寄席・落語

2017/08/16

夢一夜「一之輔・夢丸二人会」(2017/6/15)

「真夏の夢一夜~一之輔・夢丸二人会~」

日時:2017年8月15日(火)18:45
会場:日本橋社会教育会館ホール
<   番組   >
前座・春風亭きいち『湯屋番』
三笑亭夢丸『旅行日記』
春風亭一之輔『藪入り』
~仲入り~
春風亭一之輔『代書屋』
三笑亭夢丸『小桜』

9年目をむかえたこの会。
お盆の日に開催ということで「真夏の夢一夜」と銘打った「一之輔・夢丸二人会」、4席の演目を創作落語(既に古典になりつつあるものも含め)で揃えた。
趣向でこうなったのか、結果としてこうなったのかは分からない。

きいち『湯屋番』
才気走った前座だと思ったら、一之輔の弟子だ。納得。

夢丸『旅行日記』
紙切りの初代林家正楽の新作で、5代目今輔の十八番。
最近では昨年亡くなった柳家喜多八が得意としていて、寄席の浅い出番などでよく掛けていた。
この宿の料理が美味いからと友人を連れて来たは良いが、5年前のは死んだ鶏を、3年前のは豚コレラで死んだ豚を料理したものだと宿の主から聞かされビックリ仰天。友人が即刻ここを出ようというので理由を訊くと、奥の部屋でこの家の婆さんが患って唸っていたで、サゲ。
夢丸の高座は、宿の主人のトボケタ味わいが出ていて、テンポも良かった。

一之輔『藪入り』
明治期に初代小せんが作った『鼠の懸賞』を、3代目金馬が人情噺風に改作し今の形になった。
アタシはどうも儒教色や宗教色の強い噺は苦手で、このネタをあまり好まない。
一之輔の高座は、そうした色を薄くしていたし、お涙頂戴風な箇所も軽く流していて、良かった。
この日も膝の痛みの関係で釈台を置いての高座だったが、使っているのが釈台だけに、段々「板についてきた」ようだ。

一之輔『代書屋』
4代目桂米團治の昭和10年の作。
2日続けて同じネタ、この人にはよくあることだが、少し内容を変えていた。前日あれだけ受けていたのだが、男の職歴を一つ増やしていたのと、代書屋が小岩の出身であることが付加されていた。
このネタは釈台が合うので、今後も各所で演じられるだろう。

夢丸『小桜』
初代夢丸の「夢丸新江戸噺」で、公募から選ばれた作品。当代は今年ネタ下ろしした様だ。
道楽がこうじて勘当になった若旦那。通い詰めた相手の花魁・小桜、今は亡くなっていて幽霊になっているが、その幽霊と所帯を持つことになる。
若旦那は店の金を使い込んでいて、借金が返せれば勘当は解かれるのだ。
ある日、身投げしようとする娘を助けると謝礼が貰えた。これで金を貯めようと、幽霊の小桜の力を借りて、せっせと身投げを見つけては謝礼をせしめる。
もう少しで借金が返せるところまで来たが、今度の相手は金がなくて身投げしようという男。仕方なく、若旦那は有り金をはたいて男に渡してしまう。
その事が本家に伝わり、無事勘当が解けるが、幽霊の小桜は去っていってしまう。
熱演だったが、もう少し語りに情緒が欲しいと思った。

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2017/08/15

#7東京四派精鋭そろい踏みの会(2017/8/14)

第七回「東京四派精鋭そろい踏みの会」
日時:2017年8月14日(月)14:00
会場:横浜にぎわい座 芸能ホール
<   番組   >
前座・三遊亭じゃんけん『子ほめ』
春風亭一之輔『代書屋』
林家木久蔵『看板のピン』
立川生志『お菊の皿』
~仲入り~
三遊亭兼好『粗忽長屋』
三遊亭遊雀『蛙茶番』
『大喜利』下手から司会の生志、兼好、一之輔、木久蔵、遊雀

毎年、この時期恒例の四派精鋭(+α)の会。今年も賑々しく開催。
4人の演者(木久蔵の時は寝ていた)それぞれに面白かった。

ベストは兼好『粗忽長屋』。
熊のアイデンティティの喪失ぶりと、行き倒れの監視をしている中に醒めた人物を配していたのが効果的だった。

一之輔が左足の膝を痛めていて正座ができず、この日は釈台を置いての高座だった。
座って演じる落語家にとって、膝と腰に痛みは職業病のようだ。痛みを抱えている人は座布団に座るときと立つときに変な恰好をするので、直ぐ分かる。
噺家は修業の一つとして踊りを習ったりするが、あれが腰や膝の病の予防に効果的なのでは。
高座の座布団に綺麗に座ったり立ったりするのも芸のうち。
話芸を磨くのも大事だが、そうした鍛錬も大事だ。
ネタは、どうやら権太楼がベースの様だが、例によって他の人にいいとこを採り入れ、自身のギャグを加えて仕上げていた。

