寄席・落語

2017/12/10

「大手町落語会~師走特別公演~」(2017/12/9)

第46回「大手町落語会~師走特別公演~」
日時:2017年12月9日(土)13時
会場:日経ホール
<  番組  >
前座・橘家門朗『雑排』
神田松之亟『谷風の人情相撲』
春風亭一之輔『茶の湯』
柳家さん喬『鼠穴』
~仲入り~
滝川鯉昇『千早ふる』
柳家権太楼『一人酒盛り』

年末恒例の大手町落語会。仲入りがさん喬、トリが権太楼という豪華版。
番組案内のチラシで主催者が今の大相撲騒動について書いていたせいか、相撲ネタが2本出ていた。

松之亟『谷風の人情相撲』
落語ではお馴染みの『佐野山』
前日の会でも感じたが、マクラが長すぎる欠点がある。落語じゃないんだから、講談はもっとあっさりと本題に入った方が良い。
短縮版だったが、程よくまとまっていた。
「八百長」とは言わず「人情相撲」。これから力士も「八百長だ!」と指弾されたら、「いいえ、人情相撲です」と答えればいい。

一之輔『茶の湯』
この人の『茶の湯』は二ツ目時代からを入れてもう10回近く聴いたことになる。
ご存知ない方に言っておきますが、一之輔も最初はちゃんと演ってましたよ。当初から隠居の孫店の3軒長屋での引っ越し騒動については省略したり簡略化したりしていたが、それ以外は普通の『茶の湯』だった。
それが次第に変形して、通り掛かりの人も拉致監禁して強制的に茶を飲ませる、そのリーダーが定吉という今の様な形になった。
ここまで戯画化してしまうと、もはや本来のネタの面白さは吹っ飛んでしまっている。
気になるのは、一之輔もあまり楽しそうに演じていないことだ。

さん喬『鼠穴』
仲入りにしては長講のネタを掛けた。
さん喬の欠点は、小説なら「書き過ぎ」である。筋の細部を自分なりの解釈で描き過ぎるのだ。
例えば、訪ねてきた竹次郎に兄が元手を渡した後で、帰り際にいったん竹次郎を呼び止める場面を置いている。
あるいは、商売に成功した竹次郎が兄に再会に向かう所で、土産代りに1両持って出ようとするのを番頭が「店の暖簾がございます」と言って3両持たせるシーンだ。
こういう所が余計だと思う。
落語は想像の芸である。噺家の喋りを聴きながらあ、客は頭の中で色々な事を想像してゆく。
そこをあまり細かく描き過ぎると、客としては想像したり解釈したりする余地が狭められてしまう。
冗長に感じてしまうのも、その辺りに原因があると思う。

鯉昇『千早ふる』
高座に上がると、会場は一気に鯉昇ワールドとなる。ちょっと落語協会を皮肉るご愛嬌も。
「ナイル川、ガンジス川、チグリスユーフラテス川、竜田川。これみんな外国人力士の名前だ」と言って、隠居は竜田川をモンゴル出身の相撲取りに仕立てる。
千早も神代も、南千住のクラブのホステスという。
荒唐無稽の様でいて、この噺の本来の面白さはそのまま生きている。
そこが一之輔の『茶の湯』との違いだ。

権太楼『一人酒盛り』
だからアタシは芸協の後に出るのが嫌なんですと、鯉昇にイヤ味。
噺家の酒癖をマクラに振って本題へ。但し、仲入りのさん喬が長すぎて、用意していたネタではなかった模様。
相変わらずの権太楼の世界で、決して悪い出来ではなかったが、呼ばれて来たのに酒にありつけず熊にいいように使われる留さんが、途中でブツブツ不満を言うのはどうだろうか。
熊さんが一方的にしゃべる中で、相手の留さんの苛立ちや怒りが自然に観客に伝わるというのが本来の形ではあるまいか。
そうする事によって、最後に留さんが怒りを爆発させ捨てゼリフを吐いて立ち去る場面が、より効果的になるのだと思う。

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2017/12/09

神田松之丞with遊雀(2017/12/8)

「松之丞、遊雀師の胸を借りる」
日時:2017年12月8日(金)19時
会場:深川江戸資料館 小劇場
<  番組  >
前座と二人の対談に次いで
神田松之丞『宮本武蔵』
三遊亭遊雀『文七元結』
~仲入り~
神田松之丞『小猿七之助』

講談に人気が出てきたようだ。火をつけたのは神田松之丞と言って良いだろう。
大衆芸能の盛衰は女性客が握っている。その女性客のハートを射止めたのが松之丞だ。
男前だし声が良くって愛嬌がある。こっちから見れば気障が和服を着ているように映るが、あの風情が女性たちには堪らないんだろう。
戦前から戦中にかけて忠君愛国をテーマにした講談が持てはやされたが、その反動が戦後にきた。GHQの方針で仇討ものが禁止されたこともあり、戦後は人気を失った。
それでも戦後直ぐには戦前の名人上手が健在だったのと、貞山の『四谷怪談』に人気が集まっていたので、しばらくはその地位を保っていたが、そうした講釈師が亡くなっていくと、長い低迷期に入ってしまった。
新たなファンを開拓していければ、若手の女流に上手い人が出て来ているので、講談の人気が定着していく可能性があるだろう。

