寄席・落語

2018/07/20

歌太郎ひとり会(2018/7/19)

「歌太郎ひとり会・夏」
日時:2018年7月19日(木)19時
会場:内幸町ホール
<  番組  >
前座・柳亭市坊『一目上り』
三遊亭歌太郎『たがや』
三遊亭歌太郎『厩火事』
ウクレレえいじ『ウクレレ漫談』
~仲入り~
三遊亭歌太郎『真景累ヶ淵~豊志賀』

三遊亭歌太郎、昨年のNHK新人落語大賞を受賞した。落語協会の二ツ目としては志ん吉、正太郎、小辰らと並ぶ期待の若手の一人だ。
長所は、地声が強いのと滑舌が良い。これは噺家にとって強味だ。男前なので女性ファンも多いだろう。
先日、ある会で初めて観て、感じが良かったのでこの日の独演会に出向いた次第。

市坊『一目上り』
こうした若手の会に前座を出すのはどうかな。

歌太郎『たがや』
マクラで花火の玉屋と鍵屋の説明で、鍵屋が途中で罷業して玉屋が残ったと言っていたが、それは逆。玉屋が直火を出してしまい御上から廃業させられた。だから以後の花火は鍵屋だけになったのだが、江戸っ子は判官贔屓なので、掛け声は専ら「玉屋」になったようだ。
歌太郎の高座は、たがやが切る胸のすくような啖呵が良かった。この人の声と滑舌が活きていた。
旗本の供侍は通常は二人だが、ここでは三人になっていた。人数を増やした理由はよく分からない。

歌太郎『厩火事』
古典にも流行りがあるのか、近ごろやたらこのネタに当たる。ダメ男に魅かれる女性というのは今でも少なくないので、物語に現実味があるせいか。
お崎さんに、もうちょいと可愛らしさが欲しかったかな。

ウクレレえいじ『ウクレレ漫談』
初見。ウクレレ演奏が達者だ。マニアックな物真似を披露していた。

歌太郎『真景累ヶ淵~豊志賀』
二ツ目で圓朝作品に挑む心意気が良い。
語りの確かさが活きていたし熱演だったが、豊志賀をまるで老婆の様に描くのはどうなんだろうか。女盛りはとうに過ぎたとはいえ、親子ほど年の違う新吉を情夫(いろ)にしていたのだ。人生の残り火を燃やす豊志賀だからこそ、新吉への嫉妬に狂い死んで行く。そうした女の哀れさをもう一つ描き切れていなかった様に思う。

余計なことかも知れないが、終演後に会場出口でお客に挨拶した方が良かったのでは。

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2018/07/19

「白酒・兼好二人会」(2018/7/18)

第11回文京らくご会「白酒・兼好二人会」
日時:2018年7月18日(水)19時
会場:文京シビックホール 小ホール
<  番組  >
前座・三遊亭じゃんけん『大安売り』
桃月庵こはく『鰻屋』
桃月庵白酒『つる』
三遊亭兼好『お菊の皿(皿屋敷)』
~仲入り~
三遊亭兼好『三人旅』
桃月庵白酒『厩火事』

この会を主催する「オフィス10」は、毎月20回もの落語会を開催している。それも、なかの芸能小劇場や武蔵野芸能劇場といったローカルな会場での開催が多い。落語界の発展には相当な貢献をしているわけだ。

この二人の会だから、毒舌を交えたマクラを楽しみに来ている方も多いだろう。演者もその辺りは心得ていて、観客の期待に応えていた。
白酒が、近ごろは「暑い」という話題しか出ないと言っていたが、その通りだ。周囲の人が、池袋演芸場で炎天下並ぶのはキツイと言ってたが、熱中症にでもなったらシャレにならない。
兼好が、この時期に東京オリンピックをやるのは危険ではないかと言っていたが、私もかねがねそう思っていた、なぜ前回の東京五輪と同様の10月前後にしなかったのか。選手もそうだが、観客の健康問題もある。森だの小池だのには、そういう常識が無いんだろう。
白酒が亡くなった歌丸の報道に触れていたが、言いにくい事をズバッと言ってくれた。TVでコメンテーターが「本当に残念です」なんて、観たことも聴いたこともないくせにと、その通りだ。
どうも報道の仕方が「笑点」の番宣に利用しているようで不快だ。白酒は圓楽の楽屋の様子と対比させて皮肉っていた。

