医療・福祉

2021/09/14

コロナ患者の自宅療養と「ハッピー・ハイポキシア」

6月、愛知県で追突事故後に男性が死亡。運ばれた病院で新型コロナウイルスに感染していたことが分かりました。治療にあたった医師は、この男性が「自覚のない低酸素状態」で運転していた可能性があると指摘しています。
交通事故の後に死亡した男性。実は新型コロナの重症者だったことが分かりました。
愛知県東海市の県道。6月30日午前7時ごろ、信号待ちの乗用車に軽自動車がゆっくりと接近。すると、そのままコツンと追突します。
追突された車の男性が軽自動車を見ると、運転席で男性が突っ伏していました。
男性は50代。救急隊が駆け付けると、すでに心肺停止の状態。
搬送された病院で死亡が確認されました。死因を調べるためにCT検査をすると、治療にあたった医師も驚く症状が…。
治療にあたった医師:「正常な肺の部分は一切残っていない、ひどい肺炎があって、コロナ肺炎による低酸素血症が死因」
男性は亡くなった後の検査で新型コロナの陽性と判明。
肺炎が重症化し、低酸素の状態にもかかわらず、自ら運転していたことになります。
治療にあたった医師:「もう本当に死ぬ直前の酸素が足りない状況でも車が運転できてしまう。まさにハッピー・ハイポキシアという状態」
「ハッピー・ハイポキシア」とは「自覚症状が乏しい低酸素症」のことだといいます。
(中略)
埼玉医科大学総合医療センター・岡秀昭教授:「自覚症状としての息苦しさを一切、訴えない人をよく目にする。あまり重症そうではないという見た目で惑わされてはいけない」
埼玉医科大学総合医療センターのコロナ病棟では「自覚のない低酸素症」と思われる重症患者が救急搬送されてくることも多いといいます。
(中略)
今回、愛知県で治療にあたった医師は、「コロナによる在宅孤独死がたまたま運転する車の中で起こったと。こんな悲しい現実があることを世間の人たちにも知ってほしい」と語っています。
(以上、「テレ朝news」2021/9/6 より)

上記の記事のドライバーは、仕事に出るため自分で軽自動車を運転して家を出て、その運転中に「容態急変」し、信号待ちしている間に心肺停止。この様に症状が激変するのが、新型コロナ感染者の特徴だ。
いま、新型コロナ感染者のうち、重症化リスクの無い人には「自宅療養」が基本とされているが、これは「伝染病には隔離」という原則に反するものだ。感染経路の多くが「家庭内感染」という調査結果が出ているが、当たり前なのだ。
自宅療養だと、外出を完全に禁止することは困難だ。外に出た患者からの感染リスクもある。
加えて、コロナ患者特有の「ハッピー・ハイポキシア」により、本人が自覚せぬまま急速に容態が悪化し、自宅で必要な手当てを受けられぬまま亡くなるケースも増えている。7月だけで31人の人が自宅で亡くなっている。
前回の記事で、政府の「自宅療養」を基本という方針に意を唱えたのは、自民党内で塩崎泰久議員だけだったと紹介した。
して見ると、いま総裁選に立候補している人たちは、みな政府方針を受け容れていたことになる。
政府にとって最も重要な責務は、国民の生命と安全を守ることだ。総裁選では各候補が安全保障について敵基地先制攻撃など威勢のいい政策を語っているが、コロナ患者の自宅療養のような「いま、そこにある危機」をどうやって回避するかについて、あまり議論されていない様だ。これでは国民の負託に応えられない。

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2021/08/20

TV視聴率が上がればコロナ感染が減るって?

