寄席・落語

2017/06/28

池袋演芸場㋅下席(2017/6/27)

池袋演芸場㋅下席昼の部・7日目

前座・春風亭一花『桃太郎』
<  番組  >
入船亭小辰『普段の袴』
三遊亭歌実『交番戦』
柳家喬太郎『饅頭こわい』
ホームラン『漫才』
春風亭一之輔『化物使い』
橘家文蔵『ちりとてちん』
ー中入りー
入船亭扇里『ぞろぞろ』
柳家さん喬『替り目』
翁家社中『太神楽』
入船亭扇辰『甲府い』

池袋演芸場の下席は昼の部だけで、上演時間も3時間と通常より短い。手頃なので、ここには下席に来る事が多い。但し、出演は落語協会のみだ。
夜の部は独演会などの特別興行だが、これも落語協会のみ。
上席と中席は落協、芸協交互だから、芸協は池袋でも割を食われている。
東京も大阪のように一つの団体に集約出来れば良いのだろうが、過去の経緯もあって統一は難しい。

人気者が顔を揃えたとあってか、平日の昼にもかかわらず補助椅子も出る一杯の入り。

小辰『普段の袴』、彦六が得意としていたが、最近は一之輔が高座にかけている。特に鈴本の出番では御成街道に面しているせいか、かなり頻繁に演じている。小辰の高座は一之輔のような派手さはないが、男が大家に袴を借りる時の祝儀不祝儀がぶつかって喧嘩する話しや、道具屋の主が絵の鶴を文晁作というと男が「文鳥じゃねえ、ありゃどう見ても鶴だ」と言い張る場面を中心に好演。大爆笑させるのではなく、クスリと笑わせる所が本寸法。

歌実『交番戦』、歌之介の弟子で今春二つ目に昇進。芸名は本人が鹿児島実業高卒からとったもの。師匠を選ぶなら一朝が良かったと言っていた。タイトルは付いているが、内容はほぼ漫談で、警察官当時のエピソードを加えていた。こういう芸風で行くのだろうか。

喬太郎『饅頭こわい』、このネタ、落語の代表的演目のように見られているが、その割に高座にかかる頻度はそれほど高くない。前座噺としても他の『寿限無』『子ほめ』『牛ほめ』などと比べれば一目瞭然だ。登場人物が多いし、男が怖い怖いといいながら饅頭を頬張る場面に演技力が要る。その割には笑いが取れないことも原因かも知れないが。
喬太郎は、かなりの頻度でこのネタを掛けていて、これほど頻繁に『まんこわ』を演じるのは、真打では彼だけではなかろうか。
前半の怖いものを語らせる場面ではテンポの良さを、後半の饅頭を食べるシーンでは食い分けを見せ場にして、客席を沸かせていた。

ホームラン『漫才』、例の「あなたは神を信じますか? 私は信じません」「あなたが新婦ですか? 私も神父です」のヤリトリや、TDLでの踊りを披露して、この日も大爆笑。

一之輔『化物使い』、前半をカットし、奉公人の杢助が隠居に暇を貰いたいと切り出す場面から始める。隠居が化物たちをこき使うシーンを中心に演じた。のっぺらぼうの女の顔に、墨で好みの顔を描く所が独自。通常の3分の1程度の時間で演じる手際の良さは、一之輔ならでは。

文蔵『ちりとてちん』、これも文蔵の十八番で度々演じている。知ったかぶりの寅がチリトテチンを飲み込んで苦悶する姿を、隠居が楽しげに見ている。寅がコップを差し出してここへ酒をついでくれと身振りで頼むのを、「なに? 写真を撮ってくれ?」とからかう隠居。結構、人が悪いんだね。

扇里『ぞろぞろ』、彦六の十八番だったが、彦六の場合は茶店の主が稲荷に普段からお参りを欠かさず、ある日のこと土砂降りになって大勢が雨宿りに茶店に訪れ、次々と草履を買って行ったので売り切れになるという設定だ。
扇里では、茶店の主がたまたま幟が落ちているのを見つけ稲荷に届けると、その日のうちに一人の客が雨宿りに訪れ帰りに草履を買って行くという設定だ。この場合、在庫の草履は1足しかないことになっている。
それと、茶店の繁盛に伴い稲荷の参詣人もどんどん増えてゆくという描写も、彦六にはあって扇里には無かった。
両者を比べると、どうも彦六の演りかたの方が座りが良い。

さん喬『替り目』、長めのマクラから亭主が外で飲んできて、よっぱらって帰宅するまでの前半はカット。女房に酒とつまみをせがむ所から始まる。つまみも横浜のシュウマイ、小田原の蒲鉾、静岡のワサビ漬けと、品目が通常とは異なる。
女房にさんざん感謝の言葉を発し、「未だそこに居たのか」でサゲていた。
数分で演じる短縮版だが、一風変わった演じ方だった。

扇辰『甲府い』、この噺はどうも苦手だ。一つは宗教色が強いこと。何事もお祖師様のお陰というストーリーになっている。もう一つは、戦時中、報国紙芝居になったとされているが、それくらい内容が道徳的なのだ。滅私奉公や報恩の良い手本になったに違いない。
志ん朝の演じ方は、こうした色を薄めて成功した例だと思う。今だと白酒がこの流れだ。
扇辰の高座は、善吉が夜中にお題目を唱えながら水垢離をするのを加えるなど宗教色が強い。また、善吉が豆腐を売りながら、長屋のお上さんたちが洗濯していると水汲みを手伝う場面を入れるなど、これまた道徳的だ。
そのせいか、全体が古色蒼然たる印象になっていたように思う。
扇辰らしい丁寧な高座ではあったが、このネタに約30分もかけた事といい、疑問の残る一席だった。

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2017/06/17

鈴本演芸場㋅中席・昼(2017/6/16)