こはく『鰻屋』
出来の良し悪しは別にして、ここで二ツ目を使う理由が分からない。

白酒『つる』
隠居が、どうして「つる」の名前になったかを説明した後で照れる仕草が良い。八五郎だってこれがいい加減な話だと分かったんだろうが、とにかく他人の前でしゃべりたい欲求が抑えられない。落語の定番だ。
このネタでこれだけ爆笑させるのは、白酒しかおるまい。

兼好『お菊の皿(皿屋敷)』
通常の演じ方と異なり、青山鉄山がお菊を責めさいなんだ挙句に斬殺し、その恨みで毎晩井戸からお菊の幽霊が出てくるところまでを地で語った。ここまでを怪談噺としての色を濃くしている。
最後も変えていて、お菊のファンが酒を差入して、それを呑んだお菊が二日酔いで翌日休むからと18枚数える、でサゲた。

兼好『三人旅』
意外なネタの選択と思わせたが、堂にいった三人旅だった。
びっこの暴れ馬に乗せらた男が心配で馬子に色々尋ねるが、馬子は都合の悪いことは聞かないふりをする繰り返しが可笑しい。
兼好はどんどん芸の幅を拡げている。

白酒『厩火事』
髪結いのお崎さんが仲人の前で、時おり見せる亭主の優しさをのろける所が面白い。どうやらお崎さんは、亭主との愛を確かめたくて仲人の元を訪れているようだ。
厩火事の逸話をきいたお崎さんが「焼けた馬をみんなで桜肉にして食べたんでしょうね」と言うと、仲人が「なんでも思った事を口に出すもんんじゃない」とたしなめる。きっと心の内では仲人も同じことを想像したに違いない。
それにしてもこの仲人は教養があるねえ。論語の
「 厩焚けたり 子 朝より退きて曰く 人を傷なえりや と 馬を問わず 」
を知っていたのだから、偉い。

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2018/07/18

三遊亭白鳥のTVドラマ出演

本日の東京新聞に、三遊亭白鳥がTVドラマに初挑戦した記事が掲載されている。
なんでもTBSのドラマ『ブラックペアン』から出演依頼があったようだ。
連絡があってTBSの会議室にでかけると、番組プロデューサーを始め関係者がズラッと並んでいた。白鳥は新作落語300本作っているので、どんな役がきてもこなせると自信満々だった。

「それじゃ、『これはこれは佐々木教授』と言ってください」。そこで大学教授になり切って渋くセリフを言うと、「ダメダメ、何で役を作るの。普通にやってください」といきなりダメ出し。
「次は、『さあ、検査室へ』。これくらいは言えますね」。しかし白鳥から出た言葉は「さあ、検査しゅちゅへ」。
「白鳥さん、なんで噛むの。談春さんは立て板に水でしたよ」。ここで気が付いたのは、ドラマ関係者にとって落語家の基準は、談春なんだと。
そこで白鳥は、「僕は落語家と言っても登場人物の演技分けが出来ないし、口が回らないんです」と言うと、「え、それじゃ古典落語が出来ないでしょ」。だから新作落語をやってるの、と心の中で呟く。

「仕方ない、セリフ無しで驚いてみてください」と言われ、高座でやっている驚きのポーズをすると、「ふざけてるんですか?」とプロデューサーの目には怒りが浮かび、「落語の引き出しを開けてくださいよ」。
スイマセン、僕には開ける引き出しがないんです。
それでも最終的にはセリフ無しのワンシーンだけ、大学教授役で出ることになった。

俺は邪道落語一筋で生きてゆきます、という白鳥の言葉で記事は結ばれている。

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2018/07/12

恵比寿まめかな寄席(2018/7/11)

「恵比寿まめかな寄席7月公演・昼の部」
日時:2018年7月11日(水)14時
会場:恵比寿・エコー劇場
<  番組  >
桂宮治『棒鱈』
マギー司郎『奇術』
柳家三三『茄子娘』
三遊亭笑遊『やかん』
~仲入り~
タブレット純『ムード歌謡漫談』
玉川太福『石松代参より三十石』
柳家喬太郎『ちりとてちん』

この会は通常の落語会とは異なり、寄席という名が付く通り色物が混じる。それも普段の寄席ではお目にかかれない芸人に出会えるのが魅力だ。
今回でいえば、以前から観たかった玉川太福がお目当て。
顔ぶれの割に客席に空席が目立った。はて?

