寄席・落語

2019/09/20

桂文我『雪の戸田川~お紺殺し』他(2019/9/19)

「桂文我独演会」
日時:2019年9月19日18時30分
会場:紀尾井小ホール
<  番組  >
開口一番・桂福丸『そば清』
桂文我『子別れ』
文我&福丸『SPレコードで名人がよみがえる』
桂文我『雪の戸田川~お紺殺し』
~仲入り~
桂文我『珍品落語集』

桂文我が、東京版と上方版で同じネタを二夜連続で口演するという企画。この日は東京バージョン。
往路は四ツ谷からソフィア通りを歩いて会場へ、帰路は弁慶橋を渡って赤坂見附へ出た。

福丸『そば清』
元は上方の『蛇含草』を東京に移したネタなので、これは逆輸入ということになろうか。
落ち着いた爽やかな高座は好感が持てる。

文我『子別れ』
東京の『子は鎹』をそのまま上方弁で演じた。細かな違いは、息子の亀吉が父親の近くに住みたいと言って、別れた母子は隣町の長屋に住んでいた。だから再会が出来たのだ。母親が亀吉の頭をゲンノウで打つと脅かした時に、亀吉が死んだら母親も後を追うと言う所は東京とは異なる。
文我の高座はあまりお涙頂戴にならず、スッキリとした中にも親子の情が描かれ好演。

文我&福丸『SPレコードで名人がよみがえる』
高座の上にレコードプレイヤーが置かれ、貴重な音源が披露された。
1903年の初代圓右、グラモフォンに初めて落語のレコードを出させた初代快楽亭ブラック、関東大震災の体験を語る初代小文治、落語家が浪曲や都々逸を吹き込んだ珍品、幻の3代目柳好の『棒鱈』など、マニアにとっては垂涎の的だ。

文我『雪の戸田川~お紺殺し』
【あらすじ】
下野の国の越後屋治郎兵衛の倅・治郎吉は道楽三昧で、佐野のヤクザ・布袋屋一太郎の娘・小染と深い仲になる。布袋屋は以前に賭場で治郎吉の姿を見ており、度胸の良さをかって二人に所帯を持たせ、江戸で商売するよう元手を渡す。
江戸に出た治郎吉だが博打好きはおさまらない。負け続けで元手もすってすっからかん。そのうち小染のお腹が大きくなってきた。困った治郎吉は、賭場仲間の熊五郎と組んで、博打で大儲けしていた浪人者の門堂平左衛門を殺害し、200両を奪う。
急に大金が入った治郎吉をお染が怪しむと、この噂が父親の布袋屋の耳に入ったらタダでは済まないと思った治郎吉はお染を殺して死体は川に流してしまう。
独り身になった治郎吉は相変わらずの博打ざんまい。ある日急な雨で一軒の家の軒先で雨宿りしていると、奥から声がかかり家の中に入っていいと言う。声の主は元は江戸節お紺と呼ばれていた売れっ子の芸者で、今は犬神軍太夫という一刀流の道場主のお囲い者。それが縁で治郎吉とお紺が出来てしまった。これが犬神の耳に入るが、これが犬神の耳に入るが、意外に物分かりが良く、お前にくれてやると家財、家付きでお紺を治郎吉に渡す。本来なら恩義に感じる所だが、治郎吉は犬神を脅して手切れ金までふんだくる。
金が出来た治郎吉は又もや博打に現を抜かしスッテンテン。そのうち、お紺の右の目の淵に小さなおできポツッとできた。痒いといって掻きむしる間に段々だんだん大きなって、終いに顔の右半面が紫色に大きく腫れあがってしまった。
治郎吉はお紺の治療費を工面するために知り合いを尋ね歩き、ようやく金が手に入ったのが10日後、長屋に戻るとお紺の姿が見えない。近所の者に聞くと、前日に杖にすがりながらお紺が家を出て行ったという。
もうここにはいられないと治郎吉は、佐野の布袋屋の親分の所に戻り、娘の小染が病死したと嘘を言って居候になる。
近くに大きな田畑を持つ百姓がいたが、夫が突然の死で働き手がない。そこで布袋屋の世話で、後家のお小夜の元に治郎吉は入り婿となる。当初は真面目に働き、二人の間には治郎太郎という男の子もできた。そのうち治郎吉の博打の虫が湧いてきて博打ざんまいの生活が始まり、田畑を全て手放す。悲観したお小夜は縊首して自害。母親の遺体にとりすがって泣く幼児を見て、ここで初めて治郎吉は目が覚める。
それからは人が変わった様に夢中で働きだし、まとまった金が出来ると米相場に手を出すが、これが大当たり。今では関東一円に手広く商いを拡げた大店の主になっていた。今では困っている人を助ける寄進者にもなっていた。
歳の暮には各地に掛け取りに行くが、他の地は奉公人たちに任せ、江戸だけは治郎吉が掛け取りに回る。用事が終わって佐野に向かう途中、雪がちらつきだした。戸田の渡しまで来ると川原の小屋から女乞食がはい出して来た。髪の毛は抜け落ち、顔中が腫れ上がっている。情け深い治郎吉は金を恵んでやるが、その乞食が「お前は治郎吉だな」とむしゃぶりついて来た。変わり果てたお紺だったのだ。
苦労したことを聞いて涙ぐむ治郎吉はお紺と佐野に行くことを約束し、取り敢えずこの先に宿を取っているので一緒に泊まろうと誘う。手足があまりに汚れているので、戸田川で洗うよう言う。お紺が川辺で手足を洗っている隙に、治郎吉は背後から襲いお紺を川の中へ突き落す。なお棒杭につかまって必死のお紺を治郎吉は刀で斬り殺す。
この後、治郎吉は蕨の馴染みの宿へ上がると、部屋にお紺の幽霊が現れる。治郎吉は刀を振り回すと柱にあたり、その反動で自らの首に刃が刺さり絶命する。
その頃佐野では、次郎兵衛の息子・治郎太郎改め次郎左衛門が炉端でつまずき、炉の中へ頭から突っ込んで顔を焼いてしまう。この子が成長の後、吉原百人斬りを行う。歌舞伎『籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)』の発端である。