鈴本演芸場㋅中席昼の部・6日目

前座・金原亭駒六『元犬』
<  番組  >
春風亭一左『牛ほめ』
ストレート松浦『ジャグリング』
古今亭菊之丞『親子酒』
入船亭扇遊『たらちね』
ホンキートンク『漫才』
林家正蔵『読書の時間』
柳家権太楼『代書屋』
三遊亭小円歌『三味線漫談』
春風亭一朝『蛙茶番』
─仲入り─
花島世津子『曲独楽』
春風亭三朝『小粒』
柳家さん喬『締め込み』
江戸家小猫『ものまね』
春風亭一之輔『唐茄子屋政談』

鈴本演芸場の6月中席・昼の部は一之輔がトリで、権太楼やさん喬といった実力者が顔付けされている。16日は代演休演が少ないこともあって人気が高く、開場20分前に着いた時は長い列ができており、既に入場が始まっていた。
団体客が入っていたこともあって、開演時には既に満員。
ただ、全体的にざわついていて、客層は良いとはいえなかった。
客席から芸人にチャチャを入れる時は、タイミングと節度が必要だ。今日の客の中に、そこを理解してない野暮天がいた。

団体というのは演芸場サイドからみれば有難いのだろうが、その集団だけ周囲から浮いてしまう傾きになる。
個人で来る人はこの日の番組が好きで来たのだが、団体の方からすればたまたまこの日の番組に当たったということになるのだろう。
そうしたズレが生じるから、他の客からはあまり歓迎されない。
芝居にしろ寄席にしろ、他の芸能もそうだが、聴いたり見たりするのは極めて個人的な行為だと思う。一人一人好みも異なるし、自分に合わなければ苦痛でしかない。
と、アタシなんか思ってしまうのだが。

いつもの短い感想を。

一左『牛ほめ』、与太郎が牛をほめる時の誉め言葉「天角地眼一黒直頭耳小歯違」を、叔父の娘に言って泣かせてしまうという場面、必要ないのでは。それと牛がフンを垂れるのを写実的にしゃべるのは、やめて欲しい。噺が汚くなる。
ストレート松浦『ジャグリング』、いつ見てもお見事。新しい技を考案してゆくのは大変だろうね。
菊之丞『親子酒』、先日、龍玉で聴いたばかりのネタでセリフまで一緒だったが、面白さが違う。落語っていうのは話芸ではあるが、そこに演者の愛嬌とか色気とか華とか、そういったモノが加味されて成り立っている。だからいくら語りが上手くったって、それだけでは優れた噺家にはなれない。
菊之丞にあって龍玉に欠けているのは、そこだ。
扇遊『たらちね』、寄席に出る噺家というのは、時には明らかに手を抜くこともあるが、扇遊がそうしたのを見たことがない。浅い出番でも短い時間でも1席きっちりと演じるスタイルは好感が持てる。
正蔵『読書の時間』、こういう軽いネタがニンだ。
権太楼『代書屋』、いつものマクラにいつものネタ。だが、権太楼の顔を見ただけで満足だ。「皆さんの前で、こうして落語が出来るって、こんな幸せなことはない」、いい言葉だ。
小円歌『三味線漫談』、いつも通りのようでいて、立花家橘之助襲名への意気込みを感じた。来年が楽しみになってきた。
一朝『蛙茶番』、得意のバレ噺。この人が演じるとあまり嫌らしくない。戦前、このネタを高座にかけたら警察に呼ばれて絞られた噺家もいたとあるが、そんな時代にはなって欲しくない。

世津子『曲独楽』、元々は手品師だが、こういう芸も持ってるんだ。器用な人は何をやっても器用だね。アタシはその正反対、トホホ!
三朝『小粒』、この人の名、一朝の三番弟子だから三朝なんですかね。いずれ五朝とか十朝とか出てくるのかな。
初めて聴くネタで、背の小さい男が、背が伸びるよう願掛けしたら、翌朝足が掛布団から出ていて喜ぶが、よく見たら布団が横になっていたというサゲ。
新真打ながら数々の受賞歴を持つ人なので、これからの活躍を期待したい。
さん喬『締め込み』、先日の独演会で聴いたばかりだが、この日は半分位に短縮していた。ただ独演会の時に出なかった「ウンか出刃か、ウン出刃か」が入っていたのは嬉しい。
小猫『ものまね』、後から出た一之輔が「あんなこと、親子代々やっていて面白いんですかね。誰か、親父、もうよそうよって、言わなかったのかな」とイジっていた。いやいや、立派な芸ですよ。この人の祖父の猫八が、一度、ものまねをしないで落語を演じたのを聴いたことがあるが、上手いもんだった。こういう芸も基本は話芸なんだね。
一之輔『唐茄子屋政談』、勘当になった若旦那が吾妻橋から身投げするのを叔父に助けられ、唐茄子の棒手ふりをさせられる所から、若旦那が貧しい母子を助け阿漕な大家を殴りつけて、その善行によって勘当が解かれるまでのほぼ全編を演じた。普通に演じれば1時間近くかかるのを約30分で演じたので、途中の細部が省略されていたが、この噺の勘所はしっかりと捉えていた。
難をいえば、叔父さんが若く見えてしまうこと。演者の年齢から致し方ないのかも。
一之輔によれば、若旦那のたった一日の善行だけで勘当を解くのは甘すぎる。まだまだ苦労をさせるために、若旦那は唐茄子売りを続けるという、もう一つの結末を用意していた。
大ネタを短時間にまとめ上げ、客席を沸かせる技量は大したものだ。
鬼才(奇才かな?)の面目躍如。

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2017/06/15

国立演芸場㋅中席(2017/6/14)

国立演芸場㋅中席・4日目

前座・神田桜子『安政三組盃~繁蔵出世~』
<  番組  >
桂翔丸『つる』
鏡味よし乃『太神楽曲芸』
春風亭昇乃進『大安売り』
松乃家扇鶴『音曲』
桂幸丸『幸丸流・新島八重伝』
~仲入り~
プチ☆レディー『奇術』
山遊亭金太郎『ちりとてちん』
新山ひでや・やすこ『漫才』
三笑亭茶楽『三方一両損』

