に問題があったとの指摘や、中にはこの作家は現在売れているが、十年もすれば世間から完全に忘れ去られるだろうなどと、辛らつな追悼文もあります。又、ご本人とは特に親しくなかったので、特に申し上げることもありませんと云った、今なら完全にボツになるようなコメントも載っていて、なかなか面白かったと記憶しています。
追悼文が、故人をやたら褒め称えるようになったのは、割と最近なのですね。

22日に丹下健三氏の死去を伝える記事や追悼文(ネットを含め)を読んで、少々感じたことがあります。
丹下氏は日本を代表する世界的な建築家であり、文化勲章を始め数々の栄誉に輝く建築界の巨匠とされ、氏の設計になる建築物にも多大な賛辞で埋め尽くされています。
しかし、私の知る限りではかなりの毀誉褒貶のあった方とお見うけしていました。
建築に関して門外漢なので、間違っているかも知れませんが、すぐれた建築物とは、周辺の景観と調和を保ちつつ存在感を示し、そして何よりその建築物が優美で上品であることだと、私は思っています。この点からすると、後期の代表作とされる東京都庁舎やフジテレビ本社ビルのどこが良いのか、理解できないのです。
特に都庁舎は、バブルの塔と呼ばれている建築費用の無駄使い(不透明な金の話も一部ありました)、毎年かかる膨大な維持費、都民の一人である私にとって、ウラミの対象でしかありません。

話しは変わりますがソフトバンクという会社、プロ野球といい、フジテレビといい、高みの見物をしていて最後の一番美味しいところをサラって行く、漁夫の利ネライですね。
孫さん、名前はソンなのに、いつも得してばかりいて、ちょっと汚くありませんか。

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