生志は、マクラの時事放談が相変わらず愉快だ。稲田朋美の防衛相離任式をとりあげていたが、一体どのツラ下げてと言いたくなる。まさに鉄面皮である。

遊雀は、バレ噺を楽しそうに演じていた。吉公のイチモツを見せられた海苔屋の婆さんのセリフ、「死んだ亭主のものより立派」が可笑しかった。

『大喜利』もくだらないと言ってしまえばそれまでだが、これはお遊びだからね。

今日はこの辺で。

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2017/08/12

「江戸落語・上方落語聴き比べの会~上方編」(2017/8/11)

横浜にぎわい座 第五十四回 上方落語会「江戸落語・上方落語聴き比べの会~上方編」
日時:2017年8月11日(金)14時
会場:横浜にぎわい座 芸能ホール
<   番組   >
開口一番・林家愛染『動物園』
笑福亭べ瓶『いらち俥』
笑福亭三喬『蛇含草』
《仲入り》
桂米左『骨釣り』
桂塩鯛『百人坊主』

同じネタを江戸落語と上方落語とで聴き比べするという趣向の上方編。
7月1日に行われた東京編と比べ、結論からいえば上方の圧勝だ。ネタ自身の面白さに加え、演者の力量、演じう上での工夫といった総合力の強みだ。
4席全て楽しめた。
因みに、上方→東京のネタ比較は以下の通り。
「いらち俥」→「反対車」
「蛇含草」→「そば清」
「骨釣り」→「野ざらし」
「百人坊主」→「大山詣り」

べ瓶『いらち俥』
鶴瓶の弟子で、師匠が仕事の関係上東京を拠点としているので、当人も東京住まいとか。
上方の噺家で東京の拠点を移している人は他にもいるが、それだけ東京のマーケットサイズが大きいという事だろう。
マクラで、東京と大阪の人の気質の違いを語り、ここで客席を掴んでいた。
この日の4席の中では、東西の違いが最も少ない(「いらち」とは、落ち着きのないの意)。従って、見せ方やギャグもほぼ共通だ。
べ瓶は、韋駄天の寅が高速で走る様子を客の仕草で上手く見せて爆笑させていた。
演者の魅力として、話芸、演者の華(オーラ、明るさ、色気、サービス精神など)、その他に演者の勢いというのがある。
この日のべ瓶の高座は、その勢いで魅せていた。

三喬『蛇含草』
今秋、師匠の名跡である7代目笑福亭松喬を襲名する。
この人には数年前から注目していて、東京で公演がある時は選んで見て来たので襲名は嬉しい。師匠とはだいぶ芸風は違うが、新しい松喬を作り上げて欲しい。
『蛇含草』 は3代目桂三木助が得意としていたし(ナマの高座を見ている)、東京でも演じられるので、筋はご存知の方も多いだろう。
この噺は餅を焼きながら食べる仕草が中心で、曲食いも含めていかにリアルに、かつ美味そうに食べて見せるかが腕の見せ所だ。
上に放り上げた餅をキャッチして、阪神の下手な外野手じゃこうはいかないなどと言いながら、気持ち良さそうに演じて客席を沸かせていた。

米左『骨釣り』
初見だったが、師匠の芸を忠実に受け継いでいる印象を受けた。
幇間の繁八、若旦那のお供で木津川で魚釣りをしていると、骸骨を釣り上げてしまう。若旦那の勧めで骸骨を寺に手向け回向をしてもらう。その深夜、繁八の家を訪れる者がある。戸の隙間から中に入ってきたのは、昼間の骸骨の幽霊。
事情を聞けば、もとは大店の娘に生まれたが両親と死に別れ店も人手に渡り、親類からいやな縁談を押しつけられ、木津川に身を投げたのだという。今日で浮かぶことができたので、せめてものお礼にお寝間のお伽などという。幽霊のあまりの美しさに喜んだ繁八、盃を交わして二人夜通しする。
翌朝、隣室の喜いやんが繁八を訪れ昨夜の経緯を聞いて、魚釣りとはそんな得なことがあるのかと釣道具を揃え、大川へ骨つりに行く。
いくら釣っても魚ばかり、諦めかけて中洲に小便に行き芦をかき分け進むと、砂地の盛り上がっている所がある。見ると骸骨が半分地面から出ていた。喜いやんは早速骨を掘り出し、近所の寺で回向してもらう。
その夜、喜いやんは女がいま来るか来るかと待っていると、いきなりの大声。
「我、京都三条河原にて処刑され、五体はバラバラに切りほどかれ、流れ流れて大川の中洲に醜きむくろをさらす。あらありがたの今日のご回向。せめて御礼に参上なし、閏中のお伽なとつかまつらん。」
「いやや、いやや、わたい。あんたみたいな人のお伽。男同士で何すんねんな。しかし、ものすごい人やなあ。あんた一体、どなただんねん」
「石川五右衛門じゃ」
「ああ、それで釜割りに来たんか。」
でサゲ。
『野ざらし』では娘の代わりに幇間が来るが、こちらは石川五右衛門で、さらにギャップが大きい。
サゲが下品だが、こえもご愛嬌。
米左の口演は、ハメモノをバックにして、メリハリの利いた高座だった。