国立の6月中席は芸協の芝居で、その4日目に出向く。仲入り前の出演者は全て初見。
落語協会と落語芸術協会、それぞれに色の違いがある。
先ず、芸協の方は色物を重視している。この日の番組でも9本中4本が色物だ。講釈師が前座をつとめたが、落協では例がないだろう。
落語でいえば、古典派より新作派の方に力を入れていというイメージが強い。
3代目三木助や2代目文朝らが落協への移籍して行ったことから、古典派は芸協では冷遇されていたとの噂も立った。今は会長も副会長も古典派なので、そうした事実はないのだろう。
一方の落協は、文楽、志ん生、圓生という昭和の三名人を出したこともあって、古典の本流というイメージだ。今でも老舗の〇〇落語会などの顔ぶれを見ると、大半が落協所属の人たちだ。
特に5代目小さん門下の噺家は一大勢力で、柳家、柳亭、立川、入船亭と並べると、老舗の落語会では出演者の過半数を占めることも珍しくない。
鈴本演芸場が芸協を出さないということもあって、落協の方が格上という受け止めが強いようだ。
歌舞伎に例えるなら、吉右衛門や菊五郎は落協、猿之助は芸協といった感じかな。ちょっと違うか。

マクラが長くなったが、その分、本題が薄くなっている。
例によって、短い感想を。

翔丸『つる』、未だしゃべりが噺家のものになっていない。
よし乃『太神楽曲芸』、太神楽というと2名なし3名で演じるケースが大半だったが、近ごろの若手はピンで演る人が目立つ。一人でも出来るんだと感心するが、見た目の華やかさに欠けるのが弱点か。
昇乃進『大安売り』、この位置のこのネタは物足りなさを感じてしまった。
扇鶴『音曲』、寄席で男の音曲師って、少なくなりましたね。まったりとした高座で美声を聴かせてくれた。調べたらこの人、千家松人形の弟子だったんだ。人形さん、美人でしたよ~♡
幸丸『幸丸流・新島八重伝』、安倍さんは「ヤジはやめてください」といいながら、野党が質問すると自分がヤジってるとか、加計問題での前川氏の物真似を披露したりと、長めのマクラから本題へ。
福島県の出身なので、福島出身や福島に縁のある人たちの自己流・偉人伝を得意としているようだ。軽妙な語りが持ち味。
金太郎『ちりとてちん』、後から呼んだ熊が、料理をけなしながらも食べる演り方と、酒だけ飲んで料理には手を付けない演り方があるが、金太郎は後者。腐った豆腐に一味と、さらに辣油を加えるというの初めて見たが、台湾土産をいう設定なので中華風にしたのかも。
毎度ながら、手堅い高座。
茶楽『三方一両損』、どこかの企業の会長といっても可笑しくない風貌と、年齢とは思えないほどの若々しい声が特長。
前の師匠である8代目可楽が得意としたネタを演じたが、テンポの良さ、歯切れの良さ(特に大工の熊五郎が大家に向かって啖呵を切る場面)で好演。
奉行もあまり理屈に走らず、おおらかな人物として描かれていた。
熊の大家が二人の喧嘩の際に、「右でいきなり殴るんじゃない、先ず左を出して(ジャブの恰好をして見せる)、それから右を出すんだ」と教える場面が可笑しかった。一方、金太郎の大家も、若い頃は弁当を持って喧嘩を探して歩いたと言っている。
昔の大家は血の気が多かったのか。町役人として荒くれたちを治めるには、その程度の腕力も必要だったのかも。

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2017/06/13

#72人形町らくだ亭(2017/6/12)

第72回「人形町らくだ亭」
日時:2017年6月12日(月)18時50分
会場:日本橋劇場
<  番組  >
前座・柳家小はだ『転失気』
桂三木男『雛鍔』
柳家喬太郎『夢の酒』
五街道雲助『付き馬』
~仲入り~
柳家小満ん『茶碗割』
(前座以外はネタ出し)

三木男『雛鍔』
初めて聴いたときから、3代目三木助の孫である事を売り物にしているようで、嫌な感じだった。それは今でも続いている。馬じゃあるまいし、落語家に血統は関係ない。それも上手いならまだ許せるが、下手ときた。
3代目、4代目のナマの高座に接した者として、「三木助」の名だけは汚さないで欲しい。

喬太郎『夢の酒』
喬太郎がマクラで語っていたように、アタシも女房や家族に言えないような夢を見ることがあり、このネタは結構リアリティがあると思っている。
温泉に一人で浸かっていたら、会社の女子社員が次から次へと湯船に入ってきたなんて夢、妻には言えないわな。「あんたが普段から、そうなって欲しいと思ってるから、そんな夢見るのよ」とお小言を頂戴するに決まってるさ。
喬太郎の高座は、夢の話を語る若旦那に対する女房のリアクションに重点を置いていた。堪えながら聞いていて、瞬間に爆発する表情が良い。
男性を魅惑する際には、女性は顎の使い方が重要だそうで、是非パートナーにお試しあれ。

雲助『付き馬』
意外だが、このネタ、白酒ではなんべんも聴いているのだが、雲助は初。当り前だが、やはり師匠の方が上手い。
雲助の目付きがいい。いかにもツケを踏み倒しそうな男の目だ。湯豆腐で一杯飲ってから勘定を払う時に、店の女店員の尻をさりげなく触る所にも、この男の根性が現れている。
吉原の見世の妓夫(ぎゅう)太郎は、風呂屋の番台みたいな妓夫台の上に座って呼び込みをしていたので、見世の前での男との会話の際は目をやや下に向け、男はやや上目にして話していた。こういう細部も目配りしている。
男による吉原から仲見世に至る道中の解説も、雲助の地の利が活きている。
早桶屋での店主と妓夫太郎のチグハグな会話は、「間」が絶妙だ。店主のいう事をシモネタと解釈して、下卑た笑いを浮かべる所は、いかにも妓夫太郎らしさが表現されていた。
志ん朝亡きあと、このネタは雲助が第一人者といって良いだろう。

