辻萬長さんの死去を悼む
日本の演劇界を支えた俳優の辻萬長(つじ・かずなが)さんが8月18日、腎盂がんのため死去した。77歳だった。
私が観た辻萬長さんの舞台は以下の通りで、公演名、辻萬長さんが演じた役、年月日の順に記す。
こまつ座84回公演「人間合格」 中北芳吉 2008/2/17
こまつ座88回公演「兄おとうと」 吉野作造 2009/8/2
「十二人の怒れる男」 陪審員四号 2009/12/5
「夢の泪」 伊藤菊治 2010/5/18
「夢の痂」 佐藤作兵衛 2010/6/14
こまつ座101回公演「イーハトーボの劇列車」 宮沢政次郎 2013/10/9
「アルトナの幽閉者」 父親 2014/2/20
こまつ座「父と暮せば」 福吉竹造 2015/7/11
「城塞」 男の父 2017/4/25
こまつ座129回公演「日の浦姫物語」 説教聖 2019/8/21
辻萬長さんは名優という言葉がピッタリだった。どんな芝居の、どんな役柄でも、辻萬長さんは圧倒的な演技力と存在感を示していた。
なかでも印象に残るのは、「父と暮せば」の父親役だ。ストーリーは悲劇的なのだが、そこに辻さんが演じる幽霊の父親が出てくると、何かホッとした気分になる。原爆で倒壊した建物の下敷きになっていた父を助け出せずにいた事から、その罪に苛まれ自分は幸せになってはいけないと思い詰める娘に、幽霊の父親はこう声をかける。
「人間のかなしいかったこと、たのしいかったこと、それを伝えるんがおまいの仕事じゃろうが」
「そいがお前に分からんようなら・・・・ほかの誰かをかわりに出してくれいや・・・・わしの孫じゃが、わしのひ孫じゃが」
今でも辻萬長さんの声が耳に残る。
合掌
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