名前や場所に間違えがあるかも知れないが、ご容赦を。
講釈『戸田の渡し・お紺殺し』を八代目林家正蔵が落語に脚色。正蔵から教わった露の五郎兵衛が『雪の戸田川』として演じた。また、桂米朝は『怪談市川堤』として演じている。
文我の高座は分かり易く要所は締め、時々笑いを散りばめながら長講を語りきった。

文我『珍品落語集』
仲入り後は珍しい小噺をいくつか。文我によれば、フルコースの後のコーヒータイムだそうで、煙草の吸い分け、水の飲み分け、飯の食い分けなどの軽いネタを演じてお開き。

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2019/09/19

「三三・左龍の会」(2019/9/18)

第92回「三三・左龍の会」
日時:2019年9月18日(水)19時
会場:内幸町ホール
<  番組  >
三三・左龍『オープニングトーク』
前座・柳亭さん坊『からぬけ』
柳亭左龍『尼寺の怪』
柳家三三『半分垢』
~仲入り~
柳家三三『しの字嫌い』
柳亭左龍『転宅』

 

9月17日に山遊亭金太郎が亡くなった。私が観た最後の高座は昨年の6月だから、倒れる少し前ということになる。なんの衒いもなく古典をきっちり演る人だった。高座の姿とは異なりエピソードの多い人だったようだ。初対面だった三三にいきなり「3万円あげるからキスしていいか?」と言ったとか。左龍は3代目小南襲名についての秘話を語っていたが、噺家の襲名っていうのは色々な事情があるんだね。
左龍はまだ二ツ目当時に、師匠さん喬から名前を継ぐように言われたが断ったそうだ。でも、この人が継ぐのが順当だろう。三三は?そりゃ小三治でしょ。未だ生きてると言いながら、二人が高座を下りる。

左龍『尼寺の怪』
別題『おつとめ』『百物語』、先代の橘家文蔵が得意としていたようだ。
若い衆が集まって百物語をやろうということになり、夜までに各自が怖い話を持ち寄ることになった。もし出来なければ全員の飲み代を払うという約束。困った男は知り合いの和尚に、何か怖い話はないかとたずねる。和尚が若い頃に托鉢に歩いていて、夜になって泊まる所がなく1軒の寺を訪れ一夜の宿を頼むと、ここは尼寺なので本堂で寝て欲しいと言われる。深夜になり和尚がふと目が覚めると、木魚とお勤めの声がする。これはきっと尼さんがお経をあげているんだと思いそのまま寝入ってしまう。翌朝、和尚が尼さんに昨夜のことを尋ねると、自分は読経などしないし、寺には他に誰もいない。ただ、この地方では村で亡くなった人がいると、新仏になった人が寺に来て読経するという慣わしがあるので、昨夜はそれだったのではと言う。聞かされた和尚はゾッとした。
男は、この話ならきっと皆も怖い思いをするだろうと喜び、和尚に絶対に他に人にはこの話をしないで欲しい。もし約束を破ったら寺に火をつけると言い残し、仲間の集まりに戻って、いま聞いた話を自分の事として披露する。処が男は粗忽者だから、托鉢を「散髪」、お勤めを「おつけの実」などと言い間違えるものだから、誰も怖がらない。終いには、周囲の者がこれは男の体験談ではなく誰かの入れ知恵だと言い立てると、男は「寺へ行って火をつけてくる」でサゲ。
こうあらすじを書くと面白さは分からないだろうが、左龍は得意の顔芸を活かして頓珍漢な男を演じ、笑いをとっていた。

三三『半分垢』
相撲取りのネタなので、小学生の頃は将来力士になりたかったという三三の、昔の力士のマニアックなマクラが振られる。
短いネタだが、三三は力士のお上さんを軽妙に演じて楽しませてくれた。

