寄席・落語

2018/10/13

鈴本10月中席・夜(2018/10/12)

鈴本演芸場10月中席夜の部・2日目
Photo鈴本の夜の部は、左記のポスターにあるように、「橘家文蔵ネタ出し公演『文藝秋蔵の十日間』」と言う企画公演で、2日目は『佃祭り』。
入りは5分程度か。

前座・金原亭乃ゝ香『たらちね』
<  番組  >
林家なな子『竹取物語』
マギー隆司『奇術』
台所おさん『真田小僧』
入船亭扇辰『紋三郎稲荷』
ホームラン『漫才』
宝井琴調『赤垣源蔵徳利の別れ』
春風亭一之輔『代書屋』
─仲入り─
おしどり『漫才』
三遊亭白鳥『山奥寿司』
翁家社中『太神楽』
橘家文蔵『佃祭り』

なな子『竹取物語』
この噺、どこを面白がればいいのかな。

マギー隆司『奇術』
この人のカードマジックは独特のやり方だ。喋りも独特。

おさん『真田小僧』
トボケタ味わいのある人だが、芸人なんだからもうちょっと見栄えを良くした方が良いのでは。

扇辰『紋三郎稲荷』
扇辰の芸風に良くマッチしたネタだし、今や独壇場と言っても良い。
軽い気持ちで嘘をついた処が、後に引けなくなってしまうというのは日常でも有り勝ちで、それだけ普遍性があると言える。
よく似たストーリーに上方のネタで『稲荷俥』がある。こちらの方は自分は狐だと偽って人力俥の俥夫を騙す。
東京には先代の小文治が移し、彦六らが演じたという記録があるようだが、その後は途絶えている。

ホームラン『漫才』
珍しくツッコミ役のたにしが前面に出て股旅物のクサイ芝居を始めると、それを相方のボケ役の勘太郎がけしかけるという構図。展開に困惑するたにしを勘太郎が見守るなか、たにしが先に引っ込んでしまい、勘太郎一人になって時計を見ながら「あ、時間だ」と言いながら終了。
毎度のアドリブだが、両者の息が微妙にずれてこういう形になったのだろう。
漫才コンビというのはだいたい仲が悪いから、ちょっとした行き違いでハプニングが生じるのだ。
それも又楽しい。

琴調『赤垣源蔵徳利の別れ』
いま何とかいう若い講釈師が売れに売れているが、芸はまだまだだ。客をぐっと引き込み心を捉える琴調の読みには、遠く及ばない。

一之輔『代書屋』
何を演じても一之輔ワールドに。この日の客の名は中村吉右衛門だった。「へりどめ」を知らなかった代書屋を客の男が軽蔑の目で見つめる表情が良い。客を見くだす代書屋へのカウンターパンチ。

おしどり『漫才』
音曲針金漫才という新たな分野を拓いた。どことなくインテリ臭が漂うアコーディオン担当のマコに対して、ケンの針金細工が高座を盛り上げる。お客の注文でこさえた「横綱土俵入り」の細工はお見事。

白鳥『山奥寿司』
今や新作落語の第一人者と言っていいだろう。三遊亭新潟の頃はどうなるかと思っていたが、分からないもんだ。やはり一途に続けるというのは大切なんだね。

文蔵『佃祭り』
この噺は大きく佃島での人情噺と、神田お玉ヶ池での滑稽噺に分かれる。演者でいえば、志ん生は滑稽噺に、3代目金馬は人情噺に、それぞれ重点を置いていた。
文蔵の高座は前者に近い。全体はもっと長いものだが、次郎兵衛が佃祭りに出かけるまでの場面と、後半の与太郎が身投げ女を助けるサゲの場面がそれぞれカットされていた。長屋の衆が悔やみを言う場面では、最初の男は上方落語の『くやみ』の一部を採り入れたものと思われ、与太郎の気持ちの籠った悔やみは志ん朝の影響だろう。
佃島での船頭・辰五郎宅での3人の会話は、もう少し整理して刈り込んだ方がスッキリするのでは。
私の好みから言わせて貰えば、長屋の衆が治郎兵衛の遺体を引き取りに行く際にお上さんに身体の特長を訊ねると、治郎兵衛の二の腕に「たま命」の入れ墨があると答える、この場面は残して欲しかった。この短いヤリトリで治郎兵衛夫婦の姿が巧みに表現されているからだ。
そうした情緒に欠ける面はあったが、文蔵の高座は治郎兵衛の葬儀の場面を中心に笑いの多い演じ方で楽しませていた。