小満ん『茶碗割』
初めて聴くネタ。
調べてみたら尾崎紅葉作「茶碗割」という短編小説が元のようだ。紅葉自身も作家仲間を相手にこの作品を講談として語ったとあるので、ストーリーが話芸に適しているのだろう。

あらすじは。
両替商の幼い娘の具合が悪いということで、主人が乳母に命じて医者に診させに行くが、なかなか戻らない。遅く帰ってきたので理由を訊くと、帰りに操り人形芝居を観てきたのだと言う。その時、桟敷席にいた侍夫婦から桟敷席に招かれ、子どもの小遣いとして2分の金を貰ったという。
名前も住所も聞いてなかったというので主は怒り、乳母に命じてその侍を探させるが、偶然に駕籠に乗ったその侍を見つけ、先を急ぐからと言う侍を店の手代の助けを借りて、両替商の家に招きいれる。
主人は先日の礼をいい、下へも置かぬもてなしをすると、侍は四国は松山藩の家臣で、主君の命を受けて茶道具を江戸に求めに来たという。
そこへ茶道具を扱う行商の仲買人が、侍が所望していた茶器を持参して現れる。他に買い手がいるが、今ここで180両を即金で払ってくれるなら茶器を渡すという。侍は、芝の宿に戻れば金は用意できるのだがと渋ると、両替商の主人が180両は自分がここで立て替えると申し出て、侍は喜んで茶器を受け取る。
侍は、茶器を風呂敷で結わえ紫の紐で封印をして、借金のカタとして主人に預ける。直ぐにでも180両を両替商に届け、引き換えに茶器を引き取る約束して侍は帰って行った。それから、待てど暮らせど侍は姿を見せず、芝の宿にも該当する人物がいなかった。
ここで両替商は180両を騙し取られたことを覚る。
実に手の込んだ詐欺に引っかかったのだ。
この件が江戸中で評判になり、そこに目を付けた芝居小屋が狂言にして上演したところ、これが大当たり。
ますます両替商の主人は面目丸つぶれ、奉公人に示しがつかず、店の信用にもかかわってくる。
そこで一計を案じ、手代を呼んで何やら耳打ち。
芝居の幕間に突然、手代が舞台に上がり、自分はいま話題に店の手代であり、騙された問題の偽の茶器はこれだと宣言し、観客の目の前で木箱ごと茶器を叩き割って見せる。
観客は大喜びで、これがまた江戸中で大評判になる。
それから数日後、両替屋の店先に例の侍が現れ、「遅くなったが、預けていた茶器を受け取りにきた」と言って、180両を差し出す。
金を受け取った主人はにっこり笑い、預かった紫紐の封印付の茶器を差し出す。
驚く侍、今度は自分の方が一杯食わされたのだ。
主人が侍に、「大切な茶碗です、落として割らないように」。
侍が「割りに合わんなぁ」で、サゲ。

小満んは、余計な修飾や過剰な表現を避け、飄々とした高座でこの物語の面白さを十分に引き出していた。
今のところ小満んしか演じてないようだが、裏を返せば小満ん位の力量がないと高座にはかけられないのだろう。

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2017/06/08

国立演芸場㋅上席(2017/6/7)

国立演芸場㋅上席7日目

前座・春風亭朝太郎『たらちね』
<  番組  >
春風亭朝之助『寄合酒』
春風亭柳朝『紙入れ』
マギー隆司『奇術』
隅田川馬石『堀の内』
夢月亭清麿『時の過ぎ行くままに』
─仲入り─
宝井琴調『鋳掛や松』
林家彦いち『権助魚』
鏡味仙三郎社中『太神楽』
柳家小里ん『木乃伊取り』

近ごろは落語ブームとやらで、寄席は平日の昼の部でもけっこう入りが良いようだが、ここ国立演芸場はどうやら埒外らしく、この日も3分の1程度の入りだった。
ユッタリ、ノンビリ、ボーっとしたい時は、平日のここ国立演芸場がお薦めです。後ろから2番目の席だと360度周囲に人がいないので、快適だった。欠点は快適過ぎて眠くなること。油断してるといつの間にか睡眠状態に陥ってる。
上席のトリは本来は一朝なので、前方には一門の若手が並ぶ。

朝太郎『たらちね』、師匠の前名を貰ったということは期待されているんだろろう。達者な前座だ。
朝之助『寄合酒』、早口になると聴き取りづらいことがあるので、要注意。
柳朝『紙入れ』、この人らしい色っぽい仕草を活かした高座だったが、時々素っ頓狂な声を上げるのはどうだろうか。
馬石『堀の内』、とぼけた味わいがこの人の特長だが、このネタとは語りのリズムが合っていない気がした。このネタを十八番としていた4代目圓遊の様にトントントンと調子よく語るネタだと思う。
清麿『時の過ぎ行くままに』、楽しみにしていたのだが、渋谷から横浜までの路線をどうするとか、ハードボイルドが・・・といった辺りで睡眠状態になってしまった。ちょっと退屈したこともある。
この人の師匠である5代目柳家つばめの高座を見たことがあるが、当時の落語家には珍しいインテリ臭があったと記憶している。そう言えば、この人も学校の先生みたいな風貌だ。
琴調『鋳掛や松』、商家に奉公に出された松五郎があまりに才気走り過ぎているからと店から暇を出され、父親の家業である鋳掛屋を継ぐが、世の中の貧富の不条理さを感じて悪事に向かうまで。
講談はやはりアウトローものが面白い。
彦いち『権助魚』、この日一番客席を沸かしていた。純朴なようでしたたかな権助の描き方が良く出来ていた。
小里ん『木乃伊取り』、小里んは何を演らせても上手い。地味な印象で損をしている感があるが、語りの確かさや人物描写の巧みさは一級品。このネタでもその手腕がいかんなく発揮されていた。

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2017/06/06

柳家さん喬「大人の落語」刊行記念落語会(2017/6/5)