8月19日参院内閣委員会の閉会中審査で、丸川珠代五輪担当相は「五輪は感染拡大の原因ではない、と断言されている根拠」を問われ、「オリンピックの開会式は56・4%、閉会式が46・7%と、期間中も高い視聴率を記録」と、なぜかテレビ視聴率を読み上げ、野党席から抗議の声が上がった。
また、東京都の小池百合子知事は、五輪のコロナ感染への影響を問われ、「テレワークなどの推進もあり、ステイホームで応援していただき、視聴率も上がった」と主張していた。
丸川と小池の主張に共通しているのは、TV観戦さえしていれば、コロナの感染拡大はあり得ないというものだ。
落語家なら、ここは「冗談言っちゃいけねえ」とサゲて高座を下りるところだ。
それなら、五輪開催を機にコロナ感染が爆発的に増加しているのを、どう説明するつもりだろうか。
さらに小池都知事は8月13日、競技場の周辺や沿道に多くの人が集まり応援する姿が見られたとの指摘に対して、「印象論でおっしゃっている。エピソード(出来事)ベースではなく、エビデンス(証拠)ベースで語ることが重要だ」と語った。
しかし小池が、TV視聴率ーコロナ感染の関係を「エビデンス」で証明したことは一度もない。小池の主張こそ「印象論」そのものだ。
小池知事は8月19日に、東京パラリンピックにおける児童や生徒らの観戦について「希望されるお子さんが、実際にパラリンピアンの努力や姿をみることは、やはり教育的な価値は高いと思う」と述べ、実施する意向を改めて強調した。この問題は、8月18日に行われた都教育委員会で委員全員が実施に反対したにも拘わらず、自説を曲げない。修学旅行はNOだが、パラ観戦はYESなのだ。
私が中学生の時に、戦後初めて日本で開催されるアジア大会が開かれた。私たち中学生は社会見学として旧国立競技場に集合、観戦させられた。当初は期待もあったが、競技場の中では様々なトラック競技やフィールド競技が行われていたが、米粒ほどの人が動いているのが見えるだけで、今なんの競技が行われているのか、どんな選手が出場しているのか、さっぱり分からぬまま終わってしまった。生徒たちは退屈して歩き回り、そのうち女性モデルの撮影しているのを誰か見つけた。モデルが客席の一番奥に立っているものだから、スカートの下から下着が見えるというので、我々悪童たちは代わる代わる見学に行ったものだ。アジア大会の思い出は、それだけ。その経験からすると、あまり「教育的な価値」は期待できない。今なら大型スクリーンなどで競技の模様が写されるかも知れないが、それじゃ家でTVを観るのと変わりない。第一、小池はTV観戦によりコロナ感染が抑えられていると言ってるじゃないの。

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2021/08/04

「自宅療養」ではなく「自宅放置」だろう

政府は新型コロナ感染者のうち、重症化リスクの少ない中等症患者は自宅療養にするという方針を決定した。これまで中等症以上の患者は原則入院だったから、大きな政策転換だ。該当するのは「中等症1」の患者で、臨床状態が呼吸困難で肺炎の所見があるという人が対象になる見通しだ。
私が昨年、肺炎で入院したが、やはり呼吸困難で相当に苦しい思いをした。あの状態を自宅で続けると考えたらゾッとする。患者の心理としては、重症化に怯え、死の恐怖と向きあうことになる。
それでも通院や往診などで治療を受けられるなら未だいいが、そうした体制も取られない。実態は「自宅療養」ならぬ「自宅放置」だ。
政府が、ワクチン接種が進んだので感染や重症化が減るという勝手な妄想が招いた結果だ。
もう一つ、各自治体が発表している新型コロナ患者「確保病床数」が、不正確ではないだろうか。例えば東京都の場合、「確保病床使用率」は50%台であり、数値からすれば未だ余裕がありそうに見える。しかし各医療機関から寄せられている意見としては、「ベッドは空きがあるが、医師や看護師が足りなくて、新たな入院は受け容れられない」という声が多い。大事なのは「ベッド数」ではなく、医療体制を含めた「入院患者の受け入れ可能数」だ。
政府も厚労省も、恐らく数字だけ見て判断しているだろう。そうすると実態から乖離したものになり、楽観的な見方に結び付いた可能性がある。
各自治体は早急に「確保病床数」を「入院受け入れ可能数」に改めるべきだ。