三三『しの字嫌い』
何事にも一言屁理屈をつけたがる飯炊きの清蔵を懲らしめようと、主人が言葉に「し」を入れたら給金は無しにすると命じる。その代り、主人が「し」を言ったら、清蔵の望みの物を与えるという約束をするが、計略を巡らした主人の方が「しめた」と口走ってしまい、清蔵に銭を取られてしまう。
『のめる』っと同じ様な趣向のネタだが、しの字抜きで会話する二人の苦労を三三は楽しそうに演じていた。

左龍『転宅』
同じネタを、例えば喬太郎が演じると、お菊と夫婦約束をした泥棒が当初はどこか疑心暗鬼な所があるのだが、左龍では最初から大喜びで舞い上がってしまい、顔全体を使ってその喜びを表現していた。天にものぼるとはこの事だろう。
その割には、後半でお菊に騙されたと知った泥棒は、それほど怒りを示さない。一瞬でもいい夢を見させてくれたと、そう思ったのだろうか。
なにせ、顔芸では左龍の右に出る者はいないかも。

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2019/09/13

「東西!噺家最前線」(2019/9/12)

第7回会議室落語~東西!噺家最前線~
日時:2019年9月12日(木)19時
会場:大手町サンケイプラザ310号室
<  番組  >
桂佐ん吉『桃太郎』
立川吉笑『くじ悲喜』
笑福亭鉄瓶『竹の水仙』

先日、横浜にぎわい座で佐ん吉と鉄瓶の高座が良かったので、この会に出向く。名前の通り会議室での落語会。以前は2人だった様だが、今回から東京と上方の若手落語家3人による構成になったとのこと。
今年、タピオカの飲み物が流行したそうだが、最初聞いたときは驚いた。タピオカといえば私が即座に頭に浮かぶのは糊だ。工業製品の糊としては昔からタピオカ澱粉が使われている。だから、あんなものをどうやって飲み物にするのか不思議だった。要はトウモロコシ粉や小麦粉など同じもので、タピオカという名称が受けたんだろうね。

佐ん吉『桃太郎』
上手いとしか云い様がない。マクラで客席をつかむのも巧みだ。前座噺のような軽いネタこそ実力が現れる。噺家にとってセリフの「間」の取り方が全てであることが分かる。

吉笑『くじ悲喜』
初見。くじ引きの、くじの悲喜こもごもを描いた新作。柳家こゑんの『ぐつぐつ』に発想が似ているが、あちらの方が遥かに面白い。

鉄瓶『竹の水仙』
宿屋の亭主とその女房、客の左甚五郎、細川越中守とその家来の大槻玄蕃、それぞれの登場人物がしっかりと演じ分けが出来ていた。特に宿の亭主がいい味を出していた。

佐ん吉と鉄瓶、期待通りの高座だった。スケジュールが合えば、次は独演会に行ってみようと思う。
最近、上方の噺家を聴く機会が増えたが、若手の充実ぶりには感心する。東京の若手もおちおちしていられない。

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2019/09/12

「白酒のあんばい」(2019/9/11)

桃月庵白酒の「白酒のあんばい」
日時:2019年9月11日(水)19時
会場:伝承ホール(渋谷)
<  前座  >
前座・桃月庵あられ『子ほめ』
桃月庵白酒『次郎長伝より・石松三十石船』
~仲入り~
福島康之(バンバンバザール)feat.丸山朝光(ハチャトゥリアン楽団)『ジャズとトーク』
桃月庵白酒『不動坊』

安部政権の新しい内閣の顔ぶれが発表された。昨日も書いたが、日本も新任大臣について議会で「人事聴聞会」を開く制度を作った方がいい。全てを審議するのは難しいだろうから、新大臣の専門性、業務遂行能力、人格の3点だけに絞って質疑すればいい。こうすれば公明正大でお互いスッキリ出来ると思うが。

夕方から急な雷雨があった11日、「白酒のあんばい」の会へ。2席がネタ出しされており、いずれも白酒では未見だったので出向いた次第。

白酒の1席目『次郎長伝より・石松三十石船』
ご存知2代目広沢虎造の大当たり演目「清水次郎長」。ラジオ放送の聴取率が30%だったというから、当時の国民の約3分の1の人が聴いていたわけだ。外題付けの「旅行けば 駿河の国に茶の香り」から、「食いねえ食いねえ寿司食いねえ」「江戸っ子だってね 神田の生まれよ」などの啖呵は子どもでも知っていた。
その「石松の金毘羅代参」のサワリの部分を落語にしたものだ。亡くなった喜多八がしばしば高座にかけていたが、白酒では初見。
虎造の浪曲の啖呵をほぼそのまま落語のセリフに移したもので、オリジナルが面白いのだから落語にしても面白い。
ただ、浪曲と落語ではリズムや間が違うし、浪曲の場合は啖呵の合間に曲師の三味線が入る。それをそのまま落語に移すと、オリジナルにあった石松と江戸っ子の位置関係が崩れて、清水一家の暴れん坊で鳴らした石松が単なる愚か者に見えてしまった。
演目を他の芸能に移す難しさを感じた。