「柳家さん喬『大人の落語』刊行記念落語会」
日時:2017年6月5日(月)19時
会場:深川江戸資料館
<  番組  >
柳家さん若『のめる』
柳家さん喬『締め込み』
『トーク』さん喬、ナビゲーター:亀山早苗
~仲入り~
柳家さん喬『雪の瀬川』

さん喬が初めて「大人の落語」という本を出版して、その記念落語会があった。タイトルの「大人」とは、男女関係を描いたネタを中心にして作品解説を行っている所から来たものだろう。
入り口で参加者全員に新刊が配られたが、本の見返しにさん喬本人による自筆のサインがあった。こういう所がいかにもこの人らしい。
「はじめに」の所で、さん喬は「芸論」を語るのが嫌いだと書いている。この点はアタシも同感で、芸人は自らの芸を通して観客に芸論を伝えるべきであって、芸論そのものを書いたり語ったりするのは筋違いだ。
だいたい、芸論を書く芸人にロクなのはいない。

巻末に「さん喬ひとり語り」という章があり、そこで弟子の喬太郎について触れているのでその一部を紹介しよう。
【ただ、喬太郎が二つ目になった頃からですかね、オレはこいつを一人前にしなかったら大変なことになると思いました。人間として、噺家としてのことはいろいろいうべきだろうけど、落語に関してはとにかく自由にしてやろう、好きなようにさせようと決めました。そうでなかったら、何十年にひとりというこの逸材を潰してしまうことになる。そんなことになったら、宝物を海に捨てるも同然ですからね。
(中略)
喬太郎は殻に閉じ込めたら絶対いい噺家にはなりません。私にとっても刺激になりますね。いつもこいつに負けるもんかと気持ちになれる。今だから本音をいえば、若い時は弟子の喬太郎に嫉妬していたところがあったと思う。それでも「オレは師匠なんだ」という気持ちが自分を支えていたのかもしれませんね。
私自身も若かったから、精神的にも経済的にも余裕がなくて、喬太郎については充分なことをしてやれなかったんじゃないかと今でも思うんですよ。例えば5番目の弟子が二つ目になったころ、袴を買ってやって、「あれ、喬太郎にはどうしたかな」と。だからときどき彼に聞きますよ。「オレ。おまえにこういうことした?」って。「していただきました」と言われるとほっとしますね。】
この一文を見ても、さん喬の人柄が分かる。
喬太郎はいい師匠に仕えた。

さん若『のめる』
久々だったが、上手くなった。口調が明解だし、自分の型を持ちつつあるような気がする。
来年には真打になるだろうが、もうその資格は備えている。

さん喬『締め込み』
さん喬といえば長講、人情噺というイメージが強いが、アタシはこの人の軽い滑稽噺の方が好みだ。
泥棒が忍び込んで荷物を風呂敷に包んだまでは良かったが、亭主が戻ってきて慌てて床下に潜り込む。この時に糠みそ桶の匂いが強く、「ここのかみさん、あんまり糠味噌をかき回さないな」というセリフがあるが、これは大事だ。
この女房はいわゆる糠味噌臭いタイプじゃないのだろう。だから風呂敷包みを見た亭主が、きっと他の男と浮気して駆け落ちするんだと邪推したのだ。
夫婦喧嘩のとばっちりで、煮え湯を浴びて飛び出してきた泥棒がとっさに仲裁に入ったまでは良かったが、自分が風呂敷包みをこしらえたと言いにくそうに説明しだす所が上手い。
珍しくサゲまで演じたが、好みを言わせて貰えば、亭主がお福を口説く時に出刃包丁を突きつけて「ウンか、出刃か、ウン出刃か」と迫ったというエピソードは入れて欲しかった。この亭主の乱暴で一途な性格がこの一言で表現されているからだ。

「トーク」コーナーは、本来は新刊のPRが主目的だったんだろうが、ナビゲーターを務めた書籍の編集者はあまり強くは推奨しない感じで、むしろさん喬の方がフォローしていた。
今年は入門して50周年、著書の初出版、紫綬褒章の受賞が重なった年だったが、今までで一番嬉しかったのは2014年の「国際交流基金賞」 受賞だと。確かにこの賞の過去の受章者の中では落語家は極めて稀だ。
「さん喬さんにとって落語とは?」という問いに、「生活の糧です」はご名答。

さん喬『雪の瀬川』
特に断ってはいなかったが、内容からすると『雪の瀬川(下)』ということになろう。
吉原の花魁・松葉屋瀬川に入れ込んで800両という大金を使い込み勘当された若旦那が、永代橋から川に飛び込もうと迷っている所に、以前は店の奉公人で今は紙屑屋をやっている忠蔵と云う者に出会って、忠蔵の家へ居候する事になった。
若旦那は一月ほど忠蔵の家へ厄介になっていたが、忠蔵の生活も貧しさに見かねて、瀬川宛に手紙を書く。忠蔵が直接瀬川に手紙を届ける事はできないので、幇間の揚場町の吾朝に手配してもらう。若旦那の身の上を心配していた瀬川は手紙を読んで泣き崩れる。
やがて瀬川から忠蔵へは20両という金と、若旦那には手紙の返事が届く。その手紙には、若旦那の元へ雨の日に会いに行くと書いてあった。
吉原の花魁が雨の日に会いに来ると云うのは、廓を抜け出すという事で、命がけだ。来ることはないと断言する忠蔵だが、若旦那は信じていた。
正月も明けて半ばごろ、朝から降り出した雪が積もった八つ(午前二時)頃に、一丁の駕籠が忠蔵の家の前へ止まり、中から侍のなりに変装して出てきたのは、瀬川だった。
二人は再開の喜びに震え固く抱き合う。
その後色々な経緯があって、二人は目出度く夫婦になる。
さん喬は情感溢れる静謐な語りで、それぞれの登場人物の心の動きを丁寧に描いて好演。
以前にも同じネタを聞いたことがあるが、この日は明らかに気合が入っていた。

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2017/06/03

花形演芸会スペシャル~受賞者の会~(2017/6/2) 