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2021/08/03

五輪の後に来る「変異株見本市」

いま行わている東京五輪では、入国したワクチン接種済みの選手や大会関係者の感染発覚が相次いでいる。こうした感染者から持ち込まれたものは、ワクチンによる免疫を回避したウイルスということになる。こうした「ワクチン抵抗株」の流入は、とりわけワクチン接種の遅れている日本にとって脅威となりうる。
7月前半の調査結果によれば、日本の新型コロナウイルスは、アルファ株(英国型)29%で、デルタ株(インド型)64%となっている。WHOが「懸念される変異株(VOC)」として4種類をあげているが、ベータ株(南ア株)とガンマ株(ブラジル株)の二つは日本では流行していない。これは南米やアフリカとの人的交流が少ないことが幸いしたが、五輪ではこれらの地域からも選手が来ている。
二つの株が警戒されるのは、ベータ株の場合は「免疫回避変異」によりワクチンの効果が減衰してしまう。ガンマ株の場合は、変異によって感染力が約5割増強されるという。
この他、いまペルーで流行しているラムダ株がある。5月後半にはペルーの新規感染の97%がラムダ株だった。チリやアルゼンチンといった周辺国にも感染が拡がりつつある。ラムダ株の遺伝子配列が公開されて、10ヶ所以上の変異が確認されている。基礎的検討によれば、この変異によってワクチンの効果は5分の1程度まで低下することが分かった。チリではコロナ感染による死者数が人口100万人あたり5921人で、世界最高だ。
他にもアメリカのニューヨーク株が確認されており、中国の武漢の研究チームも新たな変異株を報告している。
感染拡大で一定の確率で変異は起こり、環境に適した変異が生じると、その変異株は急速に拡大する。
新型コロナウイルスに対する治療薬として「抗体カクテル療法」が注目されていて、厚労省が特例承認した。海外での臨床試験では、入院や死亡のリスクが7割減らしているという。処が、オランダとデンマークでミンクからヒトに感染した変異株は、この治療薬に高度の耐性を示していて、治療薬の効果を無力化しかねない。
東京五輪の危険性は、世界の変異株を一堂に合わせてさらに増強させかねないことだ。
異なるウイルスが混ざり合って、新たな「日本型変異」が起きてもおかしくない。
私たちは、五輪の後は「変異株の見本市」というリスクを覚悟せばななるまい。
(月刊誌「選択」8月号の記事を参考にした)

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2021/07/30

医療従事者の声を聞こう

新型コロナ感染者の急拡大が続くなかで、コロナ患者を受け入れている医療機関の医師たちはどう感じているか。

【東京医科歯科大学付属病院病院長補佐の植木穣医師】
「日曜、月曜日は感染者数が少ない傾向にありましたが、25日と26日は曜日として最多でした。連休中で検査数が少ないにもかかわらず、大きな数字が出てしまったので、連休が明けて、検査数が増えれば数字がさらに上がることが想像できました。ただ、火曜日(27日)に3000人近くまで上る増加速度には驚きました。4連休で人流が減らなかった影響は、来週(8月2日)以降に跳ね返ってくるかと思います」
中等症から重症の患者を受け入れる同病院では、27日夜の時点で、重症8床のうち4床、中等症25床のうち21床が埋まっている状態だという。
「7月中旬から常に中等症患者が20人以上います。日によっては、4人が入院して4人が退院していくという、入れ替わりの激しい状況が続いています。重症病床は残り4床ですが、日によっては4人以上の重症化リスクのある患者の受け入れ依頼があり、受け入れを断念せざるを得ない状況にすでに直面しています。もう現場はひっ迫してきています」
「現状では通常診療に影響は出ていない」と言うが、第3波のときのように重症者が増えて集中治療室を増床しなければならない状況になるのであれば、「通常診療の一部を制限して対応を強化する必要に迫られる可能性がある」と危惧している。

【埼玉医科大学総合医療センター総合診療内科の岡秀昭医師】
「当病院では、先週までに入院した12人のうち10人がデルタ株でした。現在、21人が入院しており、先週末から調べればデルタ株しか出ません。置き換わったと判断し、調べる手間を省くことにしたほどです。アルファ株は置き換わるのに1カ月かかりましたが、デルタ株は2週間ほどでした」
「重症者の病床がここ数日で埋まってしまいました。『重症』の前段階である『中等症2』の患者が40、50代に増えています。『中等症2』は酸素吸入が必要で、数日のうちに『重症』になってしまうような予断を許さない状態です。政治家は『重症者は増えていない』から大丈夫だろうと解釈をされているようですが、感染者の母数は増えているのだから、これから重症者も増えていくことが容易に想像できます」
「40、50代のワクチン接種はまだ中途半端。それに、この年代にも高血圧や糖尿病などの基礎疾患を持つ人は少なくありません。第3波のときには、80代、90代の方が重症化してトリアージの話が出ましたが、40、50代の患者へ延命治療の意思確認をするのは愚問ですよ。これからは、重症化してもろなし、入院すらできずに在宅待機のまま亡くなるケースが40代、50代に出てくる可能性もあると思います」
「埼玉県に限らず、首都圏への緊急事態宣言は後手になってしまった。これまでにも波を経験し、疫学の専門家が予測を出して警告しているのもかかわらず、感染状況が悪化してから対策を強化するのでは遅い。選手は悪くありませんが、東京五輪のお祭りムードにより、感染状況の危機感が消し去られてしまうのは困ります」
(以上、AERA dot.)

