寄席・落語

2017/03/24

ノラや寄席350回前夜祭(2017/3/23)

「ノラや寄席350回前夜祭」
日時:2017年3月23日(木)19時
会場:座・高円寺2
<  番組  >
前座・橘家かな文『真田小僧』
三遊亭萬橘『孝行糖』
蜃気楼龍玉『鹿政談』
春風亭一之輔『夢八』
~仲入り~
三遊亭天どん『クラブ交番』
桃月庵白酒『首ったけ』

安倍政権と自民党はどうやら「窮鼠猫を噛む」という諺を知らないらしい。
だいたいが首相を侮辱したという理由だけで、一民間人をいきなり証人喚問したこと自体が間違っている。日本にはいつから首相へ「不敬罪」が出来たんだろうか。
政権としては、一つ国会に呼んで籠池理事長を絞り上げ、あわよくば偽証罪で告発して森友学園問題に終止符を打つつもりだったが、どっこい、そうはいかなかった。
小学校建設は断念し、恐らくは破産も起こり得るし、大阪府からは刑事告発もあるだろう。
もはや失う物がなくなった籠池理事長は文字通り「窮鼠」となって、安倍首相という「猫」に嚙みついたわけだ。
安倍政権が次に肝に銘ずべき諺は「針の一穴」となる。

高円寺に「ノラや」という店があり、ここで定期的に落語会が開かれている。今回はその350回を記念する前夜祭の会で、若手が中心だ。

萬橘『孝行糖』、メガネをかけたまま高座に上がる噺家がいるが、この人はネタに入るときに外す。これは正解だと思う。特に古典を演じる時にメガネは変だ。
本人に独特のフラがあるから、何を演じても何となく可笑しいから得だ。
飴売りの与太郎が屋敷の門番から棒でめった打ちにされた後で、本来は「痛えよう、ぶたれたとこが痛えよう」というセリフが入るが、ここをカットしていた。これだとサゲの「孝行糖、孝行糖(こことここ)」が弱くなるのではないか。

龍玉『鹿政談』、演者とネタが予定調和。マクラで奈良名物として「大仏に鹿の巻筆奈良晒春日灯篭町の早起き」を紹介したなら、「町の早起き」の説明が要るのでは。全体に起伏がなく平凡な出来。

一之輔『夢八』、マクラで構えて見るようになると落語は面白くなくなると言っていたが、そういう面は確かにあるかも。一之輔はどうやら演出という言葉に嫌悪感があるようだが、噺家って誰もが日々自分で演出を考え自分で演じる職業じゃないの。一之輔の高座を見ていると、毎回演出を変えているし、それが魅力だろう。
一之輔にとっては、落語を聴いてきちゃあ感想を書いているアタシの様な存在は信じられないかも知れない。それも決して否定はしないが、落語好きにも色々なタイプがあり、その楽しみ方の違いは尊重すべきではなかろうか。
どうも、毎度ここの所が引っかかるのだ。
ネタはお馴染みだが、スローモーションも入れて動きがより派手になっていた。

天どん『クラブ交番』、キャバクラみたいな交番を描いた新作だが、面白くなかった。落語に出てくる登場人物は誇張されていても、どこか自分にもそういう面があるなとか、周りに似たような人間がいるなとか、そう思わせる所が大事だ。その点が欠けている。

白酒『首ったけ』、待っているのに敵娼(あいかた)は来ない。それなら寝ちまおうとするが向こう座敷がドンチャン騒ぎで寝られない。しかもその座敷に敵娼がいるとなれば余計にイライラする。ついつい強い調子で文句を言って喧嘩となり、勢いで店を出てしまう。まあ、こういう事って、花魁と客の関係だけではなく、男女間の普遍的な出来事と言える。
深夜あてもなく店を出て、仕方なく男は向かい側の店に上がる。ところが、その店のオショクが以前から男にトンと来ていて、これ幸いの大サービス。これとて向かい側の店のオショクとの意地の張り合いという面も濃厚なのだ。ともかく有頂天になった男は店に通いつめうが、金がなくなり暫くは稼ぎに精を出す。
ある日、吉原が火事ときいて駆け付けた男が、お歯黒ドブに落ちている女を発見する。顔を見ると前の店の敵娼。
「てめえなんざ沈んじゃえ」
「そんなこと言わずに助けとくれ。今度ばかりは首ったけだよ」
噺はここで終わるのだが、この先、男と敵娼はこれを機会に因りを戻すのではないだろうか。そんな予感がする。
一編の噺の中に男女の情愛の機微がちゃんと描かれているわけで、こういうとこが古典落語というのは実に良く出来ている。
白酒の高座はそれぞれの人物を鮮やかに演じ分け、良い出来だった。

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2017/03/21

新宿末廣亭3月中席・昼(2017/3/20)

新宿末廣亭3月中席昼の部・楽日

前座・柳家小多け『たらちね』
<  番組  >
三遊亭歌太郎『酒の粕』
伊藤夢葉『奇術』
柳家海舟『ぞろぞろ』
古今亭文菊『ざる屋』
ホンキートンク『漫才』
宝井琴調『愛宕山誉の梅花』
柳家喬之助『締め込み』
柳家小菊『粋曲』
柳家はん治『ぼやき酒屋』
林家種平『お忘れ物承り所』
林家楽一『紙切り』
柳家小満ん『悋気の火の玉』
─仲入り─
春風亭百栄『コンビニ強盗』
ロケット団『漫才』
柳家小ゑん『ミステリーな午後』
柳家小団治『長屋の花見』
翁家社中『太神楽』
柳家小里ん『一人酒盛』