福島康之(バンバンバザール)feat.丸山朝光(ハチャトゥリアン楽団)『ジャズとトーク』
福島のギターと丸山のバンジョー演奏と歌唱が、福島のトークを挟んで披露された。曲目は「月光値千金」「この素晴らしい世界」「君微笑めば」などスタンダードナンバー。
ジャズのライブなんて久しぶりだ。やっぱりいいなぁ。バンジョーってあんないい音が出るんだ。二人が醸し出す温かい雰囲気も良かった。
これが聴けただけでもこの日来た甲斐があった。

白酒の2席目『不動坊』
元は上方のネタだが、3代目柳家小さんが東京に移したとされていて、現役では権太楼がこの型を引き継いでいる。これとは別に9代目桂文治が、湯屋で利吉がお滝を思いながら独り言を言って湯船に落ちる所で切るという独自のやりかたで演じている。
白酒の高座は権太楼の型を基本に、湯屋での利吉が独り言ではなく、湯船の客をお滝に見立てて話しかけるという風に変えていた。また、3人と幽霊役の噺家による利吉の家の屋根でのドタバタをより戯画化し、面白さを強調していた。
ただ、いくつか気になった点がある。
利吉は不動坊が残した借金を肩代わりする条件でお滝を嫁にするわけで、大家に金額を聞かなかったのは不自然だ。これでは白紙手形になってしまう。
幽霊役が利吉から香典代わりにと1円受け取るのも不自然だ。ここはオリジナルにあるように係わった人間が4人いるわけだから、幽霊役としては4の倍数の金額で手を打つのが自然だろう。
白酒らしい面白い仕上げにはなっていたが、細部が雑に見えた。

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2019/09/06

三遊亭わん丈独演会(2019/9/5)

vol.19「わん丈ストリート」
日時:2019年9月5日(木)19:15
会場:日本橋社会教育会館ホール

「海落語」についての公開インタビュー
<  番組  >
三遊亭わん丈『出演者紹介』
前座・三遊亭ごはんつぶ『英語落語』
三遊亭わん丈『三方よし』
三遊亭わん丈『双蝶々(上・中のダイジェスト)』
~仲入り~
三遊亭わん丈『双蝶々(下)』

どの世界にもスターという存在があるが、落語界も例外ではない。2000年代になってから東京の落語界のスターといえば、
00年代 柳家喬太郎
10年代 春風亭一之輔
であるのは衆目の一致する所だろう。
では、来るべき20年代は誰になるだろうか。ポスト一之輔となると、現在二ツ目の若手になろう。
何人かが頭に浮かぶが、その候補の一人が三遊亭わん丈だ。理由は高座を観ていて「キラリと光るもの」を感じるのだ。もちろん彼より上手い若手は沢山いる。しかし上手いだけではスターにはなれないのが芸能の世界だ。
そんな分けで、注目しているわん丈の独演会に出向いた。老若男女を問わず、客の入りは良かった。

開演前に、どこかの団体から海をテーマにした新作落語を演じているというわん丈に公開インタビューがあった。恐らくは海洋汚染の問題に取り組んでいる団体かと思われる。インタビューの模様と、それに因んだ小噺を即席で作り収録していた。本人によれば、立川こしらから依頼されて始めたとのこと。特に子ども向けの高座で演じることが多いと。

わん丈『出演者紹介』では、この日の三味線の長澤あやが高座に上がり、わん丈が太鼓を叩いて出囃子の演奏を披露した。わん丈のの出囃子は「小鍛冶(義太夫)」。
また、この日前座に上がる三遊亭ごはんつぶ(天どんの弟子)が学校寄席で「英語落語」を演じたエピソードを紹介していた。
こうした点にわん丈の心配りを感じる。

ごはんつぶ『英語落語』、ネタは家族3人が交通事故を起こしケガで事情が聞けない。警官が同乗していたサルに聞くと、父親は飲酒、母親はおしゃべり、子どもはゲーム。「それなら一体誰が運転していたんだ」と警官が聞くと、サルは自分を指した。という小噺を英語で演じていた。

わん丈『三方よし』
古典の『三方一両損』をベースに、近江商人の買い手よし売り手よし世間よしという「三方よし」を採り入れ、更に『井戸の茶碗』を加えた様な新作。奉行の奥方が元吉原の花魁という設定で、奥方の方が名裁きをするというもの。
程々に楽しめた。