この日の松之亟の講談と、ゲストの遊雀の落語のネタの共通点は「身投げ」。
落語の方は身投げを助け、講談の方は身投げを殺す。
対照的な二席である。

松之丞『宮本武蔵』
最初から最後まで大声で読み続け、張り扇を叩きまくるというスタイルだが、これが受けたんだから世の中面白い。

遊雀『文七元結』
マクラ抜きの長講は50分を超える熱演。
・本所達磨横町、左官の長兵衛宅
・吉原・佐野槌の女将の座敷
・吾妻橋、橋上
・日本橋横山町三丁目の鼈甲問屋、近江屋卯兵衛宅
・再び本所達磨横町、左官の長兵衛宅
の五場を、それぞれ間然とすることなく演じきった技量は大したものだ。
見せ場の吾妻橋、橋上でもヤリトリはでは、長兵衛はとにかく文七の命を助けたい一心で50両の金を投げつけて逃げてゆく演じ方で、長兵衛の真っ直ぐな心、江戸っ子の心意気を感じさせた。
感情が盛り上がってきた所でフッと抜いて笑いを誘う間が絶妙。
芸協に遊雀あり、である。

松之丞『小猿七之助』
5代目神田伯龍が得意としていた演目で、これにほれ込んだ談志が落語にし、弟子にお談春に受け継がれている。
懇談の世界では6代目以後に継承者が無かったとのこで、松之亟によると5代目の速記や録音を元に再現したとのこと。
ストーリーは。
すばしこい身のこいなしから小猿の異名をとる船頭の七之助。一人船頭に一人芸者はご法度の屋根船に、芸者・お滝の頼みで大川を遡っていた。
永代橋に差し掛かるとドカンボコンの身投げ。
船に助け上げればさる坂問屋の手代。集金の30両をいかさま博打で取られてしまい、主人への申し訳のために身を投げたと。
そこで七之助が、そのいかさまの胴元は誰かかと訊けば、深川相川町の網打ちの「七蔵」だと。
その七蔵こそ、七之助の父親だ。このまま放置しておけば、父親がお縄になる。
そう考えた七之助は。この手代を再び川の中に落としてしまう。
だが、狭い船中のこと、きっとお滝に見られたに違いないと思った七之助はいきなり船をぐるりと回し、中州に船をつけてお滝を引きずり出し匕首で殺害しようとするが・・・。
ネタ下ろしの地域寄席では受けて、国立演芸場では蹴られたとのことだったが、この日の観客の反応は良かった。
この人の読み、世話物向きかも知れない。

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2017/12/07

小満ん夜会with小朝(2017/12/6)

「小満ん夜会」
日時:2017年12月6日(水)18:45
会場:月島社会教育会館
<  番組  >
前座・春風亭一猿『一目上り』
柳家小満ん『大神宮の女郎買い』
春風亭小朝『好色成道』
~仲入り~
柳家小満ん『三井の大黒』

会場の月島社会教育会館は初。地下鉄の月島駅の10番出口の直ぐ横にある。今回のゲストは小朝だが、小朝目当ての客は少なかったようだ。

小満ん『大神宮の女郎買い』
かつて浅草雷門脇に、磯辺大神宮があった。
近くにあった茶店では、連日のように吉原通いの連中が女郎買いの噂話。
大神宮がこれを聞き、女郎買いというのはよほど面白いものに違いないと、行ってみたくてたまらなくなった。
一人で行くのも何だからと、通りかかった門跡さま(阿弥陀如来)を誘って吉原へ向かう。
適当な見世に上がり、芸者幇間を揚げてどんちゃん騒ぎ。宜しい所でお引け。
明くる朝、若い衆が勘定書きを持って、いかにも旦那然としている門跡さまの前に差し出す。
「恐れ入りますが、昨夜のお勤め(=勘定)を願いたいので」
「お勤め」というので門跡さま、合掌してから「では、やりますよ。ナムアミダブ・・・」
「これはどうも、ではお払いを願います」
「お祓(はら)いなら、大神宮さまへ行きなさい」でサゲ。
神仏習合だった江戸期の物語で、当時の浅草や吉原の風景が描かれていた。
初めて聴いたが、初代圓遊の作で、これまた初代小せんが得意としていたようだ。
現在は小満んぐらいしか演じ手がいないのだろうか。
小満んの粋な語りがよく似合っていた。