小言幸兵衛さんの記事を読んで急に末廣亭に行きたくなり、3月中席楽日の昼の部へ。
以前にも書いたことだが、寄席というのは芝居と一緒で、全体の流れや、その中で各個人(又はグループ)が役割を果していたかどうかが評価のポイントとなる。
必要なら自分の出番では敢えて表現を抑えたり、逆に過剰な演出をしてみたり、固いネタが続く時は漫談で逃げることだって許される、それが寄席というものだと思う。
そうしながらも、それぞれの出演者は客からある程度は受けねばならない。そこの兼ね合いが難しいし、プロとしての技が試される。
技術論は幸兵衛さんにお任せして、当方は感想をいくつか。

前座の小多け『たらちね』、最近よく高座に出会うが、師匠譲りの端正な高座は好感が持てる。

歌太郎『酒の粕』、この日は客が次第に増えてゆき、仲入りの頃には2階席まで一杯の入りだったようだ。浅い出番ではざわついた雰囲気の中で客席を温める役割が求められる。長目のマクラに軽いネタで逃げたが、務めは果たした。

海舟『ぞろぞろ』、客席が落ち着かない事を考慮しても、不出来だった。いくつも細かないい間違いがあり、稽古不足を感じさせた。

文菊『ざる屋』、短い時間で序盤を締めたのはさすがだ。真打も上中並に分かれるが、文菊は間違いなく上である。

ホンキートンク『漫才』、ボケがこの日程度に抑えた方が、このコンビは面白い。

琴調『愛宕山誉の梅花』、この人の寄席の出番が多いのは、色物としての講談に徹しているからだろう。

喬之助『締め込み』、真打昇進して10年。明るいのは結構だが、そろそろ自分の型が欲しい。

小菊『粋曲』、ただただ❤。

はん治『ぼやき酒屋』、桂文枝作だが、東京ではこの人の十八番といっていいだろう。唄い調子の様なはん治の語りにネタのセリフがよく合っているのだ。

種平『お忘れ物承り所』、久々だ。マクラで、電車に8千万円忘れた人がいたが、そんな大金を持ってたなら電車になぞ乗るなと言っていた。忘れ物のほとんどは網棚の上だそうだから、手から離さないことが肝要。
こちらも文枝作だが、前半をカットし、サゲは変えていたようだ。敢えて文枝の作品を並べるという趣向だったのかも。

楽一『紙切り』、身体は動かさなくとも紙は切れるんだね。

小満ん『悋気の火の玉』、マクラからネタまで、ほとんど黒門町そのまま。本妻の「フン」の形が宜しい。

百栄『コンビニ強盗』、寄席に来るチャンスが少ないお客が多かったのか、定番のマクラが受けていた。この人は滑舌の悪さを逆手に取って成功している。

ロケット団『漫才』、以前からツッコミの倉本剛が痩せて顔色が悪いのが気になっていたが、やはり胃の手術で入院していたとのこと。未だ本調子ではないようだが、大事にして欲しい。「一つの事を疑うと他も全て疑って見えてしまうこと」「稲田大臣!」、その通り。

小ゑん『ミステリーな午後』、久々だ。ネタは自作のようで、昼の食事格差をテーマに中年サラリーマンの悲哀を描いたもの。人物設定がステレオタイプ過ぎて、あまり面白いとは思わなかったが、愛嬌と勢いで聴かせてくれた。

小団治『長屋の花見』、初見。本寸法の季節ネタ。アタシとおない年だが、若く見える。

小里ん『一人酒盛』、このネタは相手を無視して一人だけで酒をたいらげてしまう男をどう描くかがポイントとなるが、小里んは好人物に描いていた。つまり、この男は相手も一緒に楽しんで飲んでいるのだと勝手に錯覚している。だから相手に迷惑を掛けているという自覚が全くない、好人物だが無神経なのだ。こういう人物ほど腹が立つことはない。
ほとんどが一人で酒盛する男のモノローグという難しい噺だが、表情やセリフ回しでこの男の性格を巧みに描いていた。聞いていて、こっちも腹が立ってきた。
小里ん、ますます師匠に似てきましたね。

お馴染みの人、珍しい人、久しぶりの人、初めての人、それぞれに楽しかった。

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2017/03/19

「雲助蔵出し ぞろぞろ」(2017/3/18)

「雲助蔵出し ぞろぞろ」
日時:2017年3月18日(土)13時
会場:浅草見番
<  番組  >
前座・柳家小多け『子ほめ』
春風亭朝之助『だくだく』
五街道雲助『千早ふる』
五街道雲助『おせつ徳三郎(上)花見小僧』
~仲入り~
五街道雲助『おせつ徳三郎(下)刀屋』

雲助は先ず挨拶代わりにと1席目『千早ふる』。
歌の分けを訊きにきた男に対し、知ったかぶりの男は言語左右にして誤魔化しながら物語を考え出すが、その過程を雲助は巧みな表情変化で示し場内は爆笑。

続いて2,3席目は『おせつ徳三郎』の通し。
前半は『花見小僧』のタイトルで演じられるが、近ごろでは寄席の高座にかかる機会は極めて少ない。これから花見シーズンを迎えると『長屋の花見』と『花見の仇討ち』は嫌になるほど聴かされが、これと『花見酒』は演じ手が少ない。
むしろ後半の『刀屋』の方がお馴染みになっている。
これが「通し」となると、こうした会でしか聴けないので、良い機会に巡り合った。

