日々、新聞を見ていて気付くのは宗教団体(宗教法人とその関連団体)の広告が多いことだ。それも5段抜きの大きなスペースをとったものが大半で、なかには全面広告というケースもある。
この不景気に宗教団体だけは景気がいいなぁと思われた方もおいでだろう。「やっぱり税金払ってないからな」と。
印象だけではない。ある調査によれば主要全国紙4紙に掲載された広告だけで、今年の5月6月の2か月間だけで創価学会関連が19回、幸福の科学出版が19回、ワールドメイト関連が26回とのこと。これに地方紙などを加えたら膨大な数に達するのだろう。各団体が新聞社に払っている広告代は年間で数億円になると推定されている。この中でワールドメイト関連というのがピンとこないかも知れないが、近ごろ「進撃の阪神 ロックコンサート」「ネアカ・スピリチュアル本」といった派手は広告を目にすると思うが、あの団体だ。
こうした広告は単に宗教の宣伝という意味より、新聞社に広告代を支払っていることに意味があるようだ。要はマスコミ対策ということ。
日本国憲法 第30条は、納税の義務を規定している。
「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う」
法律によって個人は所得税を、法人は法人税を納入せなばならない。違いは個人の場合は家計が赤字だろうが所得に応じて課税されるが、法人は利益に対して課税される。この他に間接税の消費税があり、消費に応じてこれは誰もが等しく徴税されている。
法人の中でも公益性の高い公益法人には様々な優遇措置がとられ、税率が低減されている。
とりわけ宗教法人だけは特別な優遇措置がとられている。主なものは以下の通り。
・宗教活動(非収益活動)や公益活動、金融活動からの収益の非課税
・収益活動への軽減税率の適用
・宗教施設の固定資産税、不動産取得税、都市計画税の免除
私たちから見ると、まさに至れり尽くせりだ。
このうち、宗教活動の中の非収益と収益活動の線引きがアイマイで、脱税の温床となっている。
宗教法人の従業員が受け取る給料については非課税措置がなく、法人が所得から天引きすることになっている。
処が、この源泉所得税について国税が査察を行った結果、ここ3年間で対象となった約700法人のうち8割に徴収漏れが見つかっている。これはもはやウッカリミスを通り越した悪質な所得隠しだ。
こうして得た金で派手な遊興費や風俗通いに消費されているケースがあるのは周知の通りだ。
私見だが、宗教法人に対する優遇措置は「性善説」に基づくものと思われる。私たちへの徴税は一般に「性悪説」が前提だ。
現に悪いことをする宗教団体がある以上、宗教法人に対しても「性悪説」で臨むべきかも知れない。
当たり前のことだが、法人税は利益に課税されるので利益の出ない法人には無関係だ。
宗教法人への課税で常に問題となるのは、信教の自由への侵害という声だ。
しかし、信教の自由と宗教法人に課税することとは全く別問題である。新聞社やTV局に課税したら言論の自由を侵害するのだろうか。そう考えれば分かることだ。
宗教法人への優遇措置の見直しについては、過去にも何度か検討されてきたが、実現に至らなかった。その最大の原因は政治家と宗教団体との密接な関係だ。
自民党や公明党を中心に殆んどの政治家が特定の宗教団体となんらかのつながりを持っている。具体的には票とカネだ。選挙ともなれば関係する宗教団体は票田となり、宗教団体から政治家へは献金が行われている(一説によればカネが渡ってないのは共産党だけという)。彼らにとってはこれほど有り難い存在はない。だから宗教法人への課税が課題に上がっても、常に潰されてきたのだ。
加えて、冒頭にあげたマスコミへの広告料に垂れ流しにより、マスコミもこの件については腰が引けている。
つまり宗教法人-政治家-マスコミの鉄のトライアングルが阻んできたわけだ。
いま日本は財政難で、増税案件が目白押しだ。その一方、宗教法人の優遇措置の見直しだけで数兆円の税収が見込めるという試算もある。
儲かっている宗教法人への適切な課税を急ぐべきだ。
今年4月には政府税制調査会が公益法人への課税強化を検討し始めた。本丸は宗教法人だが、政界関係者によれば安倍首相はヤル気がないそうだ。
安倍政権は法人税減税を進める一方、消費税の値上げを図っている。税制面でも「弱きをくじき強きを助け」る政策を採っている。
宗教法人への課税は、この悪評を排せるかどうかの試金石となろう。
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