小朝『好色成道』
いつもの軽口のマクラかrた入る。通常の寄席や独演会とは客席の反応が違う。
相変わらず他愛ない内容だったが、
・神社の参拝の作法で二礼二拍とか言われているが、江戸期まではてんでんばらばらだったのを、明治になって今の様に定めた。だから古来からの伝統ではない。
・皇族の女性の名前に「子」を付けるのは、始めを表す「一」と終わりを表す「了」の組合せ、つまり嫁いだら最後まで添い遂げるという意味からだ。
といおう蘊蓄が参考になったか。
こういう会なので、珍しい噺をと言って本題へ。
ネタの『好色成道』は菊池寛の小説を小朝が落語にしたもの。
「色ヲ好ミテ道ヲ成ス」という意味なのだろうか。
怠慢な生活を送ってきた比叡山の若い学僧が、嵯峨に参詣した帰りに道に迷い泊めて貰った宿の主が凄い美女。
出家の身であることも忘れて女と契りたくなってしまい、寝所に忍ぶと「勉強して法華経を暗唱出来るようになれば、望みを叶えてあげる」と言われる。
学僧はそれから一心不乱の法華経を学び、暗唱出来るようになって再び彼女の元を訪れる。
すると今度は、「契りを結ぶからには出世して僧都になって下さい。そうすれば願いを叶えてあげる」と言われ、これまた一生懸命に学問に励み僧都になって、三度彼女の元を訪れる。
そうすると女は、法華経の中の色々な用語の意味を質問してくる。
「方便即真実」とは何かとか、そうした問いに必死に答えるうちに、相手の女と契ろうとする気が失せてくる。
そこで僧侶はようやく気付くのだ。
これは仏が自分を導いてくれていたんだと。
一羽の鶯が庭でで鳴き、「ホウ、ホケキョ」でサゲ。
好きな女性とメイクラブしたいばかりに、男が懸命に励みに励み、やがて学を成して出世するという普遍的なストーリーと言える。
お堅い話を小朝らしく軽快に語り、楽しませてくれた。

小満ん『三井の大黒』
物語は毎度お馴染みだが、小満んの高座を聴いて思ったのは、このネタのキモは江戸っ子の、特に棟梁の政五郎の、江戸っ子としての「粋」と「意気」が表現出来るかどうかにあるということ。
「意気」はともかく「粋」の表現となると、やはり現役では小満んという事になろう。
3代目三木助を彷彿とさせるような、素晴らしい高座だった。

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2017/12/05

四の日昼席(2017/12/4)

「四の日昼席」
日時:2017/12/04(月)13時
会場:スタジオフォー
<  番組  >
桂やまと『夢の酒』
古今亭文菊『金明竹』
隅田川馬石『干物箱』
~仲入り~
初音家左橋『締込み』
古今亭駒次『アンニョン・サンヒョク』

地域寄席って、どの位あるんだろう。アタシが行ったことがあるだけで20は超えているが、都内だけでもその10倍はあるのだろう。もっとかな?
客の人数も様々で、10名程度から多い所では100名を超すケースもあった。20-50名といった人数が平均的だったと思う。
参加者のほとんどが常連さんでお互い顔見知りなので、あまり少人数の会に行くと、「あの人誰?」状態になってしまう。「どちらから?」とか「この会、なんで知りました?」という質問を受けたり、終わると「いかがでしたか?」と感想を訊かれたリする。そういう会には二度と行かない。

「四の日昼席」は今回が二度目で、毎月4日に定期的に開催しているようだ。
会場のスタジオフォーは、他にも若手中心の落語会を定期開催している。
出演者もレギュラー制をとっているようで、前回も確か同じメンバーだった様に記憶している。駒次だけが二つ目で他は真打ばかりだが、その駒次も来秋には真打に昇進する。
前座を置かず、この日の様にサラクチでいきなり真打が出てくるのが特長だ。
客席はほど良い笑いに包まれ、とても良い雰囲気だった。

やまと『夢の酒』
久々だ。前に来た時はこの人だけ出ていなかった。
鼓が得意の様で、今行われている立花家橘之助襲名興行での鼓は、やまとが担当しているとのこと。そのため、連日寄席に出ているようだ。
マクラ先代小さんに上手くなったと褒められた夢を見たと言っていたが、確かに上手くなった。
一つ一つの語りや仕草が丁寧で分かり易い。夢に嫉妬する若旦那の女房のリアクションも良く出来ていた。
それに、この人の顔がいい。いかにも噺家向きである。

文菊『金明竹』
本題の前に、店番の与太郎の所に傘、猫、主人を借りに来るという『骨皮』を入れていた。本来は別々のネタだったが、3代目金馬からこの型にしたようだ。
見せ場は道具七品の口上で、これに対する店主の女房の当惑ぶりだ。道具屋の女房だけに分からないとも言えず、戻ってきた主人に珍妙な説明をすることになる。
文菊らしい丁寧な高座で、女房の表情変化が巧み。

馬石『干物箱』
マクラでたっぷりと福岡マラソンの解説。ランナーの走り分けをアクションで示したが、この人がやると何となくユーモラスだ。
金の為とはいえ、女に会いに行く若旦那の身代わりをせねばならない善公は辛い。二階で気が緩んだ善公が、若旦那と花魁との出会いを妄想する所を見せ場に楽しく演じて見せた。

左橋『締込み』
会の中心はこの人で、終演後は出口で観客一人一人に挨拶していた。
風呂敷包みを見ただけで女房の浮気を疑うんだから、この亭主はよほどの焼き餅焼きなのか、はたまたお福がよほど艶っぽいのか。
お決まりの「ウンか出刃か、ウン出刃か」から始まっての痴話喧嘩。止めに入る泥棒と亭主との珍妙なやりとりから、珍しく最後のサゲまでを演じた。
この人が演じると、泥棒まで品良く見えてくる。

駒次『アンニョン・サンヒョク』
韓流ドラマがテーマなので、関心のない当方にとってはチンプンカンプンだったが、ストーリの荒唐無稽さは理解できた。
タイトルの中のサンヒョクは人気ドラマの役名でもあり、人気韓流スターの名前でもあるので、どちらを指しているかは不明だ。
ネタはとにかく面白かった。
この人の新作しか聴いたことがないが、語り口からすれば古典でも十分に行けると思うが。