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2018/10/08

番頭が主人からクビにされる珍しいネタ『足上がり』

【あらすじ】
ある大家の番頭、店の金を着服しては芸妓遊びを繰り返している。今日も今日とて芝居小屋で桟敷を借り切り、芸妓連中を侍らせて豪遊。お供に連れてきた丁稚の定吉には、金の出所は「筆の先から」などと自身の悪事をひけらかす始末。
定吉には、店に戻ったら主人には「佐々木さんの所で同業者と碁を打っていて遅くなる」と報告するよう命じて、一足先に帰す。
定吉は言われた通りに主人に報告するが、主人から「定吉、そのお座布団触ってみ。温ったかいやろ。佐々木さんが最前まで座ってはったんや。今日は番頭はんに会わんならんけど、まだ帰ってこんのかいな言うて、帰らはったばっかしやねん。ここにいてはった人が自分の家で碁を打てるとはおかしいやないか。嘘つきなはんな。」と旦那に叱責され、とうとう定吉は洗いざらい白状してしまう。
主人は「どうも近ごろ様子がおかしいと思うとった。何ちゅう奴っちゃ。飼い犬に手噛まれるとはこのことや。明日、請け人呼んで話つける。」と怒り狂う。定吉は「ええっ!番頭はん、足上がるんでっか!どうぞ勘弁しとくれやす。」と必死にとりなすが、主人は許さず、このことは番頭にも誰にも言うなと口止めする。
そうとは知らず店に戻ってきた番頭は定吉を部屋に呼び、「お前が帰ったあとの芝居よかったんやで。」と、「東海道四谷怪談」の大詰「蛇山庵室の場」を仕方噺で聞かせる。
定吉は怖がりながらも、「けど、番頭はん、芝居巧いなあ。」と褒める。
気を良くした番頭が「どや、幽霊が蚊帳の中に消えるとこ、まるで宙に浮いとるようやったやろ。」と得意げに言うと、定吉「宙に浮くはず、既に足が上がっています。」 でサゲ。

「足が上がる」というのは解雇されるという意味の上方の古い表現だ。
落語には帳面をドガチャガドガチャガして金をごまかし、芸者遊びや妾を囲う番頭が登場するが、主人が気付かなかったり、気付いても説諭程度で済むケースがほとんどで、クビにまでなるというのはこのネタ位ではなかろうか。
当時の商家の番頭というのは、主人に代って手代以下の者を統率し,営業活動や家政についても権限を与えられていた。主人はたまに帳簿を見る程度で、日常の業務は番頭任せだったというのが、理由の一つだ。
もう一つは、男の奉公人は終身雇用制度に近く、丁稚奉公から始まって最後は番頭にまで昇りつめ、その先には暖簾分け(分家)で自分が主人におさまることも出来た。その反面、途中でクビになると再就職の道が閉ざされてしまう。今とは比べ物にならない厳しい措置だったのだ。
そのためか、大概は主人も大目に見たのだろう。

このネタは芝居噺に属するが、「東海道四谷怪談」のうち「蛇山庵室の場」が演じられるというのも珍しい。
桟敷で芝居見物し、御馳走を食べて小遣いまで貰って有頂天になっていた定吉が、店に戻り主人から叱責されて一気に暗転してしまう筋書きはなかなか心憎い。
後から店に戻った番頭が、奉公人たちにお土産と称して饅頭と寿司を渡すのだが、いかにも遊び慣れた人物として表現されている。
短いネタだが、非常に良くできた噺と言える。

演者はもちろん桂米朝、「米朝十八番」に含まれている。

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2018/10/06

人形町らくだ亭(2018/10/5)

第80回「人形町らくだ亭」
日時:10月5日(金)18時45分
会場:日本橋劇場
<  番組  >
前座・春雨や晴太『たらちね』
春風亭正太郎『六尺棒』
春風亭一朝『祇園会』
~仲入り~
隅田川馬石『稲荷堀』(お富与三郎)
五街道雲助『島抜け』(お富与三郎)

晴太『たらちね』
二度目だが達者な前座だ。

正太郎『六尺棒』
物怖じせず堂々とした態度。マクラの青森にあるキリストの墓の話題は面白かった。
ネタは悪い出来ではなかったが、道楽息子の「孝太郎」の名前を失念していたようで、
「・・・ああ、孝太郎のお友達ですか。手前どもにも孝太郎という一人のせがれがおりますが・・・」
と言う父親のセリフの名前の部分がカットされていた。
そのため、後の父親のセリフ、
「・・・親類協議の上あれは勘当しましたと、(孝太郎に)会いましたなら、そうお伝え願います」
と平仄が合わなくなってしまった。
このミスが惜しまれる。