塩鯛『百人坊主』
前名の桂都丸時代に聴いているが、襲名後は初めて。
長屋では毎年恒例のお伊勢参りの準備にかかっているが、先達を務める寺の和尚が旅の途中で起きる喧嘩を嫌って今年は行かないと言い出す。
困った村人たちは相談の上、一行に「腹立てん講」と名付け、「もし腹を立てたら五貫文の罰金、そして所払いにされても文句は言えない」という決めごとをして和尚を説得し、ようやく出発。
先ず、大阪から三十石で京都に向かうが、船中で皆が一口ずつ飲む寝酒を源太という男がみんなの酒を勝手に飲んでしまう。
怒る仲間に源太は、怒れば罰金と所払いだと脅して、酔っぱらって寝込んでしまう。
渋々従ったが腹の虫が収まらない仲間たちは、その夜船で寝込んでいる源太の頭を剃りあげ、坊主にしてしまう。
翌朝、坊主にされたのを気が付いた源太は怒り狂うが、怒れば罰金と所払いだと聞いて黙り込む。源太は、坊主がお伊勢さんに行くと災いがあるからと、ここから引き返し自宅に戻ると言って、一行と別れる。
2日後に家に戻った源太は、伊勢参りに出かけた男たちの女房を寺に集めて、一行が近江八景の船見物に出かけて時化にあい船が転覆、全員が死亡し自分だけ助かった。これから仲間の回向のために高野山に上ると言って、坊主頭を見せる。
これを聞いた長屋の女房連中、亭主を弔いために私も私もと、全員が坊主頭になってしまう。
帰って来た亭主たちも最初は腹を立てたが、それならいっそ俺たちもと、終いには村人全員が坊主頭になる。
一人、髪の毛がフサフサしていた。誰かと思ったら、寺の和尚だった。
このネタだけは後半にやや無理があり、『大山詣り』の方がすっきりしている。
この噺では、源太が2日時間を潰してから帰宅し、船の遭難の作り話をするのだが、これは道理にかなっている。真っすぐ帰宅したなら、近江八景の船遊びと日程上の整合性が取れないからだ。
ここは逆に『大山詣り』の方が、無理がある。
塩鯛の高座は、当時の伊勢参りの風情や、源太の人物設定を中心に、面白く聴かせていた。

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2017/08/09

喬太郎の三題噺、お題は「輪廻転生・ダイビング・口内炎」(2017/8/8)

「鈴本演芸場8月上席夜の部・8日目」

前座・柳亭市若『転失気』
<   番組   >
翁家社中『太神楽曲芸』
柳家喬之助『置き泥』
喬太郎&喬之助『お題取り』
古今亭菊之丞『悋気の火の玉』
アサダ二世『奇術』
入船亭扇辰『麻のれん』
柳家三三『磯の鮑』
─仲入り─
ホンキートンク『漫才』
入船亭扇遊『狸賽』
林家二楽『紙切り』
柳家喬太郎『三題噺』

鈴本演芸場8月上席夜の部は、特別企画公演『柳家喬太郎 三題噺地獄』。
喬太郎が仲入り前に客席からお題を三つ貰って、そのお題を織り込んだ創作落語をトリで演じるという趣向。

以前のある落語会で喬太郎が、ミスしたお詫びと客席から6つのネタを出して貰い、『初天神―反対俥―粗忽長屋―黄金餅―らくだ―寝床』を即席でつなげ、1本の噺にまとめ上げたことがあった。「落語チャンチャカチャン」だ。
その才能に舌を巻いた経験があるので、彼にとってはそう難しいことではないのかも知れない。
だが、今回は約2時間で40分間という長講を作り上げねばならないから、けっこう難題だ。

こういう所には「落語通」は、先ずお出でにならないでしょう。「あざとい」かなんかで。
でも、落語にはこうした遊び心も必要なんです。
三題噺は江戸落語の祖といわれる初代三笑亭可楽が演じていたし、中興の祖である三遊亭圓朝もしばしば高座で演じ、いくつもの名作を残している。
10日間の前売りはだいぶ前に完売しており、アタシ同様のミーちゃんハーちゃん一杯集めてこの日も大勢の立ち見の出る盛況ぶり。

そうした企画なので、他の演者は割愛し、仲入りと三題噺の紹介だけに絞ることにする。

喬太郎&喬之助『お題取り』
お題のルールの説明があった。
①前に出たお題は使わない。昨日までの7日間で採用したお題・27ヶが一覧で示される。
②会場から先ず10のお題を出して貰う、1から10までの番号をふる。
③箱の中に1から10まで番号が書いてるボールが入っていて、そこから喬太郎が3つ引き当てる。
④番号に該当した三題がこの日のお題で、「輪廻転生・ダイビング・口内炎」。
⑤加えて、日替わりの仲入り(この日は三三)の出演者自身、あるいは演じるネタを採り入れる。だから正確には「四題噺」ということになろうか。