上記の様に、第5波では40、50代の患者が増えていて、この年代は働き盛りの人なので、入院させてからトリアージ(患者の重症度に基づいて、医療・治療の優先度を決定して選別を行うこと)を行うことが困難になる。そうすると医療機関としては、患者の受け入れそのものを躊躇せざるを得なくなる。
また、コロナ患者を優先するために、他の診療に影響が出る。その結果、他の病気に罹った人で助かる命が救えないことも起きる。
政府も自治体も、こうした切実な声に耳を傾けるべきだ。

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2021/07/28

コロナ感染拡大に危機感がない政府と東京都

東京都の新型コロナ感染者が28日には3177人と3000人の大台を突破した。神奈川など隣接県の感染も増加の一途を辿っている。
27日に菅首相は、なんの根拠も示さず「人流は減っている」などと呑気な発言をしていた。東京都に至っては、都の吉村憲彦福祉保健局長が報道各社に対し「いたずらに不安をあおることはしていただきたくない」と要望した。こんな姿勢では、都民に自粛を呼びかけても通じない。
五輪大会関連の陽性者は今月1日以降、160人となっているにも拘わらず、小池都知事は「オリンピックも、非常に各競技で、日本人の選手もすばらしい成績を収めて、お家で応援していただいているかと思います」とした上で、組織委員会が発表する感染者数について「足し上げて毎日報道されるのはどういう意味があるのかなあ、とちょっと思っています」と語った。
感染拡大を気にするより、報道を心配しているのだ。
このままいけば、オーバーシュート(感染爆発)に行きかねないというのに、政府も東京都も全く危機意識がない。

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2021/07/03

「反ワクチン」で一儲け

新型コロナ向けワクチンの接種に反対する「反ワクチン」運動が問題となっている。ワクチンの危険性や陰謀論をふりまき国民を不安に陥らせている。
陰謀論では、例えば「コロナワクチンにはマイクロチップが入っていて、5G電波で操られ、打てば5年で死ぬ」といった荒唐無稽なものもあるが、これを信じる人がいるから恐ろしい。
2020年9月、ロンドン大学の研究チームが世界149ヶ国から約30万人を対象に、ワクチンの信頼度を調査した結果、日本は「世界で最もワクチンが信頼されていない国」と評価された。
欧州の研究チームによると、ワクチン接種に後ろ向きの人たちの特性は、女性、若年者、低学歴、低所得をあげていて、日本人を対象にした結果もほぼ同様。
イギリスの「ランセット・デジタルヘルス」では、反ワクチン運動の関係者を、活動家、起業家(政治家を含む)、陰謀論者、SNSのコミュニテイーの4群に分類している。
アメリカの活動家デル・ビッグツリーは、「ワクチンを接種してない女性が、ワクチンを打った男性と接触すると流産し、母乳を介して乳児に毒が移行し、認知機能が損なわれる可能性がある。」と繰り返し主張している。有名なナチュラリストのビッグツリーの主張は影響力が強く、日本人の中にも信奉者がいて本気で信じる者もいる。
SNSでは、ワクチンが低温で保管されるにを狙い、低温保管器の「#プラグを抜こう」という運動まで起こし、実際に被害も出ている。もはや「愉快犯」だ。
起業家の中には、「反ワクチン」で金儲けする人もいる。米国では反ワクチンをテーマにしたSNSのアカウントが約3千8百万存在し、彼らを対象とした広告収益が約10億ドル(約1100億円)に達するという。
出版物としては、内科医が書いた「医師が教える新型コロナワクチンの正体」がベストセラーを記録している。一方、内科医が運営するサイトでは、ブラジル・アマゾンに暮らすインディオが長年にわたって受け継いできた知恵と森の恵みが凝縮された「コパイバ マリマリ聖木樹液」と称する商品を販売している。そっちかよ、と言いたくなる。
今後、若い層の人たちにワクチン接種を拡大する上で、科学的根拠のない「反ワクチン」宣伝を打ち破っていかねばならない。
それにはワクチンによる死亡例について、専門家による実証研究が必要だ。
持病などの理由でワクチン接種ができない人もいるし、接種するか否かは個人の判断に委ねられる。
デマや陰謀論に惑わされることなく、正確な情報をもとに判断するよう願いたい。
ワクチンへの信頼度は国民の政府への信頼度と相関関係があると言われている。「安心・安全」を念仏の様にくり返して東京五輪を強行したり、自治体にワクチン接種を急がせた挙句、フタを開けたらワクチンが足りないといった事態を繰り返していたら、政府への信頼度は落ちるばかりだ。