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2017/11/30

人形町らくだ亭(2017/11/29)

第75回「人形町らくだ亭」
日時:2017年11月29日(水)18時50分
会場:日本橋劇場
<  番組  >
前座・金原亭小駒『たらちね』
金原亭馬治『壺算』
柳家小満ん『御用』
蜃気楼龍玉『首提灯』
~仲入り~
五街道雲助『品川心中』
(全てネタ出し)

国会の委員会中継をTVで見たが、与党議員たちの八百長質問にウンザリ。
そりゃそうだろう。与党で決めた事を政府案として国会に提出してるんだから。
何のことはない、自分たちで作った法案に自分たちで質問してるんだから、世話はない。

今回の顔づけは、小満んを除けばみな先代馬生の弟子あるいは孫弟子となった。

馬治『壺算』
このネタに出て来る兄いは、買い物上手ではなく、ペテン師なのだ。ペテン師は相手の錯覚を利用して金を誤魔化すのが手口だ。相手に熟考させる暇を与えず、自分の主張だけをひたすら繰り返す。
だから演者に求められるのは、兄いのセリフをポンポンとテンポの良く語ることにある。
馬治の高座ではそこが足りないと思った。
あれでは相手の店員に気付かれてしまうだろう。

小満ん『御用』
初めて聴くネタだ。
調べてみると、前の師匠だった先代文楽から教わった噺を、小満んが改作したもののようだ。
今では「お酉様」というのをあまり聞けなくなったが、以前はこの言葉を聞くと年末になったなと思ったものだ。
それに因んだネタということで、いかにも小満んらしいチョイス。
ある男、一の酉の日のお参りに行った帰り、50両の小判の入った財布を拾う。
男は有頂天になり飲み打つ買うの道楽三昧で、気が付けば無一文。
家に帰ると、酒屋の御用聞きに「この辺りで偽金が出回っている」と聞かされ、大変な事態に陥った事を知る。
やがて岡っ引きが「御用!」と言って男の家に踏み込むが、その声を聞いた男の女房が、「酒屋の小僧さんかい?」でサゲ。
御用聞きの御用と、捕り手の御用を掛けたもの。
逆『芝浜』だが、こちらの方が落語らしい。
小満んの高座は、文字通り自家薬籠中の洒落た語りで魅せていた。

龍玉『首提灯』
ネタ下ろしだそうだ。
面長の顔と語りの確かさで、初演とは思えぬ完成度だった。
ただ、好みとしては江戸っ子をもうちょっと明るく描いて欲しい。

雲助『品川心中』
志ん生、先代馬生と受け継がれた雲助の鉄板ネタ。
何度聴いても面白いのは、雲助のテンポの良い語りと、人物描写の確かさだ。
特に女郎のお染と、貸し本屋の金蔵との会話が秀逸。
何を演らしても上手かった圓生もこのネタは合わなかったし、意外に志ん朝も良くなかった。
それだけ難しい噺なんだろう。

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2017/11/27

国立名人会(2017/11/26)

第413回「国立名人会」
日時:2017年11月26日(日)13時
会場:国立演芸場
<  番組  >
前座・立川談州『子ほめ』
柳家小せん『紋三郎稲荷』
立川生志『反対俥』
柳家小里ん『一人酒盛』
     -仲入り-
三遊亭笑遊『愛宕山』
ボンボンブラザース『曲芸』
笑福亭鶴光『竹の水仙』

11月の国立名人会だが、数日前に急に行こうと思い立ち空席を調べたらけっこう良い席が一つ空いていたので予約。きっとキャンセル分だったんだろう。こういう事もあるのだ。

談州『子ほめ』
これでダンスと読むそうだ。
権太楼がかつて「受けようとする前座なんて、立川流に任せます」と言ってたが、立川の若手っていうのは何か一ひねりして自分の才能を披歴することに拘っているのではと思ってしまう。
談志だって、若い頃は真っ直ぐに演じていた。

小せん『紋三郎稲荷』
扇辰が十八番としているネタで、ストーリーは同様。違いは稲荷に間違えられた侍が宿に向く途中で食事処に立ち寄り、稲荷ずしを食べる場面を加えていたこお。駕籠屋により稲荷であることを印象付けるのと、宿で夕食に稲荷ずしを勧められた時に、先ほど食べたばかりだからと言って別のメニューを注文する所で活かされていた。
小せんの落ち着いた語りはネタに合っている。

生志『反対俥』
生志もマクラで触れていたが、今回の大相撲騒動っていうのは、どこがそれほどの大問題なのか理解できない。
まだ幼い頃にアタシの母親が「相撲の兄弟子っていう字は、無理ヘンにげんこつって書くんだ」と言っていたが、昔からそういう世界なのだ。
相撲には技として張り手が認められており、時には張り手一発で相手を倒すこともある。恐らく暴力に対する垣根は、我々の世界とは比べ物にならないくらい低いと想像する。
今回たまたま表沙汰になったが、類似の出来頃は日常茶飯事なのだろう。要は、どうでもいい話なのだ。
だいたい、大相撲を純粋なスポーツと見る方がおかしい。
生志は得意ネタでクスグリを詰め込み客席を沸かしていた。