三三『磯の鮑』
熊が与太郎に、女郎買いは楽しんだ上に金が儲かるからと吹き込み、「女郎買いの師匠」を紹介すると言って紹介状を持たせる。
断られても諦めず粘れと命じられた与太郎。
元より「女郎買いの師匠」なんているわけがないが、相手の男も与太郎の熱心さと粘りに負け、吉原のしきたりや女の口説き方を与太郎に教える。
口説きのテクニックは、花魁に「お前は私を知るまいが、私はお前を知っている。前からあがろうあがろうと思ってやっとあがることができた。これが本当の磯の鮑(アワビ)の片思いだよ」と言って相手の膝をつねるというのだ。
勇躍、吉原に乗り込んだ与太郎は若い衆を振り切って2階に上がり、花魁の部屋に入って教わった通りに口説きに取り掛かる。
ところが最後の「磯の鮑」が出てこない。
「ああ、そうだ、ワサビ、伊豆のワサビの片思いだよ」と言って、花魁の膝を思いっきりつねる。
「おお、痛い、そんなにつねると涙が出る」
「えっ、涙が出る・・・今のワサビが効いたんだろう」でサゲ。
他愛ないストーリーだが、三三の高座は持ち前のスピード感と、脳の中の配線が狂って弾けてしまったような与太郎の造形の巧みさで、客席を爆笑させていた。
今や若手は、一と三の時代である。

喬太郎『三題噺』
学校寄席というのがあるが、近ごろではワークショップと称して、芸人が使途に教えたことを、期日になって生徒がその芸を披露するという企画があるそうだ。
ある高校に出向いた講談師が、地元に伝わるという物語を読みだす。
時は幕末、この藩でも黒船の襲来に備えて殿が家中の家来たちに水連の稽古を命じる。二人の若い武士が鍛錬に励むが、その内の一人がある娘と恋仲になっている。もう一人のその娘に横恋慕をしていて、付け文が元でこれが家中に広まる。
こうした事は時節柄好ましくないと、家老が二人に水連で決着せよと命じる。具体的は岬から飛び込み(「ダイビング」)、沖の岩まで早く泳ぎついた者が勝者となり、娘を嫁にできるという。
二人の侍は海に飛びこみ岩を目指すが、娘を恋仲だった侍は海中に沈んだまま遂に上がって来なかった。
講談を初めて聴いた高校生たちは、話しの面白さと、自分たちの郷土にこんな言い伝えがあったことに感激する。
その中の男子は、ある女子と恋仲になって付き合っていたが、もう一人の男子がその女子に思いを寄せていて、このままでは「磯の鮑の片思い」に終わってしまう。この事がメールの誤信から噂が校内中に広まってしまう。
そこで先ほど聴いた講談を思い出し、郷土の言い伝えのこれこそ「輪廻転生」だと考えた二人は、学校のプールの飛び込み台からダイビングして、決着しようという事になった。
この騒ぎを聞きつけたかの講談師、「いや、あの話は嘘だった」と止めるが、二人は耳を貸そうとしないので・・・。
終いは「家老」と「過労」の地口でサゲた。
「口内炎」には苦労したようだが、他のお題と三三のネタ「磯の鮑」はそう不自然でなく噺の中に組み込まれていた。
江戸末期の武士の話しと高校生の文化活動を、男女3人の恋模様で連結させるという強引な試みだったが、短時間で良くまとめたと思う。
喬太郎の語る講談があまり上手くなかったのはご愛嬌。

今日8月9日、長崎原爆忌。

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2017/08/06

落語は趣味じゃない

他人から訊かれて返事に困る質問に「趣味はなんですか?」がある。
「そうですねぇ・・・、う~ん、特に・・無いですかね」なんてアイマイな答えになってしまう。
何かスポーツをやるわけじゃないし、絵をかいたり楽器をひくことも出来ない。
詩や短歌(啖呵なら切れるが)、俳句は、才能がないからダメ。
読書も、若い頃は趣味だといえたが、今はぜんぜん。

当ブログを読んでくださる方だと、落語が趣味では?と思われる向きもあるかもしれないが、これとて趣味とはほど遠い。
確かに寄席や落語会には出かけているが、それだけだ。
落語が趣味だという方を見ていると、落語関係の書籍や記事に目を通し、TVやラジオの演芸番組をチェックし、噺家のブログやホームページ、SNSで最新の情報を得たりされているが、私はやらない。
落語を中心とした月刊誌「東京かわら版」というのがあるが、一度も読んだことがない。
噺家と挨拶したこも、会話したこともない。
高座を離れた落語家には興味がない。
こうなると、落語が好きなのかどうかも疑わしい。
ただひたすら、ナマの高座を聴きにゆくのが好きなのだ。

別のブログで旅行記を書いているが、旅行も趣味とはいえない。
気が向いた時にアチコチ出かけるだけで、それが永年積みかさねてきたから回数だけは増えた。
旅行好きな人は、毎月のように出かける人も少なくない。
ツアーなどでご一緒する方のなかには、事前に行く先の情報を調べてくる方がいるが、私の場合はそうした準備は一切しない。
海外のツアーでは、テーマや目標を持って旅したり、珍しい品物をコレクションしたり、撮影した写真で個展を開いたりする方もいるが、そういう事にも無縁だ。

それでも落語会や芝居に行った感想やら旅行記をブログにアップしているのだから、強いていうならばブログが趣味ということにでもなろうか。

今日8月6日、広島原爆忌。

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2017/08/04

「正太郎・小辰 二人会」(2017/8/3)

「新・春に船」
日時:2017年8月3日(木)18:45
会場:内幸町ホール
<  番組  >
前座・春風亭朝太郎『一目上り』
春風亭正太郎『強情灸』
入船亭小辰『お初徳兵衛』*
~仲入り~
入船亭小辰『普段の袴』
春風亭正太郎『船徳』*
(*ネタ出し)