『双蝶々(上・中のダイジェスト)』
過去2回の『双蝶々(上・中)』のダイジェストを、「中」で長吉に殺された定吉にわん丈が扮して語った。

わん丈『双蝶々(下)』
番頭と小僧二人を殺して奥州に逃げた長吉、今では子分十数人を従えるいっぱしの顔になっていた。
長兵衛・お光夫婦は長吉の悪事を恥じ世間に顔向けが出来ないと、本所馬場町の裏長屋に越したが、長兵衛は腰が立たない病になった。暮らしに窮したお光は、内緒で隅田川縁の多田薬師石置き場で、袖を引く物乞いをし一文二文の銭を稼いでいた。
北風強く冬の日、通りかかった人の袖にすがったのが、奥州石巻から父の様子を探しに出てきた長吉だった。
長吉はお光に連れられ、腰の立たない父を見舞い再会する。長吉が50両の金を渡し元気で暮らすようにと言うと、長兵衛は悪事で得た金は要らぬと突っ返すが、最後は長吉をゆるし今生の別れを告げる。 長吉が追われる身である事を察した長兵衛は羽織を渡し、江戸から無事出られるようにと願った。
雪の降る中、長屋を去った長吉は吾妻橋を渡るところでついに追手に取り囲まれ、捕縛される。
『雪の子別れ』の副題で演じられるこのネタ、わん丈の言うように今年で3年目の二ツ目が高座にかけるような演目ではない。高座も未だ未だ粗さがある。しかし、挑戦する姿勢は評価されるし、これからノシてゆく可能性を十分感じさせる。
数年後には、私の予感が当たりそうな気がするのだが。

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2019/09/04

「一天四海ー龍志・扇遊・鯉昇・正蔵」(2019/9/3)

「一天四海ー龍志・扇遊・鯉昇・正蔵の会ーコスモスの刻(トキ)」
日時:2019/9/3(火)18時30分
会場:国立演芸場
<  番組  >
前座・入船亭扇ぽう『元犬』
林家正蔵『秋刀魚火事』        
瀧川鯉昇『船徳』    
  -仲入り-
入船亭扇遊『棒鱈』            
立川龍志『小言幸兵衛』

週刊誌の広告に「弱きをくじき強きにひれ伏す安部外交」と、ウマイこと言うもんだ。米国からいわれりゃ戦闘機からトウモロコシまで買いまくり、竹島の実効支配には抗議するがロシアの北方領土の実効支配は黙認、中国に配慮して香港デモには沈黙。
メディアはメディアで、韓国が米国から批判されたと鬼の首でも取ったように報道する。いいじゃないか、それぞれの国の考え方もあるんだろうから。
それより私たちは日本の国を心配した方がいい。

日本の労働生産性は先進各国で最下位(日本生産性本部)となっており、世界競争力ランキングは30位と1997年以降では最低となっている(IMD)。平均賃金はOECD加盟35カ国中18位でしかなく、相対的貧困率は38カ国中27位、教育に対する公的支出のGDP比は43カ国中40位、年金の所得代替率は50カ国中41位、障害者への公的支出のGDP費は37カ国中32位、失業に対する公的支出のGDP比は34カ国中31位(いずれもOECD)など、これでもかというくらいひどい有様だ。
日本が輸出大国であるという話も、過大評価されている面がある。2017年における世界輸出に占める日本のシェアは3.8%しかない。
(以上、「Newsweek」の記事より引用)

ちょいとマクラが長くなってしまったが「一天四海」、以前の喜多八がいた頃の「睦会」には足繁く通っていたが、この会になってからはお初。先日の龍志の高座をみて来る気になった。小雨そぼ降る国立は9分の入り。

正蔵『秋刀魚火事』        
初代林家正楽の新作落語。長屋の連中がケチな油屋のことで相談に来る。先日も近くの空き地に油屋のお嬢さんが簪を落としたので、探し出した者には褒美を与えるという番頭の言葉で、長屋総出で先ず草刈りをして探したがとうとう見つからなかった。すると油屋の主人が番頭に、タダで草刈りが出来たと褒めていた。万事がこんな具合で、なんとか油屋に仕返しをしたいという相談だった。大家は、相手は油屋だから家事を最も恐れるから、長屋中でサンマを焼いて煙を出して騒げば、家中大慌てになると教える。長屋の連中が一斉にサンマを焼くと、油屋の店の者一同は煙をおかずにご飯を食べていた。
珍しいネタではあったが、正蔵はただ喋っている感じだった。メンバーの中では他の3人とあまりに実力の差が大き過ぎる。人選を変えた方が良い。

鯉昇『船徳』    
前方の正蔵が持ち時間を10分も余らせて下りたと、落語協会にもああいう人がいるんだとイジッテからネタに。
冒頭の所を『湯屋番』と似た出だしで、若旦那が船頭になるまでが長めになっていた。徳が二人の客を船に乗せて大川に漕ぎ出す場面では、膝立ての格好で竿や櫓の漕ぎ方を丁寧に演じて見せ、45分の長講。鯉昇奮闘口演の態だった。

扇遊『棒鱈』            
どの噺家にも旬の時期がある。中には生涯を通して旬がない人もいるけどね。扇遊は今が旬だと思う。脂が乗りきっていて、何を演じても高水準の高座を見せてくれる。元々上手い人だったがそれに華やかさが加わり、この日もマクラからサゲまで一分の緩みもない。
この時期の扇遊をみておかないと落語ファンとして後悔しますよと、言いたくなるほどの充実ぶりである。