小里ん『一人酒盛』
佇まいから語り口まで、ますます師匠の先代小さんに似てきた。
この噺は難しいと思う。全体の8割は酒を飲む男の一人芝居だが、そこに出て来ない相手の姿も表現しなくてはならない。演者に力量が要るネタだ。
良い酒だから一緒に飲もうと誘う男は、決して悪気は無いのだ。ただ相手の事を全く頭に入れていない。自分の事しか関心がない、そういう人物だ。
私たちの周囲にも大勢いる。
満員電車でスマホを操作するヤツ、混雑している中を辺り構わずキャリーバッグを引いているヤツ、みな同類だ。私たちの周囲に「いるいる」人間を切り取って見せる所に、このネタの面白さがある。
ひたすら自分勝手な男を、小里んはどっしりとした風格のある高座で演じて見せた。

笑遊『愛宕山』
久々だ。
年配に見えたが、アタシより7つも年下だ。まだ若い若い。
幇間の一八が息を切らしながら愛宕山を登るシーンや、谷底から竹を使って飛んで戻るシーンを見せ場にしていた。
ただ、一八が芸者衆が腰を振りながら山を登る姿を見て鼻血を出すというギャグは頂けない。
あと、土器(かわらけ)投げの場面で、土器を的に当てるとしていたが、ここは通常通りに的に通すとした方が自然なのでは。

ボンボンブラザース『曲芸』
後から鶴光が、曲芸では日本一と言っていたが、その通り。
そろそろ後進の育成が必要になるかと。

鶴光『竹の水仙』
東京でもお馴染みだが、上方落ごは宿は大津。おそらく甚五郎が京から江戸へ向かう途中だったのか。
竹を買う大名は、細川越中守で参勤交代の途中という。
竹の水仙の値は、当初は2百両だったが、使いの侍が無礼を働いたので3百両になる。
サゲは、甚五郎が去ったあとの宿の夫妻が「人は見かけによらないものだ」として、「この前のお坊さんも、もしかしたら弘法大師かもしれない」。
鶴光らしくギャグを多く入れた、楽しい『竹の水仙』だった。

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2017/11/22

鈴本演芸場11月下席・夜(2017/11/21)

鈴本演芸場11月下席夜の部・初日

前座・春風亭きいち『たらちね』
<  番組  > 
春風亭一蔵『出来心』
ストレート松浦『ジャグリング』
桂藤兵衛『半分垢』
入船亭扇辰『紋三郎稲荷』
柳家小菊『粋曲』
隅田川馬石『鮑のし』
春風亭一朝『三方一両損』
─仲入り─
林家正楽『紙切り』
三遊亭天どん『ドライブスルー』
青空一風・千風『漫才』
春風亭一之輔『味噌蔵』

鈴本の11月下席夜の部は一之輔の芝居で、その初日に出向く。
平日にも拘わらず入りが良いのは、やはり一之輔目当てのお客が多いせいか。

一蔵『出来心』
近ごろ、イケメンとか言われるハンサムな落語家が人気らしい。女性ファンが集まるのだそうだ。しかし、落語家にとって二枚目過ぎるの顔っていうのいは、却って障害になることもある。それより親しみやすくって愛嬌のあるルックスの方が落語家に適している。
それに、いずれ年取れば皆同じさ。

ストレート松浦『ジャグリング』
落語と違ってこうした芸能は体調管理が大変だろう。

藤兵衛『半分垢』
タイムリーな相撲ネタ。例の暴力事件に触れなかったのはいかにもこの人らしい。
「遜るも自慢の内」がテーマで、近ごろでは珍しいネタに入る。
電車の中で3人とも東大卒の男たちが会話していた。同じ東大でも学部によって差があるようだ。「00さんは、●●(学部の名前)でしょう。私なんか、とてもとても・・・」なんてお互い謙遜していて。引っ叩いてやろうかと思いましたよ。

扇辰『紋三郎稲荷』
十八番のネタ。この程度の長さのネタだと、鈴本の持ち時間内で演じることができる。そこが魅力。
これに対して出演者の多い寄席っていうのは、世話しなくっていけない。

小菊『粋曲』
♡♡♡

馬石『鮑のし』
噺家の高座への上がり方も様々で、客席を見ずに真っ直ぐ前を向いて出る人。下を向いて出て来る人。客席をチラ見してから前を向く人。客席に一礼する人など。馬石は客席を見ながら出てくる。
何だか掴みどこのないフワフワした不思議な芸だが、これが何だか可笑しい。セリフとセリフの間も普通と違っていて、これが効果的なのだ。
人情噺となると一転して締めてくるのだから、大した技量だ。

一朝『三方一両損』
解説不要の十八番。

正楽『紙切り』
「モンゴル会」の注文で、日馬富士の土俵入りの傍にビール瓶を切っていた。「ピアノ発表会」にはだいぶ苦労していたようで、身体の動きが止まっていた。

天どん『ドライブスルー』
この日の顔づけでは異色。「私は一体何を求められているんだろう?」に場内は爆笑。
アタシには肌が合わないのか、この人の新作には面白味を感じない。
マクラの諧謔性が、作品に生かされていないように思えるのだ。