『おせつ徳三郎』上中下のあらすじは次の通り。
【上・花見小僧】
日本橋横山町の大店の一人娘おせつは評判の器量よし。17歳になり大旦那は婿取りの話を持ち掛けるが、どれも気に入らず断られる。番頭を呼んで悩みを心当たりをきいて見ると、どうやら奉公人の徳三郎と深い仲になっているらしいとのこと。どうやら去年の春に向島に花見に行った辺りがきっかけになった様子。
本人たちに問い詰めたところで口を割らないからと、番頭は花見に二人と婆やのお供で同行した小僧の長松から話を聞き出すことを勧める。その際、長松が忘れたと言ったらお灸をすえると脅かし、話をすれば宿下がりを毎月にして内緒で小遣いも渡すと甘言を弄するよう大旦那にアドバイスする。
早速、大旦那h長松を呼び出して事情を聞く。当初は忘れたの一点張りだったが、脅したり賺したりするうちに、長松から花見の後のお茶屋で二人が結ばれた様子を聞き出す。
こうなったら放ってはおけないと、徳三郎は暇を出され叔父の家に預けられる。
それにしても江戸時代の17歳(当時は数えだから、今なら16歳ぐらい)の生娘というのは、実に大胆だったんですね。
【中、通常は省略され下の冒頭にあらすじとして紹介される】
叔父の家に預けられていた徳三郎に、おせつが婿を取るという話が伝わる。それも、おせつが相手を見初めて望んだもので、婚礼は今日行われると。
おせつの裏切りに怒りを燃やした徳三郎は叔父の家を飛び出す。
【下・刀屋】
村松町の刀屋の店に飛び込んだ徳三郎、とにかく人が斬れる刀を、それも二人だけ斬れれば良いなどと言い、店主が差し出す刀を店の中で振り回す始末。
店主は事情を察し徳三郎をなだめ事情を訊くと、彼は友人の出来事としておせつとの馴れ初めから今日に至る経緯を話す。
聞いていた店主は、それは奉公人が間違っているし、切り替えて婿取りを決心した娘は親孝行で偉いと褒める。納得にいかない徳三郎に対し店主は、本当に敵討ちをしたかったら一生懸命に働き成功して大店の主となって見返してやれと励ます。徳三郎も店主の諭しに納得しかける。
そこへ、おせつが婚礼の席から飛び出して逃げ、行方知れずになったという知らせが刀屋の店主の元に伝わる。
徳三郎は脱兎のごとく飛び出して両国橋へ向かい、おせつのために身を投げようとする。するともう一人同じ様な人影が。見ればおせつ。
二人で心中しようとするが、直ぐそこまで追手が迫っていて果たせず、深川の木場まで逃げてくる。橋にかかると、ここで心中をと決めた二人はザンブと川の中へ飛び込む。
ところが、木場だから下は筏が一面にもやってあり、二人はその上に落っこちた。
「あっ痛! 徳や、なぜ死ねないんだろう?」「お嬢さん、水がなくっちゃ死ねません」
おせつが川の水をすくって一口飲み、
「徳、お前もお飲み」
でサゲ。

雲助の高座の『花見小僧』では、大旦那に脅され困惑しながら話を小出しにしてゆく長松の姿と、生々しい情景に次第に怒りを募らせる大旦那の姿が対比され、好演。
長松が語る二人の交情の様子で、常に娘のおせつの方が積極的にリードする姿が描かれるが、これが後半の伏線になってゆく。
『刀屋』は一転して人情噺。刀屋の主人が、自分の放蕩息子を手に負えず勘当したが、その身を一日たりとも思わす日はないという話しをして徳三郎の気を鎮め、彼の身の上話しを引き出す演出に説得力があった。
そして徳三郎の行為を頭から否定し、相手のおせつを褒めることにより、徳三郎も次第に冷静さを取り戻す。
その一方で、徳三郎が一銭も使わずおせつと交わった事について、吉原で太夫を買えば大金が掛かるのにお前はタダで出来たんだから幸せだと言って諭す辺りに、この主人の洒落っ気も感じさせていた。
この様に後半の雲助の高座では、一本気な徳三郎に対し、老獪で洒脱な刀屋の主人の姿を配し、これまた好演。
サゲも、通常の「今のお材木(題目)で助かった」を変えて、独自の工夫をしていた。

『おせつ徳三郎』の通しを改めて聴いてみると、非常に良く出来た噺だと思った。ストーリーに無理や無駄がなく、前半の滑稽噺(この部分は初代三遊亭円遊の改作らしいが)から後半の人情噺への転換も巧みで、名作の部類に入ると思う。
ただ、これを演じるには相当の力量が必要で、やはり雲助クラスでないと無理だろう。

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2017/03/11

鈴本演芸場3月上席・昼(2017/3/10)

鈴本演芸場3月上席昼の部・楽日

前座・柳家緑助『たらちね』
<   番組   >
春風亭ぴっかり『こうもり』
松旭斉美智・美登『奇術』
桂南喬『鮑のし』
春風亭一之輔『人形買い』
ニックス『漫才』
入船亭扇遊『権助芝居』
三遊亭歌奴『佐野山』
翁家社中『太神楽曲芸』
柳家権太楼『代書屋』
─仲入り─
三遊亭小円歌『三味線漫談』
桃月庵白酒『ざる屋』
桂藤兵衛『替り目』
林家二楽『紙切り』
春風亭正朝『野ざらし』