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2021/06/12

新型コロナ発生源に関する米中の不都合な事実

新型コロナウイルスの発生源について、今あらためて検討が進んでいる。
この件について在米ジャーナリストの飯塚真紀子氏の記事が注目される。以下、要旨を紹介する。
今年3月には、前CDC(米疾病対策センター)所長で、ウイルス学者でもあるロバート・レッドフィールドがCNNのインタビューで「研究所から流出したと思う」と発言し、大きな波紋を呼んだ。
そのレッドフィールドが、CNNで問題の発言をした後、「殺しの脅迫」を受けていたことを、米誌「ヴァニティー・フェア」が報じている。
「私は脅され、村八分にされました。別の仮説(研究所流出説のこと)を提示したからです。政治家から脅されると思っていました。科学界から脅しが来るとは思っていなかった」
科学界から「殺しの脅迫」が来たのは、科学者たちが「動物由来の自然発生説」の立場を取り、「研究所流出説」は陰謀論として否定しているからだろうか。しかし、なぜ、レッドフィールド氏は、政治家サイドから脅しが来ると思っていたのか? 
元国務省高官たちによると「研究所流出説を調査していたグループのメンバーたちは、繰り返し、“パンドラの箱”を開けないよう警告されていた」という。そのため、ディナンノ氏は「警告は隠蔽の匂いがした。関わらないことにした」と
語っている。
その”パンドラの箱”とは、アメリカ政府が”機能獲得実験”を推し進めてきたからだ。
機能獲得実験とはウイルスを遺伝子操作してウイルスが持つ機能を増強したり、ウイルスに機能を付加したりする実験で、伝染力や致死力が高められたウイルスが流出する危険性もあることから、オバマ政権時代、機能獲得実験に対する連邦助成金の提供が一時中断されていた。米国務省内では、新型コロナの起源調査にあたり、危険視されている機能獲得実験と関係がある可能性がある「研究所流出説」を追究するのはご法度という空気が流れていたのである。
米国立衛生研究所の連邦助成金は、ニューヨークにあるエコアライアンスという非営利研究機関を通じて、武漢ウイルス研究所に送られていた。武漢ウイルス研究所は、2014年〜2019年の間、連邦助成金約340万ドルを受け取っていた。
エコアライアンスの社長ピーター・ダスザックは、2020年2月の科学誌「ランセット」に掲載された、27人の科学者たちが署名した“新型コロナは動物由来で自然発生したものであり、研究所から流出したものではない”とする発表を取りまとめた主要人物である。科学者たちが行ったこの発表が「研究所流出説」はありえないとする見方に大きな影響を与えたと言われている。また、ダスザック氏は、今年2月、武漢で新型コロナの起源調査を行うことが許可された、WHO調査団の唯一のアメリカ人メンバーでもあった。
そう考えれば、コロナウイルスの「研究所流出説」の否定は、米中両政府にとって好都合だったわけだ。
ただ、最近になって「研究所流出説」を裏付けるような研究結果や調査結果が出ている。
米新型コロナ対策チームのトップ、ファウチ博士は、「パンデミックの起源を見つけることは、中国にとっても利益になることです。オープンになって協力する姿勢が明らかに求められています。協力を得るには、一つには、非難しないことです。非難は、中国をいっそう後ずさりさせるだけだと思います」と語っている。中国の協力を仰ぎたいなら、中国を責めるなというファウチ博士の考えは、真実を明らかにする上で重要だろう。
バイデン大統領が、研究所流出説を含めて新型コロナの起源を追加調査するよう指示を出したが、その結果が注目される。