宮治『棒鱈』
実力は認めるが、どうもこういうギドギドした無粋な芸風は好きになれない。これは好みの問題なので致し方ない。
技術的な面では、このネタに登場する侍は薩摩武士だ。セリフの中に別の地方のナマリが混じっていたのが気になった。

マギー司郎『奇術』
TVでは毎度お馴染みだが、ナマで観るのは初めてだ。感想はTVの通り。
トーク中心のおしゃべりマジックで、最後にまともなマジックを披露する。

三三『茄子娘』
扇橋が得意としていて、以来、入船亭一門によって演じられていた様だが、最近では他の一門からも高座にかける人が出てきている。
夕立や雷が背景にあるので、夏の噺ということになるだろう。
三三の高座では、和尚と茄子の精が蚊帳の中で交わる場面に力を入れていて、『宮戸川』を思わせるような艶っぽい演じ方にしていた。

笑遊『やかん』
お馴染みの奥方の愚痴をマクラに本題へ。
落語にある『根問』ものの代表的なネタで、前半の魚の名前の由来で切る場合は『魚根問』の別名が使われる。
八五郎が色々と質問してくるのを、実は無学な先生が無理をしてこじつける所がミソ。その辺を笑遊は面白く聴かせていた。
この人、年の割に声が大きいね。

タブレット純『ムード歌謡漫談』
初見。なかなかの美声だと思ったら、和田弘とマヒナスターズのボーカル(最後の)だったそうで、グループ解散後にピンに転じたようだ。
ギターとハーモニカを演奏しながら、主にムード歌謡や自作の曲を歌っていた。後半はこれも自作の似顔絵を見せながら物真似を披露。
トークでは女性の様な優しい声だが、歌になると一転して大きな声に変わり、そのギャップが見せ処。アンコールの女装もよく似合っていた。
こうしたチャンスがなければ接することが出来ない芸だ。

玉川太福『石松代参より三十石』
曲師は、師匠・玉川福太郎夫人の玉川みね子。浪曲は特に曲師が大事で、浪曲界の最大のスターだった2代目広沢虎造だって曲師の美家好との息のあった掛け合いが無ければ、あそこまで売れなかっただろう。
その虎造の十八番だった清水次郎長伝から『石松代参より三十石』を玉川節で唸った。客席はあまり浪曲に馴れていなかったようで、外題づけの後に拍手がなかったので、もう一度やり直した。
確かに節でいうと、虎造で聞きなれていると玉川節は違和感があるが、啖呵になると、虎造を彷彿とさせるような小気味の良さが光る。
お目当ては期待通りだった。

喬太郎『ちりとてちん』
これも夏のネタなので、これから高座にかかる機会が多いだろう。
以前にある会で、喬太郎が「料理がこんなにあまっちまって・・・」と言い出すと、会場の複数の女性客から「エーー」という声が一斉に上がり、高座の喬太郎が「ちん、でいいでしょ、ちん、で」と言い返したことがあった。それだけ頻繁に高座に掛けているということだ。冬場の『時そば』と共に鉄板ネタである。
とにかく手慣れたネタなので、無愛想な男がちりとてちんを口に流し込んだ後の百面相のようなリアクションを見せ場にして、お開き。

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2018/07/10

「一朝・一之輔親子会」(2018/7/9)

第五回「一朝・一之輔親子会」
日時:2018年7月09日(月)19時
会場:横浜にぎわい座 芸能ホール
<  番組  >
前座・春風亭一猿『鮑のし』
春風亭一朝『芝居の喧嘩』
春風亭一之輔『百川』
~仲入り~
春風亭一之輔『猫久』
春風亭一朝『大山詣り』

西日本で大雨により罹災された方々には申し訳ないような青空だ。
私たちの住む日本列島というのは、地震、台風、津波、噴火、洪水などの自然災害に常に見舞われ続けている。我らが祖先はえらい所に居住を定めたもんだ。
しかし、他所へ引っ越すわけにもいかないのだから、備えは行政の中心的課題に据えて災害に備えねばなるまい。
いつ飛んで来るか分からないミサイルとは異なり、自然災害は目の前に迫る国難なのだ。

