ミュージカル

2008/03/17

「ベガーズ・オペラ」@日生劇場

Beggars_opera3月15日話題のミュージカル「ベガーズ・オペラ」を観劇。日本では2006年1月に初演で、その際は全日程即完売だった由。当日は貸切公演だったがもちろん完売。それでも早めに予約したせいか、舞台上手の袖付近ではあったが、中二階の最前列で役者の動きが良く見えた。
覚悟はしていたが、観客の8-9割は女性。男も若い人が多く、もしかしたら男子最高齢ではなかったかと。精神年齢が若いんだから、まあイッカ。

芝居の背景は18世紀のロンドン、当時のスラムは犯罪の温床で、警官はいるにはいたが薄給のためワイロがはびこり、治安は最悪。おまけに当時の官職は金で買えたため、金さえあれば希望の官吏になれた時代でもあった。
治安回復のために政府が行ったのは、窃盗でも死刑にするという厳罰強化であり、密告の奨励であった。つまり密告者には多額の報奨金を出し、犯罪人を捕まえては容赦なく縛り首にした次第。
処がドッコイ、こうした治安対策を逆手にとって、仲間同士をお互いに監視させ、悪党集団を束ねる盗賊支配者が現れる。この代表的人物がジョナサン・ワイルドで、「ベガーズ・オペラ」の主人公のモデルとされている。

ジョン・ゲイが原作を書いた18世紀は、イギリスでもイタリアオペラが全盛で、物語はもっぱら古典を題材にしたロマンチックなストーリー、終わりはハッピーエンドが定番だった。
その時代に、社会の恥部をテーマにした作品を作ったのだから反響は大変なもので、この作品は当時としては記録的な大当たりをとり、史上初のミュージカルとして名を残すこととなった。
第一、「ベガーズ・オペラ」つまり「乞食のオペラ」というタイトル自身が、かなり挑戦的ではないか。
この作品はその後ドイツに渡り、20世紀に入ってブレヒトの代表作「三文オペラ」に結実する。

日本公演の演出・脚色を担当したジョン・ケア―ドによる舞台作りは、原作の持つ社会風刺や、法的正義に対する原作者の鋭い目は極力おさえ、肩がこらずに楽しめるミュージカルに仕立てたようだ。
設定には工夫を凝らし、ベガーズ(乞食)のトムが書いた台本を老役者の計らいで、大劇場で1夜限り上演できる芝居としている。出演者は一人一人様々な過去を持ちながら、今は社会の底辺にいる人たちが、それぞれ劇中で、追いはぎ、盗賊、娼婦、密告者、警官、看守などの役を演じるという、いわば二重構造の設定。
ストーリーは至って単純。主人公の追いはぎマクヒースと、彼を巡ってのポリー・ピーチャムとルーシー・ロキットという二人のヒロインによる三角関係が軸になっている。そこに親子や夫婦の愛憎が絡み、裏切ったり裏切られたり、密告したり密告されたり、そんな物語が展開し、最後は・・・と、これは観てのお楽しみ。

主な出演者だけでも、内野聖陽(マクヒース)、髙嶋政宏(ピーチャム)、村井国夫(ロキット)、橋本さとし(トム/フィルチ)、近藤洋介(老役者)、島田歌穂(ルーシー・ロキット)、笹本玲奈(ポリー・ピーチャム)、森公美子(ミセス・ピーチャム)らの豪華キャスト。
「ステージサイドシート」と称する舞台の両袖に客席が設けられ、時にはそこの観客が舞台に参加させられる。上演中あるいは休憩時間に、出演者が客席を回り話しかける、フィナーレでは沢山の観客が舞台に上がり、一緒に歌い踊る。これらは原作の持つ俳優と観客のバリアを無くすという思想に基く、演出家の工夫によるもののようだが、こうした演出方法と、人気役者を揃えたところに、このミュージカルがヒットした大きな要因があると思われる。