次代を担うであろう若手の二人会。
客の入りが悪い。
実力は十分だが、人気という点で未だこの会場を一杯にするには力が足りないということか。客の年齢層も高く、興行面では若い人をいかに惹きつけるかが課題だろう。
この会は毎回、中身は充実しているので、多くの方に足を運んでもらいたい。

前座の朝太郎『一目上り』、今秋二ツ目になるそうだ。達者だが、もっと語りにメリハリが欲しい。

正太郎『強情灸』
昼間に湯島周辺の商店街を対象に、落協恒例の謝楽祭のポスター貼りしたそうだ。喬太郎がアタマだったようだが、店に入ってゆくと「あんた、誰?」と訊かれるケースもあり、まだまだ落語を知らない人が多いんだなと。
喬太郎も、暑いのにご苦労なことだ。
このネタ、志ん生と先代小さんという大看板が得意としていたが、男が兄いの所へ来るまでの経緯が違う。志ん生の方は熱い灸をすえてきた男が自慢話をする所から始まるが、小さんの方は男が身体の具合が悪いからと自宅で灸をすえてきた所から始まる。
正太郎は、マクラの熱い湯に我慢しながら入る場面を含め、ほぼ志ん生の型だった。粋がっていた兄いが、熱さを我慢して苦悶する所が見せ場を正太郎は表情変化で見せていた。
この人は、顔の筋肉が良く動く。

小辰『お初徳兵衛』
この日、正太郎が後席で演じる『船徳』は、初代志ん生作の人情噺『お初徳兵衛浮名桟橋』を初代圓遊がパロディ化し1席にまとめたもの。
この日はオリジナルの噺とパロディ化した噺の両方が聴けるという趣向だ。
志ん生や息子の馬生が得意としていたが、小辰は雲助から伝わったのではと推察される。
先ず船頭になった徳が、まだ見習いの頃に猪牙舟で客をしくじったというエピソードを入れていた。
四万六千日の最中、油屋の九平次が得意先の天満屋とお初を連れて浅草観音にお参りをしようと徳の船で向かう。途中て天満屋が吉原で昼遊びをして夜は柳橋に繰り出そうと提案したことから、船を吉原近くにつけることになった。しかし、吉原に外の芸者を連れてゆくのはご法度。
仕方なくお初一人は柳橋へ戻ることになった。
一人船頭一人芸者は避けるのが習いだが、徳もお初も構わないということで、二人は柳橋に向かう。
途中、急な大雨になり仕方なく首尾の松の下で船をもやって雨宿りする。
船端で雨に濡れる徳を見て、お初は船中に招き入れる。
そこでお初の身の上話しが始まり、お初がまだ子供の頃に徳兵衛の長屋に住み、その頃から徳に憧れていた。
徳が柳橋で芸者と遊んでいると聞いたお初は、徳兵衛会いたさに柳橋の芸者になったこと、男嫌いで通っているのも徳兵衛に操を立ててのことだったなどが語られる。
そして、今日こそは思いを遂げてくれと徳に迫るお初(ウラヤマシイ!)。
そこで近くに落雷があり、思わずお初を抱きしめる徳兵衛・・・。
小辰の高座はしっとりとした味わいがあって、良い出来だった。お初の純でひたむきな風情も良かった。
惜しむらくは、お初にもっと色気があったらと。これはもう少し女性修業が必要なのかも。

小辰『普段の袴』
このネタ、近ごろでは一之輔がしばしば高座にかけていて、どうもその印象が強いので、小辰のような正規品を聴くと逆に新鮮に聞こえる。
真っ直ぐに語ってちゃんと笑いが取れるのが小辰の強み。
敢えて注文するとすれば、もう少し荒々しさというか若さが欲しい。あまりに納まりがが良すぎると、老成したような感じを受けるかも知れないからだ。

正太郎『船徳』
仲入りの小辰にあてつける様に思いっきり弾けた高座だった。
徳は新米のくせに、やたら恰好だけはつけたがる。竿を頭の上で振り回しながら左右交互に漕いでみたり、芸者を見つけると乙に気取ってみたり。
石垣に船をつけて客から叱られると逆ギレして居直り、反対に客を謝らせる。
とにかく傍若無人なのだ。
それでもどこか憎めないのは、正太郎自身のキャラのせいかも。
船中の二人の客の様子も上手に描いて好演。

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2017/07/09

#6南光・南天 ふたり会(2017/7/8)

第六回「南光・南天 ふたり会」
日時:2017年7月08日(土)14時
会場:横浜にぎわい座 芸能ホール
<  番組  >
『挨拶』南光、南天
桂南天『替り目』
桂南光『天狗裁き』
~仲入り~
桂南天『代書』
桂南光『蔵丁稚』

横浜にぎわい座での、桂南光、南天の師弟による二人会。ここ3年ほど、この会に来ている。
二人とも上方落語協会に入っていないので、南天の略歴を紹介する。
1991年3月 桂べかこ(現 南光)に入門 芸名は桂こごろう
2012年4月 二代目桂南天を襲名
南光の一番弟子、と言っても南光は同時期に弟子は一人しか取らない。だから南天は先輩の弟子が廃業するのを待って、南光に入門した。
アタシは桂こごろう時代の高座を観ていて、ナマの高座は師匠の方が後からだ。