横浜にぎわい座での「一朝・一之輔親子会」、人気の番組で今回も前売り完売。師匠には悪いが、一之輔目当ての客が多かったようだ。

一朝『芝居の喧嘩』
落語にはオチがあるが、講談にはない。その代り、「これからが面白くなってくるが、この続きはまた明日に」と言って下がる。
昔の芝居は桟敷で、客のしく座布団が半券代りだった。座布団をしいてないのは無銭入場ということになり、これを「伝法」と呼んだ。
折しも、小屋の人間が伝法を一人見つけ出て行くように言うと、そこへ女の子が座布団と飲み物を運んできたから客はおさまらない。
これが町奴の幡随院長兵衛の子分、雷重五郎だと判ってひと騒動。そこへたまたま見物に来ていた旗本奴の水野十郎左衛門の白鞘組の連中が喧嘩に加わり、大喧嘩に発展して、もう大変!
「これからが面白い処ですが、この続きはまた明日」
威勢のいい啖呵の切りあいでも、片や町奴、片や旗本奴なので、言葉遣いが違う。この辺りが一朝の腕の見せどころだ。
この日はクスグリを随所に入れて面白く仕上げていた。
なお、この喧嘩の結末は歌舞伎の『極付幡随長兵衛』によれば、幡随院長兵衛が水野十郎左衛門の奸計にあって殺されてしまう。

一之輔『百川』
つい先日聴いたばかりだが、もう中身を少し変えていた。こういう所が、一之輔の人気の理由なのだろう。
内容だけでなく、この日は気合いが入っていた。
一之輔の独特のクスグリである、
・二度目に百兵衛が河岸の若い衆の部屋に上がった時に、今度はそこにあるサザエの壺焼きを飲み込んでやると意気込むと、若い衆たちがよってたかって止める。
・百兵衛が長谷川町三光新道でかの字のつく名高い人を尋ねる際に、訊かれた方が百兵衛を外国人と間違えて頓珍漢な会話になる。
といった場面も、この日の方がより鮮明に演じていた。
通常のサゲの後に、もう一つサゲを付ける演じ方も気が利いている。

一之輔『猫久』
後から上がった師匠が、「猫久って噺、あんなに面白かったっけ」と言っていたが、一之輔の手にかかると何でも面白くしてしまう。
特に面白いクスグリを入れているわけではない。
他の演者とどこが違うのかと一口に言えば、それはこの人の独特のエロキューションだ。真似をして出来るものではなく、持っている才能ということになろう。
それと会話における微妙な外し方だ。こう言ってこう答えると想定していると、その通りにならない。
このネタでも一之輔の特長がふんだんに発揮されていた。

一朝『大山詣り』
このネタだと、どうしても志ん朝の高座が思い出される。
前にも書いたことだが、熊が長屋のお上さんを前に船が遭難して自分一人だけは助かったというのを物語る時、もうちょっと切実感が欲しい。
志ん朝の高座ではお上さんたちが熊の話を固唾を呑んで聞く様子が頭に浮かんだが、一朝の高座ではその点が薄い。
その点にだけ不満が残る。

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2018/07/05

盛夏「雲一里」(2018/7/4)

「五街道雲助・春風亭一朝・柳家小里ん 盛夏『雲一里』」
日時:2018年7月4日(水)19時
会場:日本橋劇場
<  番組  >
前座・金原亭駒六『強情灸』
春風亭一朝『蛙茶番』 
五街道雲助『もう半分』
~仲入り~
柳家小里ん『子別れ(通し)』

6月2日に桂歌丸が亡くなった。82歳だった。
ナマの高座は2014年の国立演芸場でのトリで「牡丹灯籠・お札はがし」が最後だった。この時も既に板付きだったが、迫力のある語りに感心したおぼえがある。
噺家としては決して器用なタイプではなく、芸風もどちらかと言うと陰だ。途中から古典落語に転じ、とりわけ人情噺に磨きをかけた。
ご冥福を祈る。

「雲一里」、雲助、一朝、小里んの3人会である。円熟というよりいま最も脂ののり切った噺家の会と言っていいだろう。それぞれが古今亭、林家、柳家の芸を継承している。

駒六『強情灸』
最近、この人の前座にあたる事が多い。達者な印象だが、最後の山場でミスが出てしまった。

一朝『蛙茶番』 
このネタは一朝の十八番といって良いだろう。
今までに何度も聴いたが少しずつ出来が違う。こういう処がライブの良さだ。この日は気合いが入っていた。
例えば、このネタに登場する歌舞伎の狂言は『天竺徳兵衛韓噺』だが、役者が忍術で印を結ぶ時に両手で「大入り叶う」という仕草をして縁起をかつぐという説明があった。こういう点は芝居に詳しい一朝ならではだ。
バレ噺だが、下品にならないのはこの人の腕前。