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2021/06/04

新型コロナ向けワクチンの最新情報

『WIRED』2021.06.03付に、「ポストコロナの世界が見えてきた米国、インドの回復者を襲う「黒い菌」の脅威:新型コロナウイルスと世界のいま(2021年5月)」という記事が掲載されていて、ワクチンに関する最新情報がいくつか紹介されているので、以下に要点をまとめてみた。
①米国では成人の半数以上へのワクチン接種が完了した。ファイザー製ワクチンの対象年齢が12歳以上に引き下げられたことから青少年への接種も進み、新規感染者数は連日2.5万人程度にとどまっている。ところが、ワクチン未接種者の間においては2021年1月の第3波並みの勢いで感染が進んでいることも明らかになっており、1月から4月13日までの統計では重症患者や死者のほとんどがいまだにワクチンを接種していない人々だという。
この結果から、ワクチンがコロナ感染防止に有効であると同時に、接種していない人の感染状況は以前と変わらないことを示している。
②米国でワクチンの接種完了とみなされるのは、ファイザー製かモデルナ製のワクチンを2回、あるいはジョンソン・エンド・ジョンソン製のワクチンを1回受けてから2週間経った時点のことだ。21年1月1日から4月30日の間に実施された米国の調査では、1億100万人のワクチン接種完了者のなかでCOVID-19に罹患した人は、わずか0.01%の10,262件だったという。
この10,262人のうち2,725人が無症状、995人が入院(うち289人は無症状で別の理由で入院)、160人が死亡(うち28人が無症状で別の理由で死亡)した。
ワクチン接種で感染を完全に防止することはできないが、接種後に感染するリスクは、およそ1万人に1人の確率だった。
③インドの各州では、COVID-19から回復した患者の間で致命的な真菌への感染例が急増している。「ムコール症」と呼ばれるこの真菌症は、土壌や有機物に含まれる真菌の胞子を人が吸い込むことによって引き起こされるもので、早期に治療しなければ脳にまで致命的なダメージを与えうるという。抗真菌薬の処方のほか、眼球の摘出や頭蓋骨、顎の一部を切除する大手術をする場合もある。
真菌感染については、私自身が昨年2ヶ月以上入院した。血液を通して肺、腎臓、眼と、次々炎症を引き起こした恐ろしい病気だ。コロナに感染すると、回復した後もこのようなリスクを負うことになる。
④モデルナは、12歳から17歳までの被験者を対象としたmRNAワクチンの治験の結果、96%の有効性があったとの中間結果を発表した。米国で実施された臨床試験では3,235人の若者が参加し、そのうち3分の2がワクチン群、3分の1がプラセボ(偽薬)群だった。現在までに重大な安全性の問題は確認されていないという。
副反応は「軽度または中等度」であり、注射部位の痛みが最も多かった。2回目の接種では、「頭痛、倦怠感、筋肉痛、寒気」などの副反応が見られ、成人のワクチン接種者と同様の症状が見られたという。
12歳から17歳までのワクチン接種については、今のところ18歳以上と同様の結果が得られている。
⑤英国は2020年末、ワクチンの供給が限られるなか、2回目の接種を3〜4週間から最大12週間も遅らせる選択をした。1回の接種による部分的な保護によって入院や死亡に至る患者を少しでも減らすための壮大な公衆衛生上の実験だったが、これが功を奏したようだ。ファイザーとビオンテックが共同開発したmRNAワクチンの2回目の接種を遅らせることで、80歳以上の高齢者の2回目の接種後の抗体反応を3倍以上に高められるという研究結果が、このほど発表された。
1回目と2回目の接種の間隔を空けたほうが、効果があるという治験結果になっている。
⑥異なる新型コロナウイルスワクチンを組み合わせると強い免疫反応が得られ、変異株に対する有効性が増す。そんな研究結果が、スペインで実施された研究の速報値から明らかになった。
アストラゼネカ製のワクチンのごくまれな副反応として血小板減少に伴う血栓症が報告されるなか、欧州の一部の国々ではすでにアストラゼネカ製のワクチンの1回目の接種を終えている人々に対し、2回目では別のワクチン(多くの場合はファイザー製のもの)の接種を奨励している。このような場合に、より強力で強固な免疫反応を引き起こせることが明らかになったのだ。
一方の英国では、アストラゼネカとファイザーが開発したワクチンを混合して接種した場合、成人はより強い副反応を報告する可能性が高いという研究結果が発表されている。50歳以上のヴォランティア830人が参加したこの研究では、1回目と2回目で異なるワクチンを接種した場合、寒気、頭痛、筋肉痛がより頻繁に報告された。
1回目と2回目で異なるワクチンを接種した方が、効果が大きいという結果の一方、副作用も強くなるようだ。
⑦感染力の強いデルタ株に対し、ファイザー製とアストラゼネカ製のワクチンの有効性が報告された。この研究では2回の接種の必要性が強調されており、1回だけの接種では防御力が大幅に低下するとしている。
年齢や人種の異なる1,054人のデータ分析によると、2回目の接種から2週間後の時点で、ファイザーのワクチンはデルタ株の変異株に対して88%の有効性、アストラゼネカの場合は60%の有効性が確認されたという。しかし、どちらのワクチンも1回の投与ではほとんど効果がなかった。1回目の接種から3週間後には、ファイザーもアストラゼネカもデルタ株に対しては約33%の効果しか得られなかったという。
変異株のウイルスに対して、ファイザー製とアストラゼネカ製のワクチンの有効性が報告された。但し、1回だけの接種では殆ど効果がなかった。