3月10日は鈴本演芸場の昼の部へ。上席の楽日であるこの日は、若手、中堅、ベテランがバランス良く組み合わされて豪華な顔ぶれだ。そのせいか、平日の昼にも拘わらず客の入りも良かった。
中身もそれぞれが持ち味を発揮して、充実した楽日だった。

ぴっかり『こうもり』
社会人落語家微笑亭さん太が、春風亭小朝のために書き下ろした新作落語の一つ。『鶴の恩返し』のパロディの様な作品。助けられたコウモリが吸血鬼というひねりがある。コウモリが変身した少女の仕草が演者と重なり、成功していた。
ぴっかり、マクラでの客の掴みが上手くなってきた。

美智・美登『奇術』
アメを客席に投げるのは失礼だと思うけどね。

南喬『鮑のし』
この人の演じる甚兵衛さんはお人好しで、だから周囲から可愛がられている様子が分かる。
登場人物に対する演者の目の優しを感じる。

一之輔『人形買い』
人形店の小僧が大活躍。人形が安く買えたと喜ぶ二人の男に、実は一昨年からの売れ残りで、主が「店に出しておけば、どこかの馬鹿が引っかかって買っていく」という商品だと聞かされ唖然とする。おまけに店の若旦那と女中との色ごとまで聞かされる。こましゃくれた子どもを演じさせたら一之輔の独壇場。

ニックス『漫才』
睡眠中。

扇遊『権助芝居』
寄席も芝居も一人で行くので、周囲の会話を聞くのも楽しみの一つだ。時には高座より面白いことがある。
先日もプログラムに「馬生」の名を見つけた老夫婦。
「きんばらてい馬生か。もういい年だよな。」
「えー、もう死んだんじゃないの?」
「いや、まだ生きてんじゃないのかな。」
本人が登場すると、
「やっぱり違ってた。」
本人が聞いたら苦笑するだろうね。
この日の扇遊の高座について、
「この人ね、上手いんだけど、印象に残んないだよね。」
と言ってる方がいた。
確かに、この日のようにインパクトの強い人が並ぶと、印象が薄くなってしまう感はある。

歌奴『佐野山』
得意の呼び出しや行司、場内アナウンスの物真似で場内を沸かす。歌奴の鉄板ネタ。

翁家社中『太神楽曲芸』
土瓶芸はいつ見てもお見事。師匠も泉下で喜んでいるだろう。

権太楼『代書屋』
十八番のスマホのマクラから、これまた十八番のネタ。
男が代書屋から学歴を訊かれ小学校と答えると、なんという名の小学校かと言われると、
「えーと、なんだっけなー、あーっ、森友学園!」
でサゲていた。

小円歌『三味線漫談』
11月に立花家橘之助を襲名予定であることが発表されている。
橘之助については書籍や記事でしか知らないが、襲名にあたり芸も継ぐのか、それとも名前だけ継ぐのかが注目される。何となく後者のような気がするのだが。

白酒『ざる屋』
寄席の短い出番でお馴染みのネタ。短時間でもしっかりと笑いを取っていた。

藤兵衛『替り目』
藤兵衛が描く酔っぱらいは泥酔状態ではなく、程よく酔っている感じだ。さっぱりとした芸がこの人の特長だ。

二楽『紙切り』
随分痩せた印象だが、健康上に問題はないだろうかと心配になった。この日のお題は「お花見」と「卒業式」。

正朝『野ざらし』
8代目柳枝より3代目柳好に近い演出で、釣り竿を上下に激しく振りながら気持ち良さそうに「さいさい節」を唄う。
妄想で年増の幽霊とイチャイチャして鼻を釣り上げ、針を捨てる所で切っていた。
トリ根多としては物足りなさも感じたが、前方に濃い人が多かったのでこれもアリか。

楽しめた楽日、これにてお開き。

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2017/03/05

国立演芸場3月上席(2017/3/4)

国立演芸場3月上席4日目

前座・春風亭朝七『子ほめ』
<  番組  >
柳家花ん謝『権助提灯』
柳家三語楼『河豚鍋』
花島世津子『奇術』
柳亭燕路『安兵衛狐』
春風亭一朝『三方一両損』
─仲入り─
すず風にゃん子・金魚『漫才』
橘家圓太郎『真田小僧』
柳家小菊『粋曲』
柳家小さん『長屋の花見』

今年初めての国立演芸場。久々の人が何人かいたので、それを楽しみに。

前座の朝七『子ほめ』、落ち着いた高座で語りもしっかりしている。年齢から察すると入門が遅かったようだ。最近の入門者の多くは落研出身だが、もしかして天狗連かと思わせるほどの出来だった。

花ん謝『権助提灯』、こちらも落ち着いた語り口。登場人物の演じ分けも出来ており良かった。天気が荒れているからと旦那を妾の家に行くよう勧めるのも、女房のヤキモチという解釈。後は、女同士の意地の張り合いだ。その情景はしっかりと描かれていた。

三語楼『河豚鍋』、元は上方のネタだが、最近は東京でも度々演じられている。旦那と幇間が鍋を挟んで河豚を押し付け合うという姿は良く描かれていた。ただ河豚を咀嚼する時間が長すぎて、ダレた感がある。煮た河豚の身は柔らかいのであまり噛む必要はないと思うが。

世津子『奇術』、椅子に縛られたまま客の上衣を着るというマジックにはいつも感心する。どういう仕掛けなんだろう。

燕路『安兵衛狐』、上方落語の『天神山』を3代目小さんが東京に移して『墓見』。『安兵衛狐』で演じた志ん生の独壇場だった。
燕路の持ち前のテンポの良さが活きていた。
源兵衛が幽霊を女房にして、「前から夜だけの女房が欲しいとおもってた」というのは実感だろう。アタシも欲しい。