一朝『祇園会』
一朝の十八番であり、このネタに関して現役ではこの人がベストだ。
3人旅の様子から京都で浴場に入るまでの前段から、後半のお馴染みの都人と江戸っ子の会話に入る。江戸を見下し京都自慢を繰り返す男にイライラを募らせていく江戸っ子の姿が良い。
祭り囃子の聴かせ所をたっぷり演じてくれた。

仲入り後は雲助と馬石子弟による『お富与三郎』のリレー口演という趣向。
全体の粗筋はホームページ「落語の舞台を歩く」にとても良く纏められているので、以下に引用し紹介させて頂く。

【引用開始】
源左衛門は江戸に出て、博打で勝ちに勝ってその金全部を注ぎ込んで、江戸一と言われた深川のお富を身請けして連れ帰ってきた。そのため宝物のように大事にしていた。博打打ちですから、旅から旅に良い賭場が立つと、子分にお富を頼み、出て行った。
江戸でチヤホヤされて若旦那と言われた与三郎が、あまりにも良い男だったので木更津の叔父さんに預けられた。悶々としていたが、お富を見初め、猫にカツ節で、逢瀬を重ねるようになってしまった。
それを源左衛門に見つかり、捕らえられ顔中、体中を切られてしまった。それを知ったお富は木更津の海に身を投げてしまった。与三郎も俵に詰められ、100両で戻された。
死ぬと思われたが、治って江戸に戻ったが親はビックリ。それ以上に与三郎は人目に出られなくなり、閉じ籠もるようになってしまった。
気晴らしに両国の花火を観に出かけたが、皆から怖がられるので、戻ろうとすると、見覚えのある女の後ろ姿を発見、お富だと後を付けると玄冶店(げんやだな)に住んでいた。多左衛門の妾であったが、二人を見て、変に巻き込まれたくないので、家を渡して手を引いてしまった。
二人になれた事を喜んだが、番頭が跳んで来て家に帰るように言ったが聞き入れず、勘当と言うことになってしまった。勘当になると人別帳から外され、無宿人になってしまった。しかも、二人になっても食う算段がつかないので、博打に手を出し、お富は奥州屋に身を任せた。それを聞いた与三郎は稲荷堀(とうかんぼり)で奥州屋を鯵切りで殺して3両を奪って二人で帰るところを、蝙蝠安に見つかり、たかられる。度々たかりに来られ、二人で殺害してしまった。
与三郎は無宿人狩りで、捕まり佐渡に島流しになってしまった。法被一枚で金鉱で水汲みをさせられた。無宿人の多くは遊び人だったので、仕事が続かず、死ねば江戸から替わりの者が連れてこられた。もう生きて帰れないと悟ったが、番頭が裏で役人に薬を嗅がせたお陰で、少しはましな荷役に回された。船から荷運びをしていたが、誤って桟橋から落ちた者が居ても「放っときな」と言われるだけであった。
佐渡から島抜けを考えるようになった。失敗するとその制裁として、死、しかなかった。  雨の強い夜、役人も警備をゆるめ、静かであった。格子を外し一目散に駆け出した。元に戻る事はもう出来ずひたすら走ったが、後から足音が付いて来る。待ち伏せて捕まえると仲間の久次(きゅうじ)であった。昼間から様子がいつもと違うので、後を追って付いて来た。「一緒に連れて行ってくれ」、帰れとも言えないので、その覚悟を聞いて同行する事にした。
 「どうしてここから出るんだ」、と言うので聞かせると、役人が誤って桟橋から落ちてしまった事がある。直ぐに船を出して岸を廻って来ると潮の加減でゴミが寄せる場があった。そこに役人の死体が浮いていた。船を漕いでいたので、ここは何処だろうと崖上を見ると、格好の悪い松が一本生えていた。
昨日、ドジが居て丸太を数本海に落としてしまった。顔が曲がるほど殴られていたが、その材木がここに流れ着いているはずだ。その時の目印の松がこれだ。丸太を組んで筏を作り、海に出れば潮は本土にぶつかるように流れている。イヤでも本土に着く。また、飛び降りたら丸太が無いかも知れない。やるか、どうする。
二人は断崖を舞った。丸太は有った。丸太に乗って集め、筏にして漕ぎ出したが、外は大波なのでしっかりと筏に身体をくくりつけた。同じ死ぬなら本土で死にたい。その一心であったが、二人とも気を失ってしまった。  与三郎が気が付くと、岸に乗り上げていた。後ろを向くと佐渡が黒く浮き上がっていた。久次を起こし筏をばらして、地面が繋がっている江戸へと駆け出した。どんな事があってもお富に会うんだ。
島抜けは不可能だと言われていた佐渡から、初めて島抜けをした与三郎であった。
【引用終り】