「花形演芸会スペシャル~受賞者の会~」
平成28年度「花形演芸大賞」の受賞者。
大賞  該当者なし
金賞  笑福亭たま(上方落語)
    三遊亭萬橘(落語)
    蜃気楼龍玉(落語)
    柳家小せん(落語) 
銀賞  江戸家小猫(ものまね)
    坂本頼光(活動写真弁士)
    神田松之丞(講談)
    宮田陽・昇(漫才)
    三笑亭夢丸(落語)

<  番組  >
前座・笑福亭希光『犬の目』
神田松之丞『和田平助』
三笑亭夢丸『のっぺらぼう』
宮田陽・昇『漫才』
柳家小せん『あくび指南』
坂本頼光『上映映画・五作ぢいさん』
三遊亭萬橘『宗論』
  ―仲入り―
平成28年度花形演芸大賞『贈賞式』
 独立行政法人日本芸術文化振興会理事長:茂木七左衞門
 司会:林家正蔵
ゲスト・林家正蔵『寄席の踊り・奴さん』
蜃気楼龍玉『親子酒』
江戸家小猫『ものまね』
笑福亭たま『ちしゃ医者』

国立演芸場恒例の花形演芸大賞、今年度は大賞こそ該当者がいなかったものの、落語以外に物真似や講談、漫才、活弁と幅広いジャンルから受賞者が選ばれた。

松之丞『和田平助』、この人の登場によって新たな講談ファンが増えているそうだ。落語や漫才に比べ人気が低迷していた感のある講釈の世界に新風が吹きこまれているのは喜ばしい。
昔、スケベな奴を和田平助(逆に読むと、スケベイダワ)なんて隠語でからかっていたが、実在の人物にいたんですね。
キザが着物を着ているような風情だが、これが女性ファンには堪らないんだろうね。

夢丸『のっぺらぼう』、当代の柳好が十八番としていてしばしば高座にかけているが、夢丸の高座は明るい芸風のせいかより滑稽味が増していた。大きく長い顔を活かせていたが、もう少しセリフの間に「溜め」が欲しい。

宮田陽・昇『漫才』、久々に見たが面白かった。もしかしたら、いま一番面白い東京の漫才師かも知れない。ボケとツッコミの「間」が絶妙だし、会話に不自然さがない。イギリスのEU離脱のこれからについて、「EUを離脱してdocomoに入る」のギャグは秀逸。

小せん『あくび指南』、こういうユッタリした芸はいいですね。カッタルイ暑い日にはピッタリだ。先生が教えるセリフが1回目と2回目で違っていたのはご愛嬌か。

頼光『上映映画・五作ぢいさん』、映画は太平洋戦争の真っ最中に作られたもので、国民に納税を推奨するストーリー。貧しいので納税を免除された五作ぢいさんが、村長に何とか税金を納めさせて欲しいと涙ながらに頼む。なんともはやクサイ演技で、いま見るとまるで喜劇だ。
頼光の名調子に乗ると、こういう映画でも十分に楽しめる。

萬橘『宗論』、この人の強みは存在自体の面白さ、つまりそこに居るだけで可笑しくなるのだ。どこまで本当なのか嘘なのか、もしかしたら全て嘘かも知れないマクラが楽しい。
ここに出てくるクリスチャンの男、父親を勝手にイボンヌと名付けたり、讃美歌を歌いだすが途中で歌詞を忘れハミングでごまかしたりと、実にいい加減。
もっとも父親の方だって浄土真宗の熱心な信者だと言ってるが、ついこの前までは真言宗だったのだから、似た者親子だ。

『贈賞式』では、恒例となっている茂木理事長の駄洒落、今回は「萬橘で満喫してください」。茂木さんてキッコーマンの出身だったんだ。どうりでショウユモナイ洒落を言うと思った。
受賞者の感想を聞くと、結構本気で賞を取りに行ってるし、受章は嬉しいようだ。先輩や後輩、同期の人の受賞を気にしていることも窺われた。
今年は大賞が該当者なしということだったが、笑福亭たまを大賞にしても良かったのではなかろうか。やはり頭一つ抜けていると思う。
この点だけが今回の審査結果への不満だ。

正蔵『寄席の踊り・奴さん』、時間がないということで踊りだけで下りたが、正蔵がこの日落語をやらなかったは正解!

龍玉『親子酒』、断酒していたのを久々に飲む酒の美味さよ、こういう表現はさすがだ。ただ、この人の滑稽噺は同じネタを何度も見てきた。持ちネタが少ないのだろうか。

小猫『ものまね』、物真似だけの技能を見れば、祖父や父を超えているのでは。トークも段々腕を上げてきた。

たま『ちしゃ医者』
このネタを理解する上で、当時の都会の下肥を無料で汲み取り、これを田舎に持って行って肥料として有料で売って、その差額が汲み取り屋の収入となったいた。農家から野菜を貰うと、汲み取り屋はこれを都会のお得意さんにサービスで渡す。これぞ究極のエコ。
もう一つ、ちしゃと医者の言葉掛け、これは『夏の医者』でもお馴染みですね。
村人が急患だということでヤブ医者を訪れ、村人と医者の下男が医者を駕籠を乗せて患者の元に向かう。処が患者は既に死亡したということで、村人は急いで帰ってしまう。残された医者と下男が困っていると、通りかかった百姓が片棒は私が担ぐと申し出て二人は安心するが、その代りに駕籠の中で肥の入った桶を医者が両腕で抱える始末。駕籠が揺れる度に、桶の肥がチャポンとはねて医者の顔にかかり、医者は閉口する。
百姓は肥を汲むために立ち寄った家の婆さんに、肥を汲むお礼に何を呉れるのかと尋ねられる。「いや。今日は何もない。駕籠に医者がおるだけじゃ。」と返事する。「医者」と「ちしゃ」と聞き間違えた婆さんは、駕籠の中の肥桶に手をつっこんで中身を周庵の顔につけてしまう。怒った医者が婆さんを蹴り倒す騒ぎとなる。倒れ込んだ婆さんに息子が駆け寄り、医者を駕籠から引きずり出して殴りかかる。
「これ、何しゃさんす。痛いがな。」と医者。
「おのれは何さらす!母に足かけくさって!」と怒る息子を医者の下男が
「足でよかった。手にかかったら、命がないで。」でサゲ。
全編これスカトロジーのネタだったが、たまの高座はひたすら明るく嫌味にならず、客席を沸かせていた。