一朝『三方一両損』、十八番のネタ。熊五郎と金太郎の江戸っ子らしい気風と啖呵を聴かせ所にしてスピーディな展開。今日も一朝懸命な高座でした。

圓太郎『真田小僧』、前座噺も圓太郎クラスが演ると断然面白くなる。
あの小僧、きっと将来は噺家になったろう。

小菊『粋曲』、この日はアンコ入り都々逸で、新内を一節。もう、ウットリ♡

小さん『長屋の花見』、偉大な先代の跡を継いだので、どうしても世間の目は厳しくなる。それを割り引いても、感心しない。
先代と比べても致し方ないが、語りが単調なのだ。もっとセリフの抑揚や緩急、声の高低を駆使する必要があると思うのだが。

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2017/03/03

三越きらめき寄席(2016/3/2)

三越落語会特別企画「三越きらめき寄席」
日時:2017年3月2日(木)午後6時
会場:三越劇場

前座・笑福亭希光『時うどん』
<  番組  >
桂宮治『蜘蛛駕籠』
柳亭市弥『紙入れ』
神田松之丞『雷電の初土俵』
春風亭柳朝『ねずみ』
~仲入り~
柳亭小痴楽『粗忽長屋』
隅田川馬石『幾代餅』

三越劇場は今年創立90周年を迎えるという事で、特別企画の会を催すようだが、今回もその一つ。
顔ぶれは、
落協の若手真打+芸協の成金+α
という組み合わせ。
以下、寸評。

宮治『蜘蛛駕籠』
そんなにギラギラせんでも、と、ついつい思いたくなる。
押し付けがましいというか、エゲツナイというか、どうもあの芸風は好きになれない。
このネタの多彩な登場人物の演じ分けが不十分で、技術的にはまだ粗い。

市弥『紙入れ』
このネタの最も肝心なのは、お店の女房の造形だ。人妻でありながら、出入りの若い男を咥えこもうというのだから、相当なもんだね。
新吉を誘うときも年増の色気をださなくっちゃいけないが、品が無いと女郎になってしまう。婀娜な年増の色気を出すには、年が若いので無理かな。

松之丞『雷電の初土俵』
いつも冒頭に、従来の講談を演り方の否定から入るのだが、あまり感じもいいもんじゃない。例えば過去の講談は分かりにくかったと切って捨てる。
アタシが小学校低学年で寄席に連れられて行っていた当時、貞山、貞丈、馬琴といった名人上手が健在だったが、講釈はアタシでもよく分かったし面白かった。
だから、過去の講談が難しかったなどと断言するのは間違いだ。
講釈の世界に新風を送ろうという意欲は買うけどね。

柳朝『ねずみ』
この人の最大の特長は佇まいだ。動きが綺麗だし声も良い。
客引きの坊やのいじらしさや、甚五郎の風格も十分に表現されていた。
ねずみ屋の主の独白では、もう少し緩急が欲しいと思った。さすれば観客がもっと感情移入するとのでは。

小痴楽『粗忽長屋』
上手い。マクラで客をつかみ、ネタへの入り方も巧みだ。
粗忽な男と、行き倒れを監視している役人との掛け合いの「間」も良い。
熊が逡巡しながら自分の遺体を確認する姿も良く出来ていた。
全体として、このネタのシュールな感じが伝わっていた。
他の若手とはモノが違う。

馬石『幾代餅』
この日改めて感じたのだが、この人って「フラ」があるね。存在しているだけで、何となく可笑しい。
あまり緩急をつけずサラリと演じたのは、いかにもこの人らしい。
それでも面白さは伝わってきた。

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2017/02/19

突然ですが、「ザ・桃月庵白酒 其の三」(2017/2/18)

大手町落語会「ザ・桃月庵白酒 其の三」
日時:2017年2月18日(土)13時
会場:よみうり大手町ホール
<  番組  >
桃月庵白酒『死神』
桃月庵白酒『青菜』*
~仲入り~
桃月庵白酒『甲府い』*
桃月庵白酒『うどん屋』
*)ネタ出し

当ブログは今月休載中だが、今日と他にもう一日に限りの臨時開店。
月の前半にパキスタンに行き、撮影した1000枚ほどの写真整理に追われている。現地ガイドの案内を右から左へと聞き流しながらカメラのシャッターを押していたので、写真がどこで何を撮ったものなのかを調べるのに時間がかかっている。
一段落したら「別館」で旅行記の掲載を開始するので、こちらのサイトは3月に入ってからの再開になる予定。

大手町落語会の「ザ・」シリーズは、さん喬・権太楼と白酒の三人が交互に演じている。一人4席というハードな会なので、持ちネタが多く集客力のある演者に限られることになる。そうなると若手ではやはり白酒が一番手だろう。
マクラで内輪話のいくつかを披露していたが、その中で寄席の難しさを語っていたのが印象に残った。寄席は個々の芸人が後ろ後ろへとつなぎ、最後のトリを引き立てるという構成になっていて、その流れの中で個々の役割を果さねばならない。その中で一人でも流れを壊す人が出てくると、全体がぶち壊しになるというケースが少なくない。だからと言って適当に演じると、観客から不満が出る。この兼ね合いが難しいのだと。
寄席の出番については1年先まで決まっていて、小三治の場合は2年先まで予定が入っているそうだ。
噺家として食っていけるかどうかが問われるのは40代、50代になってからで、気が付いた時にはどうにもならないとも。
フ~ン、成るほど。
高座は四季に因んだネタを各一席。