雲助『もう半分』
夫婦二人だけの貧しい居酒屋。そこに馴染みで通ってくるのが棒手振りの八百屋の爺さん、鼻が高く目がギョロっとして頭には僅かに白髪が2,3本という風体。この日も閉店間際にやってきて、いつも通り酒を「もう半分、もう半分」と言いながら、何度もお代わりをして帰っていった。
夫婦が後片づけをしていたら、汚い風呂敷包みが置いてあった。中を開けると小判で50両。
亭主が爺さんに届けようとするが、女房がこれだけの金があれば今の貧乏暮しから抜け出せる。このままネコババでして、爺さんが取りに来たらしらばっくれるからと亭主を説得する。
そこへ青くなった爺さんが店に飛び込んできて包みを渡してくれと頼むが、夫婦は知らぬ存ぜぬ。爺さんが言うことには、あの50両は娘が吉原に身を売ってこさえた金で、あれを失くせば生きていけないと訴えるが、店から追い出されてしまう。
亭主が、このままでは爺さんが自身番にでも訴えればこっちの身が危なくなくなると、爺さんの跡をつけて大川端で刺殺し、死体は川に投げ込んでしまう。
夫婦は50両を元手に大きな店を持ち、今では奉公人の数名も置く身分。身重だった女房が産気づき男の子が生まれたが、この赤ん坊が鼻が高く目がギョロっとして頭には僅かに白髪が2,3本というあの爺さんに瓜二つ。「ギャー」っと言って、そのまま女房は死んでしまう。
亭主が赤ん坊の乳母にと人を頼むが、誰も翌日になるとやめてゆく。事情を聞けば、深夜になると赤ん坊が突然立ち上がり、行灯の油を舐めるのだと言う。
そんな馬鹿なと亭主が赤ん坊を見張っていると、丑三ツの鐘と同時に赤ん坊がヒョイと立ち、行灯から油皿をペロペロ。
思わず亭主が飛び出すと、赤ん坊がこっちを見てニヤリと笑い、
「もう半分」
でサゲ。
怪談噺ということで場内の照明を落として演じていた。
オリジナルでは爺さんが川に飛びこんで死ぬのだが、雲助は横領が役人にばれるからと亭主が爺さんを殺して川に投げ込むという風に変えていた。
殺しの場面は芝居がかりの所作で、凄惨な場面を演出していた。
このネタは5代目今輔が得意としていたが、雲助の高座は抑えた語りながら、ぞっとする様な空気を会場に吹きこんでいた。

小里ん『子別れ(通し)』
高座にかかる機会の少ない『子別れ(中)』を含めた通しの口演。
小里んの高座は、「上」では熊の酒好き女好きの無鉄砲さが描かれていた。
「中」では、熊が最初は照れ隠しのつもりだったのが女房を怒らせ、酒の勢いもあって引けに引けなくなって勢いで女房と息子を追い出す羽目になるという風に演じていた。
この演出があるから、上と下を結ぶことが出来る、中の重要性を示したものだ。
「下」は通常単独で演じられる事が多いが、これだけだと熊が単なる良い人になりかねないので、上中は欠かせない。
小里んの高座では「下」はややあっさりと演じていたが、熊、女房、亀ともに3人一緒に暮らしたかったいう思いは良く出ていた。
女房子との再会に、前日木場に一緒行った番頭が立ち会うという設定になっていたのと、サゲを鰻屋にかけて変えていた。
いかにも小里んらしい、どっしりとした高座だった。

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2018/06/30

2018年上半期「演芸佳作選」

今年の1月から6月までに聴いた高座の中で、優れたものを以下に列記した。
これらの作品は、当ブログ恒例の年末に発表する「My演芸大賞」の候補作となる。

古今亭志ん輔『お見立て』人形町らくだ亭(2018/2/5)
柳家小満ん『雪とん』小満ん夜会(2018/2/20)
入船亭扇遊『明烏』三田落語会(2018/2/24)
笑福亭たま『立ち切れ』花形演芸会(2018/3/3)
三遊亭兼好『一分茶番』白酒・兼好二人会(2018/3/6)
古今亭文菊『子は鎹』一之輔・文菊二人会(2018/4/12)
立川志の輔『小間物屋政談』朝日名人会(2018/4/21)
隅田川馬石『船徳』にぎわい座名作落語の夕べ(2018/5/5)
桂佐ん吉『火事場盗人』花形演芸会(2018/5/12)
三笑亭茶楽『品川心中』にぎわい座名作落語の夕べ(2018/6/2)
露の新治『お文さん』三田落語会大感謝祭(2018/6/9)
春風亭一朝『植木のお化け』三田落語会大感謝祭(2018/6/9)
隅田川馬石『井戸の茶碗』五街道雲助一門会(2018/6/12)
五街道雲助『つづら』人形町らくだ亭(2018/6/13)