反面、劇的なストーリー展開と物語の深みに欠けているため、例えば「屋根の上のバイオリン弾き」「ラ・マンチャの男」「レ・ミゼラブル」「オペラ座の怪人」などのブロードウエイミュージカルと比べると、遥かに感動が薄い。観終わった後で、余り印象に残らないのが欠点といえる。

出演者では、主役の内野聖陽は演技や歌は良いのだが、無骨なイメージが強く、大勢の女を手玉に取るというジゴロのイメージとはかけ離れている。シャレッ気が足りないのだ。ミスキャストではなかろうか。
歌では森公美子がさすが真価を発揮し、島田歌穂がすっかりミュージカル俳優としての貫禄が出てきた。
橋元さとしが軽快な演技を見せて、脇の女優陣では山崎直子(スーキー・トードリー)が妖艶さで、宮菜穂子(モリ―・ブレイズン/トム・ティップル)が体当たりの演技で、それぞれ魅せてくれた。
3月30日まで。

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2005/07/23

文句なしの五つ星「プロデューサーズ」

producers
ミュージカル好きなどというと、柄にもないといわれそうですが、人間、顔で判断しちゃあいけません。ここ10年くらい、ブロードウエイミュージカルの日本公演が、度々行われています。しかし、観に行ってガッカリして帰ることも多かったのです。ブロードウエイといっても、出演者が米大リーグでいえばマイナーリーグ級なこともあり、看板倒れの公演もありました。
今回の「プロデューサーズ」日本公演では、主役級の二人がブロードウエイでも同じ役を演じていて、先ずは第一線クラスの顔ぶれといって良いでしょう。

ミュージカルは、かつてはミュージカルコメディと呼ばれていましたが、「ウエストサイド・ストーリー」あたりから、ミュージカルという言葉が一般的になったようです。呼称の変化は、ミュージカル作品の内容にも影響します。それまでの喜劇の要素が薄れ、「屋根の上のバイオリン弾き」や「レミゼラブル」のような、物語性が強いものに変わっていきます。
この「プロデューサーズ」は、ミュージカルの原点に返ったような、“笑い”の要素が濃いもので、今の観客には新鮮に映るのかもしれません。

2001年トニー賞史上最多の12部門を受賞した作品は、落ち目のプロデューサーが、金儲けを企んで史上最低のミュージカル「ヒットラーの春」を上演するが、これが予想に反して大当たりになるという、ややブロードウエイの楽屋落ちのコメディーになっています。
一昔前の、MGMのミュージカルを見ているような、懐かしさを覚えます。

全編にシモネタ満載で、私のような純情な人間は、ついつい顔を赤らめながら笑いを誘われます。それでいて、決して野卑にならないのは、演出家スーザン・ストローマンの腕でしょう。そして何より感心させられるのは、場面の転換の手際良さで、この芝居のテンポの良さを、活かし切っていました。
歌も踊りも上等、出演者も適役が配置され、ブロードウエイの層の厚みを感じます。

中でも特筆すべきは、ウーラ役のアイダ・リー・カーチスの好演です。金髪、美人、長身、色白、美脚、巨乳、コケティッシュでキュート。そして何より、セクシー。男(私だけかな?)の夢が、全て詰まったような存在感です。
オーディションに来た彼女を見た、二人の男性プロデューサーの下半身が、思わずstanding ovation(総立ち)したのも頷けます。実際の年令は40台半ばとお見受けしましたが、この女優さんのなんという色香。 この芝居、日本人での公演もあるようですが、彼女の役をやれる女優がいないでしょうから、あまり期待できませんね。
美女の話になると、ついつい力が入ってしまう、ワタシです。

オケの音が安っぽい、タップシーンでやや不揃いがあったなど、細かな瑕疵はありましが、過去のブロードウエイ来日公演では、最高の舞台であったと言って良いでしょう。
7月22日、東京厚生年金会館にて観賞。

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