馬石『稲荷堀(とうかんぼり)』
内容は上記粗筋の内、お富と与三郎が二人で玄冶店で暮らし始めるが金に困る。蝙蝠安の入れ知恵で家の奥間を賭場に貸して寺銭で稼ぐようになるが、その客の一人である奥州屋がお富に惚れこみ、妾にする。お富は奥州屋には与三郎を親類だと偽るが、「目玉の某」というワルが金欲しさに奥州屋にお富と与三郎の関係をバラシテしまい、怒った奥州屋はお富と絶縁すると言いだす。これを知った与三郎はお富と二人で稲荷堀でそのワルを惨殺する。
その一部始終を堀に舫っていた舟の中から蝙蝠安が見ていて、これから二人を強請り続けるが、安も二人に殺害されてしまう。
いつも感心するのだが、馬石はこうした人情噺と軽い滑稽噺の両方いけるのだ。こうした噺家は数少ない。そういう意味で師匠の芸風に最も近いと言える。さらに馬石の語る人情噺には柔らかさがあるのも特長だ。聴いていても肩が凝らない。

雲助『島抜け』
こちらの内容は、前期粗筋の中から与三郎が佐渡に流され金山で使役される所から、仲間(雲助は3人としていた)と共に筏で島抜けするまで。
島での労役は厳しく、12時間の危険な力仕事をさせられて粗末な食事と真冬でも法被1枚という姿。このままでは野垂れ死にだし、その一方お富への思いは募るばかり。イチかバチかの命懸けの島抜けの場面は手に汗握るような緊張感に包まれる。
この一門でしか味わえない大ネタのリレー口演、結構でした。

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2018/10/05

五派勢揃い「ケチと強欲のはなしの会」(2018/10/4)

日時:2018年10月4日(木)18時30分
会場:お江戸日本橋亭
<  番組  >
古今亭志ん吉『もう半分』
立川ぜん馬『夢金』
桂春若『京の茶漬』
~仲入り~
笑福亭羽光『ケチ実話』
三遊亭圓橘『位牌屋』

「ケチと強欲」をテーマとした落語会で、珍しく東西の落語団体五派が勢揃いした。顔ぶれも決して悪くない。だが客の入りが悪い。この小屋で半分程度の入りだった。出演者には気の毒に思えた。
少し前から落語ブームだ寄席ブームだと言われているが、本物じゃない。一部の人気者が出演すると開演前に行列ができるほどだが、それ以外は客足が悪く、客席が閑散としていることさえ少なくない。
まだまだブームの底が浅いのだ。

志ん吉『もう半分』
良い出来だった。このネタに関しては真打と言っても可笑しくない。
粗末なを酒屋訪れる棒手振りの爺さん、1合の酒を半分の5勺づつ飲むのが唯一の楽しみ。共に社会の底辺にあって、何とかそこから這い上がろうともがいている。そのぶつかり合いの中で起きた悲劇だ。
志ん吉はそうした人間像を明確に描いていた。
殺しの場面を芝居仕立てに演じて、凄惨さを強調した演出も効果的だった。

ぜん馬『夢金』
立川流の中で最も上手い人として、ぜん馬の名前をあげる者もいる。私もその一人だ。
数年前から重い病を得て声はかすれがちだが、この日もその実力をいかんなく発揮していた。
寒中に大川に船を漕ぎ出す船頭の寒さが客席にまで伝わってくる。
強欲と江戸っ子の心意気とが同居している船頭の姿、結構でした。

春若『京の茶漬』
初見、3代目春団治の弟子。
同じ関西弁でも大阪と京都では違うというのをこのネタで実感できる。
京都の人は客が帰りかけるとお茶漬けをすすめるが、これは客が断ることが前提となっている。そこである大阪の男が京都の知り合いを訪れ、帰りがけにお茶漬けをすすめられたら食べることにする。
色々と謎かけしてお茶漬けにありつこうとする客と、ご飯の残りが少ないのでお茶漬けををすすめられないお上さんとの駆け引きが見せ所。春若の高座は、お上さんの困惑ぶりが描かれていて好演だった。
このネタはナマで観ないと面白さが分からない。