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2021/06/03

「スペイン風邪」感染の教訓

米国のバイデン大統領は先日、今回の新型コロナウイルス"covid-19"の発生源についてに調査を命じた。これだけ大きな被害を全世界に与えたウイルスがどこで、どの様にして発生し、最初の感染が拡がったのかは、今後の新たなウイルス研究にとって極めて重要だ。本来はWHOが負うべき課題だが、その役割を果たせぬまま調査を終えている。新型コロナウイルスの発生元は中国の武漢であることは確実の様だが、中国政府の協力が十分に得られなかったので中途半端に終わってしまった。ここは全人類の視野に立って、全ての資料を公開して欲しい。

この問題を考えるうえで、「スペイン風邪」の発生と感染について触れてみたい。
1918年3月にヒトで肺炎を引き起こすウイルスが、米国カンザス州の養豚場で関係者に感染、それが州内の兵営で爆発的なクラスターを発生させた。米国内の他の兵営を経て、欧州西部戦線の米軍を通じて欧州に運ばれた。
処が、当時の米国には「スパイ活動法」が制定されていて、米国政府と米軍は失態を隠し続けた。つまり、やってる事は今の中国と同じだったのだ。
彼らから感染した英兵が本国に帰還し、1918年5月に北部のグラスゴーから入って南部に拡がり、6月にはロンドンに及ぶ。
第1派は1918年5月、第2派は同年の9月から12月、第3派は1919年2月から4月にかけて、それぞれピークを迎える。
人口1000人当たりの死者数は次の通り。
第1派  5人
第2派 25人
第3派 11人
死者の数は、22万8000人とされているが、確かな数は分からない。
処が、英国では当時「国家防衛法」が制定されていて、国民の戦意喪失を恐れ報道を制限した。防疫に必要な疫学情報は、軍事機密として全て軍が握った。
確かなことは何も分からず、闇に閉ざされていた当時の人は、ただ不安に苛まれているだけだった。
1918年6月に「ザ・タイムズ」が、スペインの首都マドリードで10万人を超す感染者が出たと報じた。スペインでは報道管制がしかれていなかったので、同国が唯一の情報源になった。そのため本来は「アメリカ風邪」であるべきはずが、「スペイン風邪」という不名誉な名称で呼ばれるようになった。
病原体が当初は細菌だとされ、ワクチン開発が急がれた。日本でもそのワクチンが500万人に注射されたが、当然のことながら全く効果は無かった。
病原体がウイルスだと分かったのは1933年になって、英国のウイルソン・スミスらが分離に成功してからだ。
ウイルスを鶏卵中で培養し、ワクチンが作られるようになったのは、1940年代になってからだ。それまでは人々はただ不安に襲われるだけだった。
ここから得られる教訓は、感染防止にとって情報の公開がいかに大事かという事だ。
新型コロナウイルスの発生と感染の伝播について、公正で正確な調査結果が得られることを期待したい。

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