龍志『小言幸兵衛』
良かったねぇ、こちらもマクラからサゲ(珍しくサゲを付けていた)まで間然とする所がない。しかも人物描写が丁寧だ、今これだけの『小言幸兵衛』を演じられる人は、東京全体でもあまりいないだろう。
実は、出がけにチケットを家に忘れてきてしまい、金を払って入場するかどうか迷ったのだが、観て正解だった。

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2019/08/31

にほんばし寄席(2019/8/30)

第5回「にほんばし寄席」
日時:2019年3月30日(金)19時
会場:日本橋社会教育会館ホール

前座・春風亭枝二『浮世根問』
前座・春風亭朝七『たらちね』
<  番組  >
隅田川馬石『臆病源兵衛』
瀧川鯉昇『茶の湯』
~仲入り~
古今亭文菊『転宅』
柳家小満ん『二階ぞめき』

寄席の入場料が10月から3000円になるようだ。当ブログがスタートした14年前には、落語会の入場料が3000円というと高く感じたものだが、今では安い方になってしまった。最近では4000円を超す会も少なくない。落語家の生活が向上するのは結構な事だが、こちとらの財布には痛い。
この会は4人の出演者が持ち時間30分ずつという中身の濃い会だ。

馬石『臆病源兵衛』
雲助一門の御家芸ともいうべきネタだが、馬石が面白い。この人の真面目なんだか不真面目なんだか分からないフワッとした芸風がネタに合っている。自分が死んだと思い込んでフラフラ歩き回る八五郎の姿が、馬石本人と重なるのだ。
滑稽噺、人情噺両方イケてるとこは師匠に最も近い。

鯉昇『茶の湯』
お馴染みの扇風機のマクラからネタに。
以前に聴いたものとだいぶ中身を変えていた。青黄粉だけでは抹茶の色が出ないからと青色の絵の具を加え、泡立ては洗剤を使う。孫店の住人を招いてお茶を飲ませる場面はカットしていた。
改変は一之輔に任せて、以前のオリジナルに近い演じ方の方が良かったのでは。

文菊『転宅』
得意のネタでこの人らしい丁寧な高座だったが、お菊の目つきがネットリし過ぎているのでは。
泥棒の方は、前半の有頂天から後半の落胆という表情変化はよく描かれていた。

小満ん『二階ぞめき』
数ある廓噺の中でも、吉原を素見(ひやかす)だけを趣味とする若旦那が主人公の異色のネタだ。ストーリーは無く、家の二階にこさえて貰った吉原のモデルタウンを、若旦那が自身や花魁、妓夫らとの会話や喧嘩を一人で演じて楽しむという趣向だ。観客に、きっと吉原ってとこはこういうとこだったんだなと納得させる手腕が必要で、小満んの様な粋な遊び心を持った演者でなければ表現しえないネタだ。実に楽しそうに演じていたし、その楽しさが客席に伝わってきた。

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2019/08/29

「権太楼・龍志 二人会」(2019/8/28)

みなと毎月落語会「柳家権太楼・立川龍志二人会」
日時:2019年8月28日(水)19時
会場:赤坂区民センター 区民ホ-ル
<  番組  >
前座・立川らくぼ『牛ほめ』
柳家権太楼『短命』
立川龍志『五貫裁き(一文惜しみ)』
~仲入り~
立川龍志『六尺棒』
柳家権太楼『佃祭』

お目当ては立川龍志、今回が初見。龍志によれば権太楼と同じ高座に並ぶのは40年ぶりとか、今回が最後になるだろうとのこと。

龍志の1席目『五貫裁き』
ケチな人間は死ぬと暗闇地獄に落ちる。真っ暗だから動くことが出来ないが、一人歩いているのがいた。見たら爪にともした灯りを頼りにしている。顔を覗き込んだら、談志だった。
あの人は良い人だと言われる人にはお金が貯まらない。
この二つをマクラに振っていたが、いずれもネタに関わっている。こういうマクラは気が利いてるが、近頃どうでもいい話をダラダラと喋る噺家がいて閉口する。三三じゃないが、マクラの長い噺家にロクなのはいない。
このネタのポイントは、八五郎の長屋の大家の描き方だと思う。八が吝嗇の徳力屋の主から煙管で打たれて額から血を流して帰ってきた段階で、これ以降の筋書きが頭で描き、結果はその通りとなった。正直者の様でいてなかなかの策略家なのだ。
むろんフィクションの世界ではあるが、大岡越前守という奉行は法より情を尊重するタイプであり、徳力屋に厳しい措置がなされることを大家は読んでいた。
通常は、大家の指示で徳力屋から大枚の示談金をせしめて、目出度し目出度しで終わるのだが、龍志の高座は師匠の談志譲りで、その後が付け加わる。徳力屋の世話で八五郎は立派な八百屋の店を開き大繁盛。その評判で気を良くした徳力屋は方々に施しをした挙句、店が潰れてしまう。八五郎は持たない大金を持ったばかりに博打にうつつを抜かし破綻してしまう。関係者も皆亡くなり、今ではこの物語を伝える者は誰もいない、で終了。
龍志の高座は各場面や人物像を丁寧に描きながらスピーディーな運びで好演。実力は評判通りだった。