羽光『ケチ実話』
内容を紹介するのも憚れるような、ショモウナイ話だった。
企画した主催者の意図が分からない。

圓橘『位牌屋』
略歴は以下の通り。
1966年3月 - 3代目三遊亭小圓朝に入門
1973年11月 - 小圓朝の死に伴い5代目圓楽門下に移籍
ケチを扱った落語は多いが、このネタのケチな主人は相当に悪質だ。
子どもが生まれたのに、金がかかると渋い顔。
芋売りを呼び込んでわずか5厘で小さな芋を買い、いま小僧を煙草を買いに行かせたからと芋屋の煙草を借りて、世間話を繰り返しながら煙草の葉を袂に入れてしまう。芋俵から覗かせている芋を見せろと言い、形がいいから置物にすると言いながら勝手にしまってしまう。
怒った芋屋が帰ると、主人は小僧を呼んで仏師屋に位牌を受け取りに行かせる。
その小僧は先ほどの主人の手口を真似て、仏師屋から煙草を借りて葉を袂に入れてリ、棚にあった小さな位牌を置物にすると言いながら勝手に持ち帰ってしまう。
店に戻った小僧が主人から頼まれた位牌と、勝手に持ち帰った小さな位牌を主人に差し出すと、
主人 「馬鹿野郎、なんだもらうにことをかいて子どもの位牌を、一体何にするんだ」
小僧 「夕べ生まれた坊ちゃんのになさいまし」
でサゲ。
店の主人の吝嗇ぶりと、小僧が仏師屋で主人そっくりの口真似をする処が見せ場。
圓橘の高座は、それぞれの人物をきちんと演じ分けられていた。
貫禄の一席。

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2018/09/30

国立名人会(2018/9/29)

第421回「国立名人会」
日時:2018年9月29日(土)13時
会場:国立演芸場
<  番組  >
前座・柳家小はだ『たらちね』
柳家三之助『黄金の大黒』
三遊亭吉窓『里帰り』
むかし家今松『質屋庫』
―仲入り―
柳家はん治『禁酒番屋』
林家正楽『紙切り』
柳家小三治『出来心』

三之助『黄金の大黒』
落語家として押し出しも良いし、声も語り口も良い。古典を真っすぐに演じる本格派で期待値は高い。
何度か高座に接しているが、この日もそうだが、面白みに欠けるのだ。その理由は、芸が綺麗過ぎるのだと思う。ここでもうひと捻りしたら面白くなるのにと言う所で寸止めしているように感じるのだ。
  
吉窓『里帰り』
春風亭柳昇作の新作落語。原話はフランスとされているようだが、私は『かんしゃく』からヒントを得たものと推定している。
サゲは2種類あり、父親が娘に渡した毒薬が「うどん粉」で「平手打ちしただろう」でサゲる場合と、「重曹」で「胸がスーッとした」でサゲる場合だ。吉窓の高座は後者だった。
全体的にどうも感心しない。稽古不足なのか言葉の言い間違いなどミスが多く、リズムを壊していた。落語家として脂の乗り切った年齢なのだから、もっと充実した高座を見せて欲しい。

今松『質屋庫』
この噺を理解するには、最低限二つの予備知識がいる。
1、天神様=菅原道真が右大臣にまで昇りながら、左大臣・藤原時平に讒訴(ざんそ)され、大宰府へ大宰員外帥として流され(左遷され)、現地で没した。「東風吹かば にほひおこせよ 梅の花 主なしとて 春な忘れそ」は道真の詠んだ代表的な和歌。
2、質屋には質草(品物)を預けて現金を借りるが、一定期限内に元金と質料(利子)を払えば質草を受け出すことが出来る。期限が過ぎても質料を払えば(利上げ)期限を延長できる。
もし利上げしない時は、質草の所有権は質屋に移転する。これを「質流れ」という。
これが分からないと、サゲが理解できない。
元は上方のネタだが、東京でも演じられており、圓生の高座が極め付け。
この噺では、質屋の主人が番頭に化け物の正体を、大事な品物を預けた人の執念が宿り化け物になったのではと語るのだが、これが結構長い。
また、主人に呼ばれた熊五郎が店に内緒で酒や漬けもの、下駄などを勝手に持ち出していたことを白状するのだが、これも長い。
下手な人が演じるとここがダレてしまい、独白部分をもたせるには技量が必要だ。
強がっていた熊五郎が化け物と聞いて途端に怖気づく、その落差も見どころだ。
今松の高座は間然とする所がなく引き締まったもので、十分に楽しめた。
ただ気になったのは、化け物を時々幽霊と言っていたが、これは化け物で統一すべきだったろう。

はん治『禁酒番屋』
結論から言えば、良い出来で面白かった。はん治の語りのリズムとこの噺が良く合っていた。
新作を演じる場合もそうだが、セリフの「間」の取り方が上手い。

小三治『出来心』
別名『花色木綿』、小三治の十八番だ。
年に一度位のペースで小三治を聴いているが、ここ数年は見に来てるといった方が正確か。
間もなく79歳を迎える元気な小三治を見た、それで十分。

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2018/09/27

鈴本9月下席・昼(2018/9/26)