【追記】
リストを眺めて感じたこと。
①落語協会が多数だが、芸術協会、立川流、圓楽一門、上方落語協会からもそれぞれメンバーが選ばれている。
②小三治、さん喬、権太楼、喬太郎、三三、白酒、一之輔の名前が無い。
③寄席興行からは選ばれなかった。

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2018/06/29

池袋演芸場6月下席(2018/6/28)

池袋演芸場6月下席・8日目

前座・金原亭駒六『道具屋』
<  番組  >
古今亭志ん松『真田小僧』
柳亭左龍『家見舞い』
柳家三三『三人旅』
ジキジキ『音曲漫才』
古今亭菊生『新寿限無』
柳亭市馬『天災』
─仲入り─
三遊亭天どん『粗忽長屋』
柳家小袁治『長短』
翁家社中『太神楽』
古今亭文菊『船徳』

都内4軒の定席の中でも、池袋演芸場の下席だけは変則的な番組になっている。通常の寄席形式は昼の部だけで、夜の部は「落語協会特選会」として独演会などの落語会に充てられている。
昼の部は午後2時に開演、5時に終演。この3時間という公演時間が昼下がりにのんびりと寄席で過ごすのに丁度いい時間なのだ。
この日は平日にも拘わらず客席は一杯の入り。顔づけが良かったせいだろう。

志ん松『真田小僧』
有望な若手が顔を揃える志ん橋門下の末弟。愛嬌があって良い。噺家にとって話芸を磨くことも大事だが、愛嬌や色気、華のあるなしも重要な要素だ。

左龍『家見舞い』
都会では汲み取り式の便所がすっかり姿を消してしまったので、肥甕がピンと来ない人が多いかも知れない。
前半をカットした短縮版だったが、出された冷奴を旨い旨いと食べいると、隣の男が変な顔をしている。「なに? この冷奴をどの水で冷やしたかって? そういうことは先に言えよ」といったヤリトリを、左龍は例の眼力で示していた。
浅い出番でもガッチリと客席を掴んでいた。

三三『三人旅』
長い旅の物語の中の、小田原で馬の乗る場面で、3人の江戸っ子と馬子との掛け合いを中心に演じた。近ごろあまり高座に掛からないのは、演者が儲かるネタではないせいだろうか。
短い時間だったが、三三は快適なテンポで面白く聴かせていた。

ジキジキ『音曲漫才』
楽器を使った漫才というのを近ごろ見なくなったが、楽器を持った夫婦漫才となると、東西を通してこの人たちだけではなかろうか。しゃべくり漫才も良いが、寄席ではこうした演奏や唄が入る漫才というのも華やかで良い。
この日の様に古典落語が続く中での色物としてはピッタリだ。

菊生『新寿限無』
もしかして初見。お馴染みの寿限無を三遊亭円丈が改作したものを演じた。「酸素酸素 クーロンのすりきれ ・・・」ってな調子。
古典を聴いてみないとこの人の実力は分からない。

市馬『天災』
久々だった。相変わらず手堅い高座だったが、エキサイティングじゃないね。

天どん『粗忽長屋』
この人の古典は初かも。意外にまともな演じ方だったが、人物の演じ分けがないせいか、平板に流れるという印象だった。

小袁治『長短』
久々だった。このネタを演じるには時間が短すぎた感もあるが、ベテランらしく要領よくまとめていた。

文菊『船徳』
通常は船宿から徳さんの船に乗り込むのは男の二人連れだが、これを文菊は夫婦に変えていた。観音様へのお参りの道筋で、女房の方が歩き疲れたので船に乗ることにしたという設定になっていた。
この演り方には無理があるように思う。
①船が石垣に着いた時に、亭主が女房の日傘を借りて石垣を突くのだが、それなら以前の道路を歩いている際に女房が日傘をさしていなかったのは不自然だ。
②途中で女房が煙草を吸いたくなり煙管を取り出し、亭主が煙草盆を差し出すという場面だが、当時の夫婦関係からこういう事は想像し難い。逆でしょう。
道楽者の若旦那が船頭になるという風情は良く出ていただけに、この改変は疑問が残る。