龍志の2席目『六尺棒』
落語家の2世の話題になり、志ん朝が周囲から若旦那と呼ばれていて、それが又ピッタリだった。でも正蔵や三平は若旦那とは呼びにくいと、マクラを振ってネタへ。
冒頭でこの若旦那は深夜に人力俥で帰宅し、俥屋に多分の祝儀を渡していた。ここまでで若旦那が相当な放蕩息子であることが観客に分かる。帰りを待ちかねた父親が息子を説教するが、息子は謝るどころか居直り、家に火をつけると脅かす始末。堪忍袋の緒が切れた父親は六尺棒を持って息子を追いかける。「ちゃんと謝れば許してやったのに」という父親のつぶやきは、息子への情を感じさせる。
短いネタだが、この父子の関係が窺われる工夫がなされていた。
この人が定席に出てくれれば、きっと若手の良い手本になるのだろうにと、そこが惜しまれる。

権太楼の2席は寄席でもお馴染みのネタ。
1席目の『短命』では、隠居の暗示にようやく気付いた八五郎が、こうなってこうなってと手を動かすと、「手はやめなさい、それは浅草でやりなさい」。
2席目の『佃祭』、本人も途中で言ってたが『短命』と「悔み」でツイテしまった。ネタの選択を間違ったのかな。
少しカットしていたが、佃の渡し場を中心とした人情噺風の場面と、治郎兵衛宅での葬儀のドタバタを手際よく描いていた。
高座に上がったのは8時34分で、9時には終わらせますと宣言して噺に入ったが、終わって幕が下りたのが9時ピッタリだったのには感心した。さすがはプロだ。

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2019/08/28

東西交流落語会(2019/8/27)

第5回「東西交流落語会」
日時:2019年8月27日(火)19時
会場:横浜にぎわい座 のげシャーレ(小ホール)
<  番組  >  
柳亭小痴楽『岸柳島』
桂佐ん吉『七度狐』
春風亭昇也『馬のす』
笑福亭鉄瓶『茶屋迎い(不孝者)』
~仲入り~
桂二乗『鹿政談』
三遊亭朝橘『死神』

昨日、新山ひでやの訃報に接した。
「新山ひでや・やすこ」の夫婦漫才として寄席で活躍していた。「最高!最幸!」が観ることができなくなってしまった。
ご冥福を祈る。

さて、「東西交流落語会」は若手中心の会で、出演者は東西3人ずつ。一杯の入りで、これだけ集まるなら上の芸能ホールでも良かったと思えるほどだ。
それに応えて各演者の熱演が続いた。

小痴楽『岸柳島』
9月下席からの真打昇進披露興行で頭が一杯なんだろう。一本で昇進は名誉なことだが、40日間の寄席のトリは精神的にも肉体的にも経済的にも大変な負担かと察する。
この日感じたのは、この人は目の使い方が上手い。各人物の演じ分けも出来ていたし、船中での町人たちのガヤガヤの描き方も良かった。

佐ん吉『七度狐』
お目当ての一人。毎度のことながら実に上手い。一つ一つの所作が丁寧で、しかもリズミカルだ。ハメモノとの呼吸もピッタリだった。実力派揃いの吉朝一門の中でも頭一つ抜けてると思う。

昇也『馬のす』
富士登山の大して面白くもないエピソードを引っ張りすぎてダレてしまった感がある。ネタは数分程度のもので、挟み込むギャグが勝負だと思うが、中身が古臭い。アメリカの列車のチケットで"to,for,eight-eight"のギャグは、私が小学生の頃の寄席で使われていたよ。

鉄瓶『茶屋迎い(不孝者)』
番頭が帳面を付けているところへ若旦那が現われ、集金に回るといって請求書の束を懐に入れて店を飛び出すが、5日経っても帰ってこない。親旦那が番頭に問いただすと、どうやら新町の茨木屋に居続けているらしい。手代やら番頭やらと次々に迎えに出すが、いずれも行ったっきり戻ってこない。仕方なく親旦那自らが茶屋に迎えに行くが、若旦那らがいる2階座敷ではなく、1階の小さな部屋で待たされる。そこに部屋を間違えたという芸者が現れると、それがなんと8年前まで親旦那が世話をしていた女だった。事情があって別れたが、互いのことはずっと気にしていた。焼け棒杭に火がついて二人がイチャイチャ始めると、「若旦那がお帰り!」の声。「この親不孝者めが!」でサゲ。
東京では『不孝者』のタイトルで演じられているが、上方のオリジナルは初見。そして圧倒的に上方版の方が面白い。堅物と思われていた親旦那が実は遊び人で、好きな女を隣に座らせると胸に手を入れる癖があるようだ。
鉄瓶の高座は人物の演じ分けもしっかっり出来ていたし、親旦那と再会した芸者とのしっとりとしたヤリトリも良かった。