鈴本演芸場9月下席昼の部・6日目

前座・柳亭市朗『堀の内』
<  番組  >
春風一刀『子ほめ』
ダーク広和『奇術』
春風亭勢朝『大師の杵』
三遊亭歌武蔵『漫談』
ロケット団『漫才』
桂藤兵衛『三人無筆』
春風亭三朝『やかんなめ』
林家楽一『紙切り』
春風亭一朝『短命』
─仲入り─
三増紋之助『曲独楽』
橘家圓太郎『桃太郎』
古今亭文菊『権助提灯』
柳家小菊『粋曲』
春風亭一之輔『竹の水仙』

団体客も入っていたが、会場はほぼ満席。やはりトリを始めとして顔づけが良いせいだろう。

一刀『子ほめ』
名前は「はるかぜいっとう」と読む。一朝門下で唯一人亭号が異なる。喋りも滑舌も良い。

ダーク広和『奇術』
何より手品が大好きという思い入れは伝わる。ただプロだから見せ方にはもっと工夫が要るだろう。

勢朝『大師の杵』
久々だ。いつもの様に軽い小咄を並べて本題へ。このネタも久しぶりだった。4代目柳亭痴楽が十八番としていて、布団に残された杵を見た娘が「思い杵との辻占かしら? それとも後から搗(付)いてこい搗(付)いてこい」と言って大師の後を追う、と演じていたのを思い出す。
川崎大師由来の一席で、3代目金馬によればここで「女除(よ)け」のお守りを売り出したが全く売れなかったと言っていた。ただ「女除(よ)け」の御利益はあるから、川崎大師に参詣される男性はご注意を。

歌武蔵『漫談』
いつも相撲漫談で沸かす。貴乃花騒動でまた新しい飯の種ができた。

ロケット団『漫才』
時事ネタを織り込んでこの日も舌好調! 落語協会の漫才師としては、ホームランと2枚看板だね。

藤兵衛『三人無筆』
近頃では無筆の人がいなくなったせいか、このネタが演じられなくなった。
葬儀の参列者の帳付けを頼まれた二人、共に無筆だったので大弱り。知恵を絞って「仏の遺言」でめいめいに自分で名前を書いて貰うことにした。運良く字が達者な参列者がいて替わりに皆んな書いてくれた。助かったと思ったら後から遅れて来たのがまた無筆。
仕方がないので、「そうだ。おまえさんが弔いに来なかったことにしとこう」
「そんなことをしたら旦那に申し訳がねえ」
「いや、かまいません。ホトケの遺言にしときます」
でサゲ。
この人らしい明解な語り口で聴かせていた。

三朝『やかんなめ』
二ツ目時代から注目していたが、やや足踏みの感があった。
この日は面白かった。こういうネタはニンだ。

楽一『紙切り』
珍しく体を揺らさない紙切り。腕は確かなようだが、芸人らしい愛想が欲しい。

一朝『短命』
この日も一朝懸命。ただ葬儀の悔やみ繋がりで、藤兵衛『三人無筆』とネタがツイテしまったのでは。

紋之助『曲独楽』
暫く見なかったが病気でもしていたのだろうか。それともタマタマかな。

圓太郎『桃太郎』
この人が演じると、小生意気な子も可愛く見えてくる。

文菊『権助提灯』
文菊の演じる女性っていうのは、病的に色っぽい。権助の造形が良かった。

小菊『粋曲』
大好きな小菊姐さんだが、この日はちょいと喉の調子が良くなかった。お大事にね。

一之輔『竹の水仙』
一之輔のこのネタは初めてだが、相変わらず何を演らしても上手い。持ちネタの数が多いだけでなく、その幅が広いのに感心する。難しいと思われた『鼠穴』や『富久』も難なくこなしてしまう。
この日も宿の亭主と甚五郎、亭主と女房、細川公と家来をそれぞれ対照的に描き分け、その手腕を発揮していた。

質量ともに満足の鈴本9月下席だった。

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2018/09/23

「出囃子」あれこれ(1)

落語家の出囃子は、落語家自身の雰囲気や芸風にあわせて下座が決めるのが通例とされているが、最近では二つ目に昇進した際に落語家自身がリクエストする例もあるようだ。
出囃子の原曲としては、
①歌舞伎や文楽の中で演奏される長唄や浄瑠璃
②小唄、端唄など俗曲
③出身地に因む民謡
④ジャズ、歌謡曲、アニメソング、自身のテーマ曲、など
が使われている。