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2018/06/17

朝日名人会82018/6/16)

第180回「朝日名人会」
日時:2018年6月16日(土)14時
会場:有楽町朝日ホール
<  番組  >
前座『たらちね』
古今亭志ん吉『紙入れ』
柳家三之助『蜘蛛駕籠』
金原亭馬生『柳田角之進』
~仲入り~
春風亭一之輔『百川』
桂文珍『猫の忠信』

志ん吉『紙入れ』
この会に上がる二ツ目は有望な人を選んでいる。今期も志ん吉もそうで期待の若手だ。
主人公の間男の名前が同じ読みの新吉。落語には間男が出て来るネタは多いが、大概は年上の人妻が若い男を誘惑するパターンで、この噺も例に漏れず。
志ん吉の魅力はしゃべりが滑らかな事だ。しかしこのネタの最も肝心な所は、新吉を誘う女房の色気が出せるかどうかだ。その点はさっぱりだった。現時点では荷が重いのかなという印象だった。

三之助『蜘蛛駕籠』
この日は、さんのすけが先で、後半にいちのすけが出て来るという趣向。これでトリがしのすけなら「のすけ」の揃い踏みだったのだが。
元は上方の『住吉駕籠』で、東京へは初代柳家小はんが移したとされている。
雲助以外の登場人物について。近くの茶屋の主、侍、酔っぱらい、踊る男、そして品川に遊びに向かう二人連れ。この内、酔っぱらいは『うどん屋』と同様で同じ話しを何度も繰り返し雲助を閉口させる。
いかにも三之助らしい丁寧で華やかな高座だったが、例の「あら熊さん・・・」の一度目で、声を掛けてきた女房の素性や特徴を話すのを逸してしまったのが惜しまれる。気がついたのか二度目で話し出していたが、不自然さは免れなかった。

馬生『柳田角之進』
柳田が番頭にもし後日店から金が出た時は番頭と主人の首を申し受けると言われたのを、番頭は主人に伝えていなかった。処が大晦日の大掃除の時に金が見つかり、初めて番頭がこの事を主人に告げるのが通常だが、馬生の演り方では柳田が姿を消した時に主人に告げる様にしていた。そして、金が見つかった時に再び先ほどの事を繰り返し主人に告げていたがこれは不自然だし、恐らくは演者のミスだと思われる。
馬生らしい品格のある高座だっただけに、このキズが惜しまれる。

一之輔『百川』
高座に上がってきただけで客席の雰囲気が一気に変わるという、今や貫禄さえ感じる一之輔である。
百兵衛が今度はサザエの壺焼きを飲み込もうとするのを河岸の若い衆が必死で止めるのが新趣向。終始客席を沸かせていた。
最後もも通常のサゲと変えていた。

文珍『猫の忠信』
数ある上方落語の中でもこの噺は非常によく出来ている。
浄瑠璃や歌舞伎の「義経千本桜」のパロディになっていて、オリジナルの狐を猫、鼓を三味線に置き換え、吉野屋の常吉で義経、駿河屋の次郎吉で駿河の次郎、お静さんで静御前、狐忠信で猫のただ飲む、と見立てが入っている。
偽の常吉の正体がバレてのセリフ「申します。もーーします。頃は人皇百六代。正親町天皇の御宇、山城大和二カ国に、田鼠といえる鼠はびこり、民百姓の悲しみに、時の博士に占わせしに、高貴の方に飼われたる、素性正しき三毛猫の、生皮をもて三味に張り、天に向かいて弾くときは、田鼠直ちに去るとある。わたくしの両親は、伏見の院様の手許に飼われ、受けし果報が仇となり、生皮剥がれ、三味に張られました。そのときはまだ、子猫の私、父恋し、母恋し、ゴロニャンニャンと鳴くばかり。流れ流れてその三味が、ご当家様にありと聞き、かく常吉様の姿を借り受け、当家へこそは入り込みしが、アレアレアレ、あれに掛かりしあの三味の、表革は父の皮、裏革は母の皮、わたくしは、あの三味線の、子でございます」もまた、オリジナルのパロディだ。
このセリフでは、ハメモノに乗せて歌舞伎と同様に言葉を伸び縮みさせる狐言葉で語る。演者の力量が求められるネタだ。
文珍は、内海英華の奏する囃子に乗って演じきった。
前半の滑稽噺の展開と共に、この会のトリに相応しい見事な高座を見せてくれた。