『死神』春
通常の死神と異なり、明るく健康的な死神という設定だ。死にたいと言う男に対し「一緒に頑張ろう」と激励する。
死神のアドバイスですっかり成功した男、ずに乗ってオークションで一番払いのよぃ患者を優先して診察する。
男が京大阪で女と散財する箇所はカットし、いくら稼いでも浪費癖でスッカラカラカン。
大金をあてこんで行った患者だが、死神が枕側に座っている。そこで店の奉公人を使って「カゴメカゴメ遊び」を始め、気が付いた時は死神が足の側に。
後は、通常通りに死神に無理やり連れられ蝋燭の洞窟に。今にも消えそうな蝋燭を無事に新しいのに移し替えたと思ったら、溶けた蠟が手元に垂れてきて、ついつい・・・・。
白酒は、オリジナルの暗さを消して、カラッと明るい一席にまとめた。

『青菜』夏
後半の植木屋夫婦の会話や、友達を家に引き込んでお屋敷の真似をする場面は白酒らしい爆笑の高座だったが、前半のお屋敷の場面では主人の風格を含めてもっと涼しさを感じる演じる方が望ましい。

『甲府い』秋
あまりに「善い人」ばかり出てくるのと、儒教色や宗教色が強いネタとして敬遠される傾向にあるが、白酒の高座ではそうした「色」を薄くして演じた。
豆腐屋の主人も単なる善人ではなく、それなりに計算した上での善意だった様にも思われリアリティを感じる。
この人の明解な語りが生きていた。

『うどん屋』冬
しつこい酔っぱらいの描写は良く出来ていたが、うどん屋が荷をかついで売り歩くときに肝心の真冬の寒さが感じられなかった。そのため、サゲがややぼけてしまった感がある。

若手真打では白酒が先頭を切っているが、直ぐ後ろを一之輔が追いかけて来ているので、うかうかしていられまい。

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2017/01/25

彦六由縁落語会(2017/1/24)

八代目林家正蔵師没後三十五年「彦六由縁落語会」
日時:2017年1月24日(火)18:45
会場:日本橋社会教育会館
<  番組  >
前座・春風亭一花『やかん』
春風亭一之輔『啞の釣り』
橘家文蔵『天災』
桂藤兵衛『首提灯』
~仲入り~
八光亭春輔『松田加賀』
春風亭一朝『中村仲蔵』

8代目林家正蔵(彦六の正蔵)が亡くなって35年がたち、それを機に所縁の演目を一門の噺家が演じるという趣向の会。
一門と言ってもこの日の出演者でいえば直弟子は八光亭春輔と桂藤兵衛(彦六死後に先代文蔵門下に移籍)の二人で、一朝と文蔵は孫弟子。一之輔にいたっては曾孫弟子で彦六に会ったこともない。林家木久扇の物真似でしか知らないそうだ。
亭号がバラバラなのもこの一門の特長で、これは8代目が正蔵を襲名した際の複雑な事情に起因する。

前座の一花『やかん』
女流の前座としてはしっかりとした語りで、機転も利きそうだし楽しみな存在になりそうだ。

一之輔『啞の釣り』
何でも思いっきり出来ちゃう一之輔、持ちネタの豊富さも若手でトップだろう。
身障者を戯画化する様な内容だが、ここまであけっぴろげに演じられると却って清々しささえ覚えてしまう。

文蔵『天災』
八五郎が大家に離縁状を書いてと頼みに来るところから、「・・・天災だろ?」「なに、先妻の間違いだ」のサゲまでのフルバージョン。
強面の八五郎は文蔵とダブり、紅羅坊名丸の心学によって変心してゆく過程が描かれていた。
ただ冒頭部分は別のネタ『二十四孝』と重なるので、ここは5代目小さん流に八五郎が心学の先生を訪れる所から始めた方が良いのでは。

藤兵衛『首提灯』
マクラで『試し斬り』『胴斬り』を演じたあと、本題へ。
見所は、田舎侍に対する江戸っ子の啖呵(やり過ぎではあるが)と、首を斬られた男の首が次第に胴とずれてゆく動き。
藤兵衛は長い顔の利点を活かし、特に首が前にガクンと落ちる動きが見事。

春輔『松田加賀』
初見、ネタも初めて。
粗筋は。
江戸時代、盲人は大きく4階級に分かれ最高位は検校。違いは杖の頂部の形状で、もし街頭でぶつかり合った場合は互いに杖をさぐり、相手の身分を知ることができた。
本郷の雑踏で検校と小僧按摩がぶつかり、杖で相手が検校だと知った小僧按摩があまりに恐れ多くて言葉もでずぺこぺこと頭を下げるばかり。検校にはそれが見えないから、怒って杖でめった打ち。
周囲に野次馬が取り囲むが、何もできない。
そこへ通り合わせたのが、神道者で松田加賀という男。
自分が一つ口を聞いてやろうと丁重な言葉で仲裁に入る。
検校もこれで機嫌を直し、あなたのお名前を伺いたいという。
「これは失礼いたしました。私はこの本郷に住んでいる、松田加賀と申します」と返事をしたが、興奮が冷めない検校は本郷のマツダをマエダと聞き違えて、これはすぐ近くに上屋敷がある、加賀百万石の殿様と勘違い。杖を放り捨ててその場に平伏。
加賀も、もう引っ込みがつかないから殿様に成りきって検校を諭す。
検校がいつまでも這いつくばっているので、松田はお祓い向かうのでこの場を離れる。
そうとは知らない検校は、いつまでも平伏を続けている。
周囲の野次馬連中が喜んで一斉にわっと笑うと、検校は膝をたたき
「さすがは百万石のお大名だ、たいしたお供揃え」
でサゲ。
これだけの噺だが、春輔の声も語りの口調も彦六に似た唄い調子。実に良いのだ。
こうしたあまり演じ手のいない彦六のネタを継承していることに敬意を表す。
そして1席終えた後の「深川」の踊り、これがまた見事。さすが、藤間流の名取りだけのことがある。