ここで、8代目文楽の「野崎」。圓生の「正札附」、志ん生の「一丁入り」について原曲を推察してみたい。
(1)「野崎」
この出所は明白で、文楽や歌舞伎の演目である「新版歌祭文(しんぱんうたざいもん)」上の段の後半部分、通称「野崎村」の山場で演奏されている。
上方では代々の桂春団治の出囃子として有名で、東京では8代目桂文楽の代名詞ともなっているが、同時代には9代目桂文治も使っていた。
(2)「正札附」
新春を寿ぐ目出度い歌舞伎狂言の中で使われている長唄「正札附根元草摺引(しようふだつきこんげんくさずりびき)」、通称「正札附」が原曲と思われる。東京では三遊亭圓生、その亡き後は弟子の三遊亭圓弥が出囃子としていた。
(3)「一丁入り」
これは出所が不明だ。
但し圓生が監修した「寄席囃子」ではこの曲を「江戸のっと」としている。「のっと」とは「祝詞」の事で、能・狂言の祈祷で使われる囃子を長唄に移したものを指す。圓生が正しければ、この辺りに原曲があると思われる。
古今亭志ん生の出囃子として有名で、その後は息子の先代馬生が晩年の一時期使っていたが、今や永久欠番の扱いになっているようだ。

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2018/09/22

落語家の出囃子一覧(上方編)

                            
高 座 名 出  囃  子
桂あやめ 菖蒲浴衣
  桂歌之助 雛鶴三番叟
  桂梅團治 龍神
笑福亭鶴志 舟行くずし
  月亭可朝 ああそれなのに
  桂吉朝 外記猿
  桂きん枝 相川
  露の五郎兵衛 勧進帳
桂ざこば 御船
  桂塩鯛 鯛や鯛
  笑福亭枝鶴 だんじり
  桂枝雀 ひるまま
  桂雀三郎 じんじろ
  桂春蝶(2) 月の巻
  笑福亭笑瓶 魔法使いサリー
  笑福亭松鶴 舟行き
  笑福亭松喬(6) 高砂丹前
  笑福亭松喬 お兼晒し
  露の新治 金毘羅船々
  笑福亭仁智 オクラホマミキサー
  林家染二 藤娘
  林家染丸 正札附
笑福亭たま 長崎さわぎ
  笑福亭鶴光 春はうれしや
  笑福亭鶴瓶 トンコ節
桂南光 猩々
  笑福亭仁鶴 猩々くずし
月亭八方 夫婦万歳
  桂春団治 野崎
  桂春之輔 月宮殿鶴亀
  笑福亭福笑 佃くずし
  桂福團治 梅は咲いたか
  森乃福郎 獅子舞
  桂文我 せり
  桂文三 助六あがり
  桂文枝(5) 廓丹前
  桂文枝 本調子中の舞
  桂文珍 圓馬囃子
  月亭文都 おかめ
  桂文福 鞠と殿様
  桂米紫 猫じゃ猫じゃ
  桂米朝 三下がりカッコ
  月亭方正 ヤマザキ一番
笑福亭松之助 新曲浦島
桂米團治 カッコ
全体を網羅してはいないので、漏れた場合はご勘弁を。
 ()内の数字は何代目かを表す。数字がないものは当代、あるいは表示せずとも何代目か容易に類推できるもの(例えば米朝、松鶴、吉朝など)。
出囃子はネタによって変える場合がある。
 
 
 

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2018/09/21

落語家の出囃子一覧(東京編)