二乗『鹿政談』
外連味のない本寸法の高座で、ネタのせいもあるかも知れないが芸に品がある。奉行の凛とした描写も良かった。

朝橘『死神』
三遊亭圓橘の末弟で一昨年真打に昇進している。
悪くはなかったが、主人公と死神以外の人物の描写が雑に感じた。主人公の消えかけた蝋燭を息子の蝋燭を使って火を移すというのは初めて観た。自分で火を消して死ぬというサゲも含めて、評価の分かれる演出だった。

総じて上方の噺家の方が上手だった。

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2019/08/25

雲助・馬生『お富与三郎(通し)』(2019/8/24)

第13回「らくご古金亭ふたたび」
日時:2019年8月24日(土)18時30分
会場:お江戸日本橋亭

前座・金原亭小駒『粗忽の釘』
<  番組  >
雲助・馬生リレー口演『お富与三郎』
金原亭馬生『木更津見染め』
五街道雲助『赤間の仕返し』
~仲入り~
金原亭馬生『玄冶店~稲荷堀』
五街道雲助『島抜け』

『お富与三郎』は、長唄の四代目芳村伊三郎が木更津で若い頃に体験した実話をもとに、一立斎文車(乾坤坊良斎)や初代古今亭志ん生が講談や落語に仕立てたと言われる。近年では10代目金原亭馬生が得意としていた。古今亭一門には縁の深い演目で、現在は雲助や弟子の馬石によって通し口演が行われている。
今回は、10代目馬生の兄弟弟子である雲助・馬生がリレー口演で高座にかけるという趣向。最初で最後の企画とあってか会場は満員の盛況。

馬生『木更津見染め』
江戸横山町の鼈甲問屋「伊豆屋」の若旦那・与三郎、今業平といわれた色男だが、ちょいとした間違いを起こし、木更津で紺屋をしている伯父に預けられる。
木更津のやくざの親分・赤間源左衛門は江戸で博打で勝ちに勝ってその大金で江戸一と言われた深川のお富を身請けして連れ帰り女房同様にしていた。
木更津の祭の晩、料理屋でお富と与三郎が偶然に顔を合わせ、惹かれ合った二人は親分の留守に逢瀬を重ねる。

雲助『赤間の仕返し』
江戸から木更津に戻った源左衛門は、子分からお富と与三郎の密通を知り、与三郎を捕らえて柱に縛り、お富の目の前で顔中、体中30数か所を切る。たまらずお富は木更津の海に身を投げてしまうが、近くにいた船の多左衛門に運よく引き上げられて江戸に戻り、多左衛門の妾となる。
与三郎も行李に詰められ、100両で伯父の家に戻されて命だけは助かる。

馬生『玄冶店~稲荷堀』
江戸に戻った与三郎だが、顔中傷だらけでは人目に出られなくなり、家に閉じ籠もるようになった。
気晴らしに両国の花火を観に出かけたが、帰り道でお富を見かけ声をかける。お富は与三郎を住んでいる玄冶店に連れ帰り、実の兄と称して一緒に住むことになる。そこに伊豆屋の番頭が訪れ実家に戻るよう与三郎を説得するが、与三郎が拒否したので勘当となり無宿者になってしまう。
多左衛門は目玉の富八から二人は兄妹ではなく男女の関係だと聞かされ、25両をお富に渡し手を切る。それを聞いた与三郎が稲荷堀(とうかんぼり)で目玉の富八を襲いお富が止めを刺す。
殺害の一部始終を目撃していた蝙蝠安が二人を強請ったため、二人から殺害されてしまう。

雲助『島抜け』
二人の悪事がばれてお富は永牢、与三郎は佐渡に島流しになり、冬でも法被一枚で金鉱で水汲みをさせられた。遊び人風情ではとうてい体力がもたず生きて帰れる見通しはない。生きて江戸に戻りお富に一目でも会いたい。二人の仲間と相談して嵐の夜に逃げ出し、丸太を筏に組んで荒海に乗り出す。
与三郎が気が付くと、筏は岸に乗り上げていた。後ろを向くと佐渡が黒く浮き上がっていた。ここから江戸は陸続きだと、与三郎はお富会いたさに江戸に向かって駆け出した。

この物語はまだ続きがあり、与三郎はそのころ品川にいたお富に再会するが、疎ましく思ったお富は与三郎を殺害し、打ち首になる。
本作品を舞台化した三代目瀬川如皐脚本の『与話情浮名横櫛』(よわなさけうきなのよこぐし)とは筋が大きく異なる。
雲助と馬生のリレー口演という企画は成功だったと思う。洒脱な馬生に対して重厚な雲助。もし雲助一人の通しだと客は疲れたろうし、馬生一人では島抜けの迫力は出せないだろう。
馬生が演じる与三郎はワルと言っても所詮はお坊ちゃん育ち、どこか甘さがあり殺しでも躊躇してしまう。反対にお富は冷酷で、あっさりと止めを刺してしまう。陰惨な場面も軽く演じてみせ、馬生らしい高座だった。
雲助は、赤間の仕返しではサディスティックな描写を演じてみせ、島抜けの緊迫した場面では客が思わず息をひそめて聴き入っていた。
最初で最後というこの企画、聴けた人は幸せだ。

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