一風・千風『漫才』
高座から下がる時に、後方の席から「あれで終わり?」の声が飛んでいた。
「千・万コンビ」以来の東京の伝統的な漫才スタイルには好感が持てるが、もうちょっとネタを練ってきて欲しい。

一之輔『味噌蔵』
この人の凄いところは、かなりのスピードで数多くのネタを吸収し、自分のものとして演じていることだ。これは並の人間には到底真似出来ない、正に鬼才と言われる由縁である。
一口に古典落語といっても幅広く得手不得手があるものだが、一之輔にはそうした点が見られない。多少の出来不出来はあるものの、全てこなしてしまう。
このネタは話の運びから小三治の型をベースにしていると思われるが、主人の吝嗇ぶりと、番頭の面従腹背ぶりがより強調されていた。
傑作なのは、ご馳走を前にした宴会で奉公人の一人が「ラ・マルセイエーズ」を唄うという設定だ。フランス国歌だが、元はフランス革命の歌だ。唄った当人はマルセイユの生まれという。
こんな発想は誰もが思いつくものではない。
この日も大受けの内に終演。

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2017/11/17

三代目桂小南襲名興行in国立(2017/11/16)

国立演芸場11月中席・6日目

前座・柳亭楽ちん『雑排』
<  番組  > 
山遊亭くま八『新聞記事』
三遊亭右左喜『銀婚旅行』
桂南なん『蜘蛛駕籠』
ぴろき『ウクレレ漫談』
笑福亭鶴光『紀州』
~仲入り~
『襲名披露口上』下手より司会の文治、金太郎、小南、南なん、右左喜、鶴光
桂文治『親子酒』
山遊亭金太郎『短命』
東京ボーイズ『ボーイズ』
桂小南『しじみ売り』

国立演芸場11月中席は「小南治改メ三代目桂小南襲名披露興行」、その6日目に出向く。小南の襲名興行には前から行こうと思っていたが、ようやく間に合った。
口上で鶴光が言っていたが、2代目小南は上方落語を東京の落語ファンに広めた最大の功労者だ。
それまでも東京の寄席で上方落語を演じていた人もいたが、先ず言葉が分りづらく、だから面白くなかった。
そこへいくと先代の小南の語る上方言葉はとても分かり易く、アタシなども初めて上方落語の面白さを知った。
それに何より落語が上手かった。特に『鋳掛屋』やこの日のトリネタだった『しじみ売り』など、子どもが出て来る噺は絶品だった。
以下、短い感想を。

前座の楽ちん、センスがありそう。

くま八『新聞記事』、最初に隠居が「竹さんが殺されたのを知ってるか」と言うセリフがあるが、あそこは「天ぷら屋の竹さんが・・・」にすべきでは。そうでないと後の「入った家が天ぷら屋だ」がピンと来ない。

右左喜『銀婚旅行』、初見。師匠の三遊亭円右作の様だ。結婚25周年を記念で、かつて新婚旅行で行った温泉を再び訪れた中年夫婦の物語だったが、途中で睡眠。

南なん『蜘蛛駕籠』、先代小南の弟子の中では、亡くなった文朝と南なんが、芸風が近いと思う。
本寸法の高座で人物の演じ分けも出来ていて、良い高座だった、
この人の技量からすれば、もっと世評が高くてもいいと思うのだが。

ぴろき『ウクレレ漫談』、以前は左程に思わなかったが、頭髪が薄くなってから味が出てきた気がして、好きになった。

鶴光『紀州』、マクラで8代目松鶴に誰がなるかという話題になる。候補は3人で、一番は惣領弟子の仁鶴だが高齢、次は二番弟子の鶴光、もう一人は鶴瓶だがとにかく落語が下手。こうなると、やはり本命は私かなと言っていた。冗談めかしていたが、案外本気かも。
典型的な地噺で、間に入るクスグリが見どころ。これを入れるタイミングと本筋に戻る間が絶妙で、楽しく聴かせていた。

『襲名披露口上』ももう国立になると馴れもあるし協会幹部も出てないしということで、緩い雰囲気。
3代目の襲名は本来ならもっと早く出来ただろうが、惣領弟子と2番弟子が落語協会に移籍してしまったという事情もあったのか。
末弟が襲名するというのは珍しいケースではなかろうか。

文治『親子酒』、この人の笑いを求める様な間の取り方が好きになれないが、この日のネタではそうした癖が出ていなかったようだ。つまみの塩辛に一手間掛けるあたりは、酒好きの演者ならではだ。

金太郎『短命』、このネタのキモは、隠居が若くて美しい女房を持つと亭主が短目になうことを遠回りに暗示するが、いつまでも相手の気付かずイライラする所だ。この点があっさりしていて、面白味がなかった。

東京ボーイズ『ボーイズ』、「高原の駅よさようなら」を当て振りで演じたが、かつて会社の宴会で得意にしていた同僚を思い出させる。

小南『しじみ売り』
結論から言うと、感心しなかった。
先代が得意としていたこのネタでは、雪の降る凍える様な江戸の町で、朝からしじみを天秤棒に担いで売り歩いたが商いにならず途方にくれ、一軒の大きな家の前でしじみを買って貰おうとしている少年の姿が目に浮かんだものだ。
そこが足りない。
当代の小南は独特の節回しで語るのだが、これがネタによっては邪魔になる。この噺も正にそうで、独特のリズムが噺の流れを悪くしている。このため、聞き手が感情移入できない。
「大きな声で、体がしじみ上がった」という地口オチも、このネタに相応しいとは思えない。