受賞者それぞれが力量を発揮し、充実した会だった。

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2017/05/05

「芸協仲夏祭花形」(2017/5/4)

第28回大演芸まつり「芸協仲夏祭花形」
日時:2017年5月4日(木・祝)13:00
会場:国立演芸場
<  番組  >
前座:春雨や晴太『たらちね』
柳亭小痴楽『磯の鮑』
三遊亭遊雀『十徳』
三遊亭小遊三『浮世床(将棋、本)』
~仲入り~
『口上』高座下手から司会・遊雀、鯉昇、小遊三、日本演芸家連合会長・三遊亭金馬
瀧川鯉八『(不明)』
ナイツ『漫才』
瀧川鯉昇『ちりとてちん』

恒例の第28回大演芸まつり、5月4日は落語芸術協会が主催する「芸協仲夏祭花形」。タイトルには花形とあるが、昨年と違って若手ばかりという顔づけではなかった。小痴楽と鯉八は昨年に引き続き出演。

前座の晴太『たらちね』、達者な前座だ。面白い存在になるかも。

小痴楽『磯の鮑』
珍しいネタで、メクラの小せんが得意としていて、彦六の正蔵も演じていた。上方では『わさび茶屋』のタイトルで演じられる。
町内の若い衆にそそのかされて与太郎が吉原に行く気になり、女郎買いの師匠という人物を紹介される。師匠という相手の所を訪れると、元より冗談だと分かっていて、それでも若い頃の経験から吉原の作法みたいなものを与太郎に教える。勇躍、吉原に足を踏み入れる与太郎だが、やることなすことトンチンカン。強引に見世に上がって花魁と対面。師匠に教わった通りに「3年前からずっと花魁を思っていた、磯の鮑の片思いだよ」と言って花魁の肩をポンと叩く。処がそこは与太郎、「磯のワサビの片思い」って言いながら思いっきり花魁の頭を叩いた。
「ああ、痛いよ、涙が出るじゃないか」
「それじゃ、今のワサビが効いたか」
でサゲ。
与太郎のチグハグな姿と花魁に色気があり、いい出来だった。
後方の遊雀が枕で盛んに小痴楽をいじっていたが、それだけ注目されているという事だろう。

【訂正】5/17
『磯の鮑』について「しばらく途絶えていたが」と記述しましたが、トシ坊さんより指摘があり、柳家小里んが度々高座に掛けていたことが分かりました。当該部分を削除し、訂正いたします。

遊雀『十徳』
いつもの1000円札のマクラで客席を沸かせネタに。
最近の遊雀を見ると、高座を楽しんで演じている様に見える。演者の楽しさが客席にも伝わってくる。

小遊三『浮世床』
明解な語り口と明るい芸風がこの人の身上。この日は互いの屁で蝋燭の灯を消す「戦争ごっこ(屁力を争う)」から、じゃんけんで勝負を決める「碁」、「将棋」、「本」で受けていた。

『口上』で金馬が古いから演芸家連合会長をさせられていると言っていたが、実際はそうではあるまい。恐らくは政治力があるからだろう。亡くなった円蔵が、金馬の代わりにゴルフに行ったら相手は財界のお偉方だったと言っていた。

鯉八『(タイトルは不明)』
今回で3度目だが、松ちゃんとか、金平糖とか言う言葉が出ていた。
天才と呼ばれているそうで、一部に熱狂的ファンがいるとのこと。
全く面白さが分からないし、聴いていて不快でさえある。要は性に合わない訳で、こればかりは致し方ない。

ナイツ『漫才』
森友学園の籠池を見た時、誰かに似ているなと思ったが、そうだ、ナイツの塙宣之だった。この日もそれをネタにされていた。
スポーツ芸能ニュースをネタにした掛け合いだったが、以前ほどの面白味が感じられなかった。

鯉昇『ちりとてちん』
図らずも落協のトリと同じネタになったが、テンポの良さでは鯉昇に軍配をあげたい。後から来た寅が鯛の刺身を勧められた時、さん喬では一口だったが、鯉昇では完食。ケチを付けながらも全部平らげるという寅の根性を表すには、鯉昇の演じ方が正解だと思う。

全体として、落協より芸協の会の方が良かったと思う。

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2017/05/03

「落語協会 五月まつり」(2017/5/2)

第28回大演芸まつり「落語協会 五月まつり」
日時:2017年5月2日(火)13時
会場:国立演芸場
<  番組  >
前座・柳亭市若『子ほめ』
春風亭一之輔『人形買い(序)』
桃月庵白酒『浮世床(将棋、本)』
柳家小さん『親子酒』
柳亭市馬『厩火事』
~仲入り~
『口上』下手から司会・一之輔、白酒、さん喬、小さん、市馬、日本演芸家連合会長・三遊亭金馬
林家正楽『紙切り』
柳家さん喬『ちりとてちん』

毎年恒例の大演芸まつり、GWの谷間にあたる5月2日は「落語協会 五月まつり」だ。
この催しには仲入り後に『口上』が述べられることになっている。これもお約束になっているが、今年米寿を迎える金馬イジリ。今年はまるで追悼集会みたいな口上が並んだが、一つ興味深いことがあった。
それは、小さんが口上で突然、圓歌の死去に触れ「次を誰が継ぐのかもめるでしょうね」と言い出した。隣の席にいたさん喬が「ウチももめましたから」と呟く。これは6代目小さん襲名で一門がもめたことを思わず漏らしたのだろう。
すると、小さんがすかさず「さん喬さんが、もめさせたんだよ」と打ち返し、さん喬が慌てて「もめてない、もめてない」と手を振っていたのが可笑しかった。
続けて小さんが「そこいくと金馬さんとこはいいよ、息子さんの金時が金馬を継ぐのが決まってるんだから。金時が一日も早く金馬を襲名することを願っています」でシメた。
当代小さん襲名に関して一門で異論があっただろう事は、襲名披露公演に一門の幹部連中が冷たかったことから容易に推察できたが、はしなくもその一端が見えてしまったのだ。
こういう所がライブの面白さだ。