                                                                                                   
高 座 名 出  囃  子
春風亭一之輔 さつまさ
  柳亭市馬 吾妻八景
  春風亭一朝 菖蒲浴衣
  むかし家今松 舌出し三番叟
  三遊亭歌之介 我は海の子
  桂歌丸 大漁節
  三遊亭圓歌 二ツ巴
  古今亭圓菊 武蔵名物
  三遊亭圓生 正札付
  三遊亭圓丈 官女
  橘家圓蔵 虎退治
  橘家圓太郎 圓太郎囃子
  三遊亭圓楽 元禄花見踊り
三笑亭可楽(8) 勧進帳
  柳家花禄 お兼晒し
  林家木久扇 宮さん宮さん
  古今亭菊之丞 元禄花見踊り
  古今亭菊丸 勧進帳
  柳家喜多八 梅の栄
  柳家喬太郎 まかしょ
  三遊亭金馬 本調子カッコ
  五街道雲助 箱根八里
  三遊亭兼好 ぶらりっと
  春風亭小朝 さわぎ
  三遊亭好楽 つぼらん
  柳家小ゑん ぎっちょんちょん
  柳家小さん(5) 本調子中の舞
  柳家小三治 二上りカッコ
  柳家小満ん 青海波
  三遊亭小遊三 ボタンとリボン
  春風亭小柳枝 梅は咲いたか
  柳家権太楼 金毘羅船々
桂才賀 野毛山
  柳家さん喬 鞍馬獅子
  柳家三三 娘道成寺
  立川志の輔 梅は咲いたか
  三笑亭笑三 並木駒形
  林家正蔵(8) 菖蒲浴衣
  春風亭昇太 ディビークロケット
  春風亭正朝 長崎ぶらぶら節
  立川志らく 鳩(花嫁人形)
  古今亭志ん生 一丁入り
  古今亭志ん輔 越後獅子
  古今亭志ん朝 老松
  林家しん平 阿波踊り
  入船亭扇橋 俄獅子
  入船亭扇辰 から傘
  入船亭扇遊 道成寺
  川柳川柳 三味線ブギ
林家たい平 ぎっちょ
  五明樓玉の輔 お猿のかごや
  立川談志 木賊刈り
  立川談春 鞍馬
  立川談笑 野球拳
桃月庵白酒 江戸
  三遊亭白鳥 白鳥の湖
  金原亭馬生(10) 鞍馬
  金原亭馬生 七福神
  隅田川馬石 め組の合方
  鈴々舎馬風 本調子のっと
  桂文治 武蔵名物
  橘家文蔵 三下がりカッコ
  桂文楽(8) 野崎
桂三木助(3,4) つくま
  三遊亭萬橘 小鍛治
  昔昔亭桃太郎 旧桃太郎の唄
三遊亭遊三 お江戸日本橋
  三遊亭遊雀 粟餅
  三遊亭夢丸 万才くずし
  桂米助 私を野球に連れてって
  桂米丸 金毘羅船々
滝川鯉昇
  春風亭柳好(3) 梅は咲いたか
  春風亭柳枝(8) 三下がりカッコ
  春風亭柳昇 お前とならば
  春風亭柳朝(5) さつまさ
  三遊亭竜楽
 
全体を網羅してはいないので、漏れた場合はご勘弁を。
()内の数字は何代目かを表す。
数字がないものは当代、あるいは表示せずとも何代目か容易に類推できるもの(例えば志ん生、圓生、志ん朝など)。
出囃子はネタによって変える場合がある。
 
 

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2018/09/20

「夏祭浪花鑑」と落語

昨日(2018/9/19)、国立劇場・小劇場で人形浄瑠璃「文楽」の「夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)」を鑑賞。
構成は以下の通り。
住吉鳥居前の段
内本町道具屋の段
道行妹背の走書
釣船三婦内の段
長町裏の段
田島町団七内の段

初演は1745年。
上方の侠客やその女房たちの義侠心を大阪の夏祭り・だんじりの興奮を背景に描いたもの。相変わらず人形の動きの美しさにウットリ見惚れる。本物の人間でもあれほど品が良く、且つキリリとした動きは出来ないと思えるほどだ。
内容は詳しい方が書いているので省略するが、落語のネタと関係していそうな箇所があったので紹介する。

『土橋漫才』
上方のネタで、東京では演じられていないかと思われる。
道楽がやまない若旦那を諫めようとした番頭が、もみ合いになった末、若旦那を殺めてしまうという場面が山場。桂米朝の高座ではこの乱闘シーンを「ダンマリ」で演じている。後からこれは夢だと分かるのだが。
これが「夏祭浪花鑑」の「長町裏の段」の団七の舅殺しのパロディとなっている。
忠義な番頭は「夏祭」の主人公・団七に、傲慢な若旦那は主人公の義父である義平次に、それぞれ準えられていて、殺しのシーンは「夏祭」同様の「ダンマリ」で演じられているのだ。
(「ダンマリ」とは、暗闇のなかで互いに無言で探り合う動作を様式的に見せるものを言う)

『ふたなり』
「道行妹背の走書の段」で、前の段で道具屋の色男の手代が正義のためとはいえ人を殺めてしまい、恋仲だった主人の娘と心中しようとする。
そこへ悪い手代が後を追ってきて二人に嫌がらせする。心中するなら首つりが良いと勧め、自分で手本を見せている間に本当に首をつってしまう。
それを見た二人は心中をとりやめ、人を殺めた委細を書き置きした文を首つりの懐に入れて立ち去る。
これを見て、落語の『ふたなり』のそっくりだと思った。上方のネタだが、東京でも志ん生や9代目文治が演じていた。
落語では10両の金策のために森を通りかかった男が、自殺しようとする娘を見つける。当初は思いとどまるよう説得するのだが、10両を持っていることが分かると自殺を勧める。死に方が分からないという娘に男は首つりの説明をするが、誤って本当に首をつってしまう。その姿を見て娘はすっかり気が変わり、書いていた遺書を男の懐に入れて逃げてしまう。
ね、そっくりでしょ。
これも「夏祭」のパロディではないだろうかと、勝手に解釈しているのだが。

落語好きな方、「文楽」もなかなか面白そうでしょ。

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