仲入りで、三味線の田中ふゆが毎度ポップスを演奏してくれるサービスがあり、これも楽しみの一つである。

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2018/06/14

人形町らくだ亭(2018/6/13)

第78回「人形町らくだ亭」
日時:6月13日(水)18時50分
<  番組  >
前座・春雨や晴太『八問答』
柳家やなぎ『転失気』
春風亭一朝『大山詣り』
~仲入り~
春風亭柳朝『源平盛衰記』
五街道雲助『つづら』

晴太『八問答』
初代春団治がいくつかの噺をまとめて改作した作品だが、東京へは誰が持ってきたのかは不明。
八五郎が隠居の家を訪れると、八は末広がりで縁起が良いという。世の中は全て八の字がつくと、足し算、引き算、割り算、掛け算から駄洒落まで駆使して何でも八にこじつけてしまうという根問ネタ。
リズミカルな喋りで悪くなかったが、間が欲しいところ。
この日の若手の中では一番良かった。

やなぎ『転失気』
本人は工夫している心算だろうが、全体に間延びしていた。
このネタは、あんなにダラダラ演じるものじゃない。

一朝『大山詣り』
お疲れに見えたのは気のせいだろうか。
皆より一足先に長屋に戻った熊が、上さんたちに仲間が船で遭難したという嘘の話しを語る時、もうちょっとしんみりと喋った方が良いのでは。そうでないと、上さん連中が感情移入できないと思った。

柳朝『源平盛衰記』
典型的な地噺で、間に挟むギャグで勝負するネタ。
時事ネタや芸人の流行語を多用していたが、これが古い。聞いていて、そう言えばそんな事もあったなという感想でしかない。客席の反応がそれを如実に物語っていた。
この噺は談志や10代目文治の様な個性の強い人に向いているように思う。
どうも柳朝にはニンじゃないと言うのが、感想だ。

雲助『つづら』
別題が『つづらの間男』、8代目文治-10代目馬生を経て、現在はその弟子の雲助や当代馬生が演じている。
演じ手が少ないのは、あまり面白い噺ではないからだろう。
つづらを見た事のない人や、質屋を利用したことのない人が多くなって、話しが分かり難くなったというのも理由の一つだろう。
江戸時代に、町人の間男に対する賠償金は7両2分と決まっていて、つまりバレても7両2分払えば勘弁して貰えたというルールだったそうだ。これは時価で大判1枚に相当した。
あらすしは。
博打好きの亭主のために悪い筋からの借金の催促に追われる由と女房のお兼。由は金策に走り回るが、どこからも融通して貰えない。仕方なく成田の叔父に相談に行くから今夜は泊りになるからと由は出かけてしまう。
角の荒物屋の女房から由は呼び止められ、お兼が質屋の伊勢屋の旦那と間男していると告げられる。由は成田に行くのをやめて、魚屋の奥座敷で時間をつないでいた。
そうとは知らぬ伊勢屋の主、由が留守だと知らされお兼の家を訪ねてくる。二人で酒と肴で一杯やってる所へ、亭主の由が玄関の戸を叩く。
さては美人局を仕組んだなと訝る伊勢屋の主を急いでつづらの中に隠してから由を招き入れる。
由は気付いてつづらを開けようとするが、お兼は必死でとめる。伊勢屋が借金を肩代わりしてくれたから、近ごろは取り立てが来ないのだと。
もし借金のことで由に万一のことがあったり、お兼が借金のカタに売られるようになれば、子どもが可哀そうだと説得する。
これを聞いた由は「開けない。しかしお前にも開けさせない」とつづらを紐で縛り、担いで伊勢屋へ向かう。
伊勢屋の番頭に、このつづらを7両2分で預けたいと申し出るが、最初は相手にされない。しかし、お上さんから中身を耳打ちされると態度を一変させ、大判1枚を由に渡す。
番頭「二度と虫が付かないようにしっかり預かります」
由「そいつを流さないでくんなよ」
でサゲ。
陰気な話だが、サゲが洒落ている。
雲助もややお疲れという印象を受けたが、じっくり聴かせてくれた。

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