『挨拶』南光、南天
冒頭に二人のトーク(殆ど南光が一人でしゃべる)が定番となっていて、これを目当てに来る方もいるようだ。
今回は療養中の桂ざこばの近況が主な話題で、早期の手術が上手くいって、とても元気だそうだ。現在はリハビリ中で、未だ特定の言葉がスムースに出ないことがあるとのことで、復帰はもう少し先になりそう。
南光が出演しているNHK「生活笑百科」で共演している笑福亭仁鶴は、奥さんを失くされて体調不良で休んでいたが、元気になって番組にも復帰が近いとのこと。
「ここだけ」の裏話も多かったが、もったいないので教えてあげない。

南天『替り目』
上方では『銚子の替り目』というタイトルでも演じられているように、噺の後半で酔った亭主が夜泣きうどん屋に酒の燗をつけさせるくだりがあるが、南天の高座は後半をカットしていた。
酒飲みの小噺からネタに入り、夫婦の会話を中心にしていた。この亭主はいちいち女房に突っかかったり絡んだりするのだが、これがまるで子供が母親に甘えるよう。おでんを買いに行かせた亭主が、独白で女房への感謝の言葉を並べるが、心情がよく表れていた。

南光『天狗裁き』
南光がマクラでも触れていたが、芸能人の浮気だの不倫だの、それのどこに問題があるのかさっぱり分からない。芸能人というのは「あちら側の人」であって、「こちら側」の我々とは違う倫理観で動いているわけで、だからくっ付こうが離れようが相手にしなけりゃいいし、放っておきゃいいんだ。
隣家の男も、大家も、奉行も、天狗までもが、男の夢がどんな内容だったかが興味津々なのだ。きっと女房には話せない色っぽい夢なんだろうと想像していたに違いない。多分、男なら一度や二度は経験があるだろうから、共感を呼ぶのだと思う。
南光の高座は、大師匠の米朝の演出に沿ったもので、人物の演じ分けもきっちり出来ていて面白く聴かせていた。

南天『代書』
このネタ、多くの上方噺家が手掛けているが、やはり代表的な演者というと3代目春団治と桂枝雀になるだろう。比べて大きく異なるのは、男が代書屋から生まれた年を訊かれたときだ。枝雀の方は男の父親が臨終の際に「お前は〇〇歳だぞ」と言って死んでゆくというのに対し、春団治では昭和3年の御大典の時に大人の仲間入りしたことが基準となる。この客の男にとって、全ての基準が提灯行列の年という設定だ。そのくせ、初めて女郎買いにいった日は年月日まで憶えているのだ。
南天の高座は春団治スタイルだった。
判子まで隣の家から借りて来る暴走気味の客の男と、それを呆れながら受け答えする代書屋との珍妙な掛け合いを巧みに描いていて好演。
この日の南天の高座は、なにか一皮むけた様な印象を受けた。

南光『蔵丁稚』
前半の使いに行って遅くなった丁稚の言い訳と主人との滑稽な掛け合いから、一転して丁稚が蔵に入ってからは芝居噺仕立てとなる。
南光は芝居好きを自任するだけあって、四段目の判官切腹の場を丁寧に演じていた。
なお、マクラで劇団四季と宝塚は肌に合わないと語っていたが、同感。

東京に比べ上方の噺家は、とにかく客を喜ばせようと必死に努力する。そこが魅力だ。

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2017/07/06

国立演芸場・芸協新真打昇進披露(2017/7/5)

国立演芸場7月上席・中日

前座・笑福亭希光『平林』
<  番組  > 
笑福亭羽光『青菜』
笑福亭里光『猫と金魚』
北見伸『奇術』
三遊亭春馬『猿後家』
三笑亭夢太朗『たがや』
~仲入り~
『真打昇進披露口上』、下手より司会の里光、春馬、鯉昇、和光、鶴光、夢太朗
瀧川鯉昇『千早ふる』
笑福亭鶴光『ぜんざい公社』
ボンボンブラザース『太神楽曲芸]
笑福亭和光『七度狐』

国立の7月上席は落語芸術協会の新真打昇進披露興行で、その中日に。この日は二人の昇進者のうち、笑福亭和光の昇進を披露。
もっとも、5月から始まった昇進披露興行だけに、あまり新鮮さはない。
和光の芸歴は以下の通り。
平成14年2月 社会人生活を経て笑福亭鶴光に入門
平成14年7月 前座で「和光」となる
平成19年4月 二ツ目昇進
平成29年5月 真打昇進
前座名のままの真打昇進は珍しい。それだけ和光というのは良い名前だといえる。

師匠によれば、関東で生まれ育った上方落語家は極めて珍しいそうだ。師匠から見れば訛りのある関西弁で、それがまた味になっているとのこと。
上方の噺家が東京で興行を打つとき、前座や二つ目にしばしば鶴光門下の人を使う。従って、和光を含めこの日の一門の弟子たちも何度かお馴染みだ。
鶴光一門のように、上方落語を東京の寄席で演じるというのは、どんな気分だろうか。そのまま演じても、東京の観客にはいま一つピンとこない事もあるだろう。他の噺家とは異なった苦労があるのではないかと推察する。
この日もトリの和光以外の4人は、いずれも東西で演じているネタか、元々が東京のネタを選んでいた。