一朝『中村仲蔵』
このネタ、色々な人が高座にかけるが、やはり8代目正蔵が最高だと思う。
一朝の高座はマクラで歌舞伎のエピソード(六代目中村歌右衛門のが特に面白かったが、勿体ないので教えてあげない)を披露し、ネタへ。
ほぼ正蔵の演出に沿ったものだが、一朝独特の柔らかい語りが、より世話物風の色を濃くしていた。
この会の締めに相応しい一朝の高座、結構でした。

こういう会に出会うと得をした気分になる。
来られなかった方は残念でした。

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2017/01/24

#6吉坊・一之輔二人会(2017/1/23)

第6回「吉坊・一之輔 二人会」
日時:2017年1月23日(月)18時45分
会場:日本橋公会堂
<  番組  >
前座・柳家小たけ『たらちね』
春風亭一之輔『黄金の大黒』
桂吉坊『けんげしゃ茶屋』
~仲入り~
桂吉坊『親子酒』
春風亭一之輔『三井の大黒』

数ある「二人会」の中でも最も内容が充実していると思うのがこの「吉坊・一之輔 二人会」だ。
東西の俊英がぶつかり合うという趣旨が生きているし、いずれこの二人は東西の落語界を背負うであろう(一之輔は既に背負ってるか)。
推測にすぎないが、この二人は特に仲が良いわけではない気がする。というのは、多くの二人会では相手の高座について一言感想を言ったり、時にはイジッタリするのだが、この会ではそうした光景は見られない。
例えば、吉坊が2席目の後で踊りを見せて拍手を浴びたが、次に登場した一之輔はこの事を全くスルー。
こういう何となく張り合ってるという雰囲気が好きだ。

桂吉坊、上方の落語家についてごく浅い知識しか持っていない者として僭越ではあるが、今まで見てきた中で最も桂米朝の芸を継いでいる人だと感じている。
もちろん芸に深さ、とりわけ高座での艶では大師匠に遠く及ばないものの、年齢を考慮すれば米朝の芸に近づくことは十分可能だと思う。
もっともアタシの歳では、それを見届ける事は不可能だが。
と、これだけ褒めときゃ、後でご祝儀が届くかも。
無いかな。

一之輔『黄金の大黒』
マクラで末広亭の小三治の代バネに呼ばれたと言っていた。そういう位置にきているということだ。
このネタ、中途で切るケースが多いが、サゲまで演じた。
長屋の住人同士の店賃をめぐる会話、羽織を回しっこして代わる代わる大家に口上を言う場面、ご馳走を前にして狂喜する長屋の面々の描写、大家の倅の悪戯を咎めて膝蹴りしたと言って大家を慌てさせる場面、いずれもポイント掴んで楽しませてくれた。
金ちゃんのお祝いの口上が特に傑作。

吉坊『けんげしゃ茶屋』
「けんげしゃ」というのは縁起担ぎを指すらしい。米朝の師匠の時代でさえ使われていなかった言葉だそうで、古い表現だ。
色街というのは縁起を担ぐのだが、この噺の主人公の旦那はわざわざ縁起の悪い言葉を使って相手をからかうのが趣味だ。
大晦日、居場所がなくて街をぶらつく旦那に、出入りの又兵衛が出会う。ミナミにと誘われた旦那は、ミナミに囲っている芸者の国鶴の所に悪戯を仕掛けることを思い付き、又兵衛に元日に十人ほどの人数を引き連れて葬礼姿で国鶴の茶屋に繰り出してもらいたいと頼む。
元旦に旦那は国鶴のいる茶屋に出向き、新年の挨拶に出て来た国鶴や女将にさんざん不吉なことを言って困らせる。
ここに又兵衛ら一行が葬礼姿で店に現れ、これ又縁起の悪い言葉を並べる。
茶屋の女子衆が悲鳴を上げると、これを聞きつけた幇間が座敷に上がってきて、陽気に騒ぎ出す。これでは趣向がぶち壊しと旦那が激怒し、幇間を𠮟りつける。
慌てた幇間は、今度は死に装束に位牌を手にして不吉な事を言って、旦那を喜ばす。
「これまで通り、贔屓にしてやる」
「ご機嫌が直りましたか? ああ、めでたい」
「また、しくじりよった!」
でサゲ。
ストーリーは他愛ないもので、茶屋遊びの雰囲気、特に色街の元旦風景が描かれているかが噺のポイントだ。
吉坊は歳が若いのに茶屋遊びの描写が上手く、元旦の華やかな模様が良く描かれていて、だからこそ旦那の縁起の悪い遊びが際立つ。
こうした茶屋遊びのネタに上方落語の本領があるのだと思う。