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2017/11/15

「桂雀三郎・春風亭昇太」(2017/11/14)

第十四回「雀昇ゆかいな二人」
日時:2017年11月14日(火)19時
会場:横浜にぎわい座 芸能ホール
<  番組  >
開口一番・桂米輝『動物園』
春風亭昇太『力士の春』
桂雀三郎『哀愁列車』
春風亭昇太『看板の一』
~仲入り~
桂雀三郎『質屋蔵』

横浜にぎわい座で年に1回定期的に行われる「桂雀三郎・春風亭昇太二人会」、毎回人気で14回目のこの日も満席だった。
昇太がマクラで振る「笑点」ネタや独身ネタに客の反応がいいのは、番組ファンが多いからか。
二人とも前半は新作、後半では古典落語を披露した。

昇太の1席目『力士の春』
マクラで早速日馬富士の不祥事を織り込んで、その後は昇太自身の中学から高校に掛けての部活動の話題に。高校のソフトボール部時代のエピソードは面白かった。
これら2つの話題を組み合わせた様なストーリーで、息子を立派な力士に育てようとした両親によって、まるで相撲取りの様な小学生になった男の子の話。
マクラが本題でネタは付け足しの様な構成だったが、会場は大受け。

昇太の2席目『看板の一(ピン)』
昇太の落語の特長は何となく可笑しいという点にある。落語が上手いかと言われれば、そう上手いとは思えない。
このネタもそうだが、得意としている『花筏』『権助魚』なども別にクスグリを入れるわけでもないし、変な恰好したり奇声を上げたりするわけでもないのに、とにかく可笑しい。
これは落語家としては大事な資質だ。
本人も認めているように人情噺だの大ネタだのには挑戦しない。ひたすら軽い滑稽噺を演じることに徹している。
仕事の面でも人生においても、自らに対し余計なプレッシャーを掛けないことが、若さを保つ秘訣なのかも。

雀三郎の1席目『哀愁列車』
いつもの本職は歌手、落語はアルバイトと自己紹介から始まる。歌の『ヨーデル食べ放題』はヒットしたが、落語のCDはさっぱり売れないとも。
失恋して北に向かう列車に乗った若者。向かいの席に美女が現れるのを期待していたが、席に座るのは老婆や子ども連れの母親、次はと期待したが酔っぱらい男。
そんなストーリーで、若者と乗客との珍妙な掛け合いd楽しませていた。

雀三郎の2席目『質屋蔵』
登場人物の演じ分けより、物語をスピーディに展開させるのを重視した演じ方だった。
このネタは、質屋の主が質草に質入れした人の思いが込められていることを例え話で番頭に語る場面、定吉が熊五郎を騙して煎り栗をせしめる場面、熊五郎が質屋から酒や漬物の樽を持ち去った事を白状する場面、三番蔵から幽霊が出ると聞いて熊五郎が急に怯える場面、熊五郎と番頭が蔵の前で飲み食いする場面、そして最後の蔵の中で幽霊が出るのを主が見つける場面と、見所が多い。
雀三郎の高座は、それぞれの見せ場を着実に描いていたが、質草は3ヶ月経過すると利上げしないと流されてしまうというルールや、菅原道真が政敵の陰謀で大宰府に流されたという故事の説明があった方が親切だったろう。
そうでないと、サゲの意味が分からない人もいただろう。

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2017/11/12

「上方落語 戦後復活落語会」(2017/11/11)

第五十五回「上方落語会~上方落語 戦後復活落語会~」
日時:2017年11月11日(土)14時
会場:横浜にぎわい座 芸能ホール
<  番組  >
林家染吉『牛ほめ』
笑福亭鶴二『軽業(笑福亭松鶴の得意ネタ)』
桂米二『風の神送り(桂米朝の得意ネタ)』
《お仲入り》
桂春雨『お玉牛(桂春団治の得意ネタ)』
桂きん枝『悋気の独楽(先代桂文枝の得意ネタ)』

昭和20年の終戦3ヶ月後の11月、大阪での戦後初の落語会が開かれた。当時の上方落語界は落語家が10人切っていて、落語の灯が消えたと言われていた。
そこから上方落語の再興がスタートし、今日の隆盛を迎えた。
その中心となった戦後の四天王の得意ネタを、それぞれの直弟子が演じるという趣向の落語会だ。

鶴二『軽業』
ご存知、上方落語の東の旅の一編で、若手からベテランまで頻繁んに演じられているので、6代目松鶴の得意ネタというのは少し無理がある。
見世物小屋の風景から軽業小屋に移り、綱渡りの芸を見せる。
鶴二の高座は、軽業の大夫が衣装を整える所から綱渡りに入るまでの仕草を丁寧に描き、見せ場の扇子と指で綱渡りに似せる場面に繋げていた。