客席の入りは五分以下で、相変わらず良くない。顔づけからしても他の寄席に比べ遜色ないのだが、場所が悪いせいだろうか。
アタシは、ここはロビーで持参の昼食をゆっくり食べられるし、後方の席なら一列に一人だけといった贅沢が味わえるので好きだ。あんまり快適過ぎて、この日も居眠りをしてしまったが。

感想をいくつか。

春馬『猿後家』、顔が猿に似てるので、サルという言葉を聞くと途端にヒステリーを起こす大家の後家さんの噺だが、春馬の高座ではサルを連想するものもアウトとしていた。例えば「太鼓」
太鼓→太閤秀吉→猿
でアウト。こんな感じのギャグが一杯だった。
威勢のいい噺家だね。

夢太朗『たがや』、夏季の定番ネタ。たがやに立ち向かった殿様が、周囲の観衆から石をぶつけられ、その隙にたがやが槍の先を切り落とすという演じ方だった。両国橋の花火風景を描いていたら、もっと季節感が出たのでは。

鯉昇『千早ふる』、竜田川がモンゴルから来た相撲取りで、千早に振られてからモンゴルに帰国し豆腐屋になる。千早はウランバートルの金持ちの愛人になってモンゴルに来るのだが、捨てられて放浪の末、竜田川の店先に来てオカラを求めるという雄大な筋書き。果たしてモンゴルに豆腐屋があるのだろうか。30年以上前のエジプトのカイロにある日本料理屋に冷奴があったから、モンゴルにだってきっとあるさ。

鶴光『ぜんざい公社』、元々が上方ネタなせいか、上方落語で演じる方が面白い。かつて桂枝雀が弟子に鶴光の話芸をほめていたそうだが、言われるだけの技量がある。

和光『七度狐』、上方落語の「東の旅」の中でも、最も頻繁に演じられているネタで、米朝を始め名演が揃っている。東京でもこのタイトルで演じられている。和光の高座は、発端から尼寺つぶしまでを演じた。熱演だったが、ちょっと固かったか。ネタの面白さは十分に引き出していたと思う。

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2017/07/02

江戸落語、上方落語聴き比べ~東京編(2017/7/1)

第百七十八回にぎわい座名作落語の夕べ「江戸落語、上方落語聴き比べ~東京四派出演」
日時:2017年7月1日(土)18時
会場:横浜にぎわい座 芸能ホール
<  番組  >
三遊亭兼好『野ざらし』
三遊亭金時『大山詣り』
~仲入り~
立川生志『反対車』
桂小南治『そば清』

開演時間を勝手に19時と思い込み、18時35分に悠々と会場に着いたら、もうロビーのモニターに兼好の姿があるではないか。
開演時間を1時間間違えていたのだ。
先日の落語会では、会場が鈴本だったのに勝手に国立と思い込んで、それもモギリに指摘されて初めて気が付く始末。
もうボケが始まったか!

今月のにぎわい座「名作落語の夕べ」は、同じネタの東西聞き比べ東京編。上方編は8月11日の「上方落語会」で披露される。
東西のネタの比較は以下の通り。
  東京    上方
「野ざらし」←「骨釣り」
「大山詣り」←「百人坊主」
「反対車」← 「いらち俥」
「そば清」← 「蛇含草」
いずれも、元は上方の演目を東京に移したもの。なお「蛇含草」については東西で演じられている。
今回のもう一つの趣向は、4席を東京の四派で演じるというものだ。

圓楽一門の兼好『野ざらし』 、遅刻のお陰で肝心の「さいさい節」が聴けず終盤のみ。サゲは本来のものではなく、上方の「骨釣り」に近いものだった。
客席はドカンドカンと受けていた。

落語協会の金時『大山詣り』、この人らしい真っ直ぐな高座だったが、熊が一人で戻ってきたと聞いた長屋のお上さんたちが不審に思う所が抜けていたように感じた。それから坊主頭になった熊が、お上さんたちに頬被りをしているのを言い訳する場面もなかった。この二つが抜けていると、熊が遭難話しをする際の緊張感が薄まってしまうのではないだろうか。
この点が惜しまれる。

立川流の生志『反対車』 、マクラというよりは時事放談をタップリ。豊田真由子議員の暴言は今や高座ではすっかりネタにされているが、生志は高学歴とボキャブラリーの貧困さのギャップをついていた。ヤンキー先生こと義家弘介について、ああいう人間を文科省副大臣にしちゃあいけないと言っていたが、同感。
ネタでは、俥屋が神社から盗んだ長い提灯をつけているので梶棒が下がらないとか、芸者にぶつかってドブに落とし早く上げてやれという客に「芸者を上げる金がありゃ俥引きなんてやってない」と答えるなど、今では省略される懐かしい情景を挟んでいた。