吉坊『親子酒』
一転して大酒飲みの滑稽噺。
東京でもしばしば演じられるが、上方のは先ず父親が泥酔して家に戻り、息子が帰って来ていないと聞くと怒り説教してやると息巻きながら寝てしまう。
一方、息子の方も泥酔して帰宅途中でうどん屋に寄り、うどんの上に山盛りの唐辛子をかけてしまい食べられず。自宅がどこにあるかも分からず、近所の玄関を片っ端から叩く始末。ようやく自宅に辿り着くが、寝ている父親につまずいて転んでしまう。
この後のサゲは東京と同じ。
見所は息子の嫁さん相手に父親が息子の飲酒癖を怒りながら寝入ってしまう場面と、息子がうどんに唐辛子を掛け過ぎ無理に食べる場面。
この噺を得意としていた桂枝雀ほど弾けてはいなかったが、親子の酔っぱらう姿を吉坊は楽しそうに演じ、客席を沸かしていた。
一席終わった所で、『合羽や』の踊りを披露。
これがコミカルながら、形がしっかりとしていて結構なもの。
『合羽や』
♪城の馬場で日和が良うて合羽やが合羽干す
にはかに天狗風合羽舞上がる
合羽や親爺がうろたえ騒いで堀えはまる
あげておくれつめたいわいなオオキにはばかりさん
一里二里ならてんまでかよう五里とへたづりやマァ風便り♪
(「上方座敷唄の研究」サイトより)

一之輔『三井の大黒』
こうしたネタも難なくこなしてしまう、この人の才能には驚く。
甚五郎、大工の政五郎、その女房、弟子たち、それぞれの人物の演じ分けも申し分なく、堂々たる『三井の大黒』だった。

4席、全て満足した。

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2017/01/23

三遊亭兼好独演会(2017/1/21)

「お宝三席・兼好独演会」
日時:2017年1月21日(土)19時30分
会場:なかの芸能小劇場
<  番組  >
三遊亭兼好『厄払い』
三遊亭じゃんけん『真田小僧』
三遊亭兼好『千早ふる』
~仲入り~
三遊亭兼好『うどん屋』

21日は久々に昼夜のダブルヘッダー。昼は可朝で夜兼好。
この会場では「らくご長屋」シリーズとして、定期的に落語家の独演会が行われている。
兼好もここで毎月独演会を行っているが、この日は「お宝三席・兼好独演会」と題しての特番の会だ。
さて、どんなお宝が演じられるのか。

兼好『厄払い』
開口一番で本人が登場し、年末から正月にかけての季節限定のネタを。
かつては黒門町の持ちネタであり、米朝や小三治など大物が高座にかけている。
仕事もせずブラブラと過ごす与太郎に、見かねた叔父が大晦日だからと厄払いを勧める。お礼に小銭と煎り豆が貰えるから母親に渡すようにと言われる。
厄払いの口上は、
「あーらめでたいなめでたいな、今晩今宵のご祝儀に、めでたきことにて払おうなら、まず一夜明ければ元朝の、門に松竹、注連飾り、床に橙鏡餅、蓬莱山に舞い遊ぶ、鶴は千年、亀は万年、東方朔は八千歳、浦島太郎は三千年、三浦の大助(おおすけ)百六ツ、この三長年が集まりて、酒盛りをいたす折からに、悪魔外道が飛んで出で、妨げなさんとするところ、この厄払いがかいつかみ、西の海へと思えども、蓬莱山のことなれば、須弥山(すみせん)の方へ、さらぁりさらり」
と長く、与太郎にはとても憶えられない。
口上を紙に書いてもらい、早速町へ出かける。
他の厄払いに一緒に行こうとお願いするが断れる。
もうヤケになって「出来立ての厄払い」と歩いていると、商家の主が面白そうだからと与太郎を呼び込み、厄払いを頼む。
お礼は前払いでと金を貰うが少ないと文句をいい、豆を貰えばその場でボリボリ食べだす。
肝心の口上は紙に書いたものを読み上げるが、それも間違いだらけ。
そのうち面倒くさくなって与太郎は逃げ出してしまう。
「あっ、だんな、厄払いが逃げていきます」
「逃げていく? そういや、いま逃亡(東方)と言ってた」
でサゲ。
兼好演じる与太郎のトボケタ味が活かされていた。
近ごろの様に歳末から正月の風景が昔と一変してしまったので、こういうネタもやり難い時代になった。

兼好『千早ふる』
マクラで、今の日韓関係のようにお互いが正しい主張をしているのに険悪になっているのに対し、落語の世界では双方が間違っているのに丸く収まると語って本題へ。
こちらも百人一首なので正月向きのネタだ。
正攻法の高座だったが、このネタを得意としている扇辰、文蔵、鯉昇らに比べややパワー不足の感あり。

兼好『うどん屋』
こちらも冬のネタで、どうやらこの日は季節感のある演目を選んだようだ。
最初に登場する婚礼帰りの男の演じ方に疑問が残った。男が婚礼の会場に着くと、花嫁になる娘が入り口で「おじさん、おじさん」と歓迎してくれたと言うのだが、それだと婚礼の席で花嫁が男に三つ指をついて「おじさん、さてこの度は・・・」という肝心のセリフが薄まってしまう。入り口での娘の挨拶は不要だと思う。
男が婚礼の様子を繰り返すとうどん屋がそれを混ぜっ返す場面では、いくつか過程がカットされていた。恐らくミスだろうと思う。
その後の、うどん屋が寒さの中を荷を担いで売り歩く姿や、うどんを注文した男が美味そうに食べる所や、うどん屋が落胆したり期待したりという表情の変化は良く表現されていた。

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