米二『風の神送り』
戦後、桂米朝により復活した噺で、市販の録音も米朝のものだけと思われる。
あらすじは。
かつて悪性の風邪がはやると「風の神送り」という風習があったようだ。紙で風邪の神の人形を作り、その人形に悪い風邪を手で送り、鐘や太鼓で囃し立てながら川や海へ流す。
「送れ送れ風邪の神送れ、どんどと送れ」とやっていくと、「お名残り惜しい」という奴がいた。誰かと思ったら町内の医者だった。
ある町内に風邪が流行し、若い衆が風の神送りのための寄付を集めに回る。
やっと風の神送りを済ませ人形を川へ投げ込むと、風の神の人形が夜になって魚獲りの網に掛かった。大勢の人の思いが込められたものか、風の神がズーッと立ち上がった。
「なんだお前は」「わしは風邪の神だ」
「それで夜網(弱み)につけ込んだな」でサゲ。
見せ場は、若い衆が顔役の年寄りと一緒に奉加帳を持って町内を回り、寄付を募るところ。気前よく出す家もあれば、渋る家、ケチな家でゃ喧嘩になる。そういったヤリトリの呼吸を巧みに描写した米二の高座。

春雨『お玉牛』
初見。テーマは「夜這い」で、かつては伝統的な風習だったようだ。
春雨の解説によれば、語源は「呼ばう」で女性が好みの男性を誘う所から来ているそうだ。だから女性に主導権があるわけだ。男の方はそれに応じて夜分に女性の寝所に忍びこむ。ただ、当時は言葉に出すわけにはいかず、女性はアイコンタクト江サインを送っていた。中には勘違いして勝手に誘われたと思い込み忍んで来る男も出てくる。そうした時は、家の戸を厳重に締めておいたり、時には父親が見張っていて、男を追い返す事もあった。
どうも、こういうテーマになると力は入るので、長くなってしまった。
3代目春団治が得意としていた噺のあらすじは。
ある村に、お玉という器量よしがいた。村の男たちは、集まってはお玉の噂。
そこに源太が現れ、手に持っていた鎌で脅してウンと言わせたと、今晩お玉の寝所に忍ぶんだと自慢する。
一方、帰宅したお玉は、泣きながら両親に源太の乱暴ぶりを訴えると、父親は大いに怒り、一計を案じて源太を懲らしめることにする。
お玉を父親の部屋に寝かせ、お玉の寝所には牛を寝かせその上から布団をかぶせておいた。
そうとは知らず、期待に胸を膨らませた源太は夜中にお玉の寝所に入り込んで、暗闇の中で布団をまくり、中をまさぐる。
髪をお下げにしてと感激するが、実は牛の尻尾。
そうとは知らず源太は反対側に手を伸ばせば、大きな簪が2本。これは高価なものだと喜ぶが、実の牛の角。
角を引っ張られた牛は目を覚ませ、「モオオオ」と大きなうなり声を上げると、驚いた源太はお玉の家を飛び出し、兄貴分宅に転がり込む。
兄貴分が「誰やと思たら源太やないかい。お玉を『うん』と言わしたか」と訊けば、源太は、
「いいや。『もう』と言わしてきた」でサゲ。
他愛ないストーリーだが、お玉だと信じ込んだ源太が、牛の体のあちこちをまさぐる所が見どころ。
扇子や手拭いを使って、上手下手に動かしながら表現するのだが、これが実に可笑しい。
例の羽織をシュッと脱ぐ動作を含め、師匠の姿を彷彿とさせるような春雨の高座だった。

きん枝『悋気の独楽』
名前は以前から知っていたが、ライブでは初めて。
東京の高座でもお馴染みのネタだが、筋の運びは少し違う。
冒頭で、奥方が主の浮気を疑い、店の奉公人に主の行き先を尋ねるが、却ってあしらわれてしまう。気落ちして部屋に戻ると、女中が主には丁稚の定吉が同行しているので、帰ってきたら定吉を詰問して事実を確かめると奥方を慰める。
一方、妾宅にいた主は、定吉に今日はお得意で碁を囲むから遅くなると奥方に伝えるよう言い含め、店に返す。
店に戻った定吉、最初は主の言いつけ通りに言い逃れするが、奥方がお使いのお礼にと言って出してくれた饅頭を食べるお、そこには熊野の牛王が入れてあり嘘をつくと血を吐いて死ぬと脅される。1円の小遣い欲しさも手伝って主の妾宅を白状してしまう。
奥方が定吉に懐に入っている独楽をださせて回させ、主に見立てた独楽が奥方か妾のどちらの独楽に着くのか試す。
何度やっても主の独楽は妾の独楽にくっついてしまう。
「キイー、腹の立つ。定吉! もう一遍やんなはれ」
「こら、あきまへんわ」
「なんでやの?」
「へえ、肝心のしんぼう(心棒/辛抱)が狂うてます」でサゲ。
人物設定と筋だては東京と同様だが、奥方の言いつけで定吉が主の後をつけて妾宅に行く場面がなく、妾宅でのヤリトリも短い。
その代りに、定吉が店に戻ってから奥方と女中から詰問されて、次第に事実を打ち明けるまでの過程が長い。
全体として東京はあっさり演じているが、上方版はネットリとしている。
きん枝の高座は、本妻と妾、女中、店の奉公人たち、定吉といった多彩な人物がきちんと演じ分けされており、良く出来ていた。

最近、上方落語に接する機会が増えてきたが、若手から中堅ベテランに至るまで充実している。
東京の噺家もウカウカしていられまい。

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