一之輔『人形買い(序)』
この人は子どもが出てくるネタをとりわけ得意としている。この『人形買い』『初天神』『藪入り』『子は鎹』など、いずれもこましゃくれた子どもが大活躍する。
人形屋の小僧が、店の若旦那と女中との仲を客の二人にしゃべる所を山場にして、相変わらず客席は大受け。
ただ、いつも前半で切っている様で、後半の出来はどうなのだろうか。

白酒『浮世床(将棋、本)』
前方の一之輔がネタを半分で切り上げたことに触れ、「さすが、プロフェッショナル!」とイジっていた。
一之輔の出現で最も大きな影響を受けたのは白酒ではなかろうか。だが、この人には廓噺という武器があり、女性を描かせれば一日の長がある。
この日は『浮世床』のうち、将棋と本。特に本を読む男の表情で客席を沸かせていた。白酒の顔芸が見どころ。

小さん『親子酒』
ここに来て、テンションがガクンと落ちる。客席の反応がそれを示していた。もちろん、ハイテンションだけが芸ではなが、つまらないのは困る。

市馬『厩火事』
今から20年ほど前に、未だ若手真打だった市馬の高座を見て、この人は上手くなると思ったものだ。
しかし、その後は足踏み状態が続いている。特に「歌入り」が受けるようになってから、成長がストップした様な気がする。
このネタも不出来というわけではないが、魅力に欠けるのだ。これなら、先日の正太郎の高座の方が良く出来ていた。

正楽『紙切り』
珍しくお題の「さん喬」で苦戦、作り直ししていた。特長を出すのが難しいのだろう。

さん喬『ちりとてちん』
この人はどちらかと言うと、大ネタや長講の人情噺より、こうした軽い滑稽噺の方が向いていると思う。
寄席でも浅い出番で短く切り上げる時の方が、トリの高座より良い。
ただ好みから言わせて貰えば、東京の噺家ならオリジナルの『酢豆腐』を掛けて欲しい。

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2017/04/28

鈴本演芸場4月下席・昼(2017/4/27)

鈴本演芸場4月下席昼の部・7日目

前座・春風亭朝太郎『真田小僧』
<  番組  >
金原亭馬久『元犬』
林家楽一『紙切り』
金原亭馬治『強情灸』
橘家圓太郎『浮世床(本)』
ホームラン『漫才』
金原亭世之介『堪忍袋』
柳家三三『お血脈(序)』
だるま食堂『コント』
春風亭一之輔『化け物使い』
─仲入り─
花渡家ちとせ『浪曲・大久保彦左衛門』
古今亭菊春『宮戸川』
花島世津子『奇術』
金原亭馬生『包丁』
出演者全員『高座舞』

寄席というのは、先ず楽しくなくてはいけない。
鈴本4月下席は、落語以外にも紙切り、漫才、コント、浪曲、奇術、そして大喜利は高座舞と、実に多彩なプログラムで楽しませてくれた。
なので個別に感想を述べるのは大した意味がないのだが、いちおう参考までに。

馬治『強情灸』、この人の高座で客席が温まってきた。惣領弟子だが師匠とは異なる芸風。腕に乗せた灸を我慢する姿が可笑しかった。

圓太郎『浮世床(本)』、市馬の代演だったが、この日は圓太郎が正解。姉川の合戦で「あね、あね、あねはカワラケ」、「じゃ、妹は毛深い?」。最前列のお嬢ちゃん、分かりました?

ホームラン『漫才』、勘太郎が郷ひろみと同じ年で、客席から「えー!」。たにしが62歳で、また「えー!」。たにしが藤木孝のツイストの物真似で受けていたが、藤木はなぜ人気絶頂で歌手を引退したのか、謎だ。

世之介『堪忍袋』、石原慎太郎が堪忍袋に「小池百合子のバカヤロー!」と吹き込んでいた。高座舞ではパンダのかぶり物で活躍。

三三『お血脈(序)』、前半の善光寺の由来までで切る。クスグリでは、物部尾輿(もりやのおとど)が「日本は神国であるから仏法はまかり成らぬと」と、まるで森さんみたいな事を言って。森さんといえば歴代首相の中で体が一番大きく、脳みそが一番小さいと。

だるま食堂『コント』、初めて見る人も多かったようだが、「ウー、サンバ」では手拍子したり腕を振り上げたりと、盛り上がっていた。
この人たちは寄席の高座でも違和感がない。

一之輔『化け物使い』、仲入りで高座を落ち着かせる。最近の一之輔は風格さえ感じる。短い時間に手際よくまとめる手腕はさすがだ。隠居がのっぺらぼうの女に好みの顔を描こうとするのは独自の演り方か。

菊春『宮戸川』、身体の動きが独特。お花に言い寄られて、避けようとして半七が座布団からはみ出す動きは初めて見た。そんなに嫌がらなくてもいいのに、替わって上げたいくらいだ。高座舞でも活躍。

世津子『奇術』、この人のネタであるカードを3枚客に引かせて、それぞれを切り抜いた紙の形で当てる技は見事だ。あれはどういうカラクリなんだろう?

馬生『包丁』、演じ手が少ないネタだが馬生は得意としている。常から頼まれた寅が清元の師匠を口説くが、頭をポカポカと殴られ、怒って悪だくみをみな喋る。真相を知った師匠が今度は寅と夫婦になるのを持ちかける所が山場で、師匠の品のある色気がよく出ていた。

大喜利の高座舞、上手い人も下手な人も、恰好いい人もそうでない人も、賑々しく舞い踊る姿に会場は大喜びだった。

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