芸協の小南治『そば清』、今秋に3代目桂小南を襲名する。独特の節回しの語りは当初少し気になるが、しばらくすると癖になりそう。
マクラで、本人は春日部の出身だそうだが、東京から転向してきた少女への初恋を語っていた。ネタの後半でこの話題の続きが始まり、少女の都会風の華やかな色使いんも弁当と自分の田舎じみた弁当の比較に移り、弁当の梅干しが弁当箱のアルマイトを溶かすが、梅干しはご飯は溶かさないと。ここでようやくネタと結びつく。長い仕掛けだ。
ソバよりウドンの方が好きだと言ってたが、鮮やかなソバの食いっぷりだった。

この続きは、8月11日に。

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2017/06/30

#84三三・左龍の会(2017/6/29)

第84回「三三・左龍の会」
日時:2017年6月29日(木)18時30分
会場:鈴本演芸場
<  番組  >
前座・桃月庵ひしもち『元犬』
柳亭左龍『名刀捨丸』
柳家三三『藁人形』
~仲入り~
柳家三三『反対俥』
柳亭左龍『佃祭』

鈴本演芸場夜の部は特別興行で、この日は「三三左龍二人会」。
第84回というから随分と長続きしている。充実した会なので、ここ数年は都合がつく限り参加している。
番組にある通り、この日は左龍が中心。

左龍『名刀捨丸』
初見。元々は講釈ネタで、落語に移し替えたもの。
同じ内容のものを笑福亭鶴光が『善悪双葉の松』のタイトルで演じている。
珍しいネタなのであらすじを紹介する。

木曽の農家の倅で、兄が治太郎、弟が治三郎の兄弟がいたが、弟が働き者で親孝行なのに対し、兄は放蕩者で家を出てから行方知れず。
治三郎は出稼ぎで江戸に出て日本橋大伝馬町の佐野屋市右衛門方に奉公する。一心に働いたお陰で20両という金ができる。
大金を懐に治三郎は故郷に向かうが、途中で道に迷い山中に。ようやく人家を見つけたが、そこは盗賊の住家。女房の方は治三郎を匿ってくれるが亭主にバレてしまい、治三郎は身ぐるみ剝がされる。そのまま外へ放り出されるところを、山中なので獣に襲われるからと錆びた刀だけを持たされる。盗賊は後を追って外で治三郎を仕留めようとするが失敗に終わる。
一文無しになった治三郎は再び江戸に戻り、市右衛門は仰天。だが治三郎が持ち帰った錆刀をじっと見ていると、本石町の田中屋卯兵衛という刀屋に持ち込む。するとこれが「名刀捨丸」と分かり、50両という値がつく。
50両を懐に治三郎は再度故郷に向かうが、盗賊のことが気になり住家を訪れる。半分の25両を差し出すが、盗賊は病に伏していた。互いに顔を見合わせている内に盗賊が兄の治太郎と分かり、兄弟が再会を果たす。一緒に故郷に帰ろうと勧める治三郎に、治太郎は過去を恥じ、女房を頼むと言い残し自刃して果てる。
治三郎は兄の妻を娶り、故郷に錦を飾る。

左龍の高座は、地の語りの確かと、各登場人物の描き分けが良く出来ていた。
左龍の現在の到達点を示すような口演だった。

三三『藁人形』
かつては神田の糠屋の小町娘と持てはやされたお熊だが、事情があって今では千住小塚っ原の女郎に身を沈めている。
そこへ度々訪れる願人坊主の西念から20両の金を騙し取る。それも仲間との賭けだったと聞いた西念、恨みを晴らすために藁人形を油で煮て、お熊を祈り殺そうとする。たまたま西念宅を訪れた甥の甚吉に見咎められる、何で藁人形なら釘で打たないんだと訊かれる、「だめだ。おくまは糠屋の娘だ」でサゲ。
新作の五代目古今亭今輔が十八番にしていたが、怪奇もの風のかなりドロドロとした演じ方だった。
対して志ん生はそうした色が薄く、むしろ人情噺風の演じ方だっと記憶している。
三三の高座は後者に近く、特にお熊が西念を手玉に取る所が巧みだった。

三三『反対俥』
三三のこのネタは初めて聴くが、軽妙だし上手いもんだ。
三三の芸の幅を認識させられたこの日の2席だった。

左龍『佃祭』
このネタをフルバージョンで演じると、どうしても45分近くかかってしまう。そこで終い船に乗ろうとしていた次郎兵衛を、かつて娘時代に命を助けて貰い今は佃の船頭・辰五郎の女房となっている女に袖を引かれ、終い船に乗り損なう場面から始めていた。
辰五郎夫婦と次郎兵衛とのほのぼのとしたヤリトリ。
対して、終い船が沈み全員が死亡したという報せが入った次郎兵衛宅は大騒ぎ。坊さんを呼んでお経をあげるやら、棺桶を運びこむやらのてんやわんや。後半は長屋の衆が次郎兵衛宅に悔みを言いに行く所が中心。
最後は次郎兵衛が無事に戻ってきてのドタバタで幕を閉じた。
ここでも左龍の人物描写が光る。特に与太郎の描き方が良く出来ていた。
ただ、個人の好みを言わせて貰えば、次郎兵衛の女房が大変な焼き餅焼きだという設定が抜けていたのが惜しまれる。

4席、全て結構でした。

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